19/02/25(月)04:26:51 ゾンビ... のスレッド詳細
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19/02/25(月)04:26:51 No.572009674
ゾンビィ2号こと二階堂サキが親友の麗子とその娘の仲を取り持ったゲリラライブの後日 サキは彼らのプロデューサーであるグラサンこと巽幸太郎の運転する車に乗っていた しかもこの日は珍しいことにサキ以外のメンバーは屋敷で留守番である 加えて助手席に座る先の手には先ほど幸太郎が買った花束 色恋沙汰に疎いサキといえど、このシチュエーションが意味することの見当はつく …つくのだが自分たちの関係がそこまで色気のあるものではないことも重々承知してるため、その目的を図りかねていた 「……なあグラサン、どこ行くと?」 「もうじき着く」 リーダーとして皆を引っ張っているサキへの感謝とケジメのため、と言って連れ出してからはろくに説明も無い おかげで車中には気まずい空気が流れており、サキは窓の外ばかり眺めていた そうして車を走らせるうち流れる景色に彼女にも覚えのあるもの増えてきて 「着いたぞ」 「……おい、グラサン」 ノスタルジックな気分に浸っていたサキは目的地に着くなり幸太郎の胸倉に掴みかかった 「テメエ、ぶっ殺されたいんだな?」
1 19/02/25(月)04:27:40 No.572009707
その場所は生前のサキには馴染みが薄いが、死後のサキには馴染み深い場所 彼女の家族…もとい先祖たちが眠る二階堂家の墓がある墓地であった 「ここでそれを言うとシャレにならんぞ」 「こっちだって冗談で言っとらん。何するつもり…」 「初めに言っただろう。感謝とケジメだ」 幸太郎はサキの花束をひったくると、胸倉を掴む手をほどき墓地へ進んでいった 移動中、罵詈雑言を浴びせながら着いてくるサキに幸太郎は前を向いたまま語りかける 「サキ。お前、両親と仲良かったか?」 「せからし、良いわけあるかボケ!」 「そうだろうな…だがリリィの時といい天吹親子の時といい、ずいぶん世話を焼いてくれたじゃないか」 「仲間が悩んどったら誰だって手を貸すじゃろ」 「俺もそのつもりだ」 「……まさかアタシにも仲直りせいとでも言うつもりと?」 「それはお前次第だ。そのためにここに来たんだからな」 そう広くない墓地である。短い雑談が終わるころ、二人は墓碑の前にたどり着いていた
2 19/02/25(月)04:27:50 No.572009710
さすがにサキも墓前で暴れるような真似はしなかった その代わり線香を焚いて手を合わせる幸太郎の背中を穴が開くほど睨みつけていた 「きれいな墓じゃのう」 「厄介もんが死んだおかげで金かける余裕があったってだけじゃろ」 「素材の話はしとらん。よく見ろ、少し離れた場所にいる今なら違いが分かるはずじゃい」 その言葉を聞いてサキは初めて墓を眺め、その異常に気付いた 「お盆や命日からもう数ヶ月も経っているのに、この墓が周りと比べて明らかにきれいなまま… まるで誰かが頻繁にここに来て手入れしてくれてるように見えんか?」 「……知らん」 「手をかけてやる相手はもう居ない、帰って来るとも思っていない。それでも手をかけてやるのは何故じゃろうな」 「知らん!」 「俺も知らん。ただ、自分じゃはどうにもならんことで他人に世話ばかり焼いてるゾンビィがいるようなんでな これを見れば気でも晴れるかと思っただけのことじゃい」 幸太郎は拝み終えると踵を返し、俯くサキに真正面から声をかける 「俺は車に戻ってるぞ」
3 19/02/25(月)04:28:06 No.572009723
「……なあグラサン、線香まだあるか?」 「ほれ。ゾンビィは火に弱いから気をつけるんじゃぞ」 「せからしか!」 サキは受け取った線香を眺めるていたが、束を解かずそのまま火をつけた 「こんくらい派手なほうがアタシらしいだろ」 煌々と火柱を上げる線香を供えると、サキは目を瞑り静かに手を合わせる 時間にして数秒。振り返った時のサキは、憑き物の落ちたような表情を見せた 「もういいのか」 「十分。小せえことでウジウジ悩んでた二階堂サキは派手に燃やして成仏させてきた」 帰り道、来たときとは逆に先行するサキが前を向いたまま語りかける 「なあグラサン」 「なんじゃい」 「……やっぱやめとくわ。それより帰りなんか食ってこーぜ」 「言わんのかーい!」 その後、しこたま買い食いしてきた様がデートのようであったことに気付いたのは屋敷に帰った後のことであったという
4 19/02/25(月)07:37:20 No.572017224
遺族ネタは切ないけどよかね...