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    19/01/27(日)22:07:31 No.565192758

    佐賀を救う。 そんなありえない奇跡を、巽幸太郎という男がただ一人、信じた。 そして黄泉より連れてきた者達をアイドルにし、その白痴めいた願望に付き合わせる。 フランシュシュが成功してからも、佐賀を救えると信じていたのは、幸太郎ただ一人であったろう。 果たしてそれは実現した。 あり得ないことがいくつも重なって、ようやく実現されたことだ。 これはもう「持っている」と言わざるを得ない。誰もがそれを認めるだろう。 だが何事にも代償は付いて回る。まして奇跡に次ぐ奇跡の後だ。 ありきたりな不幸が起きて、彼と彼女達みんなが不幸な最期を迎えることも、本来ならばあり得ただろう。 しかし、そんなものは幸太郎にしてみればクソ食らえ。そうして、利息の殆どは踏み倒されてしまう。 「…そろそろお別れですね、幸太郎さん」 ただ、彼女達を除いては。

    1 19/01/27(日)22:07:51 No.565192879

    フランシュシュ最後のステージ。 それは果たして大盛況のうちに終わった。これで終わりになんてしないぞと言わんばかりに。 この熱狂が、高揚感が永遠ならばどんなにいいか。その場にいた誰もがそう思ったろう。 これほどの盛り上がりでも、解散。それではあまりに勿体無いではないかと。 納得するには足りないものが、山ほどある。 「えっとー、その、すみません。アタシら、そろそろみたいです」 目を疑う光景なら、何度だって見せられてきた。最初期からのファンであるデスおじ二人なら、なおのことそうだった。 だが。 「その…私たち、もうこの世から卒業しなくちゃいけませんから」 ───今までのことは、全て幻だったのか? フランシュシュはホログラフィーでかたどられた、非現実の存在だったのかと観客はざわついた。ステージ上のメンバーが、彼女達が薄らいでいくのを見れば、無理も無い。

    2 19/01/27(日)22:08:07 No.565192981

    「…私たちは本来、もうこの世にいるはずのない存在でした」 いつだったかそんな感じの噂もあった。大体のファンが、とうの昔に忘れ去っていたことだ。 それがまさか事実であったなどと、眼前のモノを目の当たりにして、受け入れられるものだろうか。 「嘘だ!」 「いいえ。残念ながら、嘘ではありんせん」 静まり返った場で、誰かが嘆くように叫び、今起こっていることを否定しようとした。そしてその否定もまた、即座かつ非情なまでに否定された。 「…ごめんね」 目に涙を浮かべながら、6号はそう言って頭を下げる。それに他のメンバーも続いた。 それを見てしまえば誰もがもう、受け入れるしかないだろう。 彼女達との、別れを。

    3 19/01/27(日)22:10:21 No.565193757

    そんな重苦しい雰囲気の中、突然胡散臭いグラサンがすっとステージにやって来た。 「フランシュシュプロデューサーの巽幸太郎です」 まず声がいい。ルックスも服装もいい。グラサンはダメ。胸ポケットからはみ出るゲソはもっとダメ。 こんな時に突然出しゃばるプロデューサーなんてダメダメのダメ。 その有様に毒気を抜かれ、観客は声も出ない。ついでに鬱屈とした雰囲気もなくした。 「突然のことで申し訳ありません。ですがこのタイミングでなければ、この告白は出来ませんでした。フランシュシュメンバーには制限時間があることも、彼女達がもう人間ではないことも、黙っていなければなりませんでした」 胸のゲソを0号に投げ渡し、それから人前で外すことのなかったサングラスを、幸太郎は外した。その2つは幸太郎にとって己を偽る虚飾の象徴。 それを取り去ったのは、彼が可能な限り嘘をつかないでいようという、決意の現れだった。 「彼女達は間もなくあるべき場所へ還るでしょう。どうかみなさん、その門出を潔く祝っていただきますよう、何卒お願い申し上げます」 言われた側は押し黙るしかない。そして、言われた通り受け入れるだけだ。

