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19/01/14(月)02:01:41 冬の佐... のスレッド詳細

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19/01/14(月)02:01:41 No.561864727

冬の佐賀、澄み渡った青空を、昇ってゆく朝日が焦がす。 長く伸びた湾岸線を孤独に駆けてゆく、この空のように青いマシン。 それを駆るのは男が一人。 深海マコト、またの名をスペクター。仮面ライダー・スペクター。 暖簾をくぐり、ガラリと引き戸を開けると、大将の威勢のいい声が出迎える。 時刻は夕刻を過ぎ、店の中は客で賑わっていた。 マコトはこの土地を訪れて日が浅い。それでもこの行きつけに観光客の姿が増えている事はわかった。 単なる事実だ。だが、それを喜ばしく感じている自分がいる。 「珍しいでありんすなぁ、マコトはんの忍び笑い」 バツの悪い顔をするマコトを見て、いつの間にか隣に立っていた女は悪戯めいて微笑んだ。

1 19/01/14(月)02:01:57 No.561864780

女はゆうぎりと名乗った。 どうやって出会ったのかももう朧気だが、ここで過ごす時は大抵隣にいる。 「あの煩いのはどうした?」 「グリッドはんなら、急に用事があると出ていきんした。大方、裕太はんに何かあったんでありんしょ」 そう、普段ならもう一人交えていたのだが……真っ直ぐ過ぎて逆に掴みどころのない男だ。ほんの少し、タケルを思い出した。 「マコトはんに煩いと言われちゃ、グリッドはんも悲しむでありんすよ」 「お前に言われるほどじゃない」 気の置けないやり取りに興じていると、大将が何か言いたげにマコト達の方を凝視している。 しまった、注文をまだしていなかったなと、マコトは急いで『いつもの』を頼んだ。 大将は多少狼狽えつつも、相も変わらぬ威勢のいい返事で応じてくれる。 今日は客が多い。首を傾げながら接客に戻る大将に、マコトは心の中で手刀を切った。

2 19/01/14(月)02:02:40 No.561864898

バイクで移動しているため、マコトは酒を呑まない。 そして、この店は居酒屋だが、小料理も絶品というのが売りだ。 普段眼魔世界でたこ焼きばかり食べているマコトにとっては、斬新な体験だった。 「相変わらず、美味しそうに食べるお方どすなぁ」 「美味いからな」 マコトとしては真面目に返したつもりなのだが、ゆうぎりはそれを聞いてまた笑った。 よく笑う女だと、マコトは常々思っている。 自分の仲間の事はよく話すゆうぎりだが、自分の事は語りたがらない。 彼女についてわかるのは、家族のように暮らす仲間がいる事、自称花魁である事。 彼女達でフランシュシュというアイドルをやっている事。そして、彼女の歌声は生きる意志に満ちているという事。 「そんなにじろじろ見られたら、わっち穴が空いてしまいんすよ」 後は、その端正な容貌で、他人をからかう事くらいである。 マコトは頬張っていたおでんの卵で盛大に咽た。

3 19/01/14(月)02:02:59 No.561864950

店内はいつにも増してごった返している。 「今日は客が多いな」 「最近わっち達のライブにも、他県の方が目立つようになりんしたからなぁ」 「よかったじゃないか。順調そうで」 「あい……とはいえ、こういう時はゆるりと静かに過ごしたいものでありんす」 「同感だ」 大将がまた何か言いたげにマコト達の方をちらちらと伺った。やはり長居すべきではないようだ。 ゆうぎりも同じ様に考えていたと見え、席を立つ準備をしている。二人は一緒に会計を済ませた。 「マコトはん、今日は……」 「ああ、そうだな。行こう」 マコトはバイクのシートに入れっぱなしの、妹用のメットをゆうぎりに放り投げた。 彼女が目を丸くしているところを、マコトは初めて見た。

4 19/01/14(月)02:03:19 No.561864996

すっかり日の落ちた街を、青いマシンが駈ける。 それを駆る男と、その後ろにしがみつく女。 男の青と女の赤。服装のコントラストが夜だというのに際立って見えた。 どこに行くでもなく、マシンはただ走る。 そう、行き先を考えていなかったからだ。 「これが『つーりんぐ』というやつでありんすか」 「まあ……そう、なるか……」 こうして目的もなく走るのも、妹以外を後ろに乗せるのも、マコトにとっては珍しい事である。 街を抜け、湾岸線に出る。水平線に浮かぶ三日月を横目に、バイクはどこまでも行く。 道すがら、二人はいつものように、大声で語らった。 幸太郎とさくらの事、裕太と六花の事、グリッドマンが結局どのくらい裕太だったのかという事。 話題はいくらでもあった。きっとこの道の果てよりも。

