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地獄に... のスレッド詳細

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19/08/01(木)20:58:55 No.611244441

地獄には休みは全くと言っていいほどない 裁きの間で罪人に休憩なんてもってのほかなので仕方のないことではあるが。裁かれるものはともかく裁く方となるとそれは大変で四六時中三百六十五日罪人の泣き言やら悲鳴やらを聞かねばならぬし、釜茹でだってかき混ぜるほうはかなりの重労働。こちらが罰を受けているようにも錯覚して言うほどである。 だがそんな地獄にも長期休暇というのは存在する。お盆である。 この時ばかりは地獄の窯も開いて罪人がみんな帰っていくので実質的に地獄の鬼たちも肩の荷を下ろして久しぶりの休みを満喫するのだ。 が、そんなお盆でも休めないのが紅閻魔の女将が営む閻魔亭であった。 なんせ休暇をもらった鬼たちが日々の疲れを癒しに皆閻魔亭にやってくるのでまさに「正月と盆が一緒に来た忙しさ」というわけで、経験豊富な丁稚の雀達も目が回り、天敵である猫の手も借りたいとぼやいてしまうほどである。 加えてこの時期になると閻魔亭の女将はどこか上の空になってしまうのも忙しさに拍車をかけていた。

1 19/08/01(木)20:59:14 No.611244539

それは女将を支える一人の番頭のことだった。彼は亡者であり生前から女将の知り合いということであったが番頭はお盆になっても閻魔亭に残り現世に帰ることはある理由から許されていなかった。 罪人にも許される慈悲さえも与えられず、会いたい者にも会えない。その辛さは女将にもよく分かることだったのでそれ故に、番頭のことが心配だった。 そんな日の夜だった。 客も寝静まったころようやく自分たちも寝る算段がつき布団に女将が身を沈ませているとふと横の布団にいる番頭が窓の外から見える地獄の空を見つめているのに気付いた。 地獄の空の果てには現世がある。それを見る番頭の姿がなんだか悲しそうで寂しそうで。女将はついに聞くまいと思っていたことを口に出してしまった。 「帰りたくならないのでちか」と。

2 19/08/01(木)20:59:32 No.611244623

その言葉に番頭が振り向くと少しだけ目を丸くしたようだったが、女将の小さな手に自らの手を重ねると「女将がいるから」とだけ言って、それ以上は何も言わなかった。 赤い瞳と青い目がしばらくお互いを映し、音一つない空間が出来上がった。 やがて少し恥ずかしくなったのか誤魔化す様に手を放して番頭は顔を背けると、頭をかきながらどうせ現世に行っても女将に会いたくなって一日にも持たないと口走った。 場を和ませるような冗談だったのだが、女将にどう響いたのかは知らず。番頭が笑いながら振り返ったとき、その動きを止めることになった。 その視線の先には、女将が自らの毛布を広げて番頭を中に受け入れようとしている。 どういう意味かを知っている番頭は明日の忙しさを考えるが 「来てくだちゃい……」 という言葉に観念して女将の布団の方へと近づいていく。 翌日つやつやの女将と干からびた番頭が見かけられるがそれがなぜなのかは誰も知らない。

3 19/08/01(木)21:04:13 No.611246272

自分もお盆には地獄から帰らなくちゃな

4 19/08/01(木)21:55:41 No.611261882

虚しい妄想孤独死おじさん