19/07/16(火)02:20:41 暑い。... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1563211241626.jpg 19/07/16(火)02:20:41 No.606968995
暑い。暑すぎる。暑くて暑すぎてガッデムホットで、溶けてしまいそうなくらいだった。祖国ロシアでは体感することのできない暑さ。おまけに湿度も高いせいで貼りつくような不快さが拭えない。 ――そんなに暑いなら、魔術で冷やせばいいのに、そうマスターは言う。それはそうだけど、そうしない理由というものがある。 「5点。確かにそうすれば楽でしょうが、それでは風情がないわ。マスターの国の言葉で言うのなら……そう、『ワビサビ』というものよ」 嘘だけど。彼の居ないところでは遺憾無く魔術を使用している。風情とかそんなことは言ってられないくらいにゴッドホットなのだから。 だからこれはそう、只の口実。そうすれば彼と一緒になにかをすることができるから。現に今だって―― 「にしてもかき氷か。なんだか懐かしいな。昔はよく食べてたけど、ここ数年は食べてないような気がする」 「あらそう?お祭りの定番だと聞いたのだけど」 そう、かき氷を食べて涼をとろうとしている。氷は自前で用意できるし、道具はあの似合わないオーナーが貸してくれた。使われていない倉庫にあったと、ペンギンのデザインの物を渡してくれた。
1 19/07/16(火)02:21:05 No.606969050
「ねえ、まだなのかしら。なかなか時間がかかっているようだけど」 「ごめん、あとちょっと。食べ物を扱うものだから、できるだけ丁寧に洗っておきたくて」 ただ、使われていない倉庫にあったということは、長時間放置されていたということで。当然ながら山のように埃をかぶっていたため、まずは洗うところからである。 というわけで、庭先で彼に洗ってもらっている。私はといえば、縁側で水を張った桶に足をつけながら、グラスに注がれたアイスティーを飲んでいる。皇女にあるまじき姿かもしれないが、そうも言っていられないくらいには暑いから仕方がない。……この髪も原因のひとつだ。熱がこもって仕方ない。纏めて上げたら少しはマシになるだろうか。そう思って解いたリボンを咥え、長い髪をポニーテールにしていく。
2 19/07/16(火)02:21:23 No.606969096
ふと、視線を感じた。意識をそちらに向けると、彼が私をチラチラ見ている。どうやら、こちらが視線に気付いていることに気付いていないみたい。 この特異点に来たからというもの、彼はこうして私を盗み見ることがままある。どうやらこちらの恰好が気になるらしい。効果はあるらしい。この特異点では私はかなりの薄着で過ごしている。上はエア○ズムのキャミソール、下は短めのショートパンツと、肌を大いに晒している。他人に肌を見せることに抵抗が無いわけではない、というか普通に恥ずかしい。しかもそれを男の人に見せるなど……と思うが、手段は選んでいられない。 私は彼のことが好き。フユキで召喚され、人理修復の旅を共に歩み、共に手を取り、共に戦ってきた。その中で、いつしか彼のことが好きになった。いつからだとか、何がきっかけでとかは分からない。ただ、いつのまにか彼を想うことが増えて、それが恋なのだと知ったとき、ストンと胸に落ちた。ああそうか、これが自分の「初恋」なのか、って。
3 19/07/16(火)02:21:41 No.606969142
以来私は彼にずっとアプローチをかけている。……いるのだけど、今ひとつ成果が上がってない。彼に召喚されてからもう四年が経とうとしているのにこうなのだったら、アプローチの仕方を変える必要があると思った。それに彼を憎からず思う女性は多い。ただでさえマシュという強力なライバルがいる上に、その他大勢の魅力的な女性が敵なのだから、いよいよプライドなんて気にしていられない。生前に得ることはなく、こうしてサーヴァントとしての生を受けて初めて得られた、奇跡のような初恋。それをおめおめと誰かに譲るなんて、到底できない。私は敗北者などにはなりたくないのだから。 というわけでの色仕掛けだった。安直に過ぎるかと考えたけど、意外と効果はあったみたい。普段から肌を露わにしてる女性を見慣れているかと思ったけど、ちゃんと意識してくれているみたいで嬉しい。それなら、さらに次の手で攻めていこう。
4 19/07/16(火)02:22:02 No.606969190
