虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    19/01/19(土)21:59:25 No.563216658

    吾輩はロメロ。この洋館を守護する番犬である。 だが我輩の精神は単なる犬ではない。御主人である巽幸太郎を守護るべく、屍としての生を得た一人の紳士たる存在である。 御主人と我輩だけの住まいであったこの館にも、随分と人間が増えた。 その人間たちは同じ屍ではありながら、我輩と比べて随分と騒々しい者たちばかりである。住み始めた頃の静けさはもはや存在しない。 だが、それを御主人は喜んでいる様子だ。 ならば受け入れるべきであろう。御主人の喜びは、吾輩にとっても喜びであるからだ。

    1 19/01/19(土)21:59:54 No.563216814

    関先で蹲っていた我輩は体を起こす。仮眠後の感覚からしておそらく深夜二時ほどであろう。 我輩は足を動かし洋館の周囲を歩き始める。内部はもう消灯しているため、月明かりを頼りに歩を進めた。 その視界に、月明かり以外の光が差し込んでくる。明かりの消えていないその部屋は、我が御主人の部屋であった。 やはりか、と我輩は頭を振り、嘆息する。 我輩は光を放つ窓枠に跳躍すると、硝子の窓をそっと前足で叩く。しばらくして窓の鍵が内側から解除され、窓が開けられた。 「ロメロか。どうしたんだ?」 御主人は我輩の体を持ち上げると、自らも姿勢を低くしながら部屋の中にそっと下ろした。 普段なら尻尾を振り喜ぶところだが、今はそうも言っていられぬ。我輩は御主人の横をすり抜けると、椅子を経由して机の上に飛び乗った。 視線の先の光景に吾輩は激怒した。机の上の機械の画面――モニタと呼ばれるそれは煌々と光を放っている。 我輩は前足を用いてその機械の電源装置を押し、光を放つ画面を黒く変化させた。

    2 19/01/19(土)22:00:24 No.563216964

    「こらこら、仕事の邪魔をしちゃいかんぞ」 吾輩の行動に気づき、御主人が再び装置を押そうとするが、吾輩は体で装置を隠して止める。 御主人には申し訳ないが、これ以上続けさせるわけにはいかぬ。 近頃の御主人は毎日眠りが少ない。特に人間の屍たちと外への活動を始めてからは特に顕著だ。 確かに、屍である彼女らを外に出す行為は正体の看過に繋がる行為であるが故、御主人が外部との折衝を行うことは必然であろう。 だが大きな問題が一つある。吾輩たちは死した存在であるが、御主人は生ある人間なのだ。 人間が健康で文化的な生活を送るためには、豊かな食事と適切な睡眠が不可欠である。と、以前雑誌で読んだことがある。 ここ最近は部屋の明かりが消えてから起きるまで三時間ほどの日が続いている。御主人の色眼鏡の下、眼下に疲労が蓄積されているのは、おそらく吾輩だけが知る事実だ。 であればこそ、吾輩が動かねばならぬだろう。 隙間を狙い動く御主人の指先を、吾輩は決死の覚悟をもって防ぐのであった。

    3 19/01/19(土)22:00:54 No.563217110

    「むぅ、困ったやつだな。そんなにここで寝たいのか?」 正確には寝るのは吾輩ではないが、消灯させ御主人を寝台に連れて行くのが目的である。吾輩はその通りとばかりに鳴き声を返す。 そんな吾輩を見て、御主人は困ったように頬を掻く。 「分かった分かった。今日は休むから、データの保存だけさせてくれ」 解っていただけてなによりだ御主人。 吾輩は頷くと、電源装置から体を離す。御主人が画面を再度つけて機械の操作を再開した。 勿論、吾輩はすぐ近くでそれを監視する。そのまま続けてしまわれては困るからだ。 「まったく心配性じゃのう、ロメロは。よし、終わりじゃい」 御主人はおどけた口調でそう言いながら、両手で機械を操作し続けると、機械から音が鳴って画面が再び黒くなった。 どうやら保存とやらが終わったようだ。うむ、何よりである。

