虹裏img歴史資料館

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18/12/30(日)18:07:35 「きみ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1546160855846.jpg 18/12/30(日)18:07:35 No.558221792

「きみ、迷子?」「うん…」「お父さんかお母さんの名前は分かる?」 神野公園に花見に来てただけなのに持っとらん。 乾幸太郎少年は傍らの幼児を見やってため息をつく。 歳の頃は4つ、5つくらいの女の子だろうか。 「パピィ…」と呟きながら今にも泣きそうな表情を浮かべている。 そこにズシン、ズシンと何やら不穏な音が近づいてきた。 「正雄、正雄~!どこにおらすか!!」 まさお…?迷子の男の子でも探してるのだろうか、ガタイの大きい粗暴そうな男が辺りを駆け回っている。 「あっ、パピィ!」 パピィ!?あのヤーさんみたいな男がお父さん!? 「正雄、こんな所におらしたか…怪我はなかと?」 「うん!おにいちゃんがいっしょにおったけん、なんもなかったよ。げんきいっぱい!」 「それならよか…。そこの兄ちゃん、正雄の事見ててくれてあいがとう!」 「は、はい……」 事態を飲み込めない。まさおって誰だ?まさかこの女の子?

1 18/12/30(日)18:08:06 No.558221892

「またはぐれるかもしれん、手ば繋いで行くか!」 「いっぱいあそんでつかれちゃったの、パピィおんぶして~!」 「おんぶはせんぞ、正雄。さっき元気一杯って言っとらしたやろ!」 「えぇ~!やだやだやだ、おんぶ~!」 「おんぶはせんけどほら、こうやって…高いやろ、正雄」 肩に乗せられた「まさお」はキラキラと目を輝かせている。 「やったー!すごいすごーい!おにいちゃんよりおっきくなっちゃった!」 一通り父の肩ではしゃいだ「まさお」は少し落ち着いたようでこちらに顔を向けた。 「パピィにあわせてくれてありがとう!おにいちゃん!」 こぼれ落ちそうなほど満面の笑顔を見せて、親子は去っていった。

2 18/12/30(日)18:08:51 No.558222045

乾幸太郎青年は、何が見たいという訳でもなくテレビのチャンネルを変えていた。歌番組では水野愛の映像が流れ続けている。 つい先日目の当たりにした、サガロックフェスティバルでの記憶が蘇ってしまう。 「…嫌な思い出だ」 もう彼女が新曲を歌う姿を見ることはできないのに。 唯一安心できる点は、源がこの悲劇を知らずに済んだ事かもしれない。 彼女の生涯を過去のものとして刻みつけようとしている番組に嫌気が差し、大河ドラマでも見て気を紛らわせよう。そう思い公共放送にチャンネルを合わせた。 おそらく主人公の幼少時代なのだろうか、子役の女の子が真に迫る熱演をしているのが目に入った。 どこかで見覚えのある顔だと一瞬思いはしたが、先程の水野愛の映像で頭が一杯になってしまい、考えがまとまらない。 きっと他人の空似だろう、とりあえず今は明日が欲しい。スッと立ち上がりテレビを消すと、そのままベッドに倒れこんだ。

3 18/12/30(日)18:09:42 No.558222207

「おう乾くんよ、お前が作ろうとしてるデス娘(仮)だっけか?新しいメンバー候補がいるんだが…正直、お前は見ないほうがいいかもしれんな」 「そんなの今更ですよ。紺野純子や水野愛の遺体のほうが堪えた。…あとその名前で呼ばないでください」 「いや…そういう意味じゃないんだ。遺体に外傷はないからな。まあ、メンバーに加えるかの判断はお前次第だ」 髭を蓄えた老人は言ったあと「ネクロマンサー見習いの巽幸太郎くん」と付け足した。 開かれた棺の中には、今の日本で知らぬ者はいないであろう天才子役が眠っていた。 「星川リリィ…まだ小学生くらいのはずだがこうも早くに…」 「強い精神的ショックが直接の死因とされているが、極度の過労状態でもあったみたいでな」 確かに佐賀を拠点にしていたとは聞いていたし、こんな小さな女の子が過酷な労働環境に耐えられないのも無理はない。 その後ほれ、とどこからくすねて来たのか分からない死亡診断書のコピーまで手渡してきた。

