19/02/23(土)22:15:19 「弐号... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1550927719144.jpg 19/02/23(土)22:15:19 No.571658664
「弐号さんとふたりきりでツーリングなんて夢見たい!」 「ハァ?ふたりきりだぁ!?」 夢見心地の万梨阿に美沙が絡む。 「あんま喧嘩すんなよ、オメェら」 万梨阿のバイクの後ろにまたがったサキがたしなめる。 万梨阿と美沙は、『偶然』道に迷っているフランシュシュ弐号に出会い、寄り道しつつ送り届けている。 そういう筋書きのもと、こっそり鏡山でツーリングを楽しむ。その予定だった。 だが。 「チッ」 ミラーに映る後続のバイクを見た万梨阿は舌打ちした。 「まだついてきよる…」 さきほどから不気味なバイクの集団がヒタヒタと影のように三人を付け回していた。 「ゾンビみたいな顔しよって…」 「あぁ!?あやんかもんゾンビじゃなかっちゃろが」 脊髄反射で反応してしまったサキはしまった、と心の中でひとりごちた。
1 19/02/23(土)22:15:51 No.571658829
「え?ゾンビってあやんか感じじゃなかですか?」 「ほら、ゾンビってよ、もっとあ゛ぁ~とかう゛ぅ~とかヴァ~とか唸るっちゃろ?」 「たしかにアイツら妙に静かとですね」 三人の気が逸れている間に、バイクの集団がじわじわと距離を詰めてきた。 ゾクリ。 サキは背筋に悪寒を感じ、振り返る。 自らが人ならざる存在であるが故か、集団の中心に人ならざるものが数体混じっている事に気付いた。 マズイ。幾度も修羅場をくぐり抜けたサキの勘がそう告げる。 「万梨阿、美沙、出来るだけアクセル吹かせ。コイツら振り切んぞ」 ふたりは速度を速めるが、集団は一向に振り切れない。どころか追いつかれつつあった。 痺れを切らした人ならざるものが、徐々にその異形の正体を現す。 「アニキ、アニキ、こんな片田舎で三人も若けぇ人間が喰えるなんて夢みてぇだぜぇ~。」 「おうよ、今日はご馳走だァ~。」 「ギシシシシシシシシシ。」 それは、妖であった。
2 19/02/23(土)22:16:07 No.571658920
「オメェら、ぜってぇ速度緩めんじゃねぇぞ」 「弐号さん、どやんすっと!?」 「こういう奴らはなぁ、頭潰しゃあ大人しくなんだよォ!」 叫びながら、サキが集団に躍りかかる。 「「弐号さん!!」」 「早う行け!逃げんかったらぶっ殺すぞ!」 ふたりは涙を振り払い速度を上げる。 (死んだ目しとる奴らは敵じゃなか。問題はあのバケモノども…) サキは八艘飛びのように次々とバイクの上を飛び歩き、妖のうち一体に殴りかかる。 だが、その拳はたやすく受け止められた。 「へへへ、人間のかよわい攻撃なんて効くかよォ。」 「人間の攻撃が効かねぇ?なら、アタシにゃ関係ねぇな!」 サキは反対側の拳を先程とは比べ物にならない速度で振り抜く。 その手には、凶悪なメリケンサックが黒光りしていた。 妖は顔から血を吹き出しながら、高速で動く地面を舐める。
3 19/02/23(土)22:16:27 No.571659055
「げぇぇぇ!なんだテメェ!これが人間の腕力かよォォォォォォ。」 「こいつ、死臭がしやがる!なんで死体が動いてやがんだァ!?」 動揺する妖共を、妖の首魁が制する。 「おめぇら慌てるな。この死体の嬢ちゃんがちょっとばかし強くてもよォ。」 サキの周囲のバイクが素早く陣形を変える。 「数と頭じゃ俺達のほうが勝ってるんだぜェ。先に行った生きてる嬢ちゃんを食えば問題ねぇ!」 「な、待ちやがれ、逃げんな!ぶっ殺すぞ!」 サキは妖のバイクに蹴りを入れ、牽制するが、多勢に無勢。 数台がすり抜け、万梨阿と美沙を追っていった。 追いすがろうとするサキを、妖とその手下に成り下がった死んだ目の男たちが塞ぐ。 バイクを蹴り倒し、妖に拳を打ち込む。 だが、ふたりを追っていった集団は、もはや視界の外だ。 「クソ、ザケンなぁ!ぶっ殺す!ぶっ殺してやる!」 サキの声は虚しく響くだけだった。