    4 19/01/27(日)22:10:34 No.565193823

    「んぐんぐ…ヴァウ。ファンのみなさん、わたしたちはこれでおしまいです」 観客のみならず、フランシュシュのメンバーすら仰天した。 4号なんかは仰天のあまり目が飛び出たので、慌てて拾いに行く始末だ。 「いまからながれるきょくは…わたしたちがうたう、さいごのきょくです。レクイエムっていえばいいのかな…とにかく、そのかしがスクリーンにながれますので、わたしたちといっしょにうたってください。よろしくおねがいします」 幼さが残る雰囲気、それでいて饒舌な0号の説明に感心するのも束の間、メロディーが流れだす。 それは確かにレクイエムだが、それだけじゃない。卒業式にピッタリ、かもしれない卒業ソングでもある。 「…私たちは残念ながら、これで終わってしまいますけど、皆さんには明日があります。見送られるのは私たちでもあり、ファンのみなさんでもあります。お別れするのはとても悲しいことですけど、幸太郎さん…巽プロデューサーが言ったように、喜ばしいことでもあるんです。ですからみんなで祝いましょう、今日という日を」 1号がそう言った後、会場にメロディーが流れだした。そしてスクリーンに曲名が映る。 『光へ』

    5 19/01/27(日)22:10:47 No.565193885

    「アイドルにしてくれて、ありがとう」 そう言い遺すと、フランシュシュは光の粒となって、いずこかへと消えた。 7人の持っていたマイクがごとりと落ち、伝説の終焉を告げる。 後には何も残らなかった。呆然として立ち尽くすもの、泣き出すもの、潔くその場を去るもの。 十人十色の有様がそこにあった。そしてその場の誰もが、フランシュシュを愛していた。 彼ら彼女らのこれからがどうなるかはわからない。幸太郎は、彼女らの門出をこの場で、あるいはどこかで見送った誰もがいい旅路を見つけてくれればと願った。 「アイドルになってくれて、ありがとう」 いなくなった彼女達にそう言って、幸太郎は会場を後にした。それから諸々の後始末をして、身辺を整理。 伝説のプロデューサー巽幸太郎もまた、フランシュシュを追うようにどこかへ消えた。 伝説は、そうして終わりを告げた。

    6 19/01/27(日)22:11:04 No.565193974

    「さて、どうしたものか…」 サラリーマンの青年は乾といった。 彼はそのルックスと器量でハンデ無視の順調な就職をすると、たちまちに活躍して頭角を現した。 高校卒業以降の経歴がサッパリだというのに、会社重役にも目をかけられているのだから、世の中とかく不公平なものである。 さて、そんな乾青年だが、もうじきアラフォーだというのに女性の影という者がまるでなかった。 男色なのかという噂まで出たものだから、これはどうにかしないとマズいぞと思い、乾はお見合いをすることになった。 人の噂、妬みというものは怖いものだ。だがそれが仕方ない程度には、彼の扱いが異常というより他ない。 彼にとって営業の極意と言えば、やはり顎クイだ。顎クイ恐るべしなのだ。 その顎クイで、多くの顧客先を悩殺してきた。 「お、この人がいいな」 乾のお眼鏡にかなった女性。彼女の名は、平もみじといった。

    7 19/01/27(日)22:11:17 No.565194044

    乾は今か今かと待ちかねていた。普段は落ち着いている彼だが、随分と焦っている。 それもそのはず、彼はもみじに一目惚れしてしまったのだ。 だからなんとしてもモノにする決意でいた。これを逃せば、もうこの先出会いらしい出会いはないに違いないと仮定し、背水の陣をしいてまで。 「まだか…まだなのか」 ぶつぶつと文句を言っても待ち人来るとはならないのだが、そわそわするのが止まらないのは女性経験がまるでない男のサガなのだろうか。 そんなことを乾が思っていると、コツ、コツとヒールの音が聞こえてきた。 「来たか!」 乾は勢い良く席を立ち、音のする方へと振り返った。 「はじめまして。平もみじです」

