19/08/05(月)07:40:02 完全に... のスレッド詳細
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19/08/05(月)07:40:02 No.612181040
完全に行き詰まった。何も思い浮かばん。流石の持っとる俺も最早ここまでか。 俺は眼下の鍵盤に頭を打ち付けたくなる衝動をぐっと抑えた。 稀代の天才作曲家じゃああるまいし、そんな馬鹿げた真似をして曲が降りてくる訳がない。 追い詰められていてもそれくらいは判別出来る。偉いぞ、俺。 だが、こんな時に何をすれば解決の糸口が見つかるのか見当が付かん。 その時、俺に投げ掛けられたある言葉がふと思い起こされた。 「アンタちょっとは自分の身体気遣ったらどう?いい加減に休みなさいよ。」 なるほど…そうか、俺には休みが足りなかったのか。 確かにこれまでの俺は、なりふり構わず突き進みこのプロジェクトに心血を注いできた。 そして成功する為には死をも厭わない覚悟を持ち続けていた。 だがそれは過去の話。今の俺は途中で死ぬ訳にはいかない。例えそれがプロジェクトの為であろうと。 生きて生きて生き抜いてこのプロジェクトの行く末を見届けねばならんのだ。 その為にも…やはり思い起こした言葉に従い、久しぶりにここは思い切り休むか!
1 19/08/05(月)07:40:48 No.612181090
俺は私室を出ると、ゾンビィ共が寝静まる居間の前を通る廊下を足音を抑え歩いていく。 向かう先は外、日中の殺意のこもった熱気もさすがに衰えているはず。 俺は外に出ると、佐賀の酒蔵で育まれた日本酒を内ポケットから出すとにんまり微笑んだ。 今宵の肴は唐津の夜空に瞬く星と洒落こもうではないか。 流石俺様、巽幸太郎だ。なかなか粋な事を考えるではないか。 星空をひとしきり見渡していくと、別の光が目に入ってきた。自然光ではなく人工光だ。 これは…離れにあるレッスン室の明かりだな。だがおかしい、あいつらはもう寝てる筈だ。 ははーん…さては消灯し忘れたな…?明日の朝礼で厳しく言ってやらんといかん。 こういううっかりの積み重ねが、大惨事の呼び水になる可能性だってあるからな。取り敢えず消灯消灯っと。 俺がレッスン室の扉を開けると『アツクナレ』が流れてきた。誰かおったんかい!
2 19/08/05(月)07:41:40 No.612181147
「ふーっ!ちょっと休憩!…わわわわっ!?ちょっとアンタなんでここに!?驚かせないでよ!」 レッスン室にいたゾンビィはフランシュシュ3号水野愛、無駄に驚きよるが俺だって驚くわ。 「それはこっちのセリフじゃーい!お前こんな夜中に何をしとんだ!?消灯忘れかと思ったぞ!」 「うっうっさいわね!眠れなかったからダンスパートチェックしてたのよ!私の勝手でしょ!」 ふむ、殊勝な心掛けだが休息を取るべき時間にはしっかり休むべきだ。 「お前なあ、根を詰めすぎても何も得られんぞ。さあ、今夜は終了!休んだ休んだ!」 「嫌よ!お布団に入って悶々とするなんて!それなら踊ってた方がよっぽど気が休まるわ!」 「やれやれまったく強情なゾンビィじゃい…」 「強情なんてアンタにだけは言われたくないわ!アンタも私がどれだけ言っても休まないじゃない!」 む…困った…反論できんぞ… 「私…私達だってアンタの事心配なのよ!?なのに…なのに…バカ!うう…」
3 19/08/05(月)07:43:09 No.612181268
おい…おいおいおい…何も泣くことはないだろう…取り敢えずハンカチハンカチ…部屋に置き忘れたわ…ええいままよ! 俺は指で愛の眼から零れる涙を拭き取った。 愛はきょとんとした表情で俺を見上げる…うう…かなり応えるが平常心平常心… 「確かにお前の言うとおりだ。だが今ここにこうしているのは、お前が俺を心配してくれたから、お前が掛けてくれた言葉を思い返したから休もうという気になったんだ。だから…許してくれるか…?」 「そうなの…?いいわ!許す!それによかった覚えててくれて…でもお酒片手にそれ言っても変なんだけど…ぷぷぷっ!」 げっ!?日本酒持ったまま!?俺は慌てて内ポケットに隠した… 「ふふふ、いいわよそのままで。何だかアンタらしいしね。」 「そ…そうか…?すまんな…だが…どんなイメージだよ…お前の中の俺は…」 「えー?アルコール中毒?」 「おい!中毒ではないぞ!中毒では!」 「はいはい!中毒の人はみんなそう言うわ!ふふふ!」 「違うわーい!…ぷっ、ははは!」