19/09/17(火)00:50:23 お久し... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1568649023298.jpg 19/09/17(火)00:50:23 No.623425015
お久しぶりです 再放送記念でテンション上げて書きました でも書いてから気付きましたがアプリ版の人がメインだと初見さんには意味不明ですね! su3315417.txt
1 19/09/17(火)00:51:32 No.623425317
横須賀探偵 「困ったことになった…」 私こと鏑木美波は、慣れないシチュエーションに思わずそんなつぶやきを漏らしてしまう。 この場にいたのが私ではなく艦長の岬さんだったなら、きっと上手く事を運んでくれるのだろうが、生憎今日は私一人。 どうしたものかと途方に暮れていると、見知った顔が通りを行くのを見つけた。
2 19/09/17(火)00:51:42 No.623425356
「千載一遇」 なんとかなる、かもしれない。 すがる気持ちで、私はその人に声をかけた。 「大指さん!」 天津風砲術長、大指紀子さんに。
3 19/09/17(火)00:51:57 No.623425420
「おや、久しぶりだね子猫ちゃん。珍しく慌てた様子だが、何かあったのかい?」 本人にそのつもりがあるのかはわからないが、こちらを安心させるような優しさと心強さを感じさせる。 私は一旦深呼吸をして気持ちを落ち着けると、彼女に状況を説明する。 「実は…」 「ふむ、あちらの子猫ちゃんの子猫ちゃんが行方不明、と。それは一大事だ」 …彼女の言い回しのせいで分かりにくくなってしまったので補足する。 『あちらの子猫ちゃん』というのは、通りすがりに出会った少女のことだ。 さらにその後の『子猫ちゃん』は文字通り、少女の飼っている子猫のことを指す。 要約すると、この少女の飼っている子猫が逃げ出したらしく、行方知れずになっているということだ。
4 19/09/17(火)00:52:14 No.623425481
「子猫だからそこまで遠くには行っていないだろうが、この広い横須賀の町でどう探したものか、と」 「確かにな。ビラ配りするにしても探し回るにしても、人手が足りないか」 大指さんは、妙に決まったポーズで思案し始める。その姿は、まるで古いドラマの名探偵のようだ。 「よし」 ポーズを解いた大指さんは、私と少女の顔を順に見てから、爽やかな笑顔で告げる。 「このハードボイルドに任せておきな、子猫ちゃん達」 自分で言うのはハードボイルドなのだろうか、という疑問は飲み込むことにした。
5 19/09/17(火)00:52:48 No.623425636
「カッコつけておいて即ヘルプ求めてるんじゃないわよ大指!」 「まあまあちーちゃん。人手が必要な状況なのは間違ってないから…」 「ジェニーも手伝うヨ!」 大指さんはまず天津風の人達に声をかけてくれた。それと同時に、私も晴風クラスの何人かに声をかけておいた。 「さて、頭数は揃ったことだし、迷える子猫ちゃんの写真もみんなに送信した。 ここからは実際の捜索に入るわけだが…ある程度ポイントの目星は付けてある」 そう言うと、大指さんは横須賀市内の地図上にいくつか〇を付けていく。 「ちょっと待ちなさい!何でそんなにピンポイントに絞れるのよ!」 「?生まれ育った町で子猫がいそうな場所くらいわかるだろう?」 「わからないわよ!?」
6 19/09/17(火)00:53:28 No.623425805
と、まじまじと地図に示されたポイントを見ていた山辺さんが声を上げた。 「うーん、公園とか、狭い通りとか、隠れられる場所が多そうな所…かな?」 なるほど。確かに大指さんのしていたポイントはそういった場所が多いように見える。 「流石だ、アユ。その通りだ。 より正確に言えば、ガールの自宅周辺のそういったポイントを重点的にマークしてある」 「おおー!ノリちゃん、本当に探偵みたいだヨ…」 加藤…ジェニーさんも驚いているようだ。
7 19/09/17(火)00:54:01 No.623425940
「一か所だけ随分と離れた場所があるが、ここは?」 私は地図上の一点、横須賀女子海洋学校近辺の海辺に示されたポイントについて質問した。 ここだけ極端に他のポイントから離れているし、猫が好みそうな閉所というわけでもない。 「そこに目を付けるとはいい着眼点だ、ガール」 大指さんは聞かれるのを待っていたかのように、にやりと笑う。
8 19/09/17(火)00:54:17 No.623426002
「ここに何かあるの?のりちゃん」 「もったいぶってないで、さっさと説明しなさい!」 まるで探偵が犯人を特定するシーンのように、山辺さんと高橋さんが先を促す。 「では説明しよう。ここは…」 すっ、と、そのポイントを綺麗な長い指で指し示し、 「この町一番の、猫たちのお昼寝スポットなのさ」 高橋さんが盛大にずっこけた。
9 19/09/17(火)00:54:55 No.623426171