「よし、やっと綺麗になった!」 そんなことを考えてるうちに、どうやら終わったみたい。見違えるほど綺麗になったペンギンを受け取り、キッチンでかき氷を作る準備を始める。彼がこれを洗ってくれたから、作るのは私の仕事。そういう役割分担をしていた。早速魔術で氷を精製する。全力で冷やすのではなく、氷になるかならないかぐらいの加減をする。溶けかけの氷の方が削ったときの口当たりが良くなる、と言っていたのはコックのアーチャーだったかしら。また、削るときは力を入れすぎても駄目だとかなんとか。うろ覚えの記憶を頼りに、彼と私の二人分を作る。フレーバーは私がイチゴ味で、彼はブルーハワイ味。……一体どんな味なのかしら。 かき氷を持って縁側に戻ると、彼も私と同じように涼を取っていた。床が軋む音から私に気づくと、こちらを向いてありがとうと言ってくれる。その声に応えつつかき氷を渡して、彼の隣に座る。……隙間が殆どないくらいに。そのことに彼は驚いているけど、否やの声はない。作戦その二、「パーソナルスペースを埋める」も成功、らしい。
5 19/07/16(火)02:22:39 No.606969267
私と彼は肩を触れあわせたままかき氷を口にする。氷とシロップを同時に口に入れているのと同じようなものなのに、一手間加えただけでかなり違うように感じる。気の持ちようなのかしら。彼はと言うと、パクパクとかき氷をかき込んでいた。そんな食べ方をすると―― 「あ~~、イタタタタ!」 「もう、そうなることはわかっていたでしょう?」 彼は食べる手を休めて頭を押さえる。頭痛がきたみたい。アイスクリーム頭痛というのだったかしら。 「いやでも、こうなることまで含めて様式美っていうか……」 「そういうものなのかしら……。よくわからないわね」 「あ~、でも久しぶりだからかなりキツイ。こんなに痛かったっけ」 「ああ、それなら……」 そういって私は彼の額に手を当てる。するとみるみるうちに痛みが引いてきたみたい。 「おぉ……。なんかいきなり楽になった。アナスタシア、何かしたの?」 「原理とかは、わからないのですけど……。アイスクリーム頭痛は頭を冷やすと治るそうよ」
6 19/07/16(火)02:23:26 No.606969373
だから私は魔術で彼の額を冷やした。その効果は覿面と言ったところかしら。 ふと、手のひらに触れている彼の体温が上がったのを感じた。どうやら現状を今把握したらしい。女の子にしなだれかかられて、ボディタッチもされている、というこの状態を。 「あ、ありがとうアナスタシア」 そう言いながらやんわりと私のボディタッチから逃げようとしてくる。ここは大人しく引いておこう。食い下がるのはどうかと思うし。それよりは更なる手を使おう。 「あら。なら一つお願いを聞いてもらってもあいかしら」 「お、お願い……?」 彼が少し警戒の色を露わにする。……むぅ。そんなに露骨に警戒しなくてもいいのに。そう思いはしたが、今までのイタズラのことを思い返すと少しは仕方がないような気がしないでもないかも。
7 19/07/16(火)02:24:28 No.606969500
「簡単なことよ。そのブルーハワイ味のかき氷を分けてくれないかしら。どんな味なのか、想像がつかないんだもの」 「ああ、そういうことか。それくらいなら勿論大丈夫だよ」 「ありがとう。じゃあ、あーん」 「え?」 「え?」 私が口を開けて待っていると、彼が戸惑ったような声を出すから、私も疑問の声が出てしまう。そうして数秒、私たちは硬直する。 「あーん」 「え?いや、あの……」 「あーん」 「自分で食べれば……」 「あーん」 「……はい、どうぞ」 何を言っても聞かない私に観念した彼は、その手で私に食べさせてくれる。彼は視線を逸らして、顔を赤くしながら恥ずかしがっている。ふふ、可愛い人。……まあ多分、私も赤くなっているのだろうけども。
8 19/07/16(火)02:24:46 No.606969549
「じゃあ、次も頂戴。あーん」 「えっ、一回だけじゃないの?」 「だってまだまだ熱いのだもの」 そう。まだまだ熱い。熱くて、とても熱くて、熱すぎて――そして温かで心地よい、この恋心。私の心を溶かしたこの熱は、きっと、冷めることはないだろうから。
9 19/07/16(火)02:25:12 No.606969600
アナスタシアとかき氷を食べた。 備考: この特異点に来てからというもの、アナスタシアとの距離が近い。勘違いでなければ、彼女は関係の変化を望んでいるように感じる。彼女について、しっかりと考える必要があるだろう
10 19/07/16(火)02:26:39 No.606969775
皇女 仕上げてきたな
11 19/07/16(火)02:26:56 No.606969806
もう怪文書というよりSS
12 19/07/16(火)02:29:42 No.606970133
所謂ロシア文学
13 19/07/16(火)02:29:56 No.606970170
抱けー!抱けー!
