19/01/26(土)17:50:34 巽幸太... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1548492634951.jpg 19/01/26(土)17:50:34 No.564839746
巽幸太郎は自室で作詞作業に耽っていた。 机の傍らにはメンバー達それぞれの詩が詰まれており、幸太郎は時折それを眺めながら自身で言葉を紡いでいく。彼女達の書いてきた世界は、彼に新鮮な感覚とひらめきを与えていた。 幸太郎自身、ラブソングを書こうとしたことは何度かある。だが実際に書いてみると、己が想像した以上に私情の入りまくった詩になり、やむなく断念せざるを得なかったのだ。 (誰に対しての私情かは、あえて言うまい) 自分自身に突っ込みながらも、幸太郎は走らせ続けていたペンを置いた。 出来上がりつつある詩を俯瞰して見てみる。だいぶ一般的なアイドルソングとしての体裁が整ってきたように思う。細かいところは詰める余地があるが、全体的な形はこれでいいだろう。 「後で愛の所に持っていってみるとするか」 幸太郎は独り言で作業を一旦締め、凝り固まった背と肩をぐっと伸ばした。
1 19/01/26(土)17:51:02 No.564839857
ドンドン、と強いノックが扉から聞こえてくる。幸太郎の了解を得る前に扉を開けてきたのは、山田たえであった。彼女に関してはいつものことなので、幸太郎は動じない。 たえの手にはコーヒーカップが乗っている。いつぞやの時以来、たえはこうして幸太郎にコーヒーを入れて持ってくることがある。メンバー達や幸太郎にも褒められたので彼女は自分で続けているのだろう。 ただこちらの状況とは関係なく持ってくるため、持ってきた3分後に二杯目が来たこともある。おそらく彼女が暇を持て余している時にこれは行われるのだろう。自身も休憩しようとしていたため、今回は良いタイミングであった。 「おう、たえ。いつもすまんのう」 たえからカップを受取り、口をつける。今回は糖分多めであった。疲れた脳に実に心地よい甘みである。 御礼を言おうと視線を上げると、たえは幸太郎の目の前に一枚の紙片を突き出していた。 「・・・これはなんじゃい?」 とりあえず受け取ってみる。そこに書かれているのは、文字には見えないほど歪んでいるが、よく見れば文字であった。
2 19/01/26(土)17:51:33 No.564839978
その意味をしばらく考えていた幸太郎だったが、目の前のたえと紙片を交互に見比べて、ようやくその意味を理解できた。 「もしかして・・・お前も書いたんかい?」 「ヴァッ」 こくり、と頷くたえ。その姿に、幸太郎は自然と優しい笑みを浮かべていた。 恐らくは作詞作業をしていたメンバー達の行為を見て、自分もやろうと思ったのだろう。きっとさくらあたりが書き方を教えたに違いない。 幸太郎は再び、たえの詩が書かれた紙片に目を落とす。力の入れ方が分からず潰れて歪んだ文字。それには彼女のありったけの想いが物理的に叩き付けられているようであった。 幸太郎は椅子から立ち上がり、たえの頭を優しく撫でる。 「ありがとう、たえ。この詩はしっかり読ませて貰うからのう」 「ヴァヴァー」 『よろしく』とばかりに、たえはお辞儀をして部屋を去って行った。その姿を見送り一人になった部屋で、幸太郎は頭を掻きながら自戒するのだった。 「まったく・・・プロデューサー失格じゃい」
3 19/01/26(土)17:52:03 No.564840093
気を取り直して幸太郎は椅子に座った。たえのコーヒーを飲みながら、休憩がてらに彼女の詩に目を通す。 『、ナ < ら』『、ナ 、キ』『ぁ レヽ』『ι″ゅω⊇』 『ゅぅ、キ″丶)』『丶) 丶)ぃ』『зめз』『⊇ぅ ナニ зぅ』 いったい何の呪文だ、と幸太郎は顔をしかめる。しばらく紙面とにらめっこをしていた彼だったが、最初に書かれた『、ナ < ら』の文字が『さくら』と読めることに気づいた。 「・・・名前か」 ご丁寧に自分やロメロの名まである。これでは詩ではなく連絡帳だ。そんな風に思いながら視線を落としていくと、紙片の最後に三節の文字があるのを見つけた。 『ゐ ω ナょ』『レヽ っ ιょ』『ナょ カゝ ま』
4 19/01/26(土)17:52:33 No.564840184
コーヒーの熱ではない。胸の内から暖かくなる感情を、幸太郎は感じていた。 確かにこれはラブソングだ。男女の関係だけには収まらない、もっと大きな『愛の歌』。 「全く持って、この才能を見抜けなかったのはプロデューサー失格としか言いようがないのう」 自虐を含んだ独り言だったが、その顔は笑っていた。 幸太郎はもう一度椅子から立ち上がった。机の上のカップを手にしながら、閉めていた窓を開ける。 ゆるやかな風が室内に吹き、カーテンを優しく撫でていく。その風に髪を弄ばれながら、幸太郎はたえの詩をもう一度思い出していた。 『みんな』『いっしょ』『なかま』 「ああ、本当にいい詩(うた)だ」 幸太郎はそう呟いてコーヒーを飲む。 差し込む陽光は、そんな彼を暖かく照らしていた。
5 19/01/26(土)17:53:35 [sage] No.564840400
ラブソングシリーズはこれにて終了 ちょうどキリよく30作になったのでわっちはしばらく怪文書休憩でありんす まとめ su2852154.txt
6 19/01/26(土)17:54:13 No.564840536
ナイスよかったい! たえちゃん可愛い!
7 19/01/26(土)17:55:47 No.564840879
心に溢れる暖かさで浄化されるでありんスゥーッ…
8 19/01/26(土)17:58:39 No.564841517
これもまたラブ… コーヒー入れてくれる美人のお姉さんとは羨ましい
9 19/01/26(土)17:59:41 No.564841745
よか・・・
10 19/01/26(土)17:59:45 No.564841761
フランシュシュの家族愛… わっち好きでありんす!
11 19/01/26(土)18:01:32 No.564842168
よか… また気が向いたら書いてくれなんし 待ってるでありんす
12 19/01/26(土)18:05:51 No.564843054
たえお姉さま書いてくれた「」だったのか…いつでも戻ってくるんじゃい
13 19/01/26(土)18:06:26 No.564843175
ほのぼのとしてよいでありんすな…
14 19/01/26(土)18:09:49 No.564844059
>ただこちらの状況とは関係なく持ってくるため、持ってきた3分後に二杯目が来たこともある。 覚えたことをやりたいたえちゃんかわいい…
15 19/01/26(土)18:12:12 No.564844628
わっちも心があったかくなりん(スゥー
16 19/01/26(土)18:32:05 No.564849532
>su2852154.txt どれも好きな文ばかりだよ また待ってるね
17 19/01/26(土)18:32:19 No.564849591
たえちゃんはいい子だなあ!
18 19/01/26(土)18:41:30 No.564851620
よかったい…
19 19/01/26(土)18:42:02 No.564851741
たえちゃんの仲間思いなところ凄くいいよね たくさん書いてくれてありがたい…
20 19/01/26(土)18:43:48 No.564852116
たえちゃんの怪文書は希少だな…