19/01/05(土)00:47:04 「ラブ... のスレッド詳細
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19/01/05(土)00:47:04 No.559710879
「ラブレターだぁ?」 草木も眠る丑三つ時、人が少ない佐賀に置いて更に人が少ない地域にある洋館にての事である。 その洋館の住人(人?)の1人である少女、二階堂サキは眉根を潜め、疑わし気な声を上げた。 彼女の周りを囲むのは5対の赤い瞳。伝説の山田たえを除くフランシュシュのメンバーである。因みにたえは現在熟睡しているプロデューサーを噛みに行って居る為、朝方まで帰らない。 夜中に出す声としては些か大きすぎる声を出したサキに、正面に座る源さくらが咎める様な視線を送る。 「しっ、サキちゃん声がばい大きいけん!」 しかしサキは、それをカラカラと豪快に笑って受け流した。 「寝てるグラサンがちょっとやそっとじゃ起きないのはもう何十回も証明しとるやろ」 笑いながらサキはニッと歯をむき出しにし、自らの犬歯を指さす。死んでいるというのに妙に健康的な並びをした歯が、月光に照らされて白く光っていた。 「……話が逸れてるわよ」 そんな2人に呆れた様な声をかけるのは水野愛である。彼女は半眼でさくらの手元にある物を睨んだ。
1 19/01/05(土)00:47:41 No.559711012
「『巽幸太郎様』……ね」 少女の視線の先にあるのは封筒であった。薄青色の可愛らしい封筒に、ピンクのラメ入りインクによって、可愛らしい丸文字で宛名が書いてある。確かに、愛の常識に照らし合わせて考えてみれば、それは『ラブレター』というものに相違なかった。 「けどよぉ、グラサンだぜ? 真面な女にモテるかよ」 サキは口を尖らせて反論する。確かに、その言葉にも一理あった。 巽幸太郎が明らかに一般女性に好意を持たれるような存在で無い事は、フランシュシュ暗黙の了解であった。 「……ですが、世の中には一人や二人はいるかもしれませんよ?」 顎に手を当てて深刻気に語るのは紺野純子である。彼女は小さく、しかし妙に空間に響く声で語る。 「体は生きていても、心が死んでいる……そんな、逆ゾンビィみたいな可哀想な方が」 「ぎゃ、逆ゾンビィ!?」 さくらは想像したのか、唯でさえ青いグリーンフェイスを更に青ざめさせて震える。彼女の頭の中では正常そのものの見た目で呻いている女性が思い浮かべられた。 「……ゆぎりんはどう思う?」
2 19/01/05(土)00:48:10 No.559711132
そう声を上げたのは星川リリィである。幼い享年ながら聡いリリィは、またしても話の流れがおかしくなっていることを敏感に察知し、軌道修正を図る。 そんな思惑を持ったリリィに問われたゆうぎりは小さく微笑んで 「わっちは幸太郎はんを信じんす」とだけ言った。 「え、いや、たつみがどうじゃなくて、この手紙がラブレターかどうか――――」 「信じんす」 「いや、だから内容――――」 「信じんす」 「駄目だチンチク、今の姐さんは使えねえ」 「ええ……」 据わった目で手元のビィドロ玉を撫でまわしているゆうぎりを横目で見ながらサキは嘆息し、リリィはゲンナリとした表情をした。そうして漸く、さくらの手元の封筒に視線を戻す。 「メンドクセェ、さっさと開けんばい」 「え!?」
3 19/01/05(土)00:48:44 No.559711270
腕まくりし、立ち上がろうとするサキに驚いた様子を見せたさくらは、封筒を自分の体でそっとかばう。 「そ、それは良かない?」 「開けねえと分かんねえだろ」 チラチラと手元を窺うさくらに、サキは苛立ったように髪を掻いた。 「そもそもラブレターの線が薄いだろそれ。ガキみてえな字だぞ?」 そう言われてさくらはもう一度封筒の字を見直した。 小さく丸まった、可愛らしい文字は確かに大人の女性が書いたものの様には見えない。良くて高校生、下手したら大人びた小学生が書きそうな字体である。 「不思議な文字ですね」 横から覗き込んだ純子がぽつりと漏らす。 「現役の頃に沢山のファンレターを読んだので、それなりに見る目はあるつもりですが、この方のものは大人の文字にも、子供の文字にも見えます」 「純子ちゃんスゴイ! 流石伝説の昭和アイドル!」 「えへへ……」 尊敬のまなざしを向けるリリィに、純子は恥ずかしそうにはにかんだ。そして、助けを求めて愛の方を向く。
4 19/01/05(土)00:49:14 No.559711383
