虹裏img歴史資料館

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19/01/13(日)01:20:08 ―私は死... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1547310008466.jpg 19/01/13(日)01:20:08 No.561568066

―私は死んだはずだった。 車に轢かれて死んだ私は、その事を満足に思い出す間もなく、プロデューサーを名乗る人物からアイドルになれ、と告げられた。 訳がわからない。だが常人とは思えぬ強引さとハイテンションに押し切られ、私はステージに立つ事となった。 その後意識を取り戻したゾンビィたちと共に、私たちは衝突もありながらも実績を積み重ねていく。 初の単独ライブでは会場損壊のトラブルがありながらも、皆の団結で成功裏に終わらせる事ができた。 それにしても、あれだけの大トラブルにも全く動じることなく、手拍子を打ってライブを続行させたプロデューサーの胆力には驚かされる。 何はともあれ、伝説に残るライブとして私たちの知名度は急上昇。私たちはもっと高みへ行ける。誰もが明日への希望を疑わなかった。

1 19/01/13(日)01:20:46 No.561568247

―プロデューサーが死んだ。 イベントや巡業が増え、さあこれからだ、という矢先だった。 死体に縋りつき、メンバー全員が声をあげて泣いた。私たちを見捨てて逝くのか、と口々に叫んだ。 自室の椅子に座りながら、腹立たしいほど安らかな笑顔だった事がせめてもの救いだった。 PCにはプロデューサー業の引継ぎやノウハウが事細かく遺されていた。まるで自分の死期を悟っていたかのように。 その用意周到さに呆れながらも、あの人らしい、と思った私は、涙に濡れた顔で少し笑った。 身辺整理を行っても、結局プロデューサーの素性はわからなかった。 誰に葬儀を頼めばよいのかもわからず、話し合った末、館の裏庭に墓を作った。 死んでも一緒にいられると思えば、この選択も悪くない。

2 19/01/13(日)01:21:56 No.561568604

―私たちの知名度が全国規模となり、県を盛り上げる使命を果たしたと判断した時。私たちはグループ解散を発表した。 全国規模での活動はゾンビィバレのリスクが飛躍的に高まる。ここが潮時だ、という判断だった。 これからは規模を縮小するものの、ソロや少人数でこの県での活動は続けていく予定だ。 私も勿論そのつもり…だった。あの男性に会うまでは。

3 19/01/13(日)01:22:59 No.561568933

―その男性は徐福と名乗った。なんとも怪しすぎる。間違いなく本名ではないだろう。 聞けば、彼こそがゾンビィの秘密を知っているという。ゾンビィを知ってるのだから、信じざるを得ない。 そして彼曰く、その経験を生かしてプロデュース業をやってみないか、と言う。 私のような、不慮・無念の死を遂げた子たちを蘇らせ、地域活性化の活動をして欲しい、と言うのだ。 初めは拒絶した。死者を冒涜して活動させる重圧に、私が耐えられるはずがない。 しかし彼は、その返答を予想していたかのようにゆったりと言葉を紡ぐ。 だが君はこの境遇に満足しているはずだ。君は、君と同じように再びの生と目的を与えるだけなのだ、と。 私は数日の猶予を貰い、かつてないほどに悩み、心を決めた。やります、と再会した男性に告げた。 私が2度目の生で得たものを、今度は私が与えるのだ。男性はとても満足げに頷いた。

4 19/01/13(日)01:23:55 No.561569166

―私は地元の県を離れ、プロデュース活動を始めた。この県も、負けず劣らずの過疎っぷりだ。 私が見出した死亡者のプロフィールを男性に送ると、男性は後日ゾンビィとなった彼女らを連れてきた。 ・・・彼は本当に何者なんだろう。 数日の試行錯誤の後、彼女たちは徐々に自我を取り戻してきた。 事情を飲み込めない彼女らを集め、先代仕込みのハイテンションなノリでアイドルとして活動してもらうことを告げる。 当然巻き起こる非難と困惑の嵐。懐かしいなあ。私の時もこうだったなあ。 だが彼女らの文句など聞く気はない。早速活動を開始せねば。彼女たちの伝説はここから始まるのだ。

