ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/04/07(日)00:40:42 No.581823558
何でも無い日、万歳 生前の私…水野愛のとっての四月七日といえば 入学式だとかそんな感じの行事の多い日位の認識だったと思うけど 死後の私にとっては特別な、でも何でも無い日になった。 「普通で居て欲しい」 あいつがさくら以外のゾンビィを集めて四月六日の晩に言い出したのはそんな事 案の定普通の分からない我らがリーダーは直ぐに噛み付いていたけれど 普段のまま過ごすだけだ。というあいつの声色はその癖いつもよりずっと柔らかくて きっと、この先に待ち構えている私達の命日でも同じ様な事を言うのだと分かった やっぱりかっこつけだわ、こいつ。ろくでなしの…優しいネクロマンサー 本当は過ごせたかもしれない『その日』まで蘇らせようっていうのかしら? ええ。いいわよ、乗ってあげる。だってそれ、別に命令じゃないんでしょ? あんたがそうして欲しいなら私達もお願い位は聞いてあげるから …お願いされるまでも無いから。ね?分かってる
1 19/04/07(日)00:41:04 No.581823679
「ね、皆お願い。幸太郎さんの事気をつけて見てて欲しかと!」 さくらがあいつの居ない所で私達を集めて四月六日の晩に言い出したのはそんな事 もっとらん自分はもう死んどるばってん、幸太郎さんに何か起きるかもしらんけん、なんて 心配しすぎなのよさくら。大丈夫大丈夫。 あんたも知ってるでしょ?あいつ悔しいけど持ってるから 私達は口々に励まして、でもちゃんと分かったってさくらを寝かしつけた おかしいんだから。二人してお互いの心配ばっかりして こういうの以心伝心?って言うのかしら。純子合ってる? 合ってます、って不機嫌そうに言われちゃった…なんなの!? まあ、うん。ちょっとだけむくれてるかは分かるわよ。何でかな 羨ましいな、って思っちゃった。変なの。 はあ。こりゃ明日は忙しくなるわ。何しろ私達アイドルだもん。普段の仕事だってあるのに そこに普通に過ごしながらあいつの事見守るタスクまで増えたらそんなの三つじゃないの! あら?二つじゃない?なーんだ。なら楽勝ねいけるいける それに、あいつの事なら最近いつも見てるから。平気よ、さくら
2 19/04/07(日)00:41:15 No.581823734
そして呆気なく、あっさりと。四月七日が過ぎていく いつも通りに皆で起きて、ご飯を食べて、レッスンして 打ち合わせの確認をしたらあいつにメイクをして貰っていざ出発! びくつかなくても平気だってさくら。なんだ結局心配してるじゃない あいつの陰に隠れちゃったりしてまあ。離してあげなさいよシャツ伸びちゃうわよ? 移動中も御守ぎゅーっと握りしめたりなんかしちゃったりして 残念だけどそれ、家内安全なんだけど… ま、交通安全の御守は代わりに私が持ってるから リーダーが持ってるから。純子が、リリィが。ゆうぎりが、たえが。皆で持ってるから だからちょっとは肩の力抜いててよ。さくらも。…それにあんたも あんたでしょ?普段通りにしてろって言ったの。当の本人が全然ダメじゃない そりゃあ?ほらそこのライブ会場のスタッフさんとか たまにしか合わない司会のおねえさんじゃ違いは分からないでしょうけどね 私達の、私の事ナメてるでしょ。顔が固いの、態度がぎこちないのよ! いつもの調子はどうしたの?もっと弄りなさいよ。もう!