4 18/12/30(日)18:10:12 No.558222298

「まあ一番の驚きはこんな顔して男の子だった事だな。よく見ると髭が1本生えてる」 しかし老人の言葉はカルテの名前欄に意識を奪われ、何一つとして頭に入ってこなかった。 「豪、正雄…?」 「おう、外見に似合わずいかつい名前してたのが意外でな」 「そう…ですね」 なるべく平静さを保って返事をしたつもりだったが内心の動揺までは隠せていなかった。 脳内で2つの記憶が繋がって線になっていく。 父の肩で目を輝かせていた「まさお」と、齢12にして非業の死を遂げた天才子役「豪正雄」。 なぜ、どうしてあの子が。そんな事を考えつつも幸太郎の意志はより強固なものへと変わっていった。 「彼…いや、彼女もメンバーに追加させます。この7人で佐賀を救ってみせる」 ゾンビィランドサガプロジェクトの完遂をより強く決意した瞬間であった。

5 18/12/30(日)18:10:43 No.558222387

その日、敏腕プロデューサー・巽幸太郎は新曲である「To My Dearest」のお披露目ライブを終えて物思いに耽っていた。 するとコンコンと音がして今日の主役だった星川リリィが入ってくる。 「たつみー、リリィ眠れないからお話しようよー」 「見てわかるじゃろがい、今は仕事中じゃ」 「仕事ばっかりしてると体壊しちゃうよ?たつみも休もうよ」 「……分かったわい」 リリィに忠告をされては何も言い返せないとばかりにペンを置いて向き直った。 「…今日のライブ、パピィが来てくれたの」 「それは知っとる。で、言いたい事は言えたのか?」 「うん。パピィは今でもリリィにとって一番のお父さんだよ、大好きだよってずーっと伝えたかったの」 「ゾンビになれたおかげでそれができた。生き返れなかったらパピィはずっと苦しんだままだったのかなって」 「ワシはただ新曲を作っただけじゃい。あとはお前らが勝手にやった事じゃ」 相変わらずそっけない態度で返す幸太郎にリリィは続ける。

6 18/12/30(日)18:11:11 No.558222475

「ねぇ」 「なんじゃい」 「……パピィに会わせてくれてありがとう、たつみ」 そう言ったリリィの表情は、こぼれ落ちんばかりの満面の笑顔だった。

7 18/12/30(日)18:12:47 [sage] No.558222772

幸リリいってみようと思ったらタイミングが丸被りしたでありんす やっぱり難しい

8 18/12/30(日)18:13:50 No.558222978

よか…!

9 18/12/30(日)18:15:00 No.558223213

まさおー!

10 18/12/30(日)18:17:49 No.558223719

序盤に巽の面影が伺える文があるのが好き

11 18/12/30(日)18:18:19 No.558223845

残される側の巽はつくづく辛いな…

12 18/12/30(日)18:18:40 No.558223906

幸リリの流れキテル...

13 18/12/30(日)18:18:53 No.558223958

みんなほっこりしとらすよ!

14 18/12/30(日)18:21:12 No.558224398

幸リリはこの独特の距離感がいいね…

15 18/12/30(日)18:22:52 No.558224741

一応同性だからな…

16 18/12/30(日)18:23:19 No.558224827

なんなの幸リリの流れがきてるの

17 18/12/30(日)18:25:06 No.558225178

でも巽はたぶん自分を許すことは…

18 18/12/30(日)18:28:33 No.558225828

前後綺麗に繋がって最高のタイミングでありんす!

19 18/12/30(日)18:28:51 No.558225894

>なんなの幸リリの流れがきてるの 流れは6人全員にある

20 18/12/30(日)18:29:26 No.558226003

巽と乾の狭間の余裕なさそうな感じよか…

21 18/12/30(日)18:35:06 No.558227130

幸リリの波がきとらすよ!

22 18/12/30(日)18:37:04 No.558227549

わっち幸リリ好きでありんす!

23 18/12/30(日)18:37:13 No.558227584

最初にto my dearestの歌詞を見た幸太郎の心境やいかに

24 18/12/30(日)18:39:19 No.558228002

幸リリキテル…

25 18/12/30(日)18:43:21 No.558228822

幸リリいい…

26 18/12/30(日)18:47:44 No.558229756

苦悩する巽よか…

27 18/12/30(日)19:04:25 No.558233722

あっ120点です

28 18/12/30(日)19:04:35 No.558233767

29 18/12/30(日)19:06:46 No.558234357

尊い・・・いい・・・

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