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19/01/04(金)01:23:09 私は神... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1546532589880.jpg 19/01/04(金)01:23:09 No.559463759

私は神も悪魔も鬼も仏も大嫌いである。 別にそれらを信じることについてどうこう言うわけではない。 私自身の趣味嗜好として単純にそういったモノが大嫌いなのだ。 よって此度の三箇日も私は天に向かって唾を吐き、我がやらしかゾンビィ達の為、歌詞を書き続けていた。 1度、フランシュシュのメンツから「初詣に連れていけ」と言う文句が上がったが、私はそれを毅然とした態度で棄却した。私は絶対に神社なぞには行きたくないので、行きたいならば自分たちで勝手に行けと言うわけだ。その分のメイクだけはしてやるとも言っておいた。 そう言うと我がフランシュシュは薄情にも、7人だけでそそくさと初詣に行ってしまった。ご丁寧にロメロまで連れて行ってである。残された私はせいせいしたとばかりにガランとした屋敷で1人執筆活動にいそしんだ。 悲しくなんてないからな。でももうちょっと粘ってくれてもよかったじゃん。

1 19/01/04(金)01:23:37 No.559463866

その夜、私は溢れんばかりの汗を目に溜めながら行きつけのバーに湿気こんだ。三箇日だというのに、何も予定なぞない侘しいマスター氏は私を見るなりそうそう 「ゆうぎりには手を出すなよ」と宣った。 初詣に置いて行かれた事とは全く無関係(全く持って無関係である!)の事で少々ささくれ立っていた私の心は即座に沸騰した。 私がアイドルに手を出すとお思いか。そもそも私の事情についてお前は10も100も承知だろう。お前は推しのアイドル過激派のやべーファンなのかと、1+1=2と同等の正論を滝の如くマスター氏に叩き付けると、彼は困ったように肩を竦めた。 「俺が気にしてんのはゆうぎりがお前さんに惚れる事だよ。他の誰だろうとゆうぎりが幸せなら別に構わねェが、お前みたいなロクデナシに惚れるとあっちゃあ、ご先祖様に顔向けできねェ」 「ぷっ」

2 19/01/04(金)01:24:20 No.559464020

そのセリフを聞いた瞬間、腹の底から笑いが込み上げてきた。 カウンターを何度も叩き、息も絶え絶えになるまで笑っていた私を、マスター氏は不快そうに睨んでいた。しかしどうして私を責められよう。そんな事は我が心の乾城が陥落する事と同じくらいあり得ないことである。おっかしー。 「……救えねェな」 マスター氏の吐き捨てるような言葉を私は鼻で笑った。一体どうして伝説の花魁が私に惚れることがあろうか。いくら私が佐賀県1の男前であろうとも、なかなかどうして摩訶不思議な事態である。 腹の底から久しぶりに笑った所為か、その日は気分よく眠る事が出来た。なかなか如何して悪くない仕事始め前の夜であった。

3 19/01/04(金)01:24:56 No.559464131

さて、三箇日も終わり、仕事始めとなった日の事である。 私はまたしてもゆうぎりと2人で仕事先へ向かった。私は昨日のマスター氏の痴態を思い出し、静かにほくそ笑む。するとゆうぎりはそれに気付いたのか、小さく底の見えない微笑を浮かべた。 「愉快な事でもありんしたか?」 「まあ、な」 まさかその内容を馬鹿正直に話す事も出来ないので、曖昧に返す。するとゆうぎりはそれで納得したのか、小さく鼻歌を歌い始めた。 『さくら89%で』 サンキュー乾。 ほれ見たことか、我が心の乾城は依然として健在である。よってゆうぎりが私に惚れてなんぞいないと言う事は同様に証明できる。マスター氏も老いたな。 さて、仕事は特筆することも無いほど順当に進み、その帰りで事は起こった。 「頑張ったわっちにご褒美をおくんなまし」

