虹裏img歴史資料館

1 19/01/04(金)16:36:46 No.559572117

「はい、じゃあ中から紙を取ったら、開かずに私に渡してね。はい、たえちゃん偉い！」 さくらはたえから二つ折にされた紙を受け取ると、開いて中に書かれたお題を確認する。 「ええ…たえちゃんこれ出来るとかなあ。お題は！『大学の先輩と後輩』です！たえちゃん、出来る？」 皆に見えるよう紙を広げながらお題を発表したさくらは、たえにお題をこなせるかどうか尋ねた。 「うあ゛う」 さくらに問われたたえは、首を一度縦に振る。まかせておけ、と言わんばかりである。 「あ、因みにチェリ太郎もちゃんと協力してよね。言われた事に不自然に応答しない毎に、こぼれそうな思いを汚れた手で書き上げた随分情熱的な日記の一部が公開されるわ」 「何でなんじゃい…」 幸太郎が協力を強いられる。もういっそ殺してくれ、と巽は思った。 「それちょっと読みたい…じゃなくて、じゃあやっていきましょう！たえちゃんのムードキスマッチ、スタート！」

2 19/01/04(金)16:37:12 No.559572190

『大学の先輩と後輩　山田たえ』 スタートの合図を聞いたたえは、巽に一歩一歩近づいていく。巽の目の前で腰を下ろし、巽に話しかけた。 「…幸太郎君。卒業式に来てくれるなんて、貴方にしては殊勝な事するじゃない」 「え、あっ、はい」 唐突にすらすらと言葉を紡ぐたえに、巽は驚いて覚束ない返事をしてしまう。 「これで幸太郎君にも中々会えなくなるわね…知ってる？キャビンアテンダントっていうのは、中々忙しいのよ」 たえは愛おしそうに巽の両頬を手のひらで撫でながらそう言った。 「別に…会えなくなるわけじゃ、ないでしょう」 巽は何とか寸劇についていきながらも、困惑を隠しきれない。

3 19/01/04(金)16:37:32 No.559572249

「いいえ、貴方は私の目が届かなくなった事で、本格的に計画を進める。そうなったら、貴方は積極的に私と会うのを避ける。違うかしら？」 「…なんの事ですか」 「…聖職者の娘が一人の少年の暴走すら止められないなんて、聞いて呆れるわね」 「改めて言うわ。貴方のやってる事は神への冒涜。今からでも遅くないから、諦めなさい。でなければその子諸共、地獄に落ちるわ」 「……」 巽は言葉を返せない。 「本当に本当に、強情な子。それ以外なら何だって出来る筈なのに…その子が大好きなのね？私よりも」 「それは…」 去らなければならない。私は負けたから。でも、貴方の中からすっきりと消えてしまう事だけは耐えられない。 だからこれは、呪い。嫌になるほど利己的な女。きっと私も地獄に落ちる。 「愛しているわ、幸太郎」 そう言ってたえは巽に口づけをする。別れを惜しむように数秒だけ唇を押し付けてからそっと離すと、たえは立ち上がって言った。 「じゃあね。幸太郎君」

4 19/01/04(金)16:38:17 No.559572383

たえちゃんそこまで！しゅうりょーう！さあ審査員のゆうぎりさん、得点をどうぞ！」 「悲恋と女の執着。百点でありんす」 「高得点が出ましたー！というか何でたえちゃん普通に喋ってるの…？あと何その雰囲気…アダルティ…」 「うあ゛うう」 高評価を貰ったたえは満足そうに笑顔を見せると、巽から離れた後に3度寝を始めた。 （…限定条件下だけの意識の覚醒…理論的にはあり得ないはずだが） 巽ですら、山田たえは分からない事が多い。謎多き女である。

