虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    19/01/11(金)21:23:46 No.561248499

    吾輩はロメロ。この洋館を守護する番犬である。 だが我輩の精神は単なる犬ではない。御主人である巽幸太郎を守護るべく、屍としての生を得た一人の紳士たる存在である。 御主人と我輩だけの住まいであったこの館にも、随分と人間が増えた。 その人間たちは同じ屍ではありながら、我輩と比べて随分と騒々しい者たちばかりである。住み始めた頃の静けさはもはや存在しない。 だが、それを御主人は喜んでいる様子だ。 ならば受け入れるべきであろう。御主人の喜びは、吾輩にとっても喜びであるからだ。

    1 19/01/11(金)21:24:11 No.561248651

    その日、吾輩はリビングで休息していた。 我が仕事は洋館の守護であり警備だ。だが24時間勤務することは生物は困難。故に休息は必要である。 暖かい暖炉の傍で身を丸め、まどろんでいた吾輩だったが、扉の開く音でそちらを見る。 それは一人の人間が室内に入ってくる音だった。リビングに来たのは黒毛に花を咲かせた人間の雌。名は『水野愛』と呼ばれていたはずだ。 「あら、ロメロじゃない。お邪魔だった?」 どうやら水野愛は吾輩の睡眠を邪魔したと受け取ったようだ。気にすることは無い、と吾輩は鳴き声で返事をする。 「そう、良かった」 水野愛は笑顔を返し、自らはソファに座る。 だが吾輩の目は別の所、水野愛が携えてきたものを見ていた。それは様々な雑誌である。

    2 19/01/11(金)21:24:38 No.561248794

    いま水野愛が手にしているのは週刊誌や情報誌だ。 外界の情報を仕入れるために必要なものだとして本人が強く進言し、それに説得された御主人が定期的に購入してきているものである。 その本たちを広げるのを見た我輩は立ち上がり、水野愛に駆け寄った。鳴き声で呼びかけるとこちらの存在に気づく。 「どうしたの。 ・・・もしかしてあなたも読みたい?」 雑誌を指差して確認してくる。どうやら我輩の意図を読み取ってくれたようだ。実に聡明な人間である。 犬という存在の我輩であるが、知識を得ていて損をすることはない。この洋館で得られる貴重な情報収集の機会を逃す手は無いだろう。 「それじゃ一緒に見ようか。おいで」 許可を得た我輩はソファに跳躍する。近寄る我輩を、水野愛は自分の方へを誘導した。 雑誌を互いに見るためには、水野愛の本を支える両手の間に居る必要がある。 結果的に我輩は太腿の上に陣取る形になった。

    3 19/01/11(金)21:25:06 No.561248976

    大きく広げた雑誌のページを、水野愛の指先はゆるやかに捲っていく。 貴重な情報源かつ娯楽でもあるため、読み飛ばしをすることはない。互いに言葉は無いまま、誌面の文字を追う時間が過ぎていく。 吾輩も記事の内容を興味深く眺めていたのだが、いつのまにか記事をめくる手が止まっていた事に気づく。 その理由はすぐに分かった。吾輩の頭を撫でていて水野愛の手が塞がっていた為だ。その表情は随分と嬉しそうである。 しかし何故、雑誌以上に吾輩に集中しているのだろうか。疑問に思った吾輩は体を傾げ、上方にある水野愛の顔を覗きこんだ。 「ああ、ごめんねロメロ。つい夢中になっちゃって」 咎めている訳では無い。そのような意図を込めつつ、吾輩は何故という具合に声を発した。 「子供の頃から犬が好きだったの。こんな風に一緒の時間を過ごしたいってずっと思ってたわ。・・・でも親が動物が苦手で飼ってもらえなかったのよ」 吾輩を撫でながら、水野愛は訥々と語る。 「変なものね。死んでから夢が叶うなんて」 水野愛は苦笑しながらそう呟く。その表情には一抹の寂しさが漂っていた。