4 19/01/04(金)01:25:28 No.559464214

再び伝説の花魁が強請って来たのである。私は毅然とした態度でその要望を跳ねのけようとしたのだが 「所詮わっちはさくらはんの添え物」 という言葉によって渋々私は車を進める事となった。 右右左また右左と、ゆうぎりの指示に従って車を進めていく。その果てに辿り着いたのは、なんと佐嘉神社であった。口をあんぐりと開ける私にゆうぎりはいけしゃあしゃあと 「この神社は8つの社を全て周ると大願が叶うらしいでありんす」と言った。 「それがどうしたんじゃい」と私が不貞腐れながら吐き捨てると、ゆうぎりは小さく首を傾げて笑う。 「わっちらみたいでありんしょう?」 その言葉に、今度は私が首を傾げた。 「何がじゃい」 「社は8つ、わっちらも8人」 どうやらゆうぎりは8つの社が私を含めたフランシュシュの面子の様だと言いたいらしい。 私はその言葉を鼻で笑った。 「ワシはお前らとは違うんじゃい」 私はあくまでプロデューサー、日陰の人物である。日向にいる彼女達の輪に加われよう筈もない。初詣置いていかれたし。

5 19/01/04(金)01:26:01 No.559464326

そんな私の内心を見透かすようにゆうぎりは頷き、ますます笑みを深めた。 「ええ、さくらはんは特別でありんしょう」 余りにもしつこい。流石の佐賀県の如き心の広さを持つ私であっても、これほどまでに執拗にネタにされれば腹の1つや2つも立つ。 「用事があるなら早く行け」 私が苛立ち交じりに吐き捨てる。しかしゆうぎりはそれにも気分を害した様子は無く 「さくらはんなら付いてきささんした」とだけ言って車の外へ出て行った。 残された私は1人ごちる。 「一体何なんだ」 さくら、さくら、さくら、さくら、そんなに私の行動はさくら中心に映るか。 腹の底に溜まった苛立ちを少しでも解消したいと、私も財布をもって車の外に出る。無論、神社に入る訳ではない。私の目的はその前に置いてある自動販売機である。 私は硬貨を入れ、ホット缶コーヒーのボタンを押す。しかし、苛立ちの所為で判断力が鈍ったのかアイスコーヒーを買ってしまっていた。 「糞ッ」 悪態を吐くも、2つ目を買っても無駄なだけである。私は仕方なく冷える手を堪え、車へと歩を進めた。

6 19/01/04(金)01:26:40 No.559464434

出たなだめ乾チェッカー!

7 19/01/04(金)01:26:40 No.559464437

暖かい車内においても冬場のアイスコーヒーは不快であった。私は一口飲んで顔を顰めると、そのまま缶を置く。 頭の中を渦巻くのは先程の執拗な皮肉であった。 ――――私はそんなにさくら中心であるのか。 頭の中に湧いた、そんな考えに私は「違う」と返す。 確かに、始まりはさくらだった。嘗ての私が、乾が恋していたのはさくらだった。しかし、それがそのまま全て、今現在まで続いている訳ではない。 人は変わるものである。 淡い恋心までここまで来れようはずもない。 私を突き動かしているのはこの世の上でせせら笑う神と言う愚物への反抗心。そして消えゆく佐賀の運命への挑戦心。 救われぬモノ達への救いの手として、私はアイドルという器を選んだ。そして、その器を満たす7人の乙女達―――― ――――『ありがとう乾君』 ああ、そうだ。確かに始まりは源さくらだ。

8 19/01/04(金)01:27:25 No.559464573

私はそれに目を付けた。私を救ってくれた源さんならば、それを救ったアイドルならば、破滅の定めに突きつける挑戦状に丁度良いと、そう思った。 まぎれもなく、あの日、源さくらは怠惰と諦観の底にいた私の救世主だったのだから。 ただ、確かに、確かにそこに二心が無かったと言えば嘘にはなる。源さくらをアイドルにしてあげたかった。そんな思いが無かったと言われれば嘘になる。 しかし、しかし、私は、それでもフランシュシュを―――― 『俺は、確かに源さんに恋をしていた』 心の中の乾がそっと呟く。 『今でも、時が戻ってしまわないかと、時々思う』 私は懐の懐中時計を取り出した。美しい銀細工のそれは、ただ静かに光を反射し、鼓動を奏で、時を粛々と進めていくばかりである。 『でも、それはありえない』 乾はそっと呟いた。

9 19/01/04(金)01:27:52 No.559464662

『もしも今目の前に神様が現れて、「時を戻してやろう」なんて言っても、きっと巽《オレ》はそれに縋らない』 懐中時計は止まらない。もう既に動いている。 『あの日より前に、「君の事が好きです」って言えなかった俺の恋は、もう終わってるんだ』 ……サンキュー乾。私は缶を一気に煽る。 痛い程の冷たさが私の芯を刺し、苦み走った味が広がる。 初恋はレモン味と言うが、私のそれは冷たいコーヒーの味だった。