5 19/01/13(日)01:25:27 No.561569588

―近頃、体の劣化が激しい。意識を保つのもやっとだ。私ももう長くはないだろう。 思えば、蘇って相当な年月が経っている。原理もわからぬゾンビィである、随分と長持ちしたと言えるだろう。 ・・・しかしこれは想像だが、この寿命は経年によるものではないと思う。 私はご当地アイドルとして地元の県を救うという突拍子もない目的を成し遂げ、更に過疎化に喘ぐこの県の活性化を目指して、今度は自分がプロデューサーとしてアイドルの卵を導く立場となった。 当初は問題も山積み、慣れない活動にミスも多かったが、今やこの県において確固たる知名度を確保している。 もう、私の仕事は終わったのだ。あとは彼女たちだけでもやっていけるだろう。 ああ、プロデューサー…貴女もこんな気持ちで死を迎えたのですね。 …もうすぐプロデューサーに会えると思うと、2度目の死も不思議と怖くない。

6 19/01/13(日)01:25:31 No.561569604

平もみじ…

7 19/01/13(日)01:27:14 No.561570095

―某県の人の立ち寄らぬ洋館の裏手に、質素な墓がある。 その墓のそばで、一人のゾンビィが死んでいた。 顔には満足感に満ちた笑みを浮かべ、さくら、と書かれた墓碑を愛おしそうに触れながら。

8 19/01/13(日)01:29:01 [sage] No.561570527

おわり 最後の展開が書きたかっただけなんだけど文章力が追いつかないのは切ないで…ありんすなぁ…

9 19/01/13(日)01:30:32 No.561570898

幸太郎はんの蘇生はやはり…せつないで、ありんすなあ…

10 19/01/13(日)01:31:51 No.561571183

あっこういうの大好きでありんす…

11 19/01/13(日)01:34:32 No.561571759

何回目なのこれ…

12 19/01/13(日)01:34:42 No.561571792

んもー…好き…

13 19/01/13(日)01:36:46 No.561572225

あの世で再開しちゃうんだ…

14 19/01/13(日)01:37:12 No.561572315

言葉にならないでありんす…

15 19/01/13(日)01:37:33 No.561572399

>―近頃、体の劣化が激しい。意識を保つのもやっとだ。私ももう長くはないだろう。 ここからの老成して落ち着いた感じの独白好き

16 19/01/13(日)01:38:48 No.561572713

幸太郎の気持ちを最後の最後に知れたってのがすごくいいと思う

17 19/01/13(日)01:39:42 No.561572926

>幸太郎の気持ちを最後の最後に知れたってのがすごくいいと思う いやこれさくらの教え子だろう

18 19/01/13(日)01:41:01 No.561573196

徐福さんは何が目的なんだ

19 19/01/13(日)01:42:42 No.561573537

このスレ画見ると身構えちゃう…でも開いてよかったよ

20 19/01/13(日)01:45:39 [sage] No.561574160

>いやこれさくらの教え子だろう わかってもらえて嬉しいでありんす… 徐福さんが謎の日本各地活性化マンと化してしまった事は許してほしいでありんす

21 19/01/13(日)01:54:09 No.561575950

わっちは貴女が出てくるまでわからんでありんした… 2度読みさせる良い怪文書でありんした…

22 19/01/13(日)01:57:21 No.561576548

勘違いしてて恥ずかしいで、ありんすなあ… 墓穴に埋まるでありんす

23 19/01/13(日)01:57:49 No.561576652

さくらPも巽の遺したノウハウを元にプロデュースを行ったんだろうし メンバーも名も形も変わってもフランシュシュは続いて行ってるんだな…

24 19/01/13(日)02:02:15 No.561577455

叙述トリックが上手いなあ

25 19/01/13(日)02:04:11 No.561577748

叙述トリックと言えば本編も上手いよね さくらの喪失した記憶を視聴者は1話アバンで分かってるのになんで物語の縦軸にしてるんだろうと思いきや 単純にアイドルに憧れた少女が死んだのではなく人生を変える一大決心したところで夢を絶たれたって言う

26 19/01/13(日)02:13:27 No.561579266

>あれだけの大トラブルにも全く動じることなく、手拍子を打ってライブを続行させた ここは自己体験してるから動じてないのか…なるほどなあ

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