19/08/18(日)16:34:18 「まぁ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1566113658700.jpg 19/08/18(日)16:34:18 No.615755356
「まぁ！この品質がこんなにお安く！素晴らしいですわ。えぇ素晴らしいですわ」 まるで金銀財宝以上に価値あるものを見るような──いや、確実にそう思っている瞳で恋人は歓喜の声を上げた。 「今年は豊作だったのもあって物価は下がり目だからな。農家の方々には複雑だろうが。……だが、確かに出来は良さそうだな」 「ふふっ、村雨様にも目利きが染み付いてきたようでわたくしはとても嬉しいですわ」 「朱に交わればなんとやら、だけどな」 四六時中とは言わねどちょっとスイッチが入れば何十分と早口でいられるこいつの情熱……洗脳？の甲斐あってか、俺でもある程度までなら良し悪しはぱっと見でもわかるようになってきていた。これでも隣にいる筋金入りのプロにはまるで敵わないとは思っているが。
1 19/08/18(日)16:35:12 No.615755576
俺たちがこうして市井のスーパーに来ているのは、建前上は庶民の生活のリサーチ、本音のところはこの彼女──詠のゴリ押し(ワガママとも言う)である。 とはいえ、自分で言うのもなんだが帽子を被った程度の変装でも大して気付かれないものなのだ。今のところ表立って目に触れるのはあくまで父上であるし、そもそも御曹司がこんな所にいるなんてのはそうそう考えるところではない。たまに気付いて驚愕する見上げた奴もいるが、大抵は詠を見て察してくれたりするので今のところ実害はない。まあ、当然口止めは都度しているし、何かあろうものなら死ぬより酷い目に逢うことになるだろうが
2 19/08/18(日)16:36:02 No.615755779
そして、詠が何故市井の商店に拘るかといえばこれまた単純な話で、市民──オブラートに包まずに言えば貧民──の皆様の事を理由をつけて様子を見に行きたいということだ。紆余曲折あって富貴を知る者となっても彼女のアイデンティティはやはりあそこにあるという事実は揺るがないし、その精神自体とても尊いものだと思う。 「……なあ詠」 「はい、なんでございましょうか？」 「お前を好きになって、俺は本当に良かった」 「────勿体無き幸せにございますわ」 もやし売り場の前という俺たちにとっては最高にムードある場所で、俺たちは暫しの間屈託無く笑い合っていた。