10 19/01/04(金)01:28:27 No.559464777

「幸太郎はん」 肩を優しく揺すられる。どうやら私は眠ってしまっていたようだった。 体が酷く冷える。それに喉元が不快だ。冷えたコーヒーの所為か。 ゆっくりと顔を上げた私の視界に、ゆうぎりの顔が映る。 「起きんした?」 私は未だ寝ぼけている頭で頷いた。そんな私に、ゆうぎりは手元の袋を差し出した。 「お土産でありんす」 「はあ」 私は言われるままに袋を開けた。そこには、赤い刺繍が奇麗なお守りが入っていた。 「幸太郎はんの幸福を祈って」 ……最近、正体を隠す為だけの遮光眼鏡に感謝することが多くなった気がする。私も年だろうか。

11 19/01/04(金)01:29:14 No.559464935

「……お守りなんてムダ金じゃい」 そっぽを向いた私の口から、そんな憎まれ口が飛び出す。その言葉にゆうぎりは笑みを深める。何故だか、先程よりもほんの少し柔らかい笑みを。 「だから」 ゆうぎりはもう一つの袋を持ち上げる。 「買って来んした、甘酒の元」 ちらりと舌を出したゆうぎりは、まるで悪戯が見つかってしまった童女の様だった。 『さくら95%で』 サンキュー乾。お前には本当に助けられている。 「帰ったら皆に振舞いんす」 ゆうぎりは助手席のシートベルトを締めながら言った。

12 19/01/04(金)01:29:37 No.559464990

「勿論、幸太郎はんにも」 「……誰がゾンビィの作ったものを飲むかい」 私はいつも通りの憎まれ口を叩く。が 「……いや、味見くらいならしてやる」 気が変わったのでそう付け足した。きっと、先程のコーヒーの冷たさが残っている所為だろう。甘くて暖かいものが欲しかった。 そんな私の言葉に、ゆうぎりは 「あい」とだけ答えた。 ――――きっと楽しい飲み会になるだろう。 私はいつもより、少しだけ強くアクセルを踏んだ。

13 19/01/04(金)01:32:04 No.559465404

姐さんちょっとだけ意趣返ししてはる?

14 19/01/04(金)01:32:40 No.559465497

相変わらず年相応のゆうぎりはん可愛い…

15 19/01/04(金)01:32:41 No.559465498

むぅ超大作…

16 19/01/04(金)01:32:58 No.559465546

>私はいつもより、少しだけ強くアクセルを踏んだ。 轢くわこれ

17 19/01/04(金)01:33:42 No.559465659

su2807367.txt 今まで書いたものです。 私の中の乾はさくらはもちろんの事他の面子にも重い愛を向けていると言っていました。 以上です。

18 19/01/04(金)01:34:45 No.559465834

>私の中の乾はさくらはもちろんの事他の面子にも重い愛を向けていると言っていました。 でしょうね…

19 19/01/04(金)01:35:08 No.559465892

サンキュー乾

20 19/01/04(金)01:35:29 No.559465947

好きな文体だなぁと思いながら読んでたらサンキュー乾。で気がつく やはりお主だったか ありがとうな

21 19/01/04(金)01:35:47 No.559466004

乾はさぁ…罪作りな人?

22 19/01/04(金)01:35:55 No.559466032

そうか失恋したのか幸太郎は…

23 19/01/04(金)01:37:27 No.559466265

やや、姐さん大好きだな?

24 19/01/04(金)01:37:37 No.559466297

死んじゃったからね…

25 19/01/04(金)01:38:01 No.559466350

わっちももうちょっとわがまま言いなんし!

