19/07/28(日)21:32:54 「いら... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1564317174115.jpg 19/07/28(日)21:32:54 No.610317833
「いらっちゃいませ。本日は当旅館をご利用いただき、誠にありがとうごさいまち。ご主人、アナスタシア」 とある日のこと。私たちは先生の経営する旅館、「ちゅんちゅん亭」にやって来ていた。この特異点に来て、民宿に泊まっているのになんでわざわざ旅館に泊まるのか、と疑問に思われるかもしれないけど。言ってしまえばただの気分だ。それに、先生から一度は遊びに来たらいいと言われていたから、そのお言葉に甘えさせてもらった。 「当旅館は温泉と食事が自慢でち。温泉とお食事、どちらを先になちゃいまちか?」 「そうだなぁ。先にご飯を頂くよ」 「承りまちた。では、お時間になりまちたらお部屋に運ばせて頂きまちゅ。では、お部屋まで案内するでち」 そう言って先生は先導して歩き出す。私たちは、隅々まで手入れの行き届いた旅館に感心しながらも、その背中に着いていった。僅かな時間のあと、部屋に通される。閻魔亭の時にマリーと一緒に利用した部屋よりは狭く、質素な感じだ。煌びやかさはなく、落ち着いた雰囲気。こういうのを「ワビサビ」というのかしら。
1 19/07/28(日)21:33:25 No.610318012
「さて。他のお客様の目も見えなくなった今、あまり他人行儀を続ける理由もありまちぇんね。それで、ご主人たちはこの後どうするでちか?今はまだお昼時が終わったばかり。夕食の時間までまだ随分とあるでち」 ここには若者向けの娯楽施設がある訳ではありまちぇんからねー、と先生は言う。だけど、それはちゃんと考えてある。リツカは近場に一泊二日の小旅行の為の数少ない荷物の中から、ある物を取り出しつつ言う。 「俺たちは近くの川で釣りでもしながらのんびりと過ごすよ」 そう、釣竿。この特異点に来てから、たまに二人で釣りに行くことがある。賑やかなのも楽しいのだけど、たまには二人だけで落ち着いた時間を楽しみたかったから。 「そうでちか。それなら、なにか釣れたら厨房まで持ってくるといいでち。新鮮なまま捌いて、夕食のおかずにしてあげるでちよ」 それはありがたい。私はまだ一人で魚をおろせる自信はない。新鮮な魚を新鮮なままに食べる機会というのは、意外となかったから。 「でもご主人。この近くの川はよく藤太様が釣りをしてるでちから、魚も学習して手強くなってるでち。果たしてご主人に釣れまちゅかね?」
2 19/07/28(日)21:33:42 No.610318117
そう言って、先生は挑発するようなセリフを口にする。それは確かに手強そう。だけど、それでも問題ないと思う。 「大丈夫だよ。別に何か釣りたい訳じゃなくて、ただ釣り糸を垂らしているだけでいいし。――――それに、いざという時はとっておきがあるからね」 そうして私とリツカは近くの川の川岸に移動した。釣りを始めてからかれこれ一時間が過ぎただろうか。いつもは少しぐらい竿を引くことがあるけど、今日はうんともすんとも言わない。先生の言った通り、ここの魚は警戒心がかなり強いみたい。 「釣れないわね」 「そうだねー」 「竿を引かれることもないものね」 「まあ、たまにはいいんじゃないかな」 確かに、たまにはこう言ったのんびりした時間も良い。小川のせせらぎだけが聞こえる。気まぐれのように、たまにそよ風が吹く。水辺だからか、いつもより涼しく感じられる。まるで、時間の流れが遅くなってしまったよう。いつも慌ただしい時間を過ごしていたからか、まるで、そんな錯覚に、駆られて、しまっ、て――――。
3 19/07/28(日)21:33:58 No.610318209