5 19/01/04(金)16:38:34 No.559572417

「たえちゃんが思わぬ好演技を見せてくれましたー！これはハードルがば上がったとじゃない？次はー、純子ちゃん！純子ちゃん、いけるとー？」 「任せてください。私は昭和のアイドル、紺野純子です」 いつの間にか立ち直っていた純子は自信満々に答える。 「良かったー終わるまで復活しなかったらどうしようかと思っとったとよー。じゃあ箱から引いたら中を開けずに私に渡してねー」 分かりました、と純子は少々緊張した面持ちでお題を引いてさくらに渡す。 「出ました！お題は…『昭和』！『昭和』です！」 「誰ですかこれ書いたの！馬鹿にしてるんですか！」 純子はお題を見て憤った。 「私が書いたお題だけど、純子は演技する必要が無いからラッキーなお題ね。しくじったわ」 「愛さんには後でお話があります…まあ、確かに等身大で演じればそれで良いというのは気が楽かもしれませんね」 「んー、やっぱりお題は先にチェックしといた方が良かったかも…ごめんね純子ちゃん、行けると？」 「大丈夫です、さくらさん。私やります。始めてください」 純子が覚悟を決める。 「分かったとよ純子ちゃん。それじゃー純子ちゃんのムードキスマッチ、スタート！」

6 19/01/04(金)16:39:28 No.559572574

なんで演技してるんだよ！

7 19/01/04(金)16:39:29 No.559572577

『昭和』 劇が始まるなり純子は、乙女走りで純子は巽に駆け寄る。巽の前に到着すると、膝立ちの態勢を取りながら巽を抱きしめる。 「幸太郎さん…会いたかったです…！」 純子は一分一秒でも早く会いたかった、という気持ちをこれでもかと込めながら言った。 「お、おう。わしも会いたかったぞ純子よ」 ぎこちなく巽はそれに答えた。 「…幸太郎さん、いい匂いです」 純子は抱きしめる手を緩めて首元に顔を埋めながらそう言った。 「お、おう。ありがとう」 「本当にいい匂い…泥棒猫の。幸太郎さん。私の何が不満なんですか？」 「え、ええっ！？い、いや何も不満なぞ」 「…そうですよね。だって全部全部、あなたのいう事は何だって聞いてきたんですから！あなたに心から私は尽くしてきた！あなたを心から愛してきた！」 「純子…」 「それでも、貴方はさくらさんを選ぶんですね」 「「えっ」」

8 19/01/04(金)16:40:57 No.559572828

巽と、吃驚してつい声を出してしまったさくらの声が重なる。 「この匂い、さくらさんの匂いですよね？私、犬でも猫でもありませんけど、鼻が利くんです。ゾンビですから」 「え、う、い、いや、もう会わん！すまん純子！この通りだ！」 巽の謝罪を受けて純子は、薄く笑みを浮かべる。 「ゾンビの鼻が利くなんて、そんな訳無いのに。馬鹿な人…世界一愛しい人。貴方の愛をどうすれば独占出来るんでしょう。きっと何をしても、貴方は彼女の下に、また通う」 純子が巽に顔を近づける。巽の視界は、純子の端正な顔で一杯になる。 「だからせめて、今は私が、彼女の跡を上書きしてもいいでしょう？…ちょっとだけ、『我慢』してくださいね？」 そういうと、純子は自分の唇を巽のそれと合わせる。 そのままゆうぎりもかくやという接吻を披露する予定だった純子だったが、唇を合わせるやみるみる間に純子の顔は赤くなり、そしてパタリと倒れてしまった。

9 19/01/04(金)16:41:31 No.559572923

「しゅ、しゅーりょー！審査員のゆうぎりさん！どやんやったと？」 「女の昏くて深い情念。百点でありんす」 「またも高得点！よくできてたけど何で私が泥棒猫役やったと！？あ、純子ちゃん介抱しなきゃ」 巽の前で倒れてしまっている純子をさくらが救出し、リリィ同様布団に寝かせる。 「流石純子ね…金曜日の妻たちへの再放送を見てるかと思ったわ」 「なんでワシが不倫してる前提なんじゃい」 「相手がさくらなのにはノータッチなのね」 そう言われた巽は愛から目を逸らして黙り込んだ。