3 19/04/07(日)00:41:48 No.581823879
散々やきもきしたけど仕事が終わり洋館に戻ってくればもうこっちのもの いつも通りに夕食を食べて、あいつにこっそりお風呂に入って、くつろいで 皆もさくらも肩に力が入ってたからかしら。それとも安心したから? とにかくぐっすり眠っているのを確認して私は一人、寝室を抜け出した 私だけ実はこっそりあいつとのもう一つの約束があったから… 階段を登る足が何だかフワフワとして落ち着かない。胸の辺りがザワザワする こんなの、アイアンフリルの初ライブの時以来かも。何でかしら? ええい…落ち着け、しっかりしろ私! ふんす!と息を整えてそっとあいつの部屋をノックする 「…来たわよ。私」「おう。開いとるぞ」 遠慮がちに開いたドアの先でパソコンに向かってたあいつが振り向いた そのままじっと顔を見ながら後ろ手にそっとドアを閉めて …色々、考えてた口上はどこかに吹っ飛んだけどそれでも口を開いてみせる 「…誕生日、おめでとう」「…ああ」 ありがとう。って全然嬉しそうじゃない顔で苦笑しながらあいつが呟く
4 19/04/07(日)00:42:00 No.581823939
本当に嫌いなのね、誕生日。折角自分が生まれてきた日だっていうのに 三月三十日の事だ。私はさくらの誕生日の前、あいつに喫茶店に呼び出された そこで贈り物の相談をされて… 『FANTASTIC LOVERS』を歌う事を話したらびっくりする程食いついてきて ついつい面白くなっちゃって、あんたの誕生日に歌ってあげる、なんて 相談の駄賃代わりに聞き出したのが今日、四月七日。源さくらの命日 不思議な事もあるものだけど、まあそれなら素直に喜べないのも分かる 「それで?ちゃんと曲とか掛けた方がいいわよね」 「ここで歌う気かいこんバーカタレい。…メイクする。外に出るぞ」 「はぁ!?なんなの!?」 「こんな夜更けのお前の熱唱が聞こえたらあいつらが起きるじゃろがい!」 「あ。ちゃんと確認してたのね…」 「お前らのお陰だ。さくらも良く寝とった」「…ううん」 やだ。なんか可愛い声でちゃった。もう…!調子狂うったら そのせいかな。朝だって意識してなかったのに服を脱ぐだけでも、何だかドキドキする
5 19/04/07(日)00:42:10 No.581823998
電流が走ったの (ビビ) あなただと気付いたの 夢にみた (Ah-Ha) 歴史的瞬間 か細い月明かりの中、私は洋館前の海岸で五日ぶりのFANTASTIC LOVERSを歌っていた 観客は一人なのに相変わらず…ああ、足が少し縺れた。情けない 砂浜だからかしら?ううん。そうじゃない。きっとこの一人きりの観客のせいなんだと思う こいつが、幸太郎が…こんな風に、私の事を見てるからなんだろう 何よその顔。やめてよ。そんな顔、今までした事無かったじゃない お友達だったのに (なぜ) ノーマークだったのに 昨日とは (Ah-Ha) まるで違うひと メイクしてくれた時もそうだった。いつも通り真剣だったけどあんたはどこか楽しそうで… そうよ。この視線は知ってる。生きてた頃も、死んでからも良く注がれてたから …ファンとして、私の事を見てくれてる観客の眩しそうな顔だ 歌の話を喫茶店でしたとき、ひょっとしたら、って思ってた
6 19/04/07(日)00:42:26 No.581824067
そうだったらいいな。って。だってあんたが、幸太郎が悪いのよ 人の事期待させたりするから。 夢なのかな あれ…夢なのかな? ままままさか ドキドキだもん! ああ、どうしよう。声が上擦る。折角の、誕生日祝いなのに。台無しにしたくない うん。やれるから…だからそのまま。お願い。ちゃんと見て、応援してて …私だけを今は見てよ。 恋しちゃったみたい 出会っちゃったみたい 世界がうらやむような大恋愛 「…ふ」「がばい!がばい良かったい!愛!」 歌い終えてドッとへたり込んだ私に幸太郎の熱い拍手と顔が飛び込んできた
7 19/04/07(日)00:42:45 No.581824176
