19/11/01(金)00:01:26 多くの... のスレッド詳細
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19/11/01(金)00:01:26 No.635139115
多くのイベント事において、ミッシェルは子どもたちの人気者である。それはハロウィンもまた然りで、あたし──もといミッシェルは現在進行形で元気いっぱいの子どもたちに囲まれている。 今日の舞台は児童館のハロウィンパーティで、あたしたちハロハピはゲストとして招かれることになった。お菓子のプレゼントや全員参加型のゲーム、ミニライブといった企画を通して皆を笑顔にしよう、という極めて常識的かつ穏当な催しである。 (ふう、流石に疲れが溜まってきた…) 現在、あたしは控え室で休憩中だ。ミニライブが終わったタイミングで進行をこころたちに任せて、一度引っ込ませてもらったのだ。 当然ながら、着ぐるみで長時間動き回るのは非常に体力を使う仕事である。外が肌寒くなってきても、あれだけ動けば汗だってたくさんかく。 しかし、休んでばかりもいられない。皆がいくら頑張ってくれても、マスコットのミッシェルがいつまでも帰ってこないのでは子どももガッカリしてしまう。 よし、と気合いを入れ直して立ち上がったとき、控え室のドアからコンコンと音がした。 既にミッシェルには入っているし、誰が来ても問題はない。 「どうぞー」
1 19/11/01(金)00:04:03 No.635139883
「失礼致します」 入ってきたのは、黒服の人だった。 「ご休憩中のところに申し訳ございませんが、本日は奥沢様に一つお願いがございまして参らせて頂きました」 「お願い?」 黒服の人たちからお願い──無茶振りとも言う──されるというのは、決して珍しいことじゃない。まあ内容はいろいろあるけど、共通点も存在する。それは、こころに関するものだということ。 「本日の予定につきまして、こころ様には『奥沢様は私用につきご参加できない』と伝えてあります」 「それは、はい。あたしもそう説明しましたし」 どうしても外せない仕事が入っちゃったから、パーティには行けない。こころはあたしのその説明に残念がりつつもなんとか納得してくれた。 「パーティのこともそうですが、こころ様はそれ以上に奥沢様とハロウィンを過ごせないことを大変残念がっておいででした」 「…そうですか」 なんというか、こう改まって告げられると…変なむずがゆさがある。 「そこで、奥沢様に折り入ってお願いがございます。お疲れのこととは思いますが、パーティが終了した後、こころ様との時間を都合して頂けないでしょうか」 黒服の人は、そう言って深々と頭を下げた。
2 19/11/01(金)00:07:31 No.635141029
そんなこんなで、すっかり辺りが真っ暗になった頃、あたしは弦巻邸にいた。断る選択肢は、初めから考えていなかった。 黒服の人に頭まで下げられたから、というのも理由の一つではあった。こころを喜ばせたいという気持ちに共感したのもある。 でも結局のところ、一番はあたしがそうしたかったからなんだと思う。惚れた弱み…なんて言うつもりはないけど。 ノックもせずに扉を開く。部屋の主は深夜の訪問客の正体を確認すると、満面の笑みで迎えてくれた。 「こんばんは、美咲。ハッピーハロウィン!」 「こんばんは、こころ。…もう少しで終わっちゃうけどね」 「時間なんて関係ないわ。だって、美咲が来てくれたんだもの」 招かれるままに室内へと足を踏み入れる。閉まっていく扉が、あたしを逃がさないと言ってるように感じた。 「今日は楽しかった?」 「ええ! みんなみんな笑顔で、とっても素敵なパーティだったわ!」 「そっか。満足できたなら良かったじゃん」 「いいえ。本当は一つだけ心残りがあったの。でもね」 柔らかい手のひらが、あたしの頬に触れる。顔が自然と、こころのほうを向いてしまう。 「一番見たかった笑顔が、やっと見られたわ」
3 19/11/01(金)00:08:30 No.635141364
急に恥ずかしくなって、言葉に詰まる。何を言おうかしばらく迷って、やっとこさ口を開いた。 「…こころ」 「なあに?」 「トリック・オア・トリート」 「…あら、あたし今お菓子持ってないわ」 「だと思った」 目を真ん丸にするこころを見て、なんとか平常心を取り戻せた。さて、どんなイタズラを仕掛けようか。何せアドリブだったものだから、これといったイタズラも考えていない。 むむむとあたしが思案していると、再びこころが口を開いた。 「トリック・オア・トリート」 「…はい?」 「トリック・オア・トリートよ、美咲」 差し出された手が意味するのは、『お菓子を寄こせ、さもなければイタズラするぞ』。言葉と仕草の両方で私にそのまま返してみせたこころは、固まったあたしを見て満足げに口元を緩ませる。 「これでおあいこね?」 パーティが終わって、あたしは家にも帰らずここへ直行してきた。手荷物は全て黒服の人たちに預けてしまったし、当然お菓子なんて持っているわけがない。 会心の一手が、かえって自分の首を絞めてしまった事実から、あたしは目を逸らせなくなる。
4 19/11/01(金)00:09:23 No.635141623
「…おあいこなら、お互い何もしないで終わりっていうのは…」 「ダメよ。そんなルールじゃないもの」 苦しい言い訳もバッサリ切り捨てられ、今度こそ手の打ちようがなくなる。 「そうだわ。せっかくお互いにいたずらするなら、されたのと同じことを相手にもするっていうのも面白いかもしれないわね?」 「…と、言いますと?」 ゆっくりとこころの顔が近づいてくる。手を握られてしまったあたしに逃げ場はなく、そのキラキラとした瞳に魅入られて顔を背けることもできない。物理的にも精神的にも詰んだあたしを、柔らかい温もりが包み込んだ。 「あたしがしたいことを美咲もして、美咲がしたいことをあたしもするの。とっても素敵でしょう?」 甘く、甘く、どんなお菓子よりも甘く、あたしの心の奥底まで沁み込んでいく声。 「…ねえ、美咲はあたしにどんなことがしたいのかしら?」 今日はハロウィン。甘いお菓子を求めて、たくさんの幽霊や怪物が現れる日。 甘美な誘惑に理性を溶かされきって、あたしのハロウィン・ナイトはまだ終わらない──。
5 19/11/01(金)00:11:35 [黒服] No.635142334
抱け!抱けーっ!抱けぇー!
6 19/11/01(金)00:14:39 No.635143205
めっちゃおいひい…
7 19/11/01(金)00:16:08 No.635143614
このこころちゃんはずるいこころちゃんだな間違いない…
8 19/11/01(金)00:19:43 No.635144709
儚い…
9 19/11/01(金)00:20:46 No.635144991
>儚い… 薫さんも夜中まで忙しいのでは…
10 19/11/01(金)00:30:31 No.635147413
風紀が風紀が…
11 19/11/01(金)00:32:34 [s] No.635147889
数分遅れて月跨いじゃったけどハッピーハロウィン! 今年はかすありがウエディングしてゆきリサが約束してあやちさがらぶサマーして蘭モカがSasanquaしていったいみさここには何が起きちゃうんだと最近ムラム…ハラハラが止まらないよね! あと2周年直後に始めた新参だからプロフィールに唯一みさここツーショットできると噂のハロウィン美咲ちゃん持ってないんだけど復刻してくれないかな!無理かな!
12 19/11/01(金)00:40:24 No.635149622
ちょっと気分が沈んでたけど元気が出てありがたい…