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19/01/11(金)19:13:15 No.561214922
続き物 su2821662.txt <純子が悪だくみをする話> 「「「「「「あけましておめでとうございまーす!」」」」」」 「…あけおめなんじゃい」 「あうあううたあう」 毎年恒例乾家年越し会。諸事情で大所帯かつ住まいがバラバラな乾家。交流は未だ活発だが、全員が一同に会する機会というのは年末年始くらいだった。 「いやー皆今年も随分大きくなったね~」 「リリィちゃんそればっかり」 「おじさん皆がすくすく育ってくれて嬉しいよ」 「同性のおじさんに親戚一同の前で告白かますくらいだから頼もしすぎるくらいね…くくっ」 「もうそれ一年前の話やろーが…ブッコロスゾ…」 「まあ年越しの瞬間まで皆起きてられないのは相変わらずですけどね…」 みかんを剥きながらそんな話をする一同。下座で肩身を狭くする巽幸太郎、もとい乾幸太郎を含めてすっかり恒例の光景だった。 横長のテーブルは廊下に繋がるドアに短辺を向けて配置されており、廊下側の短辺に幸太郎が座っている。幸太郎から見て左手側の長辺に手前から0、1、2、3号の順で座り、右手側に4、5、6号の順で座る。
1 19/01/11(金)19:14:06 No.561215103
毎年集まる家は変われども、その席順は漠然と固定されていた。 「…しかし、もう皆9歳ですか。そろそろ、そろそろですね」 「何の話じゃい、純子」 唐突に意味深長な事を言う純子に幸太郎は言葉の理由を尋ねる。 「…幸太郎さん。もしも皆が、そうですね…同じ高校に通って、そこで皆アイドルになって、同じグループで活動したら。どう思いますか?」 「…まず、あり得ない話だ。そこまで全員が同じ選択をするとは思えん」 「そうですね。『誰かが誘導でもしなければ』」 「お前、まさか」 動揺を隠しきれない幸太郎に、純子は微笑を浮かべて語り始める。 「当たりです。皆には、同じ高校に入って、アイドルグループを結成して、そして…私達フランシュシュのライバルになっていただきます」 「…馬鹿げた話だ。俺は反対させてもらう」 「もう、遅いですよ」 純子は口角を僅かに吊り上げながらそう言った。まさか。純子の言葉を受けて幸太郎は目線を動かして他の面子の様子を一人一人確かめる。
2 19/01/11(金)19:14:34 No.561215194
黙って見つめ返す者、慌てて目を逸らす者、はなからそっぽを向いている者、少し緊張した様子でこちらを見つめる者。 穏やかな微笑を向けてくる者、あからさまに作った笑顔で応える者。 ――既に全員抱き込み済み、か 「…何時からだ」 「考え始めたタイミングなんて覚えていません。皆に話を持ちかけ始めたのは別々に住み始めてからですから、大体6年前くらいからでしょうか」 この荒唐無稽な話にそこまでの時間をかけていた事に、幸太郎は内心驚愕した。どのように、全員を説得したのだろうか。 「幸太郎さんたら、全然気づいてくれないんですから。純子ちゃんポイント減点です」 そう言って純子は人差し指で幸太郎の額をこづく。メッとか言いながら。 「年齢考えろよ」 「ひどい!リリィさんもあんまり人の事言えないじゃないですか!」 その様子に悪態をついたリリィに、フランシュシュ最年長である純子はショックを受ける。
3 19/01/11(金)19:15:07 No.561215325
「…どうしてそんな事をする、純子。大体」 「…幸太郎さん、それ以上言ってはいけません。聞かれています」 純子はしーと口に人差し指を当てて幸太郎をそう静止すると、立ち上がり廊下に繋がるドアを開けて、こそこそと隠れていた物影に声をかける。 「幸多くん、起きちゃったんですか?もう子供は寝る時間ですよ?」 「でも…」 尿意に目が覚め、起床してトイレを済ませた幸多は、寝室に帰る道すがら光が漏れるドアの向こうで大人達が何やら重要そうな話をしている声が耳に入り、丁度聞き耳を立て始めていた所だった。 会話の内容が気になっている様子の幸多に、純子は腰をかがめて目線を合わせ、ニコっと笑顔を見せて頭を優しくなでながら語りかける。 「寝ないと大きくなれませんよ?…ね?」 「は、はい…」 初めて見る、優しい笑顔の中に少しの妖しさを孕んだ表情に、幸多は思わず肯定の返事をしてしまう。 「じゃあ、お布団に連れていってあげますね?」