「ま、まあ猫がいそうなポイントってことには間違いないわね」 復活した高橋さんの言う通り、ここは重要なポイントかもしれない。 「でも、ここからだと結構遠いネ。歩いていくと、着いた時には日が落ちてるかもだヨ」 確かにその通りだ。日が落ちてしまっては、見つかるものも見つからない。 最悪、今日はこの子を家に帰して解散になってしまうだろう。 そんな思いが顔に出ていたのだろうか。大指さんが私の肩に手を置いて言う。 「大丈夫さ。歩いていたら間に合わないなら、乗り物を使えばいい。ここはアタシの自慢のバイクで…」 「…のりちゃん?」 笑顔のまま、とてつもないプレッシャーを放つ山辺さん。怖い。
10 19/09/17(火)00:55:29 No.623426307
「いやその…小粋なジョークさ、アユ。近くに自転車を止めてあるから、それでひとっ走りさ」 なんとなく、天津風の日常が垣間見えた気がする。 「なら、私も一緒に行く。乗せて行ってくれ」 「ガールもかい?私は構わないが…」 ちらり、と山辺さんを見る大指さん。堂々と二人乗り宣言をしているのだから、さもありなん。 「まあ、それぐらいならいいんじゃない?非常時だし、大指一人だと見落としがありそうだし。この子、例の天才ちゃんでしょ? 何かあっても冷静に判断できそうだし、面倒見てもらった方がいいわよ」 「うーん…そうね。鏑木さん、一緒に行ってあげてくれる?」 「無問題(もうまんたい)」 ちょっと大指さんの扱いがあまりな気がするが…ここで言うのも憚られたので黙っていることにした。
11 19/09/17(火)00:55:55 No.623426396
「じゃあ、2人にはこの遠くのポイントに向かってもらうとして…。 私と加藤がこの辺のポイントの捜索、あゆみはこの子の世話と連絡係を頼むわ」 流石天津風の艦長。判断と指示が早い。 「わかったわ、ちーちゃん。のりちゃんもジェニーちゃんも、猫探しに夢中になって無茶したりしないでね」 「了解だ、アユ。ガールもいるんだ、安全第一で行ってくるさ」 「この子のこと、お願いネ!」
12 19/09/17(火)00:56:17 No.623426492
行動方針が定まったところで、高橋さんが宣言する。 「別に競ってるわけじゃないけど、晴風クラスより早く見つけるわよ!」 「ふふ、そうね。この子のためにも頑張ってね、ちーちゃん」 「い、いちいち言わなくていいわよ!大指!加藤!さっさと行くわよ!」 「オーライ、チーちゃん!ノリちゃんもミナミちゃんも、気を付けてネ!」 「やれやれ、信用が無いな…さ、アタシたちも行こうか、ガール」 ごく自然に手を差し伸べられ、思わず握り返してしまう。 「よろしく頼む、大指さん」 私は大指さんに手を引かれながら、彼女の自転車の所へと急いだ。
13 19/09/17(火)00:56:58 No.623426654
「聞いてもいいだろうか、大指さん」 自転車の後部で大指さんにしがみついた状態で、彼女に声をかけた。 「なんだい?」 「この間の…私が道で水をかけられた時もだが、なんでこんなに親身になってくれるんだ?」 合同演習で乗っている艦同士が同じチームになったとは言っても、ほとんど会話もしたことがない相手に。 そんな疑問に対し、大指さんは事も無げに言った。
14 19/09/17(火)00:57:14 No.623426734
「誰かが困っているのに放っておくのは、アタシの信じるハードボイルドじゃない。 ついでに言うなら、この町で流れる涙を拭うハンカチのような存在でありたい、そう思ってるのさ」 昔見たドラマの受け売りだけどな、などと言って笑っていたが、その言葉に一点の曇りもないことはわかった。 巻き込んでしまった形だが、この言葉を聞いて、私は決意を新たにした。 「…あの子の猫、絶対に見つけよう、大指さん」 「ああ、もちろんだ」 それ以上の言葉は不要だった。
15 19/09/17(火)00:57:46 No.623426853
しばらく自転車を走らせた私達は、目的のポイントへ到達した。 すでに日が傾き始めている。 先ほど大指さんが言った通り、日向ぼっこに興じていただろう猫たちが散り散りに町の方へ戻り始めていた。 「いない…!」 携帯に送ってもらった写真と歩いていく猫たちを見比べていくが、それらしき猫が全く見当たらない。 もう戻っていってしまったのだろうか。 私の焦りを見越したように、大指さんがフォローしてくれる。 「まだ奥の方にも猫が残っているかもしれない。手分けして探そう」 「わかった…じゃあ、あっちは私が」 「ああ、それならアタシはこっちを見てこよう」
16 19/09/17(火)00:58:06 No.623426916
