19/05/17(金)22:17:26 ふわり... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1558099046256.jpg 19/05/17(金)22:17:26 No.591984898
ふわりと、鼻に香る味噌の匂い。まどろみの中で腹が鳴りへそをかく。言葉ともつかない言葉を漏らし寝返りを打つ。薄く開けた目に映るのは、朝焼けの中に浮かぶエプロン姿をまとう背中。耳に届く鼻歌とまな板を叩く包丁の軽やかな音色。サングラスの下の目を器用にこすり、大きな伸びをしてあくびを一つした。 「あら、起こしてしまいましたか」 「ん、ひや」 「あらあら、うふふ、まだお寝坊さんなのね」 「あ、ああ、じゅんこか」 「ええ、貴方の純子ですよ。おはようございます巽さん」 「おはようごじゃいます」 「ふふ、顔を洗ってきてください。もうすぐ朝餉が出来ますよ」 「ん」 ぼうっとした頭でゆっくりと立ち上がり、洗面所へ向かう。サングラスを置いてざばりと顔を洗い、すっきりともう一度洗ってタオルを手に取る。爽やかな匂いのするタオルで顔を柔らかく拭った。ささっと髭を剃ってサングラスをかけると、いつも通りのイケメンが鏡に映る。 「よし、幸太郎様じゃい」
1 19/05/17(金)22:17:38 No.591984998
ビシッとポーズをつけた決め顔を見せる。少しの間色々な角度から恍惚と眺めて部屋に戻ると、足の短い机の上に昭和然とした朝ごはんが所狭しと並んでいた。 「ほら、食べましょう巽さん」 「あ、ああ」 言われるがままに上座に用意された座布団に座ると、隣に純子が同じように座った。それにしても並んでいる品々は逸品ばかりに見えて、腹がしきりに催促する。 「頂きます」 「はい、頂きます」 手を合わせて礼をして箸を取る。目移りしてしまうが、とりあえず手近な味噌汁をすすった。 「美味い」 「そ、そうですか。お口に合ってうれしいです」 「こんなに美味い味噌汁初めて飲むかもしれん。流石じゃな純子」 「ありがとうございます」 消え入りそうな声で、顔を赤く染めながら言う彼女はがばいやーらしかだった。他のおかずや白米も芸術的なほど美味しくどこか懐かしい。胃袋も心も温かくなる料理ばかりで、涙すら出そうになる。 (いやいや、何でゾンビィの作った飯でほっこりしとるんじゃい) そもそもなぜ純子の朝ごはんを食べているのか。その経緯は至極単純な話だった。
2 19/05/17(金)22:17:54 No.591985096
(そう、初めは純子がいつの間にか俺を送り出すようになったんだ) 正直、監視のためにでもわざわざ朝起きてきているのかと思っていた。ゾンビィは眠る必要はないとはいえ、耐久性に乏しいため夜は休養が必要だった。朝もみなそこまで早く起きてくることはない。だから仕事のために朝の早い俺はゾンビィの眠っている間に出かけるのが日常だ。それでも純子は俺が出かけるとき玄関にいた。 (最初は警戒したが、だんだんとそれが普通になって。朝食代わりにくわえていたウィダーのことを見とがめられたんだったか) 彼女は俺の部屋にある簡易キッチンで朝食を作ると言い出した。当然、俺は抵抗した。ゾンビィの飯なんぞ食えるかと。しかし昭和の料理を食べてみたくはないか、と言われるとグルメな俺は弱い。一度だけということで了承してしまった。美味しかったし、温かかった。それからずるずると彼女に朝ご飯を作ってもらうようになり、簡易キッチンは本格的になっていく。 (俺が商店街やらのくじ引きで当てた炊飯器や包丁、フライパンなんかを引っ張り出してきおってからに、もう止められんじゃろがい)
3 19/05/17(金)22:18:09 No.591985188