ふと、まぶた越しに飛び込んでくる明るさに意識が浮上する。浮上?ということは、もしかして――、 「あ、起きた?」 「……ええ。どうやら眠ってしまっていたようね」 やっぱり。少しだけ、眠ってしまっていたみたい。目を覚ますと、世界は夕焼けが染める茜色に変わっていた。彼が私の顔を覗き込んでいる。眼が覚めると愛する人の顔がそこにある。それだけのことで、私はとても幸せな気持ちになった。 「可愛い寝顔だったよ」 「……もう」 可愛いと言ってもらえること自体は凄く嬉しい。嬉しいけど、意識のない時の顔を見られるのは少しだけ恥ずかしかった。なんだか手玉に取られてるみたいで。少しだけむっとした気持ちになった私は、頭を、体を彼に預ける。受け止めてくれる逞しさ、受け入れてくれる優しさ、そして彼の温もりを感じた私は、機嫌を直すどころか、すっかり上機嫌になってしまう。自分のことながら甘いなぁと思うけど、リツカのことが好きな気持ちは抑えられないし、抑えようともしてないから仕方ない。 「それで、あの後なにか釣れたりはしたのかしら?」 「ううん、さっぱり。このままだとボウズだね」
4 19/07/28(日)21:34:19 No.610318329
「じゃあ、このまま釣果なしで宿に戻るの?」 そう、リツカに問いかける。答えは分かっているけれど。リリィと主従なだけあって、結構負けず嫌いな彼がこのまま帰るとは思ってもいなかった。案の定、といったところで、彼は首を横に振ると、今までとは別の釣竿を準備する。 「どうせなら夕飯のおかずを一品増やしたいなって。それに、紅ちゃんに侮られたままなのは悔しいし」 「ふふっ。そちらが本題なのではないかしら?」 そういって取り出したるは只の釣竿に非ず。溢れ出る魔力を湛えたそれは、魔術礼装の域をとうに超えている。傍目に見て分かる。それは、紛れもなく、宝具だった。 「いやあ……。ボウズか、あるいは釣れてもフナ辺りかと思っていたでちが……」 そういって先生はあんぐりと口を開けていた。こんな表情をするのは珍しい。でも、それも仕方ないかもしれない。なにせ私たちが1mを超える大物を持ち帰ってのだから。ちなみに、鮮度を保つために獲物は凍りづけにしてある。 「言っちゃ悪いでちけど、ご主人がこんな大物を釣り上げられるとは思えないでち。一体どんな種や仕掛けがあるんでちか?」
5 19/07/28(日)21:34:38 No.610318450
「ふっふっふ……、コイツのお陰さ」 そういって取り出したのは先ほどの釣竿。以前ランスロットさんと一緒に釣りに行った時に貸したきり、宝具化したままだという。 「なるほど、そういうことでちたか。なんというか、ご主人も大概負けず嫌いでちねぇ……。まあいいでち。アナスタシア、その魚を厨房まで運んで欲しいでち」 「わかりました。……先生、もしよかったら調理の様子を見学させて貰ってもよろしいですか?」 「構いまちぇんよ。アナスタシアは勉強熱心でちね。あちきも教えがいがあって嬉しいでち。……まあ、金髪の時も違う意味で教えがいはありまちたが」 金髪?誰のことだろう。カルデアのサーヴァントには金髪の人は多いから、誰かは分からなかった。 「にしても、これだけの大物だと腕の振るいがいがありまちゅね。……というかこの魚、もしかしなくてもイトウでちか?」 「イトウ?」 「確か現代では絶滅危惧種に指定されていたはずでち」 「それは……。釣ってしまったのはまずかったでしょうか」 それは知らなかった。知っていれば、リリースしていたのだけど。
6 19/07/28(日)21:35:01 No.610318578
「別に気にしなくていいでち。そもそもここは特異点。現実のどうこうはあまり関係ありまちぇんからね」 そう言われたらそうだった。特異点は修復されたら中での出来事はリセットされる。だったら、心配することもないだろう。 「それより、今日の夕食は楽しみにしておくといいでち。なにせ今では絶滅危惧種に指定されて食べられなくなったイトウを新鮮なまま頂けまちゅからね。ふふっ、俄然やる気が湧いてきたでちーーー!!」 私は見学後部屋に戻って、今は運ばれてきた夕食を頂いている。 「うん、美味しい!」 リツカは自分で釣ってきたイトウのルイベに舌鼓を打っていた。私も一口食べたけど、独特な風味と、絶妙な脂の乗り方が相まって、とても美味しかった。 「それにしても、アナスタシア、なんかぐったりしてるね」 「……私も、少しだけ手伝わせてもらったのだけど。先生が、珍しい食材に気分を良くしたから、指導にも熱が入って……」 「あー……」