二手に分かれ捜索を続けたが、やはり目当ての子猫は見つからない。 ひたすらに走り続けて、一番奥にある桟橋付近までやってきた。 「はぁ…はぁ…」 こんなに走ったのは、初めてかもしれない。 研究室でも晴風艦内でも基本は座っているし、陸に戻ってからは揺れに慣れるための訓練で『相棒』に乗る機会が多かった。 こんなことになるなら、もう少し体を鍛えておくんだった。 膝ががくがくするし、酸素が足りなくて頭が痛い。それでも、諦めるわけにはいかない。 「…っ!」 もうちゃんと声も出せない。呼吸は乱れているが、少しでも前に進もうと歩き始める。 日没までは、もう10分も無いだろうか。 どうにか最奥の桟橋までたどり着いた。そして。
17 19/09/17(火)00:58:25 No.623426991
「いた…!」 こちらに背を向けているが、後ろからの写真ももらっていたから特徴的な模様を見てすぐに分かった。 桟橋の下に何かいるのか、はたまた水面に写る自分の姿に興味を引かれているのか、何やら前脚を必死に伸ばしている。 …あれ、この状況はまずいのでは? と思った瞬間、子猫の体が桟橋を滑り落ちていった。 「危ない!」 かろうじて声は出たが、私にできたのはそれだけだった。 それまで無理した弊害か、体がまるで言うことを聞かない。 子猫の体が、完全に視界から消えようかという瞬間。
18 19/09/17(火)00:59:15 No.623427145
「うおおおおおおおお!」 大指さんが私の横を猛スピードで駆け抜け、そのまま桟橋から飛び降りていった。 どぼん!という音とともに上がる水飛沫。 「お、大指さん!?」 呆然と見送るしかなかった私は、ようやく落ち着きを取り戻して桟橋の上を進む。 先端から下をのぞき込むと同時に、大指さんが海面に顔を出した。 「ぷはっ!ああ、ガール、すまなかったな。非常事態だったようだから、声をかけられなかった」 「いや、そんなことはいいから…早く上がってきてくれ」 「それもそうだ…が、その前に、この子を頼む」 そう言って差し出されたのは、あの子猫だった。
19 19/09/17(火)00:59:38 No.623427225
「あ、ああ。お前もなんとか無事だったか」 体が冷えたら大変だ。気休めにしかならないかもしれないが、持ち歩いていたタオルに包んでやる。 その間に、大指さんも桟橋の上に戻って来た。 「どうにか一件落着、ってところか」 「いやいや、そのままでは色々と大変なことになっているぞ」 制服も帽子もびしょ濡れで、あまり見ないようにはしているが下着が透けてしまっている。
20 19/09/17(火)00:59:57 No.623427292
「はは、携帯もオシャカだな、これは。折角見つかったのにボスに連絡できないぜ」 「笑いごとではないだろう…番号を教えてくれたら私が連絡するから、まずはこれを…」 私は白衣を脱いで、大指さんの体に掛けてあげた。 サイズが違いすぎて着ることはできないが、体を隠すぐらいならできる。 「いいのかい?白衣は研究とかで使うだろう?」 「帰れば予備があるから問題はない」 「…そうか。すまないな、ガール。前と立場が逆になってしまったな」 状況からすれば、こちらが詫びるべきだろうに。
21 19/09/17(火)01:00:23 No.623427398
ある程度大指さんの服を乾かしたところで高橋さんに発見の連絡をし、私達は元来た道を引き返した。 集合場所に近づいてきたところで、大指さんは突然自転車を停車させた。 「どうした?大指さん」 「ガール、悪いがここから歩いて戻ってくれないか?」 大指さんらしくない、と思った。 彼女なら、あの少女のために最後まで付き合ってくれるものだと思っていた。 そんな思いが読み取れたのか、彼女は言う。 「この依頼を請け負ったのはガールだからな。ガールが依頼主の元に届けてやるのが筋、ってやつだ」 「だが、それでは大指さんは」 「いいんだ。アタシはただの協力者。手柄を誇るべき役割じゃないし、それはハードボイルドがすることじゃない。 ああ、ボスたちにも言ってくれるなよ?」
22 19/09/17(火)01:00:56 No.623427503
本当に、この人は…。 「…承知した。今日起こったことは、私と大指さんの間だけの秘密だ」 「ふっ、中々わかってきたじゃないか、ガール」 そう言って、踵を返そうとする。 「待ってくれ、大指さん」 「何だい?」 「さっき言っていた昔見たというドラマ、今度見せてもらえないだろうか」 「!ああ、もちろんさガール…いや、ミナミ」 それじゃあな、と言って走り去っていく背を見送ると、私は集合場所へと急ぐのだった。 終わり
23 19/09/17(火)01:04:34 No.623428267
ノリちゃんお前…ハードボイルドだぜ…
24 19/09/17(火)01:12:51 No.623429854
>ノリちゃんお前…ハードボイルドだぜ… カッコいい女の子いいですよね… 疾風で切り札な感じの元ネタ的には赤くて速い三人目がいりますね…かもちゃん?
25 19/09/17(火)01:15:37 No.623430434
ちーちゃんが所長かな
26 19/09/17(火)01:35:29 No.623434140
>ちーちゃんが所長かな ずばりそのイメージで所長呼びも考えたのですがアプリ準拠でボス呼びにしました まあ艦のボスも事務所のボスも一緒よ