10 19/01/04(金)16:42:08 No.559573023

「…おはよう皆。リリィなんだか寝ちゃってたみたい。キスマッチ？だっけ。もう終わった？」 気を失っていたリリィが起きてきた。 「おうチンチク。大丈夫とや」「何が？」 「…知らんならいい。知らん方が良いこともある」 サキはリリィの肩をポンと叩いてそう言った。 「？変なサキちゃん」 「リリィはんが大丈夫そうでよかったでありんす」「ゆぎりん…あっいやっ」 ゆうぎりに話しかけられたリリィは、ゆうぎりから隠れるようにサキの後ろに回り込む。 「どうしたチンチク！」 「な、なんか、ゆぎりんを見ると、なんか変なの。ゾンビなのに、体が、ちょっと熱くて」 リリィは火照った顔を隠すように俯きながらそう言った。 その様子に、ゆうぎりは端的に言ってムラっときた。 「…リリィはん。日が沈みましたら、わっちの布団に」 「姐さん！やめろ！」

11 19/01/04(金)16:42:38 No.559573123

「えー、ハイ！皆、続けていきましょう！続いての挑戦者はー、サキちゃんだー！」 「…おう」 自分の名前を呼ばれたサキは、いかにもしょうがなくと言った様子で立ち上がる。 「さっさと終わらせるわ…ほい」 サキはお題ボックスに手を入れ、突っ込んだところにあった紙をすぐに手に取り、さくらに渡した。 「ありがとサキちゃん。さあて引いたお題は…『新妻』です！」 「に、新妻ぁ！？」 「サキちゃん大丈夫と？駄目そう？」 サキは一度深呼吸をしてから、意を決して言う。 「…いや、やる。あたしに出来ん事は無い」 「そっか！じゃー次はサキちゃんのムードキスマッチです！レディー、スタート！」

12 19/01/04(金)16:43:20 No.559573238

『新妻』 サキは巽と向きあう。新婚夫婦というよりは決闘直前といった様相である。 「こ、こ、こ、幸太郎…」 サキがあまりにも弱弱しく巽の名前を口にすると、雰囲気が和らぐ。 だがそれっきり、次の言葉を紡ぐ事は無く、ついには俯いてしまう。 「…どうした、サキ」 巽の心配をする声を聴いたサキは、このままではいけないと次にすべき行動を探す。 だが何も考えつかなかったサキは、何も考えず、浮かんだままに行動する事に決めた。 サキが幸太郎の下へ駆け寄る。幸太郎の前で膝立ちの姿勢になると、少し逡巡した後、巽を抱きしめた。 「…幸太郎…会いたかった…」 「俺もじゃい…サキ…」 やけにしっとりとした雰囲気に押されながらも巽は答える。 サキは抱きしめている手を緩めて、首元に顔を埋める。 「幸太郎…いい匂いばい…本当に…」

13 19/01/04(金)16:43:38 No.559573278

一杯に広がる巽の匂いに、サキの頭は何も考えられなくなる。ただ、ずっとこうしていたい。 「お、おう…」 ちょっと待て。これではさっきやった純子のそれと一緒ではないか。サキはここで初めて気づいた。 何か違う事をしなければ。首元から顔を離す。それに名残惜しさを覚えた自分に腹を立てる余裕すら今のサキにはなかった。 何をすればいい。そもそもこれはなんだっけ。新妻。新妻といえば、新妻といえば。 「こ、幸太郎さん！メ、ご飯にする？ふろ、お風呂にする？それとも…そ、それとも…ア、アタシに、すると？」 サキは何処か懇願するように、そう尋ねた。 「……サキで」 巽はついそう言ってしまった。サキはニヘラ、と嬉しそうな顔を見せた後、紅潮しきった顔を少しずつ巽に近づけた。 少しずつ、少しずつ。朝顔の成長の方が早いのではないかという程少しずつ。 ついに、2人は唇を合わせる。唇の触れた感触を覚えたサキははっと我に返り、巽に背を向けて立ち上がる。 「…ノーカンばい」

