虹裏img歴史資料館

1 18/12/30(日)13:57:43 No.558176420

たえには他のゾンビィ達と違い過去の記憶がない。いや正確には消えてしまっていた。自らの肉体と魂を用いたゾンビィは記憶の全てを剥奪される。それは不死の存在を許さんとする人間の魂に刻まれた安全弁のようなものなのだろう。その証拠に、たえ以外のゾンビィは記憶の保持も制御も可能であった。 つまりたえの魂は赤子同然であり、まだ形作られていない無垢なもの。最初期の彼女の行動が四つんばいであったり何にでも噛みついたりしていたのは、幸太郎と彼女以外の動く存在――ロメロの行動を模倣していたためだ。 さくら達が目覚め、フランシュシュとして活動するようになってからたえの模倣の対象は彼女たちに移った。さくらの献身的な呼びかけもあったのだろう。今の彼女はどんどん人間味を増している。彼女たちが目覚めるまで、自分が極力たえと接触しなかったのは結果的には良い方向へと向かっている、と思いたい。

2 18/12/30(日)13:58:13 No.558176523

ゾンビィ０号。幸太郎が初めて蘇らせた人間のゾンビィ。 彼女を選んだのは偶然であった。金立山の自然洞穴で見つけた真新しい死体。その死因は餓死であったがただの遭難事故などではない事を幸太郎は見抜いた。なぜなら周囲に置いてある遺留品の中に生きるために準備すべきもの――食料や水などが何も無かったからである。つまり彼女は死ぬためにここに来たのだ。 なぜ彼女が死を選んだのか、その経緯は分からない。しかし長らく『死』に触れてきた幸太郎は気付く。轢死・事故死・天災死・絞首死・ショック死。どのように死すかも選べるこの時代に、彼女は誰も何も巻き込まずに、即身仏のように自然の中に還ることを選んだのだろう。 高潔とも言えるその魂を幸太郎は選んだ。同時に思う。それは彼女の意思を、尊厳を弄ぶことになるのではないか。しかし、だからこそ幸太郎は彼女を選んだ。これから己が成すエゴの塊のような行為。幕を開けるのに相応しい魂であろうと。

3 18/12/30(日)13:58:38 No.558176608

しかし彼女の記憶は消えてていた。まるで本来の魂が輪廻転生を拒否したようにも思える。彼女の魂は自然に還り『山田たえ』という新たな魂を持った。 「ヴァーウァイ」 再び事務室の扉をノック無しで開けてたえが入室してきた。うめき声と共に彼女の両手が、巽幸太郎に向けて突き出される。他のゾンビィ達と比べて、尽きることの無いたえの食欲。それは最初の魂が肉体に刻んだ飢餓への代償行為なのか。 幸太郎は胸ポケットのイカゲソをその手の上に置いた。 「遠慮するな。いままでの分も食え」 「ヴァー」という声と共にたえが９０度のおじぎをして、イカゲソを口の中に頬張る。 「おかわりもいいぞ」 今生はせめて飢えさすまい。 幸太郎は、胸ポケットにイカゲソを補充しつつそう思うのだった。

4 18/12/30(日)14:00:51 No.558177042

自殺か･･･

5 18/12/30(日)14:01:06 No.558177093

重い…

6 18/12/30(日)14:02:43 No.558177411

あえて長い苦しみを選んで自殺した辺りがもうね…

7 18/12/30(日)14:06:53 No.558178218

んもうすぐ重くする！

8 18/12/30(日)14:07:19 No.558178301

重いよぉ…

9 18/12/30(日)14:11:33 No.558179088

たえちゃん幸太郎相手にどんななのかあんまわかんないよね シャンプー持っていったりしてるし日頃からお手伝いしてるのかもしれんけど

10 18/12/30(日)14:22:38 No.558181077

うめ…うめ…

11 18/12/30(日)14:25:04 No.558181543

>シャンプー持っていったりしてるし日頃からお手伝いしてるのかもしれんけど 本来世話焼きっぽくはある 周りの仲間をよく見てるし