虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 19/02/11(月)21:40:05 No.568785165

1回目の告白よりも前のこと。 「幸太郎さんに告白したい」と告白してきた時は、驚き半分、納得半分だった。 事あるごとに幸太郎を目で追うさくらの姿を見ていれば、こうなるのも時間の問題だと誰もが思っていた。 対する幸太郎も、さくらには特別甘いのも全員の認識である。 とはいえ、彼女達も頼みづらい事をさくらに代わってもらったりと、それなりに恩恵もあった。 えこひいきと呼ぶ程でもなく、特に不満は感じていない。 …彼女達は話し合った末、さくらを応援する事に決めた。 プライベートがバレたら破滅なのは今も同じ事。どうせ恋愛がバレる時はゾンビィもバレるのだ。なら立場の差は問題ではない。 勿論興味本位の面もある。うまくいったら全力で2人を弄り倒してやろうとは思っている。 だが何よりも、彼女達は確証が欲しかった。『ゾンビィでも恋ができる』という証が。 その結果として、寝室には恋破れたさくらと、それを取り囲む仲間達がいた。

2 19/02/11(月)21:40:39 No.568785335

「さて、次はどうしたものかしらね」 「ええ！？まだやると！？」 「当たり前じゃない。諦めたって何にもならないわよ」 落ち込むさくらを意にも介さず、次の手を考える愛。 「あのグラサンの事やけん、何度も何度もコクったら耐え切れなくなるんじゃなかか？」 「そうですよね、巽さんがさくらさんから告白されて嬉しくないハズがありません」 「えへへ…そうかなぁー…」 「ハイそこ！成功してないのにニヤけない！…まあ現状できるのは何度でもぶつかる事くらいよね」 「リリィは無理する事はないと思うけど…さくらちゃんはどうしたい？」 「…諦めるなんて、絶対に嫌。それだけはしたくないけん」 リリィの気遣いに、断固たる決意を見せる。戻ってきた時の暗い雰囲気は、もう欠片も残っていなかった。 「ならその意気よ。頑張りなさい！」 「うん！私頑張るけん！みんなありがとう！」 仲間の後押しを受けて、さくらは諦めなかった。99回も諦めなかった。

3 19/02/11(月)21:41:18 No.568785519

…さくらが告白に来なくなって、1週間になる。 それまでほぼ連日押しかけて来ていたのが、ぱったりと止んでしまった。それどころか、意識して俺を避けようとしている節すらある。俺から声をかけようにも、一人でいる時が全くない。 今までは告白の翌日でもアイドル活動に影響は見られなかったが、最近は違う。 直近の99回目以降、明らかに動きに精彩を欠いている。このままで良い訳が無い。

4 19/02/11(月)21:41:37 No.568785601

問題はそれだけではない。…愛の想いに、俺は気付いてしまった。 愛に背中を押されたあの日、愛は部屋を出て行く時に扉を閉めていかなかった。 ふとドアの向こうから漏れ聞こえる音に気付き、廊下に出て耳を澄ませた。それが嗚咽だと気付いたとき、胸が潰れる思いがした。俺はさくらだけでなく、二人の想いを踏みにじっていたのだ。 身勝手な理由でゾンビィにして生命の尊厳を冒しているのに、心まで冒涜していたのだ！ 両方の想いに答えることはできない。ならせめて、1つは応えなければいけない。 …違うな。こんな言い方をしたら愛に尻を蹴られるだろう。 義務感じゃない。俺がそうしたいからするんだ。 どうせ全員知っているんだ、なりふりなど構うものか。 一人の時がないなら、全員の前で言ってやる。 「さくら、今度のイベント後にインタビューがあるそうだ。後で部屋で打ち合わせするから来い」

5 19/02/11(月)21:41:50 No.568785660

最初はなんとなく、明日にしようと思った。 二日目はどうしても足が動かず、幸太郎さんの部屋へ行けなかった。 三日目以降は、もう行こうという決心すらできなくなっていた。 何度だって諦めないって決めたのに、100回も告白してもダメなら…という恐怖が、私の足を棒のようにしてしまう。 すっかり行き慣れた幸太郎さんの部屋。それが今は、果てしなく遠く感じる。 ダンス練習でも何度も迷惑をかけた。みんな応援してくれているのに、これじゃ恩を仇で返しとる…。 このままじゃいけん。わかっているのに！ …そげん時、幸太郎さんの部屋に行くのに、幸太郎さんの方から理由をつけてくれた。 「さくら、今度のイベント後にインタビューがあるそうだ。後で部屋で打ち合わせするから来い」 「あ、はーい」 これはチャンスなんだ。100回目の告白のチャンスのはず。 私を見るみんなの期待のまなざし。なのに…どうしても暗い気持ちが拭えない。 …もし…もう止めろなんて言われたら、どやんしよう…。