14 19/01/04(金)16:43:56 No.559573332

「しゅうりょー！どうでしたかゆうぎりさん？」 「未通女の恋愛はいつの世も良いものでありんす。百点」 「いやー純子ちゃんと同じと思わせておいての！サキちゃんほんとかわいかったと！」 「滅茶苦茶何でもいいから早くセックスしろって言いそうで危なかったわ。言いそうになる度にさくらが火かき棒を触るから言わなかったけど」 「サキちゃん、可愛かったよー！」 「……ｳﾙｾｴ｡ﾌﾞｯｺﾛｽｿﾞ」

15 19/01/04(金)16:45:40 No.559573651

なにこのやーらしか空間

16 19/01/04(金)16:46:32 No.559573802

リリィ1回ってあのダイスの時のか

17 19/01/04(金)16:47:10 [sage] No.559573909

ムードキスマッチとかいう元ネタがあるとはいえくそ恥ずかしい名前のファイルが増えていくのに耐えきれないのでここで終わりです続きません いつものまとめ su2808230.txt

18 19/01/04(金)16:47:50 No.559574004

たえさん…あなたは…

19 19/01/04(金)16:48:07 No.559574056

書きなんし！続き書きなんし！

20 19/01/04(金)16:49:00 No.559574200

恥ずかしければMKMとかムキッチとか略称にしなんし！

21 19/01/04(金)16:49:26 No.559574281

>たえさん…あなたは… 大人のキスよ、帰ってきたら続きをしましょう

22 19/01/04(金)16:49:38 No.559574312

またご飯食べたら書きなんし！

23 19/01/04(金)16:49:45 No.559574333

こいつ逃げおった！

24 19/01/04(金)16:50:08 No.559574402

逃がしんせん

25 19/01/04(金)16:50:52 No.559574552

おうこんだけやっといてケツまくって逃げっと？ そうは問屋がおろさんばい

26 19/01/04(金)16:53:10 No.559574979

演技 バラす ドッキリ 気まずくならない とか調べてそうなたえちゃん

27 19/01/04(金)16:54:12 No.559575177

そうか残念だな また来いや

28 19/01/04(金)16:54:42 No.559575260

たえちゃんのあたりだけえばんげりおんみたくなってるのが面白い

29 19/01/04(金)16:54:44 No.559575270

とりあえずよかったよ！

30 19/01/04(金)16:56:45 No.559575657

今更過去作読んだけど面白かったよ！ また書いてねいつものひと！

31 19/01/04(金)16:56:47 No.559575666

各キャラのやーらしかところをうまく描写出来てるよか怪文書たい みんな続き待っとらすよ！ はよ書かんね！

32 19/01/04(金)17:01:09 No.559576499

あとまさおと愛ちゃんさくらで終わりじゃん！見せて！

33 19/01/04(金)17:09:01 No.559577998

この愛ちゃんのゴリゴリスタンス好きかも

34 19/01/04(金)17:10:13 No.559578227

どうでもいいけど7日までには完結しておくように 宿題ですよ宿題

35 19/01/04(金)17:14:46 No.559579121

囲め！！ 逃すな！！！

36 19/01/04(金)17:19:22 No.559580056

怪文書警察だ！

37 19/01/04(金)17:24:21 No.559581031

>たえさん…あなたは… でもこんなこと言っておきながらいよいよ最後の決断をする時には 行きなさい幸太郎君！誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために！ って背中を押してくれるいい人なんすよ…

38 19/01/04(金)17:34:38 No.559583003

幸太郎、あなたはもう何もしないで