虹裏img歴史資料館

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19/07/29(月)23:37:20 現世の... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1564411040992.jpg 19/07/29(月)23:37:20 No.610598668

現世の栄華は、一盃の美酒、一夜の夢の如し。 一度救いを得たならば、その先を望んではいけなかった。心の在り方を知ったのなら、それが自分にないとわかったのなら、口を噤んで今まで通りに、人を守護する人擬きの化け物を演じなければならなかった。 けれど、私は求めた。誰よりも人である彼が、誰よりも人でなしの私を愛してくれなくなると思うと、それが何よりも恐ろしかった。 だから今、私はここにいる。全てが白く閉ざされた、白銀の世界に。

1 19/07/29(月)23:37:35 No.610598736

件の事件を起こしたシミュレーターは、以前より警備が厳重になったとはいえ、未だにノウム・カルデアの倉庫に保管されていた。私は彼を連れて、そこに再び入ったのだった。ある簡単な設定を入力した上で。 それは、その世界を人の侵入を阻む一面の凍土と猛吹雪にすること。その中に、彼と私だけの居場所を造ること。そして、この世界を終わりにする条件を、彼が外に出る意思を外部から来た人間に伝えることとすること。 このシミュレーターは外部からの侵入には無力だが、こうすれば中に入ったところで、私達のところへは辿り着けない。そして、私も彼も、ここから出ることはできないし、出ようとも思わない。 これでいい。こうすれば、もう誰にも私と彼を連れ戻すことはできない。他ならぬ彼が、それを望まないのだから。

2 19/07/29(月)23:38:19 No.610598931

「はい、どうぞ。たくさんありますから、どうかたんと食べてくださいね」 炊いた米と味噌汁と、焼いた魚。彼の時代の日の本で、一般的だったと聞いた食事。外の景色から想像できないくらい、ここは静かで、穏やかだった。 「…おいしい」 暫く俯いていたが、彼はやがてこう言った。 よかった。普段料理を作る機会などなかったから少し不安だったが、どうやらうまくできたらしい。 「どういたしまして。好きなだけ、召し上がってください」 ふと、彼の頬に食べ物の残りがついているのが見えた。

3 19/07/29(月)23:38:30 No.610598988

「ついてますよ…ふふっ」 頬についたものを舌で舐めとったとき、彼の瞳に昏い情欲の炎がちらりと見えたのは、気のせいではないだろう。 「んっ、はぁっ…♥」 そのまま、欲望に任せて唇を重ねても、彼は拒まなかったのだから。 今までの戦いの日々が嘘だったように、穏やかな時間が流れてゆく。 彼を戻れないようにはしたが、彼の諦めの悪さは周知の事実だ。だから、彼にはずっとここにいたいと思わせなくてはならない。 でも、本当はどうだろう。こんなひとときを望んでいたのは、彼ではなく私ではなかったか。誰かの命を奪わなければ、自分の命を感じられなかった、私が。 まあ、いい。確かなことは、私も彼も、もうここから逃れることはできないということなのだから。

4 19/07/29(月)23:39:06 No.610599151

私は彼から全てを奪った。彼を爛れた関係に引きずりこみ、他ならぬ彼自身に私を傷つけさせ、それを私自らの手で知らしめさせた。そうして、彼の優しさに甘えて、彼の心も居場所も全部奪った。 だから、私が彼の手を引いて、今から行くこの世界がどんなところか話して聞かせても、彼は拒まなかった。 善でありながら悪も受け入れ、誰にでも優しく接していた彼にとって、たとえそれが真実であろうとなかろうと、彼が本当は拒絶されていなかったとしても、今まで心を通わせてきた仲間たちに罪を疑われることそのものが、何よりも耐え難い苦痛だったのだろう。だからきっと、彼は何も言わずに私の手を取ってくれたのだ。 これがどれだけ邪悪なことかなど、とうにわかっている。いや、わかっているというなら、私がもうどうしようもないくらいに壊れているということだって、もう痛いくらいにわかっている。 わかっているけれど、それは私の現実にはならない。私にとっての現実とは、彼が私を愛する以外の全てを失ったことと、こうしなければきっと、彼は他の誰かのものになってしまうということ。

5 19/07/29(月)23:39:18 No.610599200

彼がいないなら、もう私は生きていけない。人でないことの孤独にもはや耐えられなくなってしまった私は、彼という光がなければ、もう前に進めない。 きっと彼もそうだ。もはや今までの自分でいられなくなって、それに耐えられなくなって。そうして、心が欠けてゆくのだ。 なら、もう全部捨ててしまおう。嫌なことも苦しいことも全部忘れて、どんなに醜くても、傷を舐め合うように生きることになったとしても、ずっとふたりで一緒にいよう。 だって、それを咎める人は、もう誰もいないのだから---

6 19/07/29(月)23:39:39 No.610599288

穏やかな、あまりにも穏やかな時間は、あまりにも甘く、何事もなく過ぎていった。 私は彼を求める。彼は拒まない。食事のときも、湯浴みのときも、床にあっても、彼は私を離さないでいてくれた。 時たま彼が振るう包丁捌きが存外に手慣れていて、驚いたこともあった。そのとき、彼の刃を見つめる瞳は、いやに思い詰めているような気がした。 けれど、少し怖くなって彼の名を呼ぶと、少しの間を措いた後に、いつものように彼は微笑んでくれた。 嬉しかった。私は、彼のそばにいてもいいのだ。私の行いは、間違っていなかったのだ。私と同じように、彼も私にいてほしいのだ---