5 19/01/14(月)02:03:36 No.561865044

物事の終わりは突然にやってくるものだ。 ゆうぎりのナビゲートに従って、彼らがたどり着いたのは鏡山展望台である。 「夜の夢の松原……一度見ておきたいと思っておりんした」 「そんな物好きお前くらいのものだと思うがな」 バイクを降り、マコトはシートからブランケットを取り出した。勿論、妹用のものだ。 また投げて寄越されるだろうと構えたゆうぎりの肩に、ふわりとかけてやるだけの気遣いが彼にもあったようだ。 「あら、お気遣いありがとなんし」 「お前にはいつも世話になっている、礼などいい」 色気も何もないやり取りだ。だが、それが彼らの距離なのだろう。 歩調を合わせ、歩いて行く二人。 その目の前の地面が、唐突に爆ぜた。

6 19/01/14(月)02:03:52 No.561865093

現れたのは、青い幽鬼だ。 頭部に二本の角を持ち、夜の闇に溶け込む黒い体の端々が、青白く鬼火めいて発光する。 それは紛れもなくスペクターであり、深海マコトの内の『一人』であった。 「……そっちから、出向いてくれるとはな」 何も言えないでいるゆうぎりを庇うように、マコトは一歩前に出る。 握りしめられた拳に、覚悟が漲る。 ゆうぎりとあれだけ言葉を交わしておきながら、話さなかった事。彼が佐賀に訪れた目的。 誰も知らぬ彼の背負った罪。そして、これから背負う罪。 彼は今から自分の兄弟、その生き残りの命を、自ら手にかけるだろう。 「ゆうぎり」 いつもとは違う彼の声を、ゆうぎりは聞き逃してはならないと悟った。 「俺の生き様、見せてやる」

7 19/01/14(月)02:04:11 No.561865152

さっきまで命だったものが辺り一面に転がる。 今、深海マコトの兄弟が一人死んだ。殺したのはマコトだ。消えゆく様を見届けたのも、マコトだ。 ゆうぎりはそれをただ見ていた。 変身解除とともに、幽鬼の仮面が剥がれ、マコトの素顔が曝け出される。 彼のそんな悲壮な表情を、ゆうぎりは初めて見た。 「ここでの俺の役目は、終わった」 それだけ言うと、マコトは歩き出した。ゆうぎりも隣を歩いた。 やがて展望台の頂上にたどり着くと、もう空には朝焼けが広がっている。 「すまないな、見たかったのはこんなものじゃなかっただろ」 「……」 「本当に、すまない」 目を伏せるマコトの横っ面に、ゆうぎりの平手が弾けた。

8 19/01/14(月)02:04:28 No.561865183

「相変わらず、痛いな」 「マコトはん」 二人の目が合う。 「わっちはもう死んでいる身でありんす。これで秘密はおあいこでありんしょう」 「……気づいていた、心臓の鼓動を感じなかったからな」 「あら、そうでありんしたか。ま、乙女の柔肌を楽しんだならおあいこでよござんしょ」 「……人聞きの悪い事を」 そう言って、お互い我慢ができなくなったように笑いあった。 彼らの人生はそんな軽々しく笑い飛ばしていいものではないかもしれない。 それでも、彼らはまた語り合って、また笑いあった。 今度は自分達の事も仲間達の事も、洗いざらいぶちまけて。

9 19/01/14(月)02:04:46 No.561865232

ゆうぎりの住まう洋館近くの道まで、マコトは彼女を送った。 「マコトはん、朝焼け綺麗でありんしたな」 「ああ、見に行ってよかった」 「……わっちもあの太陽のように、燃え上がるように生きたいでありんすなぁ。もう死んでいんすが」 「ならば、俺はあの青空のように生きよう。昇る太陽をいつまでも見守っている青空に」 ゆうぎりが黙ってしまったので、マコトも黙った。もしかして、笑うところだっただろうか。 「じゃあお互いの生き様に、指切りでもしんしょうか」 「ん、ああ」 まるで子供のように小指を交わして、彼らは別れた。 マコトはゆうぎりの後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、メットを被り直してバイクを走らせた。 冬の佐賀、澄み切った青空に朝日を浮かべた、水平線を目指して。

10 19/01/14(月)02:04:51 No.561865244

また自分と戦ってる…

11 19/01/14(月)02:05:04 No.561865283

湾岸線を行くマシンが一つ。 その青空のように青いマシンを駆る男の胸元で、スマートフォンが震えた。 停車して確認するマコトの目の前に現れたのは、ハイパーエージェントの姿だ。 「マコト、君は大きな壁に立ち向かい、そして乗り越えた。君の勇気を私は忘れない」 「……いつからそこにいた、グリッドマン」 何故そんな事を気にするのかわからないが、問われれば答えよう。 「最初からだ」 「グリッドマン!!!!!!1!!お前はキモい!!!!1!!!!!!11」 今回はそういう顛末だったんだ。 彼らの友情、思いに私は心打たれたんだ、幸太郎。 何故、青い顔をしているんだ幸太郎、勇気をもって、どんな恐ろしい壁にも立ち向かうんだ!