26 19/01/04(金)01:38:15 No.559466396

>そうか失恋したのか幸太郎は… 「好き」といえないまま死別だからな そして彼女に「好き」というために蘇生させたわけじゃないから失恋したまま

27 19/01/04(金)01:39:07 No.559466531

きたな幸さく大好きな「」 いつもかわいいゆうぎりさんをありがとう

28 19/01/04(金)01:39:44 No.559466621

幸ゆうの波がキテル…でありんす

29 19/01/04(金)01:41:41 No.559466935

ゆうぎりは自信の失恋前提でモーションかけつつさくらとの仲を押してるように見えます

30 19/01/04(金)01:42:12 No.559467015

姐さんの理解度が深まってきたのかいいのが連続で出てくるな…

31 19/01/04(金)01:42:47 No.559467115

>ゆうぎりは自信の失恋前提でモーションかけつつさくらとの仲を押してるように見えます 乾が死んで巽幸太郎としてフラットに歩き出すことも出来るかもしれない

32 19/01/04(金)01:43:08 No.559467173

>「所詮わっちはさくらはんの添え物」 したたかだけどそういうの繰り返してると本当に敗北しちゃうよ!

33 19/01/04(金)01:43:30 No.559467225

あーもうこいつぶっ殺すぞ

34 19/01/04(金)01:43:37 No.559467247

幸ゆう怪文書書く「」って文章力高い人多いよな

35 19/01/04(金)01:44:44 No.559467424

姐さんが敗北キャラなんてそんな事…

36 19/01/04(金)01:45:11 No.559467501

乾くんが失恋したことを受け止めてまた歩き出せるなら今度はちゃんと姐さんと一緒に付いていけるかもしれない

37 19/01/04(金)01:45:35 No.559467560

ゆうぎりは幸太郎の特別を知ってるから彼に寄り添えるけど踏み込めないっていう設定が周知されてきたようだな…

38 19/01/04(金)01:46:05 No.559467630

はぁー…巽はさー バーのマスター(生年:紀元前)みたいな文字通り世を捨てて生きている死んでいない人間が手を貸してしまう程持っている男だって自覚が無い人?

39 19/01/04(金)01:46:17 No.559467660

姐さんは勝っても負けてもどっちもアリなんだろう

40 19/01/04(金)01:48:17 No.559467936

真に本命とも言える相手には奥手なゆうぎり姐さんはズルいな…

41 19/01/04(金)01:49:09 No.559468056

こうなるともしかして源さくらゲージ無しでフランシュシュの面々と向き合うようになるのだろうか

42 19/01/04(金)01:50:04 No.559468179

>「……救えねェな」 マスターの言う通り救えない男すぎる…

43 19/01/04(金)01:51:01 No.559468342

マスターがこんだけ釘刺してるというのに巽はさぁ…

44 19/01/04(金)01:51:02 No.559468346

さくら換算してるのにさくら特別扱いによく反論できるな

45 19/01/04(金)01:51:15 No.559468377

森見作品のどれかのコピペのようでいて 文体の模倣から別のものになっていくのが面白かった

46 19/01/04(金)01:53:56 No.559468773

>したたかだけどそういうの繰り返してると本当に敗北しちゃうよ! 花魁やけん!花魁やけん諦めがつく様に予防線張ってんだ!

47 19/01/04(金)01:54:18 No.559468832

抱きなんし!抱きしめなんし!あっ…幸太郎はん(消える) するミニゆうぎりはデキル花魁すぎる…

48 19/01/04(金)01:54:21 No.559468842

ああなんて切なくて可愛いプロデューサーだ・・・

49 19/01/04(金)01:54:44 No.559468895

ゆうぎり怪文書は抒情的だな テーマが失恋方向に行くからなのか

50 19/01/04(金)01:55:48 No.559469063

でももう時計の針は動いてるってことで新たな恋もあるはず

51 19/01/04(金)01:56:11 No.559469108

ミニわっち 脳内会議が長引くほど増える ビックリしたりすると消える

52 19/01/04(金)01:59:56 No.559469621

乾ではなくて巽幸太郎だからな…

53 19/01/04(金)02:01:13 No.559469798

ただ…別人になってももう一度同じ女子に恋をするというのもいいでありんすな…

54 19/01/04(金)02:02:12 No.559469935

>「所詮わっちはさくらはんの添え物」 本当の意味で失恋した時に自分に言い聞かせるんだ…

55 19/01/04(金)02:05:10 No.559470341

所詮わっちも持ってない女でありんすなぁ…

56 19/01/04(金)02:14:14 No.559471608

粘って欲しがるのかわいいよね

57 19/01/04(金)02:31:45 No.559474270

姐さんはかなわない恋が似合うように見えるのはなんだろう

58 19/01/04(金)02:35:16 No.559474781

花魁ってそんなもんじゃない?

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