現代機器を使いこなすようになり、純子の食事はバリエーション豊かになり。昼飯の弁当や晩飯まで作ると言い出したが、そこまではレッスンなどに支障をきたすのでなんとか断った。その時の悲しそうな、寂しそうな眼差しで罪悪感一杯になったのは内緒だ。 (まあそんな金銭的余裕はないわけだが) そもそも誰かに見られた時言い訳が利かない。あくまでも他の人間やゾンビィのいない朝しか実現しないひと時だった。 「こちらの漬物、よく漬かってますよ」 「ほう、ふむ、おう、ふまい」 「ふふ、良かった」 沢庵を頬張り、銀シャリをかきこむ。ほぐした焼き鮭の味も忘れ難く、そのままの勢いで放り込んだ。 「もう、そんなに詰め込んで」 「うまうま、うますぎるのが悪いんじゃい」 「そんなこと言って、お急ぎですか?」 「ん、まだ大丈夫だ。お代わり」 「はいはい」 茶碗を差し出すと、手早くご飯がよそわれる。笑顔とともに渡された白米は湯気を立てて食欲をそそった。このままでは際限なく食べてしまいそうなのでこれぐらいでやめよう、と考えたのはいつだったか覚えていない。
4 19/05/17(金)22:18:28 No.591985281
「今日はどちらに行かれるのでしょうか」 食事もひとごこちついて茶をすすっている時だ。純子は湯呑を置いて、神妙な顔で問うた。まっすぐな瞳が俺を貫いている。そこにあるのは絶対的な信頼か。 「ん、今日はテレビ局に行くつもりだ。そろそろお前たちの個別の仕事も引き受けようかと思う」 「それは、やはり」 「そうだ。お前や愛、リリィなんかは前からきている。かつての芸能人によく似ているからな」 「本人ですからね」 しれっと言った彼女の顔には何の色も見えなかった。想像していたことなのだろう。アイドルとしてメディアに露出するということは、昔の幻影に呼ばれることになると。 「バレているとは思わない。死人が生き返ったなんて非常識なことは考えないだろうからな。しかし疑ってはいる。だからお前たちは伝説級によく似たアイドルだ」 「押し通せ、ということですね」 「そうだ、それしかない。出来るか?」 「当然です。紺野純子ですよ?」 「フッ、心強いな。じめじめキノコを生やしていた紺野純子はもういないか」 「むっ、巽さんのいじわる」
5 19/05/17(金)22:18:43 No.591985352
むくれる純子を見て、本当に強くなったと感慨を覚える。怯えて泣くことも、部屋に閉じこもることもなくなった。ゾンビィでも成長するということか。 「さて、ご馳走さん」 「はい、お粗末様でした」 手を合わせて礼をし立ち上がる。時間的には早いが、もう朝の喧騒が窓の外から聴こえ始めていた。ゾンビィたちももう起きてくる頃だろう。純子のレッスンも、朝のジョギングもある。歯磨きや整髪など、おおよそ揃えて玄関へ。 「それじゃあ行くとするか。今日も俺は帰りが遅くなるだろう」 「はい、わかりました。私たちはレッスンとお散歩しようかと思います」 「そうか、休暇だといっても羽目を外しすぎるなよ。せいぜいゾンビィバレせんようにな」 「はい、わかってます。あっ、ちょっとお待ちを」 止められて振り返ると、白いふわふわな頭があった。手を思いっきり伸ばすように俺の蝶ネクタイを整える純子だ。抵抗すると文句を言われるので揺らしたり動いたりして翻弄するにとどめる。もう、もうなんてやーらしかな声が下から聴こえた。
6 19/05/17(金)22:18:57 No.591985428
「いい加減行くぞ」 「最後に、背中に糸くずがついてますよ。ほら、とれた。本当に大きな背中ですね」 「鍛えておるからな」 「そうですか、でも無理はなさらないでください。私には、私たちには貴方しかいないんですから」 冷たい体温が腰に伝わる。くぐもった声は確かな心配を持って俺の身体を労わっていた。 「無理は承知の上じゃい。佐賀を救わなければ俺もお前たちも救われん」 「少なくとも、私は今救われています」 「それでも俺には責任がある。お前たちは俺が必ず守る」 独り言は覚悟の誓い。一つ間違えれば終わってしまう世界の中で、こいつらを最期まで見捨てるつもりはなかった。 「そうだ、日課がまだだったな」 「っ!」