    8 19/01/27(日)22:12:16 No.565194306

    「…え?」 乾は戸惑った。いるはずのない誰かが、目の前に立っていたからだ。ひょっとしたら、自分は知らないうちに死んでいたのでは、あるいは幽霊にでも化かされているのかと思った。 「随分、探したんですよ?」 もみじは乾のことを知っている口ぶりだった。その頬は、ほんの僅か膨らんでいる。 「だってその、お前は、もう消えてなくなって」 「細かいことは気にしない気にしない。ほらほら、ちょっと触ってみてくださいよ」 そう言ってもみじは自分の頬を指差す。乾はそれに応じ、触ってみた。 「…温かい」 「ね?ちゃんと血が流れているでしょう?」 乾は数年前のことを思い出すと、彼女の変化をどこか寂しい物のように感じてしまった。 もうあの頃には戻れないのだなと。まあそれを言ってしまえば、彼だってもうサングラスは着用していないのだが。

    9 19/01/27(日)22:12:59 No.565194524

    >平もみじ あのこの名前って

    10 19/01/27(日)22:13:30 No.565194664

    源平

    11 19/01/27(日)22:14:17 No.565194879

    源平と 春の桜に秋の紅葉か

    12 19/01/27(日)22:15:03 No.565195071

    「私、高校卒業以来の経歴が不詳なんです。それでもあなたのお嫁さんになれますか?」 「…はい、なれますよ」 野暮なやりとりだと、二人は思った。 「私はあんまり運が良くないですし、あなたにたっくさん迷惑かけてしまうかもしれません。それでも貰ってくれますか?」 「はい、貰いますよ」 答えなんてもう決まってるのに。 「あなたとなら幸せになれますか?」 「はい。俺は持っとる男ですから」 出戻ってきた『彼女』を出迎えた『彼』は、そのまま『光へ』と旅立った。 月次な言葉になるが、めでたしめでたしと言うやつだ。 ちゃんちゃん。

    13 19/01/27(日)22:15:45 No.565195278

    よかったい…

    14 19/01/27(日)22:16:01 No.565195338

    ナイスハッピーエンド

    15 19/01/27(日)22:16:23 No.565195438

    >源平と >春の桜に秋の紅葉か 中の人からも取ってるのかも

    16 19/01/27(日)22:16:27 No.565195453

    ああ…よかったい

    17 19/01/27(日)22:16:41 No.565195514

    よかね…

    18 19/01/27(日)22:17:02 No.565195618

    ステージの上でのさよならよか…

    19 19/01/27(日)22:17:18 No.565195700

    幸せになるがいい…

    20 19/01/27(日)22:17:44 [sage] No.565195838

    ゾンビ!ゾンビやけん立て直しするんは仕方ねーんだ! 書くかどうか考えていたラストライブ後を慌てて付け足しました ちくしょう、でありんす…(スゥーッ

    21 19/01/27(日)22:17:58 No.565195895

    ゾンビィなんてファンタジーがある世界だもの何故か人間に戻ってるくらいのファンタジーもあっていい

    22 19/01/27(日)22:18:23 No.565196003

    >書くかどうか考えていたラストライブ後を慌てて付け足しました ありがとう…

    23 19/01/27(日)22:18:42 No.565196085

    見捨ててやらんって言うてくれたもんね乾くん

    24 19/01/27(日)22:19:18 No.565196238

    ED曲に真正面から答えてさらに先を描くその姿勢 よかね…

    25 19/01/27(日)22:19:56 No.565196406

    わっちこれ好き!