    4 19/01/19(土)22:01:29 No.563217271

    「ではロメロ様の進言通り、就寝させていただくか」 御主人は吾輩の頭を一撫ですると、寝間着に着替え始めた。 それを横目に見ながら吾輩は寝台へと飛び乗る。そして枕元の電燈の紐を引き、明かりをつけた。 着替えた御主人は、部屋の電気を消して寝台に腰を下ろす。そして色眼鏡を外して寝台の上に置いた。 薄暗い橙色の電球色でもはっきりと分かる、御主人の目に広がる大きな隈。それはまるで屍たちの様な目。 御主人の体調は思っているより悪いのではないか。吾輩は心配になり御主人に駆け寄って鳴き声をかけた。 そんな吾輩の頭に、御主人はそっと手を添える。 「・・・すまんな、お前にまで心配をかけて。だが大丈夫だ。俺は倒れたりせん。あいつらが佐賀を救うには、まだまだ俺の力が必要だからな」 そう言った御主人の顔は笑っていたが、どこか吾輩には儚く映った。 この時ほど、言葉を伝えられぬということがもどかしく感じたこと無い。

    5 19/01/19(土)22:02:03 No.563217450

    御主人は毛布の中に潜り込み、電気を消す。暗闇の中で御主人の声が聞こえた。 「おやすみ、ロメロ」 吾輩は小さな鳴き声で返事をした。自身も身をくるめて就寝の体勢に入る。 やはり疲労があるのだろう。御主人はすぐに安らかな寝息を立てていた。 犬である身の吾輩には、出来ることは限られている。 このような行為でしか御主人を労わることは出来ぬ。 故にせめて、せめてこの一時でも、何人も妨げらぬ安らかな眠りを御主人へと届けたもう。 暗闇の視界にぼんやりと映る御主人の顔を眺めながら、吾輩はそう思うのであった。

    6 19/01/19(土)22:02:35 No.563217638

    ロメ巽よかね・・・

    7 19/01/19(土)22:03:25 No.563217928

    ロメロには素直じゃないか巽…

    8 19/01/19(土)22:03:40 No.563218025

    忠犬ロメ公!

    9 19/01/19(土)22:03:45 No.563218074

    忠犬すぎる…

    10 19/01/19(土)22:03:46 No.563218083

    忠犬ロメ公よか…

    11 19/01/19(土)22:03:53 [sage] No.563218130

    とりあえずこれでロメロシリーズ終了です リクエストしたわっち! 全員書きんしたよ! しっかし喋れないってほんと大変でありんした・・・ まとめ su2838238.txt

    12 19/01/19(土)22:06:24 No.563219044

    ロメロも勿論フランシュシュの大事な仲間だ… 可愛いよねお利口さんで

    13 19/01/19(土)22:06:42 No.563219138

    ナイスロメロでありんした お疲れ様でありんす

    14 19/01/19(土)22:06:47 No.563219171

    死してなお忠犬いいよね…

    15 19/01/19(土)22:07:58 No.563219588

    ロメロに優しい幸太郎ほんとよか… 可愛がってるよねロメロのこと

    16 19/01/19(土)22:08:18 No.563219690

    >と、以前雑誌で読んだことがある。 ロメロ凄い…

    17 19/01/19(土)22:08:48 No.563219836

    >リクエストしたわっち! 全員書きんしたよ! 名誉わっち賞を贈呈するでありんす!! 毎回楽しみにしとらしたよ!!

    18 19/01/19(土)22:09:00 No.563219900

    やっぱロメロまで込みでこそのフランシュシュだな

    19 19/01/19(土)22:09:59 No.563220208

    >ロメロに優しい幸太郎ほんとよか… >可愛がってるよねロメロのこと 出かける時連れて行くこと多いよね 巽の心の癒しなのかもしれんな

    20 19/01/19(土)22:10:30 No.563220368

    ロメロが心配してるのをきちんと理解してるのがとてもいいと思います

    21 19/01/19(土)22:16:40 No.563222293

    どの作品も雰囲気大好きだ

    22 19/01/19(土)22:20:41 No.563223461

    こう言うのずっと読んでたい

    23 19/01/19(土)22:26:17 No.563225145

    ロメロのジェントルマンぶりに惚れてしまう

    24 19/01/19(土)22:26:48 No.563225297

    ロメちゃん…

    25 19/01/19(土)22:40:28 No.563229883

    割と抱っこしてるよねロメロのこと