「ごめん。ちょっと何度かミスってたでしょ?私…」 「ああ!?そんなもん知らん!最高じゃった…それで十分じゃろがい!」 「うん…」 興奮する幸太郎から伸ばされた手を握る あんまり嬉しそうな顔するから、こっちもついおかしくなっちゃう 「本当に良かった…あの時、見れなかったモンをまさかこんな形で見れるとは…」 「え?」「あ…いや。何でもない」 一瞬だけ顔を曇らせた幸太郎が改めてこっちを見つめてきた 「どう?ちょっとは誕生日の事、好きになれた?」 「…分からん」「ちょっと!?なんなの!?私が折角精一杯歌ったってのに!」 「きっと俺は、この日の事は好きになれん。これはきっとこの先もそうなんだと思う できれば早く過ぎ去って欲しいとおもっちょる位だ。だが… お前が歌ってくれる、と聞いて初めて今日が、四月七日が楽しみになった メイクをして、海岸に出て。お前の歌を聞いているその間はお前にだけ夢中になれた それは今もだ。ありがとうな、愛」
8 19/04/07(日)00:43:00 No.581824261
「……っ」 ああ。ああ!そっか。そっか…これが、そうなんだ。へえ… 両手を握られて何も言えないでいる私を不思議に思ったのか、幸太郎が私の名前を再度呼んでくる 「あんたが嬉しかったなら、ちょっとだけ聞いて欲しい事があるんだけど」 「おう?なんじゃい」 「私ね。FANTASTIC LOVERSの歌詞の意味生きてるうちは良く分からなかったのよね」 「はぁ!?おま、お前…それ俺以外に絶対に言うなよ!?ファンとかに!」 「いやもう言えないでしょ?けどね…今日、やっと分かったの だからね?だから…うん。できたら笑わないで欲しいんだけど」 「おう」 「死んでから誰かを好きになるっておかしい事だと思う?」 一瞬だけ沈黙した幸太郎が何を考えているかは分からなかった。けど… こういう時のこいつは真面目で、今夜はいつもよりも、何だか近くに見えたから聞いてしまった 「…おかしいもんか」「なら、証拠見せてよ…」 答えの代わりに幸太郎は私の手から、頬にその手を移してきて… 何でも無い日、万歳
9 19/04/07(日)00:43:18 No.581824393
su2988535.txt こっちの続きみたいなお話
10 19/04/07(日)00:48:35 No.581826090
スゥー…
11 19/04/07(日)00:48:36 No.581826093
僕の!君の!そうさ!私の?
12 19/04/07(日)00:50:21 No.581826609
わ…わっちこれすき…
13 19/04/07(日)00:51:16 No.581826926
よか…よか!!!
14 19/04/07(日)00:51:31 No.581826995
だ…抱きなんし…
15 19/04/07(日)00:52:09 No.581827195
恋の歌を死んでから理解するアイドルという味わい深さ
16 19/04/07(日)00:53:49 No.581827857
巽の誕生日とさくらの命日を重ねるくらいのことは佐賀の神ならやる
17 19/04/07(日)00:54:02 No.581827904
続きだありがたい・・・・
18 19/04/07(日)00:54:25 No.581827984
一生が終わって恋が始まった
19 19/04/07(日)00:56:07 No.581828564
オナンシュシュで下がったIQが戻っていくのを感じる
20 19/04/07(日)00:57:49 No.581829060
相棒のように寄り添って恋人のように求め合う
21 19/04/07(日)00:58:31 No.581829249
>巽の誕生日とさくらの命日を重ねるくらいのことは佐賀の神ならやる 乾幸太郎の命日であり 巽幸太郎が生まれた日でもあるからな…
22 19/04/07(日)01:02:26 No.581830365
歌声が聞こえて私は目を覚ました どんなに小さくても私が聞き間違えるはずかない あれは愛ちゃんの声 FANTASTIC LOVERS テラスから声のした方を見ると浜辺で愛ちゃんが幸太郎さんの前で踊っとった …は?え? ソロライブで観客の方も一人とかありえんよ?水野愛とよ?幸太郎さん? ………ずるかー!! そんな風に激怒して浜辺に駆けつけた私が見たものはがばい尊い光景でした あっ 私ちょっと逝く
23 19/04/07(日)01:03:52 No.581830826
あっ良い
24 19/04/07(日)01:07:31 No.581831963
ファンラバもいいけどゼリーフィッシュのお話も見たか…
25 19/04/07(日)01:10:20 No.581832812
>あっ 私ちょっと逝く オナマス源…!?
26 19/04/07(日)01:17:40 No.581834827
よか…
27 19/04/07(日)01:18:25 No.581835055
>僕の!君の!そうさ!私の? 何かと思ったらアリスか