    26 19/01/27(日)22:20:00 No.565196428

    わっちはこういうのが読みたかった…(スゥー

    27 19/01/27(日)22:20:44 No.565196656

    他のメンバーも何処かで生きているのかね よか話でした

    28 19/01/27(日)22:20:50 No.565196684

    わっち安易なハッピーエンドすき…(スゥー

    29 19/01/27(日)22:21:32 No.565196893

    持っとる男だからな 奇跡なんて何度でも起こせる

    30 19/01/27(日)22:22:05 No.565197022

    全くタフな奴らだ…

    31 19/01/27(日)22:22:24 No.565197118

    幸せになりなんし!!!!

    32 19/01/27(日)22:23:21 No.565197412

    よか…本当によか…

    33 19/01/27(日)22:23:27 No.565197442

    俺は大好きだ きっと二人はその幸せに泣いている なんと美しい

    34 19/01/27(日)22:24:29 No.565197786

    世界を制覇しようとする金髪のバイカーとか頭から花生やしてるプロデューサー見習いとかいそうな世界

    35 19/01/27(日)22:25:07 No.565197960

    ゾンビ映画ならゾンビィがいなくなったと思っても最後になんやかんやで墓からドーンするからな…

    36 19/01/27(日)22:25:41 [sage] No.565198124

    >アラフォー アラサーの間違いでありんした(スゥーッ

    37 19/01/27(日)22:26:11 No.565198239

    わっちこういうのすきでありんスゥー

    38 19/01/27(日)22:26:49 No.565198451

    アラフォーで年下の奥さんもらうのもアリだと思いんす

    39 19/01/27(日)22:27:08 No.565198525

    みんな生まれ変わっているといいな…… 後年齢が近くてよかったな 昔ゲームでも生まれ変わりネタはあったけど成仏してから生まれていたから完全にロリコンになってたからね

    40 19/01/27(日)22:27:10 No.565198530

    わっちたちが消えてゆく…

    41 19/01/27(日)22:28:06 No.565198804

    10年後の再会ってのもそれはそれでロマンシングやん?佐賀だけに

    42 19/01/27(日)22:28:30 No.565198932

    魂と縁は時間を超えるインターステラー的な…

    43 19/01/27(日)22:28:57 No.565199072

    >わっちたちが消えてゆく… わっちはごくごく一般的な家庭に生まれてそうでありんす

    44 19/01/27(日)22:29:26 No.565199237

    光への歌詞最初に見た時はこんな感じの終わり方すると思ってた

    45 19/01/27(日)22:30:07 No.565199461

    日本史専攻の大学生わっち…そういうのもアリだと思いんす

    46 19/01/27(日)22:31:07 No.565199808

    >光への歌詞最初に見た時はこんな感じの終わり方すると思ってた 最終話までずっと成仏エンドも視野に入ってたからね…

    47 19/01/27(日)22:37:23 No.565201786

    >「私、高校卒業以来の経歴が不詳なんです。それでもあなたのお嫁さんになれますか?」 >「…はい、なれますよ」 駄目だった

    48 19/01/27(日)22:38:57 No.565202282

    やっぱりハッピーエンドだよなー!

    49 19/01/27(日)22:45:17 No.565204546

    >「私、高校卒業以来の経歴が不詳なんです。それでもあなたのお嫁さんになれますか?」 これどういうことかな 転生の辻褄合わせがアバウトってこと?

    50 19/01/27(日)22:46:03 No.565204798

    つまりゆらゆら消えた後にポップした感じか

    51 19/01/27(日)22:49:17 [sage] No.565205875

    >これどういうことかな >転生の辻褄合わせがアバウトってこと? 慌てて書いてたら卒業とか適当書いてましたが中退でありんすね いや、中退でいいでなんし…? …ある意味では卒業でも中退でも間違ってないってブラックジョークということで…

    52 19/01/27(日)22:55:08 No.565207836

    神がこんな気の効いたことしてくれるはずないから きっと天国なり地獄なりからみんなで大脱走してきたんだろうな

    53 19/01/27(日)22:55:20 No.565207914

    いい最終回だ…