ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/08/09(金)23:42:04 No.613313244
「お邪魔しま～す」 「お前そんな他人行儀な…」 「なんというか、その、緊張しちゃって…」 幸太郎さんの苦笑いに、私も苦笑いで返しちゃう。 ここ最近仕事が忙しくて、全然二人きりになれてない私達…持っとらん… だけどちょっと余裕があった今日一日の締めくくり！幸太郎さんの部屋にいざ突撃！ …の筈なんだけどな… 「折角恋人同士になれたのに…なんというか、勿体無かよね、私…」 「…さくら」 俯いた私に優しい声。 「おいで」 「…はい」 ………あぁ、私やっぱり、幸太郎さんが好き。
1 19/08/09(金)23:42:16 No.613313312
両腕を広げる幸太郎さんの胸へ飛び込む。 …私の彼氏の、胸へ飛び込む。 「えへへ…あったか～」 「ふっ。別に何もしてないんだがな」 頭を擦りつけながら、頭を撫でられながら、彼の胸板を堪能する。 「幸太郎さんってだけでもう温かいんです」 「どういう理屈じゃい…」 「か、彼氏の胸なら…温かいんです…」 「…」 気恥ずかしくて、多分私、顔真っ赤だぁ… 幸太郎さんはずっと黙りっぱなし。…ちょっと不安。 上目遣いで少し見上げると、赤い幸太郎さんの顔。 「………照れてます？」 「お前が言うなこんボケ」
2 19/08/09(金)23:42:34 No.613313371
「わっわわっ…けふん！」 抱きかかえられて、そのまま幸太郎さんと一緒にベッドへダイブ。 幸太郎さんの上に寝転がるカタチ。 …あの夜。私達二人が繋がった夜とは、逆の姿勢。 「…幸太郎、さん」 目を閉じて、待つ。 ………温かい感触が、唇に。 唇に伝わる熱が、全身へゆっくりと広がっていく。 ただ熱を持っている人と、生きてる人と触れ合うだけならチェキ会とかでたまに触るのに。 幸太郎さんと触れ合っているだけ、まるで自分が生きてるみたいに感じるのは何故だろう。 体だけじゃなく心までポカポカとしてくるのは、きっと幸太郎さんだから。 …大好きな人だからかな…？ 大好きな人と触れ合う時には、皆こうなのかな…？
3 19/08/09(金)23:42:50 No.613313444
暫くして、幸太郎さんの唇が離れた。 名残惜しいけれど目を開ける。もちろん唇を尖らせて不満を前面に出しつつ。 「…そうブスッとするな」 「…幸太郎さん、困ったら撫でれば私を落ち着かせられると思っとりません？」 「バレたか」 幸太郎さんにぷく～っと頬を膨らませると、笑いながら頭を撫でられる。 「…も～！」 「だぁあ！さくら！おま！それやめいって言っとるじゃろが！」 胸に抱きついて、私の胸を押し付ける。 幸太郎さんはムッツリさんだから、これにすっごい弱いのだ！ むにゅむにゅと押し付けると、露骨にうろたえ始める幸太郎さん。 …ちょっと可愛いかも。
4 19/08/09(金)23:43:01 No.613313497
「…ちゃんと反省しとります？」 「しとる！全身全霊でさくらに答えます！」 「………ほんとに～？」 「ほんとほんと！」 「…それなら、今回だけ許してあげます」 胸を離してあげると一息つく幸太郎さんに、ふふんっと笑顔。 そしてまた幸太郎さんの胸に頭を預けちゃう。 ここ好きなんやもん。仕方無かよね？ 「それじゃ早速、答えてもらっちゃおっかなぁ～」 「…なんじゃい」 「えっと、そのね？」 「おうおう。なんでも言ってみんかい」 「……………幸ちゃん」
5 19/08/09(金)23:43:26 No.613313593
最近二人きりになれてないけん。 皆に相談したら、悩みの解決どころか私達二人の仲についてまで色々根掘り葉掘り。 や、薮蛇だった…そう思っとったけど、皆親身になって考えてくれて。 『どうにかして時間作るから、二人きりになりなさい』 愛ちゃんが話して、皆がそれに続いて提案。 『…そして更に仲を深めるために恋人同士で、呼び方を変える事』 熱いカップルは互いをあだ名で呼び合うらしいって、その時読んでた女性向け雑誌に書いてあったけど。 『そ、そやんか勇気無いけん…』 『さくらはん！』 『ゆ、ゆうぎりさん？』 『さっさと二人の距離をもっと縮めて、もう一発ヤりなんし！』 『ゆうぎりさん！！！！！』
6 19/08/09(金)23:43:36 No.613313624
