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19/03/31(日)23:09:31 地下室... のスレッド詳細

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19/03/31(日)23:09:31 No.580397468

地下室。いつものようにやかましく予定が伝えられる。いつものことと、取り立ててのメンバーの反応もない。 いつも通りに終わりそうなミーティング、そういえば、とばかりに珍しく巽幸太郎からゆうぎりへ話が振られた。 「ゆうぎり。この前のファンレターへの返事に、更に返事が来ていたぞ。内容は見とらんがな」 「ああ。別に隠すほどの事でもありんせん。年頃らしい恋の悩みでありんす」 「なんじゃい。花魁の恋愛相談室やってたんかい。……まあ、そういう路線もありかもしれんが」 内容は『無事に好きな人と付き合うことが出来ました、5号さんには感謝しています!』とのことだった。 なるほど、恐るべきは花魁の恋愛テクニックじゃのう、などと言いながら幸太郎は地下室を出ていった。恋バナとか少し恥ずかしかったのかもしれない。 それと同時に仲間たちの赤い目が一斉に、ゆうぎりにぐるりと向けられた。

1 19/03/31(日)23:09:53 No.580397592

「ゆぎりん、そういうファンレター来てたんだー。恋のお悩みはお任せ☆って感じなの?」 「あい。男女の仲など明治と今でもそう大きくは変わりんせん。わっちの言葉もそれなりの意味はありんしょう」 「ふ、ふーん。……こ、今後そういうファンレターがまた来るかもしれないわよね。その子の口コミとかで」 愛の質問に何故かゆうぎりに再び集う視線。 少しばかりのやりにくさを感じながらも、彼女は堂々と首を縦に振った。おお、と湧き上がる歓声。 さすがゆうぎりと一通り盛り上がった後、何やらさくらが口を開こうとした。その矢先に愛がすっくと立ちあがる。 「そろそろレッスンしましょ。恋愛相談も大事かもしれないけど、私たちはアイドルだし」 「そ、そうやね!愛ちゃんの言う通りやね!」 なんやかんやと騒がしく、フランシュシュがいつも通りにレッスンに精を出す。 そしてその夜、ゆうぎりは一人のゾンビィにベランダに呼び出されていた。

2 19/03/31(日)23:10:08 No.580397663

「巽さんと付き合いたいんです」 話の流れからして内容の予想はしていたが、予想を遥かに超える直球にゆうぎりはしばし目を瞬かせた。 確かに彼女のその立ち居振る舞いから幸太郎への好意は確かに感じてはいたのだが、それでもここまで強く主張できるまでの気持ちとは思っていなかった。 もしくは、自分はこの人を好いているからそういう目で見てくれるな、という牽制だろうか。 何にしても、ゆうぎりに出来るのはその想いに真っ向から答えるのみである。 「強く押しなんし」 「………えと、あの。それだけでしょうか。もう少し、こう…」 「あの手の殿方には一にも二にも攻勢を掛けるのが一番、遠回りに好意を伝えても気付かない素振りをされるだけでありんす」 であるならば、その好意を前面に押し出していくことだ。 いい方法ではないかもしれないが、幸太郎の考えを動かすにはそれだけの力がいるとゆうぎりは推測していた。

3 19/03/31(日)23:10:23 No.580397731

今、幸太郎がゾンビィ達に対して恋愛感情を持っている素振りはない。 今後も恐らく持つつもりはないだろう。それを変えるとすれば、やはりゾンビ側からのアプローチしかない。 何より純子は、仲間に向かってはっきりと思慕の念を口にできるほど覚悟が決まっている。 幸太郎に対しても思い切ってしまえば、その想いを伝えることは容易いように思えたのだが……。 しかし純子はそれに関してだけはうじうじナメクジィであった。 「で、でも………その、嫌がられたりしたら…」 とか。 「その……もう少しゆっくり距離を詰めていくとか、そういうのは…」 などと、微妙に弱弱しい。先ほどの男らしささえ感じる覚悟はどこに行ってしまったのか。 「…純子はん。幸太郎はんは、どんなことであっても純子はんの想いを無下に扱ったりはしないでありんしょう?」 「え、えぇ。それは、もう」

4 19/03/31(日)23:10:43 No.580397827

何故そこで頬を染めるのか。…ともかく、そうであるなら恋心に関しても正面から向き合ってくれるだろう。 そこまで言うと、純子はようやくその選択肢に対して真面目に向き合い始めた。 「……考えてみます。また、相談させてください」 「あい。…純子はん、脈がなくても突き進むのがわっちらのサガでありんすよ」 ぱちりとウインクすると、くすっと微笑み、ベランダから純子が去って行った。 ―さて。 純子も自分に相談していたと知られるのは何かと困るだろうし、ここで少し時間を潰した方がいいだろう。 そう気を回して煙管を一吹かしさせたその時。新たな相談者がベランダに顔を出した。 「…姐さん、おるとー?」 いつもは元気に大声を出している彼女が、小声で伺うようにしているのが少しばかりおかしかった。 くすっと微笑み、返事をして自分の隣を煙管で指し示す。相談者はそわそわと腰を下ろした。

