19/04/02(火)22:40:38 それか... のスレッド詳細
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19/04/02(火)22:40:38 No.580846785
それから五年たったある日、たしかゆりちゃんが図書館から帰って来た夏休みの午後だったわね、転がった首輪を取ろうとゆりちゃんを呼んできて、お母さんだけじゃ持ち上げられないのゆりちゃん、ゆりちゃんを呼んできてちょうだい、午前中に雨が降ったから、花壇に水やりの時間を浮かせたお父さんがすぐ帰ってきてくれるわ、そんなに急ぐことはないのだけど、それだと夕ご飯に間に合わないでしょう?さっきの乾いた新聞紙を丸くして、ちんちろりんみたいに遊んでた、机の下にお父さんの茶碗を敷いて、ふとした瞬間に片方がおしょんべんしたの、その子は勢いよく走っていって、薄っぺらな闇の中に消えていったわ、その闇は押し入れみたいに狭くて暗くて、お化けが出るなんて噂もある、小さいゆりちゃんなんてお化けのせいで目が見えなくなったんだって、少しだけ奥に目をやるとすぐに、お化けの細い手がお母さんの眼をえぐり出そうとしてくるようだった、お母さんは恐くなって机の下で膝を抱えて震えてた、お父さんの帰りを待とう、お父さんがいてくれたら、お母さんは両眼なんて要らないもの、けれどお母さんの両目を取るためだけにお父さんが夕ご飯を食べられないなんて嫌よ、
1 19/04/02(火)22:42:00 No.580847199
お母さんとゆりちゃんだけなら我慢もできるけど、お父さんの分はどうしても作らなくちゃ、そうよねゆりちゃん?背中に走る寒気と全身の痙攣を我慢して、お母さんは頑張って冷蔵庫の下に手を入れた、お化けに眼を取られたって朝三暮四、夕ご飯がお父さんの悲しむ顔に比べれば恐くなんてなかった、お母さんは両眼はもろちん耳や舌もお化けにあげる覚悟があったわ、お父さんのためなら、何も辛くなかったわ、お母さんは眼をつむり腕を延ばした、暗闇に溶けて消えてなくなった指先にお化けが触れる、それでもお母さんは恐怖を振り絞ってお化けを掴んだわ、お父さんのためならお母さんはお化けなんかにお母さんは負けないのよゆりちゃん、お化けに勝ったお母さんは物はついでだものね、お化けのゆりちゃんの顔を見ましょうゆりちゃん、ゆりちゃんが喜びはしゃいでいるのが手に取るようにわかるの、暴れても無駄よゆりちゃん、出てきなさいゆりちゃん、でも冷蔵庫の裏から出てきたのは、なくした首輪だけだったわ、ゆりちゃんには悪いけど、これで夕ご飯が作れるわお父さん、今日はお父さんの好きなビーフシチューよ、嬉しい?嬉しいわね、春菜も嬉しいわお父さん、ふふふ