そんな訳で押し切られて、どうにかこうにか幸太郎さんのあだ名を考えて来たのが今日で。 …偶然だろうけど。大好きだった私の弟への呼び方が、まるっとそのまま浮かんで。 こうして恐る恐る、そう呼んでみた次第で。 「………さく、ら？」 震えた声が頭上から。 「…びっくりしちゃいました？」 「…」 「何でも巷では、恋人同士はあだ名で呼び合うらしいんですよ」 「二人きりの時だけで良いんです。幸ちゃんって、呼んじゃダメですか？」 「…」 幸太郎さんの様子を見るのが怖くて、胸に顔を埋める。 …やっぱり、早かったかな…イヤだったかな… ………嫌われちゃったり、しないかな…
7 19/08/09(金)23:44:04 No.613313753
「…良いぞ」 「ほんとですか！？」 顔を上げると、頭を撫でられる。…ちょっと、震えた手で。 「さくらがそうしたいんだろ？」 「…うん」 「じゃあ、俺もそうしたい」 「幸太郎さん…」 「あだ名で呼ぶって言っとったじゃろがい」 「あっえっと…幸ちゃん」 「……………あぁ」 ほんとに好き。大好き。幸太郎さんと居ると、こんなに幸せ。 「…幸、ちゃん…しよ？」 我慢出来なくて、幸太郎さんの胸に抱きつきながらお願いをする。 こんな幸せな気分のまま、あの夜みたいな事が出来るって考えると思わず笑顔になる。 私の頭を撫でる手で見えないけれど、幸太郎さんも笑ってくれてると良いな！まるっ！
8 19/08/09(金)23:45:08 No.613314003
風呂場にある鏡を見つめる。 自らの顔へ手を。 俺は、誰だ？ …巽幸太郎だ。 なら、オレは？ …彼女の、弟だ。 俺は、オレは、どっちなんだろうな。 …俺は、巽幸太郎のつもりだ。 …オレは、居ない存在のつもりだ。今度こそ、姉ちゃんと距離を置いて、俺に全て任せるつもりだ。 だけど。 …あぁ、そうだ。呼ばれてしまった。 …名前を、呼ばれてしまった。
9 19/08/09(金)23:45:46 No.613314142
果たして、隠しきれるだろうか。 …俺は、問題無い。 …オレは、オレは。 あの夜と同じだ。また、何かが俺の内側で外に出ようと蠢いている。 「うっ…ぐぶ…」 ダメだ。吐き出すな。今から、さくらと… …オレは…姉ちゃんと… 「ふぅぐ！フーッフーッ！」 耐え切った。 鏡を見る。 焦燥を浮かべる、酷い男の顔が写る。 …この鏡を叩き割って、破片を持って顔を切り刻めば、オレは消えるだろうか。 …きっと絶大な痛みが俺を襲うだろう。悲しみが、さくらを襲うだろう。 …だけど、オレは。姉ちゃんにオレだとバレるくらいなら、いっそ。
10 19/08/09(金)23:46:10 No.613314243
鏡に手が伸びる。 力を込めて殴れば、容易く割れるだろう。 拳を握り締め、振りかぶる。 振り下ろす。 「幸ちゃーん？」 届く直前。扉の外から、彼女の声。 「…えっと、ね？」 「…私も一緒に、入ってよか？」 …………… 今は、耐えろ。 「…入っていいぞ」 「やたっ！」 おずおずと裸の彼女が入ってくる。 真っ赤な顔をした彼女を胸で抱きしめ、共に湯に浸かる。 今は、ただ。彼女の笑顔と幸せで、耐える。
11 19/08/09(金)23:47:12 [sage] No.613314506
昨夜投げた後に良い姉弟幸さくが来てたから幸せな姉さくらの続きを書きたくなっちゃったでありんす 書いたでありんす
12 19/08/09(金)23:48:20 No.613314831
よか…
13 19/08/10(土)00:01:10 No.613318165
幸せになりなんし！
14 19/08/10(土)00:04:35 No.613318994
もしかしてこの幸せって佐賀の方言か何か？
15 19/08/10(土)00:10:14 No.613320402
よか…
16 19/08/10(土)00:17:22 No.613322254
その笑顔を守りなんし！
17 19/08/10(土)00:21:29 No.613323288
切ないでありんすなあ
18 19/08/10(土)00:22:01 [別の姉さくら書いた人] No.613323428
わっちそんなつもりじゃ…
19 19/08/10(土)00:22:45 No.613323647
>『さっさと二人の距離をもっと縮めて、もう一発ヤりなんし！』 流石姐さんだ…
20 19/08/10(土)00:26:57 No.613324705
抱く度にげっそりする幸ちゃん…
21 19/08/10(土)00:29:03 No.613325228
さくら実は気付いてる説
22 19/08/10(土)00:31:50 No.613325888
弟的にはバッドエンド 恋人的にはハッピーエンド