「愛ちゃんも分かりますよね」 そう言われた伝説の平成アイドルはと言うと 「え、あ、うん? 分かるわよ? 私皆より動体視力良いし? チョー分かる」 目を泳がせ、震える声でそう答えた。 いや、目を泳がせているどころか目を物理的に乱回転させていた。 「あれ、私動体視力良いのに世界の回転が早すぎて文字が読めないわ」 ぐるぐるぐるぐる目を乱回転させる愛にリリィは優しく微笑む。 「分からなかったんだね」 「分かるわよ! 動体視力良いから! ええとね……」 年下からの憐みの声に益々ムキになった愛はさくらから手紙を奪い取り、顔を近づけてまじまじと見つめた。尚、未だに目は乱回転している。 やがて、愛は人差し指を立て、得心の言った声を上げる。 「これは娘ね! アイツの娘!」 「……」 場が静まり返った。
5 19/01/05(土)00:50:01 No.559711548
自分でも『無いわー』と思ったのか、愛もそっと指を下ろす。秘伝忍法眼球螺旋丸は止まっていた。 「……もっと無くねえか?」 最初に声を上げたのはサキだった。その顔には『もう面倒だから早く開けて寝ようぜ』と書かれていた。しかし愛は今更自説を曲げる事も出来ない、とばかりに抵抗の言葉を紡ぐ。 「いや、でも私達アイツの事全然知らないし! 実はとっくの昔に結婚してて、子供が生まれているってこともあるかも!」 「結婚、ですか……」 愛の苦し紛れの言葉に反応したのは純子である。 「結婚式場での撮影の時、巽さんは全く照れていませんでしたよね……」 その言葉に、辺りの空気がサッと凍った。 忌まわしい記憶である。
6 19/01/05(土)00:50:37 No.559711695
先のブライダル撮影の際、乙女の尊厳と威信を賭けて『誰が一番幸太郎を照れさせる事が出来るか』という勝負を秘密裏に行った彼女達であったが、結果は散々な物であった。幸太郎は照れるどころか青筋を立てて絶叫するばかりであったのである。 その結果はうら若き(死んでいるが)乙女達に深い傷を残した。致命傷でないのは当に死んでいるからである。 特に傷が深かったのは自信満々に向かっていったさくらで―――― 「おいさくら?」 異変に真っ先に気づいたのはサキであった。その声により、全員がさくらに視線を向ける。 さくらは俯き、何ごとかをブツブツと呟いている。隣に座っていた純子が恐る恐る耳を傾ける。 「結婚っておかしいよねどう考えてもおかしいよね明らかにおかしいよね」 「ひっ」 夥しい呪詛の本流を受けた純子は短い悲鳴を上げ、さくらから飛びずさった。 見れば、さくらの全身から暗黒のオーラが流れ出している。 『闇さくら』の到来であった。
7 19/01/05(土)00:50:52 No.559711734
>据わった目で手元のビィドロ玉を撫でまわしているゆうぎり ハイお前可愛い
8 19/01/05(土)00:51:04 No.559711770
「だっておかしいよね幸太郎さんが人生の墓場を享受してるっておかしいよね私達は物理的に墓場に入ってるところを掘り起こされたのにおかしいよね」 通常時、源さくらはフランシュシュの天使担当とどこかの乾から評されるほど明るく、献身的な少女である。しかし、そんな彼女にも欠点がある。 視野狭窄、落ちるときはとことん落ちるネガティブ思考、そして割と心の余裕が常にない。 この三つを兼ね備えてしまっているさくらは自身のキャパシティを超える困難にぶち当たると少なくない頻度で豹変してしまうのである。 ドヤンスの暗黒面、ドヤンス・ベーダ―に。
9 19/01/05(土)00:51:37 No.559711870
「愛ちゃんおかしいよね?」 ドヤンス・ベーダーは近くに置いてあった火掻き棒を手に取り、無造作に振るって風切り音を鳴らす。あれこそまさしくドヤンス・ベーダーの神剣、ヒカキセーバーであった。ヒカキンセーバーではない。 「ぎぇえ!」 その暗黒のフォースに宛てられた愛は哀れにもガチョウが絞殺される時の様な声を上げて逃げ出した。私トップアイドル水野愛! 死因の雷も怖くないわ! でも火掻き棒だけは簡便な! 「ゆうぎりさんおかしいよね?」 哀れにも座布団を被りガタガタと震える愛を満足げにまったりねっとり楽しんだドヤンス・ベーダー。こんどはゆうぎりにヒカキセーバーを向ける。 (だがそりゃ自殺行為だ!) サキはその目を光らせた。ドヤンス・ベーダーと化したさくらよりも、ゆうぎりの方がフランシュシュ内ヒエラルキーは上である。『姐さん! やっちまって下せぇ!』とサキは三下の様な声援を心の中で送った。因みに最上位はロメロであり、最下位は幸太郎である。 ヒカキンセーバーを向けられたゆうぎりは小さく微笑む。 「信じんす」 「駄目だ姐さん使えねえ!」