7 19/07/28(日)21:35:34 No.610318787
体力的にはそこまでの疲れはない。けれど、先生の指導は精神面に来る。「慣れない手つきで魚を捌くの可愛いでちね♡刺身は包丁の入れ方一つで味が変わるでちそんなんじゃ犬も食わねえでち」みたいに上げて落とされるを繰り返したら、その疲労はかなりのものだ。それに、自分が捌いたものと先生のものとを食べ比べてその違いを思い知らされては、その壁の高さに落ち込むしかなかった。 「まあまあ。折角のご馳走なんだから、食事を楽しもうよ」 「……ええ、そうね」 確かに、普段食べられないものを食べることができる機会なのだから、しっかりと味わわなければ損というもの。作ってくれた先生に感謝しつつ、美味しく頂こう。 ちなみに、余りにも量が多かったからか、夕食凡ゆる料理にイトウが使われたイトウ尽くしになっていた。 「ふう、良いお湯ね……。疲れが溶け出るみたい」 夕食後、時間もそこそこに私たちは温泉へ来た。眼前には露天風呂が広がっている。このスペースを、今は私一人だけで利用している。なんだか凄い贅沢をしているようだった。
8 19/07/28(日)21:36:01 No.610318963
「ふぃ~、極楽極楽~」 衝立の向こうからリツカの声が聞こえる。なんだかおじさん臭かった。 「ねえリツカ、そこに居るの?」 「ん?ああうん、そうだよ」 「こちらはね、今私以外に誰も居ないわ。まるで貸切よ」 「そうなの?偶然。こっちも誰もいない」 「珍しいこともあるものね」 「そうだね。……ねえアナスタシア。今日はゆっくりできた?」 「ええ、存分に。釣りをしていた時なんて、時間の流れが遅くなったのかと思ったわ」 「ほとんど眠ってたけどね」 くすくすと、二人で笑い合う。マナーが悪いかもしれないけど、私たち二人しかいないからいいでしょう。テンポ良く弾む会話。意味のない内容かもしれないけど、リツカと言葉を交わしている、それだけが大事で、それこそが大切だった。だけど、顔を見たいのに今すぐは見ることができない。それはそうだろう。浴場は男女別になっているから。でも、どうしてもすぐ、顔を見たいという気持ちが溢れてしまう。どうしてしまったのだろう。普段もそれぞれの時間を持つことなんて良くあるのに。こんな気持ちになったのは初めてだった。だからだろうか、私はこんな提案をしてしまう。
9 19/07/28(日)21:36:18 No.610319064
「ねえリツカ。そっちに行ってもいい?」 「だめ」 即座に却下される。彼は一線を越えそうになるような行動には厳しかった。でも私もこの気持ちに振り回されたかった。 「他の人はいないのでしょう?誰かに見られることはないわ」 「でもだめ」 「可愛い彼女と混浴できるのよ?嬉しいでしょう?」 「魅力的だけどだめ」 「……ねえ。今すぐリツカの顔が見たいの。自分でもばかな提案をしてる事は分かっているのよ。でも、どうしても我慢できないの。……だめ?」 「…………だめ」 やっぱり、一蹴される。そこまでだめと言われ続けたら、流石に諦める。でもこのモヤモヤは行き場を失って。どうしようもないから彼にぶつけることにした。 「……ばか。意気地なし。ヘタレ。甲斐性なし」 「はいはい。そうですよ」 「根性なし。臆病者。骨なしチキン。種無しブドウ」 そんな、子供みたいな悪口は、私がのぼせかけるまでずっと続いた。
10 19/07/28(日)21:37:42 No.610319581
アナスタシアと二人だけで、紅ちゃんと藤太の旅館へ小旅行をした。温泉を出た後のアナスタシアはむくれていたけど、湯上りの彼女はとても色っぽかった。
11 19/07/28(日)21:46:50 No.610322769
キテル……
12 19/07/28(日)21:46:52 No.610322786
イトウって確かナマズでも水鳥でも平気で襲う奴だっけ…
13 19/07/28(日)21:48:14 No.610323250
部屋に戻ったら二人で入れる大きい布団が敷かれてる奴
14 19/07/28(日)21:50:44 No.610324208
>「根性なし。臆病者。骨なしチキン。種無しブドウ」 何教えてんだ巌窟王