6 19/02/11(月)21:42:10 No.568785776

コン、コン 夕方を過ぎて街灯が灯りだした頃、予定した時間通りに部屋に響く、遠慮がちなノックの音。 普段のさくらはもっと元気のあるノックをする。彼女らしくない。 「おう、おるぞ」 顔を見せたさくらは、遠慮がちに敷居をまたぐ。…これもらしくない。俺がデスクからソファに移ると、向かい合ってソファに座る。 「で、インタビューはどんな事を聞かれるとですか？」 さくらは単刀直入に切り出してくる。普段は適当な話題で部屋に居座ろうとするのに。 まるで用事を早く済ませてここを出て行きたいかのよう。だがそうはさせてやらん。 「…すまん、あれはウソじゃい」 「え」 「二人で話がしたかったんでな」 「…嫌」 話をしたくない、と俯きがちに視線を逸らす。

7 19/02/11(月)21:42:29 No.568785862

「おい、さくら」 「嫌です」 「聞いてくれ、さ」 「嫌！聞きたくなかと！私は絶対諦めん！幸太郎さんを絶対振り返らせるっちゃもん！」 さくらは耳を塞ぎ、顔を伏せてしまった。 「落ち着かんかい」 俺は腰を上げてテーブル越しにさくらの両腕を掴み、膝の上に降ろしてやる。 腕に力を込めて抵抗することもできたろうが、さくらはそうしなかった。 「幸太郎さん…私何度も告白した。もう何度も何度も」 「そうだな。もう99回だものな」 「…幸太郎さんも数えてくれとったとね。嬉しかよ」 顔を上げたさくらは、疲れたような精気の弱い笑顔を見せる。

8 19/02/11(月)21:42:41 No.568785914

「さくら、お前は何か勘違いしているようだな」 「…え？」 「俺はお前に諦めろと言うために呼んだんじゃない。まずは謝らせてくれ」 俺は頭を下げる。テーブルに頭を打ち付けんばかりに。 「え、え？幸太郎さんが何かしたと？」 「さくら、すまない。お前の想いを何度も踏みにじった。俺は最低な男だ」 困惑した様子のさくらだったが、俺の言葉を聴き、姿勢を正す。 これ以上は、面と向かって話すのは些か恥ずかしい。立ち上がって背中を向けながら言葉を続ける。 「決して諦めないお前は立派な奴だよ。そんなお前を…俺も好いとる。分かってると思うが立場上、世間一般のような付き合いはできん。色々と制限のあるものになるだろう。…それでも良ければ、」 その先は言えなかった。振り返った俺が目にしたのは、俺に飛びつく瞬間のさくらだった。

9 19/02/11(月)21:43:07 No.568786052

しばらく泣いていたさくらがようやく落ち着き、今は二人で並んでコーヒーを飲んでいる。 「100回も告白すれば根負けしてくれんとかな、って思っとったっちゃけど、100回やってもダメならどやんしようって思ったら…怖くなっちゃって。いい加減にしろって怒られるんじゃないかと思っとったとよ。100回目の告白が幸太郎さんからなんて考えとらんやけん…頬が緩んえへへへ」 「…お前、戻る時にはそのニヤケ顔治していけよ」 「ええーへへへ、自信なかとよー…」 完全に舞い上がっているさくらは知る由もないが、実際は違う。これは101回目だ。 結果的にだが、さくらに告白をさせなくて良かった。さくらが101回目の告白をするのは…なんかこう…マズい事態を招く可能性が高いからな。 「まあこうしていられるけん、どっちから告白したかなんてどうでもよかとです」 「…そうか。お前が満足ならそれでええわい」 「幸太郎さんの気持ちが私に向いてくれてるって思うだけでも、最高に幸せとよ」 俺を見上げ、大輪の笑顔を咲かせる。この先どうなるかは分からんが、正しいことをしたのだと思える。

10 19/02/11(月)21:43:23 No.568786142

さくらの件はこれでいい。付き合い方はこれから考えていく事だ。 今度は愛だ。想いには応えられずとも、何らかの形で意思を示しておきたい。俺の為にも…愛の為にも。 　 その日の夜、振り付け変更をしたい箇所があったので、愛を部屋に呼んでいた。 「…こんな感じかしらね。じゃあみんなに伝えてくるわ」 「ちょっと待て」 「ん、何？」 「愛、ありがとう」 「…何よいきなり。これくらいいつもの事じゃない」 愛は振り返り、怪訝そうに言葉を返す。 「違う。さくらの件だ」 「本人から聞いてる。もうウザい位のテンションになってるわよ。せっかくみんなで弄ってやろうと思ってたのに、こっちは見事に返り討ちよ。純子のあんな疲れた顔初めて見たわ」 愛はもううんざりという顔だが、それ以上に親友の恋が成就した喜びを溢れさせている。 …俺にとってはそんな顔が一番、辛い。