7 19/05/17(金)22:19:13 No.591985510
歩き出そうとして、振り返ると純子が濡れた目でこちらを見上げていた。そんな愛らしい女の小さく湿った唇を包み込むように奪う。抵抗なく身をゆだねる女を引き寄せて舌でつつけば花弁のように開いていき、蜜を味わいながらすすった。 「ん、ふっ」 「はっ、はぁ」 力なく息乱れる純子を満足げに見下ろす。そうして包み込むように背中に手をまわして、大きく開いた背中の継ぎ目を撫でて裸の臀部を掴んだ。 「んっ!」 「俺が帰るまで起きていろ、今日も可愛がってやる」 「はい」 ふっと耳に息を吹きかければ、ピクッと小さく震える女。手の甲で頬に触れて髪をすいた。色づく瞳を覗いて、名残惜しい気持ちを笑ってとばす。再度背中を向けて心地よい体温を剥がし、俺はドアの向こうに踏み出した。 「行ってらっしゃい、あなた」 「ああ、行ってくる」 巽幸太郎の優雅な朝は終わり、また慌ただしい日が始まった。
8 19/05/17(金)22:19:29 No.591985586
「あー、今日はグラサンどこに行っとると」 「……えっと、巽さんはテレビ局に行くと言ってましたけど」 「? ふーん、そろそろバラエティか何かに出ることになるのかしら」 「リリィはやっぱりドラマのお仕事したい!」 「いやいや、やっぱ食レポだろ」 「サキちゃん食べたいだけじゃん」 「わっちはどらまいうんに出てみたいでありんすなぁ」 「ゆうぎりさんなら時代劇に映えそうやね」 「そうですね、今度色々と話してみましょうか」 「おう!」
9 19/05/17(金)22:25:15 No.591987430
>「俺が帰るまで起きていろ、今日も可愛がってやる」 (CV.宮野真守)
10 19/05/17(金)22:27:18 No.591988001
ずるかーー!!!
11 19/05/17(金)22:28:03 No.591988229
よか…
12 19/05/17(金)22:28:07 No.591988247
微妙に加筆しとるな
13 19/05/17(金)22:29:41 No.591988747
裸エプロンじゃなかと!?
14 19/05/17(金)22:32:38 No.591989600
エモかー!!
15 19/05/17(金)22:32:45 No.591989630
はいお前可愛い
16 19/05/17(金)22:32:54 No.591989666
唐突なドスケベに耳ッキーンってなるわ
17 19/05/17(金)22:33:23 No.591989794
攻め攻めだな旦那様…
18 19/05/17(金)22:34:42 No.591990275
再放送かと思ったらエンディングでカットイン入るやつ
19 19/05/17(金)22:34:59 No.591990373
純子ちゃんは絶対料理上手い
20 19/05/17(金)22:37:20 No.591991054
つまり服を着ていなかった?
21 19/05/17(金)22:37:41 No.591991136
こういう絶妙なアレンジ好き
22 19/05/17(金)22:38:15 No.591991292
純子ちゃんにどスケベする背徳感やべえ
23 19/05/17(金)22:41:35 No.591992352
いい夫婦だ
24 19/05/17(金)22:46:18 No.591994395
女になっとる!!!!!!!!
25 19/05/17(金)22:50:03 No.591995866
どっちの立場も羨ましくてずるい
26 19/05/17(金)22:58:34 [sage] No.591998575
間違いを見つけて消してしまったので訂正して再掲しました。。。
27 19/05/17(金)23:02:51 No.591999846
元からこの構成のつもりだったんか!
28 19/05/17(金)23:14:50 No.592003583
ずるかー!