14 19/07/16(火)02:31:06 No.606970319
フルパワーでぶん殴ってきた やはり今年の皇女は違う
15 19/07/16(火)02:34:25 No.606970714
かなり攻めているな
16 19/07/16(火)02:36:40 No.606970996
あっこれルート確定してるわ
17 19/07/16(火)02:39:05 No.606971256
なんてパワーだ…
18 19/07/16(火)02:40:07 No.606971383
何とか書院ならぬロシア書院に…?
19 19/07/16(火)02:41:15 No.606971520
リリィと共同作業ルートに入ったのを振り切るように根本的なストーリーを改変してきた なんて卑しい皇女
20 19/07/16(火)02:41:35 No.606971561
>何とか書院ならぬロシア書院に…? 何とか書院はエロですがロシア書院は年頃の男女の甘酸っぱい関係を描くプラトニックラブとなっております
21 19/07/16(火)02:42:52 No.606971695
あー好き
22 19/07/16(火)02:43:08 No.606971717
ここに怪文書投下するの初めてなんだけど、これでいいのだろうか
23 19/07/16(火)02:43:40 No.606971770
>ここに怪文書投下するの初めてなんだけど、これでいいのだろうか うん 諦めずにもっとやれ
24 19/07/16(火)02:43:47 No.606971779
全然大丈夫だ大好物だ もっとやれお前は最高だ
25 19/07/16(火)02:45:39 No.606971983
何気ない軽い夜更かしにこの良質な怪文書との出会いが合わさってこれは...
26 19/07/16(火)02:46:32 No.606972091
これで皇女怪文書「」は3人になったな…
27 19/07/16(火)02:46:41 No.606972106
おかしいな…最近公式で何か皇女様の供給あったっけ…
28 19/07/16(火)02:47:41 No.606972234
四人では?
29 19/07/16(火)02:48:02 No.606972271
>おかしいな…最近公式で何か皇女様の供給あったっけ… 「」の心の中に
30 19/07/16(火)02:48:23 No.606972313
>四人では? それはそれでありがたい
31 19/07/16(火)02:48:43 No.606972356
マジで今年の皇女様はメインヒロイン枠確保してるから怖い
32 19/07/16(火)02:50:51 No.606972610
サーカス以外で公式出てないのでは…?
33 19/07/16(火)02:51:37 No.606972695
初めて長編書いたけど評価してくれるの嬉しい…ありがたい… なのでルート確定後の皇女怪文書書きます…
34 19/07/16(火)03:00:24 No.606973680
>なのでルート確定後の皇女怪文書書きます… よしそっちは任せた こっちはラブコメさせる
35 19/07/16(火)03:04:57 No.606974126
この甘酸っぱさ 美味である
36 19/07/16(火)03:06:05 No.606974232
力作だな
37 19/07/16(火)03:07:22 No.606974367
>なのでルート確定後の皇女怪文書書きます… 期待してるよ 願わくば最後に日和らない事を祈る
38 19/07/16(火)03:12:07 [敗北者] No.606974866
きゅけ…きゅけ…
39 19/07/16(火)03:46:46 No.606978115
皇帝が眠りから覚めそうだから怪文書を語り聞かせなくては