4 19/01/11(金)19:15:31 No.561215414
幸多を寝室に送り終えて帰ってきて席に着いた純子は、気を取り直して再び語り始める。 「…計画の理由、でしたっけ?少しだけ、答えにくい質問ですね」 「…ライバルが、必要なんです。平成が終わって、アイアンフリルも解散しました。もう私達の敵になり得るアイドルが、いないんです」 「だから、自分たちの子供を、か。醜悪な程に自分本位…と言うのは自覚しているみたいだな」 「ええ。私は、私達はアイドルなんです。女を捨てられず、母になってもなお。昭和が終わっても平成が終わっても、アイドルとしてファンの皆さんに歌を届けるその瞬間への執念は少しも減ってくれませんでした」 純子は狂っている。気高さも美しさも芯の強さも、心根の優しさすら少しも失わないままに。 …元より、屍となってなおもアイドルとして生きようとした者達に正気などある筈もない。それを強いた人間は一体誰だったか。幸太郎はそう自嘲する。
5 19/01/11(金)19:15:51 No.561215494
「リリィ面白そうだから乗ったけど、皆が嫌がるのに無理矢理、とかなったら降りるよ。それは分かってるよね?純子ちゃん」 「勿論です、リリィさん」 「ま、アイドル面白いからそんな事あんまりないと思うけど、忘れないでよねー」 全員がこの計画に賛成している事が、純子の独白を受けて出てきた言葉がそれだけなのが…全ての現象がそれを浮かび上がらせる。 彼女達にとって『アイドル』が何なのかを。 「理由は分かった。何を言っても聞かない事もな。だが、そんな事が出来るとは俺には思えない」 「私達、お母さんですよ?…それに、この計画によって子供達にもより良い人生を歩んでもらいます。それもまた母親としてのエゴ、ですけど」 茶目っ気を込めて純子は笑う。その表情に微かに覚えた違和感の正体が、自嘲なのか、それともおどろおどろしい程の欲なのか、その判別が幸太郎には付かなかった。 「…始めましょう、私達の『偶像計画』を。およそ5年後、高校受験から本格的に始動します。各々、準備をお願いしますね」 終わり
6 19/01/11(金)19:20:01 No.561216426
平日ちまちま書き溜めてたのを木金に出せて良かった 大人の悪巧みといえば個人的に元始天尊だから封神演義要素いれられてヨカッタイ まとめと蛇足 su2821669.txt 昨日投げた奴も入れといた
7 19/01/11(金)19:22:57 No.561217071
黒幕きのこ…
8 19/01/11(金)19:24:08 No.561217326
こえー純子ちゃんこえー
9 19/01/11(金)19:24:34 No.561217416
幸多の性癖が歪んだ音がした
10 19/01/11(金)19:25:13 No.561217570
相変わらずたつみよわい…
11 19/01/11(金)19:26:06 No.561217736
>相変わらずたつみよわい… 社会的信用ゼロになったから…始まりからして盛大に謝肉祭されたから…
12 19/01/11(金)19:26:11 No.561217749
>「幸太郎さんたら、全然気づいてくれないんですから。純子ちゃんポイント減点です」 はいお前かわいい
13 19/01/11(金)19:26:24 No.561217788
チカラヨワイタツミ…
14 19/01/11(金)19:29:03 No.561218292
まだ純子ちゃんの子供だけ未登場なんだよな
15 19/01/11(金)19:29:46 No.561218446
全部大人の手のひらの上かあ
16 19/01/11(金)19:35:38 No.561219604
サキちゃんの息子に対する愛の深さが好き