10 19/01/05(土)00:52:13 No.559711998
サキは絶叫した。ゆうぎりは未だに据わった目でビィドロ玉を撫で続けている。いや、まて。 「信じなんし」 いつの間にかビィドロ玉をそっとしまったゆうぎりがふらりと立ち上がっているではないか。 「立った! ゆぎりんが立った!」 目に水滴を浮かべながら演技過剰にリリィが叫んだ。因みにその手には目薬が握られている。 「しかし今の姐さんじゃ――――なっ!」 心配そうに呻いたサキの顔が驚愕に彩られる。 彼女の視線の先には、光り輝く闘気を放つ一人の花魁の姿があった。 アリンスのライトサイド、マスターユーダである。 「おかしいよね?」 「信じなんし」 方やヒカキセーバー、方やハリテセーバーを構え、正と負、善と悪、ドヤンスとアリンスその二つのフォースがバチバチと火花を散らす。
11 19/01/05(土)00:52:42 No.559712116
「す、スゲェ……なんて気合いだ……」 拳を握りしめたサキが感嘆の声を漏らした。 世紀の戦いが始まろうとしていた―――― 「リリィ飽きたから開けるね」 「あっ!?」 ――――が、それは白けた顔になったリリィが封を破ったことによりお開きとなった。子供に夜更かしはさせてはいけないのである。 開いた封筒から一枚の手紙が落ちる。それを6対の赤い光は静かに見守っていた。 地面に落ちた衝撃で手紙が開く。誰かがごくりと喉を鳴らした。 それに、書かれていたのは―――― 「……『拝啓、巽幸太郎様』」 サキの声が静まった部屋に響く。
12 19/01/05(土)00:53:13 No.559712210
「『貴方の溜まったツケを支払って頂きたく、請求の手紙を送らさせていただきます』」 「……」 「……ばー、ニュージョフクマスターより」 「……」 白けかえった部屋の中で、誰かが言った。 「寝るか」 誰にも異論はなかった。 翌日、ボロボロになった幸太郎がとあるバーに殴り込みに行ったのはまた別の話である。
13 19/01/05(土)00:54:11 No.559712423
なんでそんな可愛らしい封書にしてんだよ!
14 19/01/05(土)00:54:54 No.559712571
su2809235.txt いままで書いたものです。 流行に乗ってみました。 心の乾が恋のさや当ては許さないと言っていました。 以上です。
15 19/01/05(土)00:55:34 No.559712699
ほのぼのしてるけど全員噛んでるのかこいつら…
16 19/01/05(土)00:55:36 No.559712708
>なんでそんな可愛らしい封書にしてんだよ! てへぺろぉ!
17 19/01/05(土)00:55:56 No.559712771
面白かった 噛み当番はたえちゃんか…
18 19/01/05(土)00:57:21 No.559713051
フォースのぶつけ合いは何だったんだよ!
19 19/01/05(土)00:57:29 No.559713077
かわいい筆跡してたんだね 知らなかったよ
20 19/01/05(土)00:57:35 No.559713104
あのひげ面が可愛い文字を?
21 19/01/05(土)00:57:47 No.559713138
ほうちゅうお前…
22 19/01/05(土)00:58:05 No.559713201
ほうちゅう声だもんな…そういうことするわ
23 19/01/05(土)00:58:12 No.559713229
これ座布団被って怯える愛ちゃんの前でしばらく静かに呪詛を垂れ流しながら立ち尽くして警戒が緩んだところで火かき棒に風を切らせるのを繰り返したな…
24 19/01/05(土)00:59:02 No.559713396
>てへぺろぉ!(CVほうちゅう)
25 19/01/05(土)00:59:08 No.559713418
朝のミーティングで七人がかりでボコられたのか幸太郎…
26 19/01/05(土)01:00:43 No.559713735
心の佐賀城ほぼ落城してたけどしっかり表には出してなかったのか…
27 19/01/05(土)01:01:22 No.559713883
>心の佐賀城ほぼ落城してたけどしっかり表には出してなかったのか… まあ絶叫してたしな…
28 19/01/05(土)01:01:47 No.559713968
愛ちゃんだいぶちのうしすうが低下してない?
