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19/01/29(火)02:07:23 「あな... のスレッド詳細

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19/01/29(火)02:07:23 No.565481940

「あなたは告白、しないんですか?」 「え」  一緒に屋敷の門を出るやいなや、紺野純子はそっと近づいて囁いた。彼女の朝のランニングに着いて行きたいというのは口実でしかない。  不意打ちに驚愕して青ざめた彼女の顔はまるでデスマスク、ということはなく。実際は見事なメイク顔料のお陰で顔色は少しも変わらない。しかし、狼狽は声に顕著にあらわれている。 「純子ちゃんなに言っとると? 私が、誰に」 「あら? 私の勘違いでしたでしょうか」  純子は屋敷を振り返ると、彼の、彼女たちのプロデューサーの部屋へ目線を向ける。 「このあいだの夜、みんなでお話していて、私は彼をお慕いしますと言ったでしょう。  あなたの反応を見て、あ、これはきっと同じ人をお慕いしてるなとピンときちゃったんです」 「そ、そんなことは」  驚愕を隠して曖昧な微笑みを崩さない彼女には、もう一撃必要か。 「とりあえず、私はもう告白しましたよ?」 「えー!?」

1 19/01/29(火)02:07:57 No.565482003

 振り向いたままよろよろと道路の真ん中へ後ずさっていきそうだったので、純子は慌てて彼女の手を掴んで引き止めると、二人で門柱の脇にしゃがみこんだ。 「あ、危ないですよ? 三度目は無事に済むかどうか……それで告白しないんですか?」 「ちょ、ちょっと待って順番に話して。もう告白したって本当なの?」 「はい。あの日のうちに。でも、なんというか……告白したのは本当ですけど、それだけです。  お慕いしていますが、お付き合いするつもりはありません、と一方的に言ったんです」  かえって困らせちゃったみたいです、と苦笑して舌を出した。 「ど、どうして!」  なんで、だって純子ちゃんなら、と続けようとするのを純子は手で制して、 「変なのは分かってますけど、何度考えてもそうとしか言えなくて。  ご存知の通り私、以前はずっとアイドルだったんですけど、アイドルしながら恋慕の情を抱いた方とずっと一緒にいるなんてことはじめてでした」 「それはそうやね……」 「だから、このまま黙ってるなんてできない、死んでしまうと思って、お部屋に押しかけて打ち明けちゃったんです。

2 19/01/29(火)02:08:38 No.565482110

 でもアイドルと恋の美味しいとこどりできるほど、私、器用じゃないですし」  昭和の伝説を作ってしまったアイドルである生前の私。  その記憶と才能をもって蘇ってしまった私は、アイドルに全力で打ち込むことしかできない。愛おしい彼がくれたステージで存分に輝いて見せることができるが、それは限界でもある。それ以外の生き方を選ぶなんて小器用なことは、それこそ生まれ変わらないとできやしない。想像もつかない。 「想わせてください。でも受け入れないでください。私もそれ以上は求めませんから。そう言いました」  そんな支離滅裂な言葉をこぼしながら泣きすがる私に、あの人はただ『分かった。俺はプロデューサーとしてずっと隣で支えてやる』と言った。  思い返すたびに純子は羞恥心で身悶えしそうになる。頬が赤らんでしまう。血、流れてませんけど。  彼女は神妙な顔で聞いていたが、小さく嘆息して、 「純子ちゃんはすごかね。アイドルに真面目で勇気あるし心も強かよ。  私は……うん、私も、好いとうと。

3 19/01/29(火)02:09:00 No.565482156

 でもあの時も正直にみんなに言えなかったし、忘れられないし、ずっとどうにもならないまま抱えてる。私、純子ちゃんみたいにはできんとよ」  純粋な彼女に尊敬されて、純子は嬉しさと後ろめたさを覚える。ごめんなさい。純子はそっと心のなかで謝る。本当はあなたの気持ちを勘づいてたのに、先に告白しちゃって。そのくせ今こうして、先輩のような顔であなたを応援しようとしていて。  恋を諦めることを決めても、せめてライバルの後手には回りたくない。姑息な、ちっぽけなプライド。 「告白しましょうよ。私の内緒話を聞き出したんだから」 「え!? 交換条件だなんて聞いとらんよ?」 「冗談です。でも告白しても良いと思いますよ。だって私が諦めたのはあの人じゃなくて私の事情ですし、関係ないじゃないですか」 「そうかな。私純子ちゃんみたくかっこ良く決まらんけど、いいのかな」 「大丈夫。私も応援します」 「……うん、純子ちゃんも決めて、告白したんやもんね。私もうじうじ立ち止まってられんよね」

4 19/01/29(火)02:09:12 No.565482180

 彼女はもう前を向こうとしている。彼女なら、生前を振り捨てて生まれ変われた彼女なら、自分にはできなかった無茶もできるのかもしれない、と思う。不器用な紺野純子には想像もつかない場所へ行ってしまうのかもしれない。 「もし熱愛発覚して一号さんは引退ですってなったら、私が二人分頑張りますしね」 「私もアイドル未練あるし、そうはならないといいな……」

5 19/01/29(火)02:10:09 [sage] No.565482329

以上です 純子ちゃんはおとなしく応援に回ってくれなくて難しいですね…

6 19/01/29(火)02:15:55 No.565483273

よか・・・ 純子ちゃんは控えめなようで結構我侭だからね

7 19/01/29(火)02:21:55 No.565484169

告白しながら振りに行っておるわこやつ

8 19/01/29(火)02:22:27 No.565484312

これぞ伝説の昭和のアイドル

9 19/01/29(火)02:25:52 No.565484825

>「想わせてください。でも受け入れないでください。私もそれ以上は求めませんから。そう言いました」 純子ちゃんはわがままだな…

10 19/01/29(火)02:41:18 No.565486835

コイバナよか…

11 19/01/29(火)02:43:58 No.565487151

純子も強い子だ…

12 19/01/29(火)02:45:30 No.565487328

それぞれの性格とかアイドル観とかそういうのいいよね…

13 19/01/29(火)02:50:21 No.565487991

これ威圧してませんか?

14 19/01/29(火)02:54:18 No.565488487

さくらはんの歳上感ある純子ちゃん

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