12 19/01/14(月)02:06:36 No.561865495

グリッドマン!!!!!

13 19/01/14(月)02:06:59 No.561865554

グリッドマンはさぁ…

14 19/01/14(月)02:07:49 No.561865670

グリッドマンお前なぁ!?

15 19/01/14(月)02:08:25 No.561865756

お前かよ!

16 19/01/14(月)02:08:47 No.561865814

これ全部グリッドマンがスマホの中に潜り込んで監視してた話を幸太郎に伝えたらって事…?

17 19/01/14(月)02:08:50 No.561865819

グリッドオオオオ…地の文!!!

18 19/01/14(月)02:11:54 No.561866246

アイドル朝まで連れ回したら流石に保護者の方も事情聞きたくなるじゃん そんな感じです

19 19/01/14(月)02:12:23 No.561866325

グリッドマンフリーだからってさぁ…

20 19/01/14(月)02:14:18 No.561866593

グリッドマンは悪くないよ(裏声)

21 19/01/14(月)02:15:56 No.561866817

ハイパーエー自演トはさぁ…

22 19/01/14(月)02:15:57 No.561866823

ありがとう裕太!

23 19/01/14(月)02:16:02 No.561866835

ありがとう裕太(裏声)

24 19/01/14(月)02:16:49 No.561866957

ありがとう裕太!

25 19/01/14(月)02:16:51 No.561866966

気ブリッドマンはさぁ…

26 19/01/14(月)02:17:19 No.561867028

三連自演感謝ッドマン来たな…

27 19/01/14(月)02:18:13 No.561867146

でも二人の監視する絶好のポジションにつけるならやるよね

28 19/01/14(月)02:19:03 No.561867260

ゾンビの怪文書文化が気ぶり同盟まで侵略してる…

29 19/01/14(月)02:20:31 No.561867453

まあ多分グリッドマンに悪意は無い…無いよね?

30 19/01/14(月)02:20:56 No.561867511

というか帰らずに裕太監視してないかこいつ…

31 19/01/14(月)02:21:28 No.561867577

>まあ多分グリッドマンに悪意は無い…無いよね? 騎士ガンダム並の正義の塊だからそれはない それはそれとしてド天然

32 19/01/14(月)02:24:32 No.561867986

邪魔をしては悪いな(グリッド気遣い)

33 19/01/14(月)02:25:34 No.561868100

二人の微妙な距離感を心配して…

34 19/01/14(月)02:25:58 No.561868143

幸太郎は佐賀を救う山の大きさをまたひとつ実感したという ありがとうグリッドマン!!

35 19/01/14(月)02:26:29 No.561868213

…佐賀に湾岸線?

36 19/01/14(月)02:26:45 No.561868235

>道すがら、二人はいつものように、大声で語らった。 >幸太郎とさくらの事、裕太と六花の事、グリッドマンが結局どのくらい裕太だったのかという事。 >話題はいくらでもあった。きっとこの道の果てよりも。 いい雰囲気だけどよく読んだら話題気ぶりだけじゃねえか!

37 19/01/14(月)02:28:26 No.561868411

>…佐賀に湾岸線? ミラーワールド(埼玉)みたいな感じだよ

38 19/01/14(月)02:32:33 No.561868907

スレ画がラストでグリッドマンが振り向いたシーンに見えてきた

39 19/01/14(月)02:33:21 No.561869023

なんなの!?

40 19/01/14(月)02:35:17 No.561869262

裕太と六花からしたら知らない美男美女に話題にされてる謎の光景だよね…

41 19/01/14(月)02:37:37 No.561869552

割と話してる内容いつも通りだなこの二人…

42 19/01/14(月)02:40:15 No.561869884

他の怪文書と指切りで被っててダメだった

43 19/01/14(月)03:03:06 No.561872561

>「……わっちもあの太陽のように、燃え上がるように生きたいでありんすなぁ。もう死んでいんすが」 >「ならば、俺はあの青空のように生きよう。昇る太陽をいつまでも見守っている青空に」 この辺めっちゃいい雰囲気なのにグリッドマンはさぁ…

44 19/01/14(月)03:17:41 No.561874004

マシンフーディーは時として空を翔る 青空を願うマコト兄ちゃんの傍にいつもいてもらいたい

45 19/01/14(月)03:19:12 No.561874167

>…佐賀に湾岸線? あ、有明沿岸道… ごめん佐賀まだマトモに来てねえや

46 19/01/14(月)03:22:09 No.561874469

Vシネ後のマコト兄ちゃんはIQ高いから安心して見てられるな…

47 19/01/14(月)03:24:01 No.561874637

幸太郎もよくグリッドマンとコネクションあったな

48 19/01/14(月)03:25:51 No.561874826

元々あの飲み屋で飲んでたの幸太郎だからな!

49 19/01/14(月)03:30:18 No.561875278

>幸太郎もよくグリッドマンとコネクションあったな­ ウルティメイトフォースゼロのメンバーだしな

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