29 19/01/05(土)01:01:52 No.559713989
大丈夫?これ朝ミーティングで噛まれない?全身目立つように怒りと愛情を込めて
30 19/01/05(土)01:02:37 No.559714149
愛ちゃんは動体視力良いからな
31 19/01/05(土)01:02:37 No.559714151
>愛ちゃんだいぶちのうしすうが低下してない? ラブレターの存在だけでメダパニ食らっちまったからしかたねーんだ!
32 19/01/05(土)01:03:02 No.559714231
>>なんでそんな可愛らしい封書にしてんだよ! >てへぺろぉ!(CV大塚芳忠)
33 19/01/05(土)01:03:30 No.559714337
徐福さん女子力高いな…
34 19/01/05(土)01:04:12 No.559714489
1.使える封筒の類がこれしかなかった 2.この封筒使って送りつけた方がひょっとしたら面白いことになるから
35 19/01/05(土)01:04:44 No.559714622
>大丈夫?これ朝ミーティングで噛まれない?全身目立つように怒りと愛情を込めて とりあえずある程度歪んだ思いを込めてボコられてそうだ…
36 19/01/05(土)01:05:16 No.559714743
この世界でも普段は割と平和にやれてるようでなんか安心してしまったぞ
37 19/01/05(土)01:05:23 No.559714781
ズレてるのに姐さんがやたら可愛い
38 19/01/05(土)01:06:18 No.559714989
おい待てよテメエその顔と脛の噛み後ゆうぎりのじゃねえか!手ぇ出しやがったな!?
39 19/01/05(土)01:06:58 No.559715152
こいつら毎晩噛んでんな
40 19/01/05(土)01:07:03 No.559715173
…なんで分かるんですか気持ち悪い それと手が出るような原因、心当たりあるでしょうに
41 19/01/05(土)01:10:14 No.559715857
尋問回でもだいぶ挙動不審になるくらいメンタルに来てるっぽいしな愛ちゃん
42 19/01/05(土)01:11:38 No.559716156
>この世界でも普段は割と平和にやれてるようでなんか安心してしまったぞ 地の文だけだとドロドロと終末感あったのに喋りだすと途端に和やかになったな!
43 19/01/05(土)01:15:03 No.559716869
あっ100点ですオチがいい塩梅でした
44 19/01/05(土)01:19:12 No.559717798
>地の文だけだとドロドロと終末感あったのに喋りだすと途端に和やかになったな! 本編も巽視点だと案外そんな感じな気がするし…
45 19/01/05(土)01:21:40 No.559718389
姐さんかなり危ないレベルで巽に入れ込んでるんだな…
46 19/01/05(土)01:23:21 No.559718768
>姐さんかなり危ないレベルで巽に入れ込んでるんだな… でも残り1cmが踏み込めないのが姐さん
47 19/01/05(土)01:23:22 No.559718773
これがよわよわっち…
48 19/01/05(土)01:26:17 No.559719341
怒れる6人のゾンビは朝ミーティングへと突撃した
49 19/01/05(土)01:27:31 No.559719559
だって姐さん強キャラだから忘れがちだけど花魁って自分を連れ出してくれる男に身請けされる事だけを夢見て生きてく人種だぜ?
50 19/01/05(土)01:27:44 No.559719602
よわよわっち思ったより表に出てない? 幸太郎視点ではあんなに強いのに
51 19/01/05(土)01:28:15 No.559719699
こんなに皆でわちゃわちゃやってる連中が 眠れる生者と一人でご対面する時は退廃的な事を考えてるギャップがよかとよ
52 19/01/05(土)01:35:12 No.559720886
>よわよわっち思ったより表に出てない? >幸太郎視点ではあんなに強いのに そもそも幸太郎があんまり触れないようにしてて見てないんだろう 暴走もしないだろうし好きにさせてやるのが一番みたいな扱いで
53 19/01/05(土)01:35:37 No.559720948
ドヤンス・ベーダーって 何時か何かの作品のパロディで使われそうな名前だな…
54 19/01/05(土)01:39:03 No.559721535
繰り返される退廃の夜のいつかに我慢できなくなってしまって ついに首に噛みついて息の根を止めて食べて自分の物にしようとするけど その終わり方を受け入れながら男が口から漏らした名前に自分とのどうしようもない差を感じてしまって 声を上げて泣いてしまうよわよわわっちも見てみたいでありんすな…
55 19/01/05(土)01:39:10 No.559721565
この姐さんは脳内ミニゆうぎりが 幸太郎の前に出ると消えちゃう程の乙女だからな…
56 19/01/05(土)01:39:35 No.559721639
サキちゃんの解説キャラ化がなんか新鮮だ…