7 19/07/29(月)23:40:00 No.610599380

「お湯加減はどうですか?」 湯船につかっている彼に、扉越しに声をかける。 「ちょうどいいよ、ありがとう」 「そうですか…よかった」 そう言いながら、服の裾に手をかけた。そのままゆっくりと、ガラス戸の前に立って、見せつけるように着衣をはだけてゆく。 もちろん、中にいる彼には私が何をしているかが見える。あえて見えるようにやっているのだから、当然ではあるが。 こんな露骨な誘い方をしても、きっと彼は受け入れてくれるから。でももし、そうでなかったなら、私は--- やめだ。こんなことを考えても仕方がない。これから好いた相手に愛してもらうというのに、こんな想いを抱いても虚しくなるだけだろう---

8 19/07/29(月)23:40:55 No.610599615

「お背中、流しますね」 そう白々しく嘯いて、浴室の戸を開く。思った通り、彼は驚かなかった。 「まずは身体から洗いましょうか、ふふっ」 石鹸を泡立てて、彼の身体に拡げる。そのまま掌でそっと、背中をなぞっていった。 あどけない顔つきとは対照的な、男の子らしい逞しい背中。けれど、時たま指の先ですっと撫で上げると、くっと身を縮めて、隠しきれない快楽に抗う様子を見せる。 「んっ…可愛い…♥」 どうして彼の仕草は、こうも私の嗜虐心を掻き立てるのだろう。そんな健気なことをされたら、もっともっといじめたくなってしまう。

9 19/07/29(月)23:41:07 No.610599680

うなじと背中にそっと唇を落とすと、思わず彼の背が少し仰け反る。その隙に、今度は手を身体の前側に回した。 さっきよりももっとゆっくりと、もっとねちっこく、泡を塗ってゆく。仰け反っていた背が、今度はまた縮こまった。 後ろから彼を抱きしめる。そうすると、丸めていた背が元に戻った。胸のふくらみを彼の背中に押し当てて、彼の肩に顔をのせる。 そうすると微かに、けれどはっきりと、悩ましく息をつく彼の声が聞こえてきた。 彼の胸の先端に手を伸ばして、指で摘まんで擦り上げる。そうすると、びくり、と身体が震えるのがわかった。 「あっ、ふふ…♥ きもちよく、なっちゃったんですか…?」 彼の耳元でこう囁く。けれど彼は答えない。きっと、今口を開いたら、声が漏れ出てしまうだろうから。 でも、十分だ。朱に染まった耳と、耐えきれずに漏れる吐息が、何もかも教えてくれる。 しゅっ、しゅっ、と、擦る速さは次第に勢いを増していった。そうして、彼の身体が快楽に沈んでゆく、そのとき--- 彼の脚の間に、右手を伸ばした。

10 19/07/29(月)23:41:37 No.610599814

「うっ…ああっ…!」 ずっとこらえていた彼の口から、嬌声が漏れ出してきた。 「きもちいい、ですか…?もっと、してあげますね…」 熱く、硬くなった彼のそれを、しっかりと握りしめて、しごき上げてゆく。それと同時に、真っ赤になった耳にも、舌をゆっくりと押し当てた。 「はっ…ああっ…!」 もう、抑えきれない。耳も、胸も、あそこも、ぜんぶ、ほしい…! 「イっちゃえ…♥」 手の中の彼のものが律動して、熱いものを吐き出してゆく。私は何もされていないのに、それだけで達してしまいそうになった。

11 19/07/29(月)23:42:23 No.610600018

力が抜けた彼の身体を抱き止めて、私に正面を向けさせる。そのまま、まだぼうっとしている彼と一緒に、湯船に入った。 「きもちよかったですかにゃ?」 耳元で、甘く囁く。でも、俯いたまま、彼は答えなかった。 どうしよう。先程までのえもいわれぬ快楽が、一気に不安に変わった。 嫌だ、嫌われたくない--- 「ごめん、なさい。嫌、でしたか…?」 刹那、彼の腕が、私をぎゅっと抱きしめていた。 私も、彼の背に手を回した。 心が満たされてゆくのがわかる。彼に出逢うまでは、一度も感じられなかった心。 ああ、やっぱりだ。私がどんなに壊れていても、彼がいるならそれでいい。だって、こんなにも愛おしいことが、間違いのはずがないのだから--- 「閨に、連れていってください…♥」 もっと愛したい。もっと愛してほしい。ようやく、初めて手に入れたこの気持ちを、ずっとずっと感じていたい---

12 19/07/29(月)23:44:29 No.610600541

邪悪な虎だ許しておけぬ

13 19/07/29(月)23:45:20 No.610600766

今回は本番なしです 続き物なのでよければ ss335878.txt

14 19/07/29(月)23:47:57 No.610601521

なげぇ!

15 19/07/29(月)23:48:18 No.610601608

お虎さんは背徳的なシチュエーションが似合うよね…

16 19/07/29(月)23:48:19 No.610601617

su3216297.txt

17 19/07/29(月)23:52:36 No.610602778

長いし仄暗いと思ったらやっぱり貴方か…

18 19/07/29(月)23:53:32 No.610603008

http://www.nijibox5.com/futabafiles/tubu/src/su3216297.txt

19 19/07/30(火)00:04:22 No.610605662

湿度100%の虎

20 19/07/30(火)00:05:37 No.610605991

キャッツ good.

21 19/07/30(火)00:17:30 No.610609070

力作過ぎる……

22 19/07/30(火)00:27:17 No.610611630

取り返しのつかないとこまで来てる…

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