4 19/02/23(土)22:17:02 No.571659239
万梨阿と美沙は不安げにミラーを覗く。 数台がこちらを追ってきている。バイクに跨っているのは、明らかに人間ではない。 「万梨阿、あんたまさかビビっとる?」 「へっ、そやんかこと最初に言い出すやつがビビってんだよ」 軽口を飛ばし合うが、声の震えは隠せない。 美沙は愛用の鞭を、万梨阿は胸元から取り出した特殊警棒を伸ばす。 あのバケモノどもに通用するだろうか。ふたりの心に不安がよぎる。 そうしている間にも妖たちは近付いてくる。 ミラーを覗いたふたりは妙な事に気付いた。一台、誰も乗せていないバイクがある。 ふたりが自分たちのうえに迫りくる影に気付くのは更に一瞬後であった。 「ゲヘヘヘヘヘヘ!逃がさねぇぜ!人間ども。」 妖がふたりの愛車の後輪を薙ぐ。転倒し、投げ出されたふたりは、互いに庇い合うように肩を寄せ合う。 そのとき、反対側の車線に一台のバイクが現れた。 「こっちに来ちゃダメ!バケモノがいるの!」 無我夢中で叫ぶ万梨阿に気付いたバイクの搭乗者は、何かを投げた。
5 19/02/23(土)22:17:17 No.571659314
万梨阿と美沙の四方に装飾された小さな金属棒が突き刺さる。 妖がふたりに襲いかかった。 「アニキにゃ悪いが、ひと口目は俺がいただきウゲェ!」 金属棒…独鈷杵が、電撃を放つ。 「この結界は…光覇明宗か!なんでこんな田舎に光覇明宗の糞坊主がいやがる!」 バイクの搭乗者はさらに何かを投げつけた。 「光覇明宗の錫杖程度が俺に効くかよォ。」 妖の首魁が錫杖を叩き落とそうと鋭い爪を振るう。 だが、その手は虚しく空振りした。 男が投げつけた棒はまるで意思があるかのように首魁の攻撃をよけ、手下の額に突き刺さった。 「痛ぇ!痛ぇよアニキ!なんだこれ、痛ぇ!」 手下は悶え苦しみながら弾け飛んだ。棒を包んだ布が剥がれ落ちる。 「ゲェ、こ、これは。」 一振りの槍が投げた男の手元に戻る。 「獣の槍だとォォォォォ!?」
6 19/02/23(土)22:17:33 No.571659397
サキは肩で息をしていた。この程度の数の人間が相手なら、生前何度も打ちのめしてきた。 だが、妖相手では分が悪い。 「ばってん、分が悪いくれぇで泣き言を言っちゃあ特攻隊長の、いや、リーダーの名が廃るってもんさ」 気合を入れて、妖の顔面に拳を打ち込む。メリケンサックが砕け、足元に散らばった。 「ギシシシシシ!ついにおもちゃが砕けたぜェ!」 「おもちゃ?」 サキが歯噛みする。このメリケンは、グラサンからの初めてのプレゼント。 グラサンからの…。 「ぶっ殺す!」 サキの爪が妖の眼窩を抉る。だがその腕は妖に捕らえれた。 「捕まえたァ。…おい、そこで見てる余所者!あとから来て人の獲物を物欲しそうに見るんじゃねぇ!」 「あぁ?わしに言ったのか?」 「オメェ以外に誰がいるんだ、ボンクラ!」 「わしに向かってそんな口を効くたぁ、いい度胸してるじゃねぇか」 黄色い妖が、その身に雷光を宿した。
7 19/02/23(土)22:17:46 No.571659448
「獣の槍は白面との戦いで砕けたはずだ!あんなもんは偽物だァ!」 首魁が男に手下をけしかけるが、一体、また一体と槍の餌食になっていく。 「ヒィ!ほ、本物だ!もうダメだァ。」 「あ、アニキ!ひとりだけ逃げるってのかよ!ギェェ。」 最後の手下の断末魔を背に、首魁は全速力でバイクに跨がろうとした。 だが、獣の槍がその行く手を阻む。 「お前のような腐った妖がいる限り、獣の槍は何度でも蘇るんだ。」 「い、嫌だァ!死にたくねェ!」 爪を振り回そうとした首魁の腕は、すでに身体から切り離され地面に転がっていた。 「ヒ、ヒィィィィィ。」 情けない悲鳴を上げて消える妖を、万梨阿は消え行く意識の中で眺めていた。 「ケッ、なーにが『腐った妖がいる限り、獣の槍は何度でも蘇る』だよ。 なんで獣の槍が復活したかわかんねぇからはるばるこんな南まで来たんじゃねぇか。」 黄色い妖、とらがサキを小脇に抱えて飛んできた。 「お、さっすが!もう片付いたか!サンキュー、とら。」