5 19/03/31(日)23:11:00 No.580397889

「きょ、今日のレッスンは姐さんどやった?」 と口を開いたサキは、その後も天気やらメンバーの事やら、しばらく世間話をしていた。 そんな態度でそんな話がしたいわけではないだろうに、と思いつつもゆうぎりは相槌を打つだけに留めておいた。相談するかどうかも決めるのはサキ自身である。 まあ、先の相談者のような思い切りを死んでいるとはいえ年頃の乙女に求めるのも酷な話ではあるのだが。 「姐さん。これは昔を振り返っての話やけど、す、好き、とか。どやんしたらわかると?」 駆け抜けるような生涯では、好きとか嫌いとか、そう言ったことが入ってくる余地がほとんどなかったのだろう。 伝説の特攻隊長から聞かされた悩みは、思っていたよりもずっと素朴なものであった。 「そうでありんすな……例えば、その人がいなかったことを想像したらどうでありんしょう?」 「そりゃアタシはこの世に存在しとらんな」 え、そこまで?とゆうぎりは目を白黒させた。しかもあっさり即答である。その相手と何があったのか。

6 19/03/31(日)23:11:22 No.580397998

「……そこまで言い切れるなら、普通は恋と言っていいのではありんせんか?」 「やっぱそやんなるか……」 「まあ。サキはんの享年からもう数十年経っておりんす。その相手も家庭を作っていることでありんしょう」 「え?…あ、ああ!いやー、ちっともその辺考えとらんかったなー!」 昔の初恋を改めて認識して、経験として生かすこと。それもまた人生経験の一つであろう。 うんうんとゆうぎりが一人頷いていると、相談者は独り言のように言葉を続けた。 「アタシは普通ってモンがよくわからん。…恋なんて似合わんよな」 「わっちはそう思いんせん。普通でないなら、普通でないなりの恋だってありんしょう」 「………おう」 乙女な一面を肯定されたのが恥ずかしかったのか、サキは言葉少なに俯いた。

7 19/03/31(日)23:12:18 No.580398264

「死んではおりんすが、次の恋もきっと見つかるでありんしょう」 その彼女の肩を、優しくそっと叩く。 いつかの気持ちにようやく気付いた彼女は、ようやく前に進むことが出来るようになるだろう―― そんな予想に反し、サキはぽかんとした表情でゆうぎりを見返した。 「え?」 「えっ?」 「あっ、あー……リーダー!リーダーやけん!早く寝ねえといけねーんだ!」 慌ててベランダから特攻隊長が走り去っていく。花魁は呆然とその背を見送るのみであった。

8 19/03/31(日)23:12:29 [sage] No.580398320

つづく

9 19/03/31(日)23:12:56 No.580398451

えっあっ…

10 19/03/31(日)23:14:16 No.580398822

>つづく えっ えっ

11 19/03/31(日)23:15:01 No.580399011

オオオ イイイ

12 19/03/31(日)23:15:37 No.580399165

後4回相談されるんだ

13 19/03/31(日)23:16:39 No.580399475

花魁はそういうの強そう

14 19/03/31(日)23:16:44 No.580399497

>「巽さんと付き合いたいんです」 直球過ぎてダメだった

15 19/03/31(日)23:17:01 No.580399578

(なんかド地雷踏み抜いた気がしんす)

16 19/03/31(日)23:18:05 No.580399865

まあどっちにせよ面白いことになりんす

17 19/03/31(日)23:19:51 No.580400338

見た目に反して直球な純子としどろもどろなサキちゃん可愛い

18 19/03/31(日)23:21:10 No.580400726

「「「「「ゆうぎり(さん)は私の事応援してくれるよね?」」」」」 で泥沼になっちゃうかな

19 19/03/31(日)23:23:38 No.580401538

さくらちゃんと愛ちゃんの挙動がやや不審なのが気になるのう

20 19/03/31(日)23:24:40 No.580401854

>『あれは既に自分のだとは思ってはいたが、しかし感謝の気持ちを示すぐらいで怒りを示すほど狭量でもない。』 とかにならない?大丈夫?

21 19/03/31(日)23:24:43 No.580401870

純子ちゃんは本当にかわいいお方…

22 19/03/31(日)23:25:16 No.580402032

>「「「「「ゆうぎり(さん)は私の事応援してくれるよね?」」」」」 幸太郎はん!!!!なんとかしなんし!!!!

23 19/03/31(日)23:26:34 No.580402414

この純子ちゃんはつよつよ… 同時にゆうぎりに「あの人は私の」という牽制も確かにありそうなのがよか

24 19/03/31(日)23:44:32 No.580407979

続き待っとらすよ!

25 19/03/31(日)23:53:01 No.580410579

これは長くなりそうでありんすなぁ・・・・

26 19/03/31(日)23:56:10 No.580411640

>同時にゆうぎりに「あの人は私の」という牽制も確かにありそうなのがよか 卑しい純子ちゃんよかよね…

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