11 19/02/11(月)21:43:38 No.568786213

「やればできるじゃない。男、見せたじゃないの」 「何でお前にそんな姉貴面されなきゃいかんのじゃい」 いつもの軽口が飛び交う。だが、今の本題はそこじゃない。 「…何も言わずに聞け、愛」 「う、うん」 姿勢を正し、トーンを落とした声。その雰囲気に、愛が僅かに背筋を伸ばす。 「さくらの想いに何らかの形で応えよう、と思えたのはお前の言葉あってこそだ。プロデューサーという立場だから、とお互いの関係性に固執するのではなく、折り合いのつく点を探そうと思えた。全てお前のおかげだ。だがこれだけは忘れないでくれ。さくらと付き合うからといって、お前らの存在が軽くなる事はない。俺が何よりも大事にしているのは、お前ら全員が揃ったフランシュシュなんだからな」 さくらと付き合うことになっても、それは絶対に変わらない。 ソファから立ち、愛に歩み寄る。

12 19/02/11(月)21:43:58 [終] No.568786312

「さくらだけじゃない。サキも純子もゆうぎりも、リリィもたえも。そしてお前も俺にとって必要な人だ。…これからもよろしく頼む」 愛の頭に手を置き、軽くその髪を撫でる。呆気に取られて聴いていた愛は、ここで感情を爆発させた。 「な、ん、何恥ずかしい事言ってんの！？そういう事はさくらに言ってればいいでしょ？！？？」 顔を真っ赤にした愛は俺の手を振り払うと、逃げるように部屋を出て行った。頭に満開の花を咲かせながら。 …悪い、さくら。愛は俺達のために身を削ってくれたんだ。これ位は許してくれ。 ふと足元を見ると、花が1つ落ちていた。それは拾い上げると、微かな香りを感じさせた。 俺はその花をディスプレイの横にそっと置いてしばし眺め、仕事の続きに取り掛かることにした。 花は実を付けることは叶わなかった。しかし、その香りは確かに誰かの心を震わせ、動かしたのだ。 これを徒花と笑うことは、きっと神にだって許されはしない。