8 19/02/23(土)22:17:57 No.571659508
「なにもんだ、テメェら」 サキはとらの腕を振りほどき、万梨阿と美沙を守るように槍を持った壮年の男と対峙する。 満身創痍、メイクもところどころ落ちてゾンビの地肌が目立つ。 「お、やる気か、女。わしはまだまだ物足りねぇと思ってたところでイデッ。」 凄むとらの頭を男が槍で殴る。 「いてぇなぁ!コイツ人間じゃねぇしいいだろうが!」 「うるせぇ!この子は佐賀で人気のアイドルなの!ちょっとでも傷付けてみろ、許さねぇからな!」 「なんでそやんかこと知っとると?それに腐ったバケモノが敵らしいじゃねぇか」 サキが警戒を解かずに低い声で尋ねる。 「ごめんよ!ゾンビだなんて知らなくてよ…。性根が腐ってるやつって意味なんだ、本当にごめん!」 男は真摯に頭を下げる。 サキは、年端もいかない少女にこれほどまっすぐに頭を下げられる大の男を豪剛雄以外に知らなかった。 「これで騙されたっつうんなら、それはそれでしょうがなか」 サキはため息をひとつ吐くと、腹をくくった。 「こっちこそ、アタシらのファンを助けてくれてアザっした!!」
9 19/02/23(土)22:18:08 No.571659569
「おぉ~がば早か!」 とらは四人を乗せて鏡山を降る。 「ケッ、人をたくしー扱いしやがってよ。」 「未だにペナント置いてる土産物屋教えてやったけん、よかやろが!」 「真由子が最近置いてないって愚痴ってたもんなぁ。」 「そういやアンタ、なんでアタシらのこと知っとるとや?」 「鹿児島に住んでる知り合いの子供がフランシュシュってグループのファンだって聞いてさ、そうだ。」 男はゴソゴソと鞄を漁り、スケッチブックを取り出す。 「よかったらここにサイン書いてくれよ!宛先は…、あれ、アイツの子供の名前聞いてねぇや。」 男は申し訳なさそうに頭を掻く。 「ファンの命の恩人にこやんかこと言いたかなかばってん、抜けてんなぁ、おっさん。 アンタ宛でよかっちゃろ?アンタの名前は?」 「俺は潮。蒼月潮。」 おしまい
10 19/02/23(土)22:19:21 No.571659913
なんだい今日は…やけにクロス怪文書をよく見るが…
11 19/02/23(土)22:21:04 No.571660445
こりゃまたいいモンを見せてもらったわい
12 19/02/23(土)22:23:08 No.571661086
わっちはようやっとクロス書き上がった花魁 過去分 su2908268.txt
13 19/02/23(土)22:25:07 No.571661709
混ぜるな 危険だ
14 19/02/23(土)22:26:13 No.571662058
ナイスクロス!
15 19/02/23(土)22:27:26 No.571662416
法力使えるようになっとる…
16 19/02/23(土)22:28:19 No.571662696
クロス怪文書!そういうものもあるのか! バイクに乗るというか同化してる奴は本編でも居たなぁと 思い出しながら読んでたんじゃい
17 19/02/23(土)22:42:47 No.571666984
こいつらまさか…一角!?と思ったらドンピシャだった オチまでニヤニヤしながら読んじゃった
18 19/02/23(土)22:43:00 No.571667041
クロス怪文書もっと増えなんし!!!!
19 19/02/23(土)22:59:16 No.571671875
まさかのクロス しかし馴染むね