    4 19/01/11(金)21:25:33 No.561249134

    合点がいった。水野愛が吾輩と触れ合う行為は、生前得られなかったものへの代替行為であるのだろう。 それを否定することは吾輩には出来ぬ。渇望というものは、人間の中でとても強い感情だと吾輩は知っているからだ。 存分に堪能すると良い。吾輩は小さい鳴き声と、体を摺り寄せる行為で水野愛への言葉の代わりとした。 「慰めてくれてるの。ふふ、あなたは優しいのね」 水野愛の手が、再び吾輩の頭を撫でる。 当然である。吾輩は紳士ゆえ、例え種族が違えども悲しむ女を見捨ててはおけぬのだ。 吾輩の真摯な眼差しに何かを感じたのか、水野愛は茶目っ気を交えた笑顔を浮かべる。 「でもせっかくだから、甘えさせてもらおうかな?」 その言葉と共に水野愛は雑誌から手を離すと、ソファに横になって寝そべる。 そして吾輩の体を高く抱え上げたかと思いきや、思い切り自分の胸元に抱き寄せるのだった。

    5 19/01/11(金)21:25:58 No.561249259

    「あー、もうフカフカで小さくて可愛い! ゾンビなのに可愛い! 反則よね! もうこれ反則よね! だって可愛すぎるもん!」 水野愛は弾んだ声を上げる。そして吾輩を抱き寄せる。頬ずりする。それが楽しいのか足をばたばたとさせる。 まるで幼子である。これが抑圧された感情の発露というものか。 普段の水野愛との差異に吾輩は少々戸惑ったが、甘んじて受け入れる。 『めんたるけあ』は重要であると御主人が言っていた。これもその一環であろう。 無論、吾輩にも利点はある。こうして人間たちの笑顔を見ると、吾輩の心も不思議と穏やかになるのだ。 それはこの人間たちの笑顔が、そのまま御主人の笑顔に繋がると理解しているからだろう。 どのような形であれ、吾輩の行動が御主人の喜びに繋がるのであれば、それは何よりも喜ばしきことだ。 そんな吾輩の心など露知らず、水野愛は子供の様に喜びに浸っているのであった。

    6 19/01/11(金)21:26:36 No.561249475

    なお水野愛のその行為は、二階堂サキが部屋の扉を開けたところで止まった。 何故か互いに沈黙し、そして二階堂サキがそっと扉を閉めた。その顔が笑顔を浮かべていた理由は不明である。 その後、水野愛が顔を赤くして頭を抱えていた理由も吾輩にはとんと検討がつかぬのであった。

    7 19/01/11(金)21:27:43 No.561249828

    愛ちゃんやーらしかすぎる…

    8 19/01/11(金)21:28:03 No.561249941

    サキちゃんはそういうことする

    9 19/01/11(金)21:28:44 No.561250158

    ロメロはんはほんに出来たお犬さまでありんすねぇ…

    10 19/01/11(金)21:29:24 No.561250369

    フランシュシュより賢いのでは?

    11 19/01/11(金)21:29:54 No.561250512

    サキちゃんこの後絶対からかうし事ある事に蒸し返してなんなの?!されるな

    12 19/01/11(金)21:30:31 No.561250718

    漱石ロメロよか…

    13 19/01/11(金)21:31:29 No.561251056

    サキちゃんが例の笑顔なのはわかる

    14 19/01/11(金)21:34:22 No.561251992

    愛ちゃんキモカワマスコット好きだしゾンビなのがプラスに働いてそう

    15 19/01/11(金)21:36:17 No.561252651

    キモカワマスコット好きだからまりもっこりが好きなはずな愛ちゃんはむっつり

    16 19/01/11(金)21:38:37 No.561253522

    相変わらずかわいいが詰まっておる

    17 19/01/11(金)21:39:34 No.561253857

    やーらしか!やーらしか!

    18 19/01/11(金)21:51:37 No.561258006

    漱石はほのぼのが上手いな…

    19 19/01/11(金)22:03:55 No.561262217

    よか…!

    20 19/01/11(金)22:10:06 No.561264457

    伝説のメンタルセラピー犬!ロメロ!

    21 19/01/11(金)22:11:08 No.561264837

    このあとサキちゃんは犬のおまわりさんとか歌っていじってきそう