13 19/02/11(月)21:46:18 No.568786989

まだ巽には告白しなければならぬものが残っているな…まあ隠すだろうが

14 19/02/11(月)21:48:16 No.568787587

オホーー！！ ニヤニヤが止まらんでありんす！！！

15 19/02/11(月)21:49:19 No.568787901

大作でありんした…

16 19/02/11(月)21:51:21 No.568788547

あー舞台裏で愛ちゃんがひっそり玉砕してたやつかー あれは健気可愛かったのう

17 19/02/11(月)21:52:28 No.568788917

は…はあー…よかった…よかった…

18 19/02/11(月)21:52:38 No.568788967

あっ100点です…

19 19/02/11(月)21:53:34 No.568789240

あーやーらしかーーー！

20 19/02/11(月)21:53:47 No.568789319

愛ちゃんの花はホント便利だな

21 19/02/11(月)21:54:08 No.568789442

幸太郎は100回は告白せんと崩れなそうだよね…

22 19/02/11(月)21:55:09 No.568789832

わっちはポンコツでありんす！

23 19/02/11(月)21:55:14 No.568789858

成就したさくらのテンションはわっかりやすそう

24 19/02/11(月)21:55:47 No.568790017

幸さく応援するフランシュシュってシチュが好きすぎてすまない…

25 19/02/11(月)21:56:06 No.568790129

愛ちゃんが失恋しただけで終わりにならなくてほんとよかったい…

26 19/02/11(月)21:56:21 No.568790227

100回の告白は何度でも何度でも立ち上がれでありんすなぁ 101回目はプロポーズでありんす？

27 19/02/11(月)21:56:29 No.568790265

>成就したさくらのテンションはわっかりやすそう さくらじぇんじぇんわかんないよぉ～☆

28 19/02/11(月)21:56:46 No.568790354

優しい世界でよかった

29 19/02/11(月)21:56:54 No.568790406

>頬が緩んえへへへ これもうほとんどまんじゅうやな…

30 19/02/11(月)21:57:15 No.568790525

>>成就したさくらのテンションはわっかりやすそう >さくらじぇんじぇんわかんないよぉ～☆ テンションがウザい！！

31 19/02/11(月)21:57:20 No.568790549

ゆぎりんひたすらニマニマしてそう

32 19/02/11(月)21:58:43 No.568791039

花魁…舞います…

33 19/02/11(月)21:58:47 No.568791057

いい落としところたい

34 19/02/11(月)21:59:09 No.568791178

まず巽の部屋から戻ってくる時の足音が既にウザい あんだけステップ踏めるようになったのに乱れ過ぎなスキップがウザい この時点でもう嫌な予感がしてるのにドア開ける時にドーーーーン！！！って超ご機嫌に擬音までつけてて顔が果てしなくウザい

35 19/02/11(月)21:59:18 No.568791229

よか… 俺にはこれしか言えない…

36 19/02/11(月)21:59:23 No.568791262

ウザ惚気話聞かされて純子ちゃんが乾燥キノコになってそう

37 19/02/11(月)22:00:24 No.568791589

キスしただけで大人になりました面をしそうな…

38 19/02/11(月)22:00:42 No.568791705

>まず巽の部屋から戻ってくる時の足音が既にウザい 階段でめっちゃこけたであろう音とそれでもテンション超高いさくらはん

39 19/02/11(月)22:01:20 No.568791949

>100回の告白は何度でも何度でも立ち上がれでありんすなぁ >101回目はプロポーズでありんす？ さくらは死にまっしぇーん！ってトラックの前に飛び出して轢かれるのがわかりすぎる

40 19/02/11(月)22:02:07 No.568792234

幸さくええよね

41 19/02/11(月)22:02:15 No.568792280

>「えへへ…そうかなぁー…」 まだOK貰ってないのにちょろいさくらやーらしか

42 19/02/11(月)22:02:32 No.568792375

愛はんは本当にできた女子…

43 19/02/11(月)22:02:39 No.568792424

完結させてくれてありがとう！

44 19/02/11(月)22:03:10 No.568792622

感情を隠せない子いいね

45 19/02/11(月)22:03:38 No.568792789

>キスしただけで大人になりました面をしそうな… 巽も色々教え甲斐があるな

46 19/02/11(月)22:05:37 No.568793445

>幸さく応援するフランシュシュってシチュが好きすぎてすまない… これからもデートとか夜とかめっちゃ作戦会議してほしい

47 19/02/11(月)22:07:22 No.568794077

姉貴面されても文句言えないでありんすよ幸太郎はん！！

48 19/02/11(月)22:10:36 No.568795152

100回目になって急に怖気づくさくらの心境変化とか丁寧だし愛ちゃんへのフォローもあってよか…

49 19/02/11(月)22:11:59 No.568795657

さくらはん！！今日は！今日はどうだったでありんすか！？って毎日聞くゆうぎり姉さん

50 19/02/11(月)22:14:10 No.568796399

幸さくは一筋縄じゃいかないけどそれがいいんでありんすな…

51 19/02/11(月)22:14:55 No.568796656

花に実を付ける以外の価値を見いだしたっていいんだ

52 19/02/11(月)22:15:11 No.568796735

愛ちゃんもさくらも可愛い良作だった

53 19/02/11(月)22:15:44 No.568796899

花に嵐のたとえもあるさ

54 19/02/11(月)22:17:44 No.568797579

フフフこれは後日譚も読みたいのサインだよ幸太郎

55 19/02/11(月)22:20:17 No.568798488

わっち！もっと為になるアドバイスしなんし！

56 19/02/11(月)22:21:01 No.568798757

よか…さくらやーらしか…

57 19/02/11(月)22:21:31 No.568798921

え～わっちこういう初々しい話全然わかりんせん～

58 19/02/11(月)22:23:37 No.568799623

>花に実を付ける以外の価値を見いだしたっていいんだ 花が咲くことに一番意味のある花…何だよ桜じゃねえか…

59 19/02/11(月)22:24:41 No.568799962

ふにゃふにゃ顔で自慢げに語るさくらが容易にイメージできる

60 19/02/11(月)22:29:33 No.568801619

ひとしきりウザテンションで話した後にみんなの応援に感謝を言おうとして急に大泣きしそう

61 19/02/11(月)22:29:46 No.568801691

あらすじの時みたくなってるうざさくらはんが想像できる

62 19/02/11(月)22:35:48 No.568803700

寝る前に毎回ノロケを聞かされるせいで寝不足気味のサキはんに「お前彼氏やろ彼女の管理くらいキチッとやれや」って文句言われる幸太郎はんが見たいでありんすな