虹裏img歴史資料館

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19/06/10(月)22:35:12 出先で... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1560173712930.jpg 19/06/10(月)22:35:12 No.598123004

出先での急な雨には慣れている。 そんなときに限って傘がない、というのもよくあること。 ただ…防水スプレーを吹き忘れてきてしまったのは、あまりに致命的だった。 早朝。ランニングコースを途中で引き返して、屋敷へと向かってひた走る。 降りしきる雨粒から頭を庇いながら、さくらは恐々と周囲に目を凝らした。 さいわいにして、今のところ人とすれ違うこともない。誰にも見られていない。 露出した手足からしたたる肌色の塗料を。その下から覗く青白い本当の素肌を。 自分の姿を想像して、さくらは余計に気分を曇らせた。誰にも見られちゃいけない。 そのうち、大事になることもなく屋敷の正門近くまでたどり着いて。 安堵のあまり、気付くのが遅れた。門前に立つ人影に。

1 19/06/10(月)22:35:37 No.598123143

黒い傘を差した長身の男。 ジャケットを肩に羽織り、胸ポケットにゲソを飾り、サングラス越しの眉を吊り上げて。 立ち止まり損ねたさくらが近付くやいなや、幸太郎は怒鳴り声をあげた。 「この…バカゾンビィっ! 梅雨どきだっつーのにノー天気にもほどがあるじゃろがい!」 袖が濡れるのにも構わず大げさな手振りをまじえながら詰め寄ってくる。 「もっとらん以前に不用心過ぎるんじゃお前は! どんだけ人に心配かけたら―――」 「ごめんなさい気をつけますそれじゃっ」 説教を遮って。 さくらは両腕で顔を庇ったまま、幸太郎の横を通り抜けた。 そのまま足早に門をくぐり、屋敷の中へ避難しようとしたところで。 後ろから頭を掴まれる。

2 19/06/10(月)22:35:57 No.598123234

「謝るときは人の目を見んかいボケぇぇぇッ」 「わぁーっ!? 待って幸太郎さん待って!」 振り向かせようと腕に力を込める幸太郎から、さくらは必死に抵抗した。 「い、いまメイクめちゃくちゃやけん、見んでくださいっ」 「はぁ? ゾンビィどものグリーンフェイスなんぞ見慣れとるわい」 「グリーンフェイスよりイヤなんです!」 「お前がどんなツラしてようと幸太郎さんにゃどうでもええちゅーに」 「……っ」 さくらの力が緩んだ拍子に、向き合うかたちで強引に傘の下へと引き入れられる。 それでもかたくなに顔をうつむかせたまま、さくらは呟いた。 「…どやんでんようなか」 雨音にかき消されそうなほどにか細く、声色が揺らぐ。 「こやんか顔、幸太郎さんにだけは見られたくない…」

3 19/06/10(月)22:36:11 No.598123327

頬を垂れる雫を拭うことさえ躊躇いながら、立ち尽くすさくらを。 幸太郎は呆れ顔で見下ろした。 「そんなボロッボロの泣きっ面、こっちだって見せられたいわけあるかい」 「…幸太郎さん、ほんとやさしくない」 「ふーんっ。そう易々と甘いとこなんて見せんのがデキるプロデューサーなんですー」 ふんぞり返ってそう豪語したかと思えば。 「だから…うむ、あれじゃい。えーと、じゃい」 左右をちらちらと確認したあと、さくらの顎に優しく手を当てる。 「んっ…」 「その…今だけだからな」 されるがままに、さくらは顔を上げて。 幸太郎が身を低くして、傘が二人の顔を覆い隠して。 そこから先は、誰にも見られちゃいけない。

4 19/06/10(月)22:37:52 No.598123925

抱きなんし!!!!

5 19/06/10(月)22:41:10 No.598125045

>「だから…うむ、あれじゃい。えーと、じゃい」 幸太郎はん!かわいい!

6 19/06/10(月)22:46:05 No.598126683

よかったい

7 19/06/10(月)22:46:12 No.598126731

無理だとわかってても好きな人には世界一可愛い姿を見られたいけん…

8 19/06/10(月)22:52:30 No.598128752

さくらはんは乙女でありんすなぁ…

9 19/06/10(月)22:57:24 No.598130301

「送迎ごくろうさま」 廊下の奥へと進む背中めがけて、労いの言葉とともにタオルを放る。 後ろ手にそれを受け取ってから、幸太郎が振り返った。 雨で湿ったシャツの袖を拭いながら、 「おう。気が利くのう、愛」 彼の口元をしばらく半眼で見つめてから、愛は尋ねる。 「…さくら、大丈夫だった?」 「ゾンビィバレの危険性についてあとで反省文読み上げさせるから聞いてやれよ」 「まぁ、いいけど」 ひとまずさくらは無事なのだろうと、彼の様子から察しつつあとを続ける。 「あんたもミーティング前に着替えたら? びしょ濡れでみっともない」 「ん? あぁ、はいはい」 「ついでにシャワーくらい浴びなさいよ。風邪なんてひかれても困るし。それとはいは一回」 「お母さんか!」

10 19/06/10(月)22:57:35 No.598130342

「誰がっ…」 わずらわしげに呻く幸太郎に、反射的に詰め寄りかけるも。 結局は距離をおいたまま、愛はそっけなく告げた。 「私はただ…フランシュシュの活動に支障がないならいいの。それだけだから」 「なら安心せい。健康で知的で二枚目でもっとるのだけが幸太郎さんの取り柄じゃい」 「はいはい」 たわごとを聞き流しつつ、ついでにひとつだけ言い加える。 「…せめて、顔は洗ってきてよね」 「うん?」 疑問符を浮かべる幸太郎をよそに、愛はきびすを返してその場から立ち去った。 窓のない暗い廊下はひどく静かで、自分の足音のほかに響くものはない。 そのせいで、余計に耳につく。 聞こえはしない雨音にも似たノイズが、胸の内でさざめくのを。 吐き出すように愛は嘆息した。まったく、見ちゃいられない。

11 画像ファイル名:1560175068146.png 19/06/10(月)22:57:48 No.598130429

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

12 19/06/10(月)23:04:28 No.598132423

幸太郎はんがまーきんぐされてるでありんすな

13 19/06/10(月)23:31:06 No.598140611

よか

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