15 19/07/28(日)21:52:41 No.610324924
>種無しブドウ 口にした後に種無しだと困るとふと考えて なぜ困ると自分は考えたかを考えて顔を真っ赤にする皇女とかどうですか
16 19/07/28(日)21:53:41 No.610325291
>>種無しブドウ >口にした後に種無しだと困るとふと考えて >なぜ困ると自分は考えたかを考えて顔を真っ赤にする皇女とかどうですか ワシはいいと思う
17 19/07/28(日)21:54:32 No.610325564
この健全ラブコメ怪文書はリンちゃん怪文書を書くとエロになってしまう汚れた俺に効く
18 19/07/28(日)21:55:18 No.610325816
余は祝福しよう 汝も祝福するがよい(非常大権A)
19 19/07/28(日)21:55:44 No.610325973
>この健全ラブコメ怪文書はリンちゃん怪文書を書くとエロになってしまう汚れた俺に効く エロでもいいじゃん! というか俺も一回がっつりとしたエロを書いてみようか迷ってる
20 19/07/28(日)21:56:44 No.610326311
Fateは元はエロゲーなのでエロは原点回帰なのです ゆえにエロを書いても何の問題もない事ですね?
21 19/07/28(日)21:57:22 No.610326479
イチャイチャしやがって!
22 19/07/28(日)21:58:42 No.610326868
良いなぁほのぼの健全ラブコメ怪文書
23 19/07/28(日)22:02:41 [気ぶり象] No.610328231
抱けーっ!抱けーっ!
24 19/07/28(日)22:05:25 No.610329275
健全な純愛怪文書を書き続けたい気持ちはある でもがっつりとしたエロ怪文書を書いてみたい興味もある 俺は一体どうすればいいんだ…
25 19/07/28(日)22:05:47 No.610329403
全部書くのだ
26 19/07/28(日)22:09:48 No.610331018
>全部書くのだ 違うんだ エロを書いたらアナちゃんを穢してしまいそうなんだ
27 19/07/28(日)22:12:17 No.610331989
>エロを書いたらアナちゃんを穢してしまいそうなんだ その言葉は俺に効く
28 19/07/28(日)22:12:56 No.610332212
健全な純愛怪文書を書き尽くして、なおエロ怪文書に興味があれば書く これで良いんじゃないか
29 19/07/28(日)22:16:52 No.610333716
>健全な純愛怪文書を書き尽くして、なおエロ怪文書に興味があれば書く >これで良いんじゃないか そうじゃないんだ エロを書いてしまったら俺がこの怪文書に向けてきた熱い想いは全部下卑た心から来ていたものだと思ってしまいそうなのが嫌なんだ
30 19/07/28(日)22:19:43 No.610334866
…やっぱり純愛一本でいくわ 書き手としてエロに興味はあるけどやっぱりアナちゃんの怪文書では書きたくない気持ちが勝った
31 19/07/28(日)22:19:43 No.610334867
感情が股間と直結してるワシにはエロの有無で想いの貴賤が決まるというのは主張として理解できても納得はしがたいが、まあこういう話は当人が納得できる物語を書けるかという点にも掛かってくるので、「」の気のすむようにしたらええとしか言いようがない
32 19/07/28(日)22:29:19 No.610338911
>感情が股間と直結してるワシにはエロの有無で想いの貴賤が決まるというのは主張として理解できても納得はしがたいが、まあこういう話は当人が納得できる物語を書けるかという点にも掛かってくるので、「」の気のすむようにしたらええとしか言いようがない アドバイスありがとう 大丈夫だよ「」。俺もこれから頑張っていくから
33 19/07/28(日)22:30:36 No.610339366
楽しみにしてる
34 19/07/28(日)22:31:46 No.610339849
とりあえずは二日後に向けて頑張るから…