ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/08/05(月)00:45:22 No.612144519
佐賀県にフランシュシュというアイドルユニットがある。 でっかい会場でやったライブが成功したので有名になって、最近結構忙しい。アニメも二期が決まった。 そんな慌ただしい日々にひと段落がついた、オフの日の昼下がり。幸太郎の部屋で、さくらがピアノに突っ伏していた。 「まったく」 幸太郎はさくらの顔を覗き込んだ。不死身のゾンビとはいえど、こうも仕事が続いては精神が休まらなかったのだろう。居眠りするのも無理はない……とはいえ、何も人様のピアノで寝ずともよかろうに。 「さくら」 幸太郎はさくらの背を優しく揺すった。さくらからは何も反応がない。 「さくら？」 強く揺さぶる。さくらからは何も反応がない。 「さくらちゃーん？」 鼻を突っつく。頬を抓る。さくらからは何も反応がない。 「さーくーらちゅわーん？ 起ーきてー？」 耳をつまんで囁く。さくらからは何も反応がない。あらゆる妨害にもめげずに泰然自若と眠る彼女の顔を眺める内に、そのあまりのピータンぶりに段々と腹が立ってきた。 「そんならこっちにも考えがあるわい」 幸太郎はケース一杯の爆竹をさくらの耳に結んで、火をつけて走って部屋を出た。
1 19/08/05(月)00:46:15 No.612144740
夏の湿った空気を炸裂音が引き裂いて、扉越しに幸太郎の鼓膜を震わせた。音が終わったところで部屋に戻ると、真っ黒に煤けたさくらがぐっすりとピアノで眠っている。効果は特になかったらしい。 「……強情さも、ここまでくれば才能か」 幸太郎はおしぼりでさくらとピアノをごしごし拭いた。煤は取れたが、さくらは目を閉じたままだった。寝息も立てぬまこと安らかなさくらの顔を眺めるうちに、幸太郎はようやく真相に思い当たった。 「死んでるー！」 ────── 「お盆だな」 布団に寝かされたさくらの検分を終えて、白衣を着た老人が立ち上がった。あまりにも当然のごとくに言ってのけた言葉の意味は、フランシュシュのみんなにはちっとも分からない。 「なるほど。ありがとうございます」 幸太郎には分かったらしい。深々と一礼した幸太郎にニヤリと笑みを返して、老人は扉を閉めて去った。 一部始終を観察していた愛が、幸太郎に視線を向けた。 「今のは誰よ」 「誰だってええわい。とにかくお盆だからさくらは心配いらん。はいフランシュシュかいさーん」
2 19/08/05(月)00:47:56 [おわり] No.612145160
「あの、お盆だから心配ないって意味が全然分からないんですが……」 「お盆にゾンビが死んじゃいけんのか！ お盆言うたら御先祖様があの世の方から帰ってきてゾンビは盆踊りしにいって、朝まで踊り狂って退治されて死ぬもんなんじゃい！」 幸太郎が純子に凄まじい剣幕でまくし立てた。長々と喋ったのにさくらが死んでも心配ない理由に全然なっていないが、興奮した幸太郎は始末が悪い。 純子が諦めて黙ると同時に、サキがポンと手を叩いて幸太郎を指した。 「それだグラサン！ ゾンビだからだ！ アタシら死んでからこの世に戻ってきとるけん、お盆には逆にあの世に戻って死ぬんだ！」 「はい大正解！ サキちゃん賢い！」 「じゃあさ、去年はなんでみんな死んでないの？」 「そうと分かればやるこた一個じゃ！」 「それに、なんでさくら以外は無事…」 「だな！」 リリィと愛の質問を完全にシカトした幸太郎とサキは、割り箸を足代わりに刺したキュウリをさくらの傍に置いた。源さくらよ、キュウリに乗って冥界より再び甦れ！
3 19/08/05(月)00:55:46 No.612147132
>源さくらよ、キュウリに乗って冥界より再び甦れ！ 大丈夫？途中で事故らない？
4 19/08/05(月)00:57:24 No.612147554
お盆なら仕方がないな…
5 19/08/05(月)00:57:37 No.612147606
キュウリに乗ったさくらはん想像したらやーらしか過ぎた
6 19/08/05(月)01:02:08 No.612148770
どやんす！？
7 19/08/05(月)01:05:24 No.612149520
ちなみにキュウリとナスだとキュウリの方が馬を模してるためあの世から帰ってくるのが早いんだそうな
8 19/08/05(月)01:11:03 No.612150719
さくらはん！帰省ラッシュに巻き込まれないように気を付けなんし！
9 19/08/05(月)01:16:28 No.612151739
>「死んでるー！」 もう死んでますけどね…
10 19/08/05(月)01:18:07 No.612152044
ヨミガエレをみんなで合唱だ！
11 19/08/05(月)01:31:39 No.612154414
お面被った人がいっぱいおる…