虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

源さん... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

19/01/07(月)22:59:48 No.560412185

源さんが死んだ。 太陽のような少女だった。 彼女は自宅の前でトラックに轢かれて息絶えたという。 一見すれば世に溢れた交通事故死のひとつにすぎない。 クラスメイトたちは、「昔から彼女は運が悪かったから…」と口々に言う。 当然のように通夜が訪れ、葬式がしめやかに過ぎ去り、涙と共に源さんは皆に送られて行く。 その他大勢の死者と同じように、灰になって、骨になって、数年後には皆の記憶の中から消えていってしまうだろう。 ふざけるな。

1 19/01/07(月)23:00:13 No.560412283

大切なひとを亡くした者は、誰しもが一度は願うだろう。 『あの人を蘇らせたい。もう一度会いたい』 だがあるものは世の摂理の前に膝を折り、あるものは幽世での再会を夢見て命を断ち、あるものは探求の果てに何も得られずに夢破れていく。 そういう意味では、自分は運が良かったのかも知れなかった。 超常の世界と言うものは、探せば日常のすぐ隣に横たわっているものなのかも知れない。 「会いたい」と願ったわけではない。 「死にたくなかった」という彼女の声を聞いたわけでもない。 ただ、太陽のような少女が、理不尽にもその命を奪われることがどうしても許せなかっただけ。 自分はそんな、どうしようもなく独善的な男だ。

2 19/01/07(月)23:00:36 No.560412380

ああ、すべての準備は整った。 『人間の材料』など、知りたくもなかった。 『反魂の法』など、唾棄すべき悪徳だ。 だが、ただ己の欲望のためだけに、全てを行おう。 静かに囁く言葉と共に、意志を持たぬ物体が少しずつ形を成してゆく。 肉体を持った『源さくら』が再びこの世界に顕現する。 最後の言葉を呟くと、彼女はゆっくりと眼を開けて、こちらを見た。 「ここは…どこ? いったい…」 彼女は、真っ白だった。己の名すらもわからない、無垢な存在だった。 「君は…ここに倒れていたんだ」 嘘を吐いた。何もわからない彼女に名前を教え、知識を教えた。 ずっと手元に置いておきたい。そんなヘドが出る考えを握りつぶした。 彼女は生きていてくれればいい。ただそれだけでいいのだ。

3 19/01/07(月)23:00:55 No.560412459

すぐに、別れの時が来た。 「コウタロウ、ありがとう。私なんかに色んなことを教えてくれて」 「いいんだ、さくら。どうかずっと元気でいてくれ」 彼女は静かに笑った。月のような笑顔だった。 自分の知る彼女はもういないんだと、去り行く背を見つめながら改めて想う。 それでもよかった。生きてさえくれていたら、それでも――。 そんな願いさえも、叶うことはなかった。

4 19/01/07(月)23:01:17 No.560412567

≪さくら≫が死んだ。 月のような少女だった。 腕の中で冷たくなっていく彼女を呆然と見つめた。 なぜだ。なぜ彼女が二度も命を奪わなければならない。 震える腕で、命が消えていく瞬間を感じた。 自己満足ですらない、それは生命の冒涜だった。 誰が望んだわけでもない、生命の再誕。それも二度。 なぜ。どうして。良心をねじ伏せながら悪徳を重ねる。 ただ、一度貫いた独善を、どこまでも貫き通したかった。

5 19/01/07(月)23:01:36 No.560412634

≪さくら≫が死んだ。 ≪さくら≫が死んだ。 ≪サクラ≫が死んだ。 ≪サク■≫が死んだ。 ≪■ク■≫が死んだ。 死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。 「どうして蘇らせたの」 そう言って少女が涙を流す。 「なしてそっとしておいてくれんと?」 そう言って源さんが涙を流す。 悪夢にうなされない夜はない。もうとっくに慣れた。吐瀉物の据えた臭いが、自分の朝の香りだった。 最高にお似合いだ。

6 19/01/07(月)23:02:01 No.560412740

自分は何をしているんだろう。 何人の≪■■■≫の死を見送ってきたのだろう。 虚ろな瞳でまた『材料』を集める。 もう意味のないことなのかもしれない。 続ければ何かが変わるなんて希望はとうの昔に擦りきれた。 なのにどうして。 「どうせ、救えないのに…」 ふと、脳裏にひとつの考えが浮かんだ。 それは最低に掃き溜めのような、考え付いた自分を殺したくなるような考えだった。 「…それがどうした」 罪なら拭いきれないほど重ねてきた。それが一つ増えるくらい、なんだというのだ。 「…ははは」 乾いた笑いを漏らした後に、思いきり吐瀉物を床に吐き出した。 なんてことはない。簡単なことだったのだ。 「…死んだものを殺すことなんて、できはしない」

7 19/01/07(月)23:02:24 No.560412837

『準備』はすべて整った。 打てる手は全て打った。 全てが終わったら、ただ一人地獄の業火に焼かれよう。 それでもいい。もう『神』の思惑に、彼女たちを玩ばせてなるものか。 そうだ。 これからの目的に、こんな陰気で辛気臭い男など必要ない。 それに、これから向き合うのは皆「一度死んだ」者たちなのだから。 一人、嘲るように笑った。 乾幸太郎が死んだ。 最低の屑のような男だった。

8 19/01/07(月)23:02:48 [sage] No.560412920

終わりっ

9 19/01/07(月)23:05:33 No.560413607

>もう『神』の思惑に、彼女たちを玩ばせてなるものか。 ここかっこよか…

10 19/01/07(月)23:08:39 No.560414424

死人再生のトライアンドエラー繰り返したら本当におかしくなりそうだ…

11 19/01/07(月)23:09:55 No.560414754

この幸太郎は何人死なせてしまったんだろうか…

12 19/01/07(月)23:12:04 No.560415290

多罪ー…

13 19/01/07(月)23:13:42 No.560415689

>多罪ー… ちょっと笑っちまったやろがい

14 19/01/07(月)23:22:20 No.560418044

どういう経緯で本編のいかれた計画に取り組むことになったのかは興味が尽きないよね

15 19/01/07(月)23:31:37 No.560420285

多罪は報われるのだろうか…

↑Top