18/12/14(金)19:21:25 遺影の... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1544782885284.jpg 18/12/14(金)19:21:25 No.554440613
遺影の中の少女は仏頂面をしていた。近頃彼女はとんと笑わなくなっていたのだから当然だ。 少女の名前は源さくら。僕の小学校と高校の同級生だ。 小学校の頃の友人が彼女の名前を口に出すとき、たいてい彼らの表情には忌々しさか哀れみがにじんでいた。 学芸会に運動会。行事で大役を任される度に彼女はそれをふいにしてきた。けがや病気が原因では仕方がなかったが、小学生の心はそんな理屈では割り切れない。気づけば彼女に声をかけるものは少なくなり、クラスで浮いた存在になっていた。小さな頃は遊ぶこともあったが、僕もいつしか彼女を遠巻きに眺めるだけになった。声がかけづらかったのもあるし、第一何を話せばいいものかわからなかった。太陽のようだった彼女の笑顔が徐々に陰っていくのを、僕は卒業式の日までただ見ていることしかできなかった。
1 18/12/14(金)19:22:13 No.554440779
再会は高校の入学式だ。その日、僕はクラス分け表に彼女の名前を見つけた。同じクラスだと気づき、喜び勇んで教室に向かったが、そこで目にしたのは自暴自棄といったていの彼女だった。中学生活の大半を受験勉強に費やし、合格確実とまで言われたのに、志望校の受験当日に失敗してしまったかららしい。彼女の不幸体質は相変わらずなようだった。 3年分の努力が水泡に帰したのが応えたのだろう。彼女の顔色はなかなか晴れなかった。ともすれば憂いを秘めた表情で宙を見つめていた。 高校1年も半ばを過ぎた頃、教室に笑顔でクラスメイトと話す彼女を見つけた。会話の内容はアイアンフリルという流行りのアイドルグループについてだ。久しぶりに彼女の笑顔が見られたことが嬉しかった。その後、共有できる話題ができたことで同級生との会話が増え、彼女は徐々にクラスにもなじみ始めていた。 もう少しで、彼女にも楽しい高校生活が待っているはずだった。もう少し、もう少しだったのに。彼女は突然死んでしまった。
2 18/12/14(金)19:22:59 No.554440939
隣りの友人が膝を指でつついてくる。もう少しで僕に焼香の番が回ると教えてくれたらしい。考え事をしていたので気づかなかった 焼香の後、少し周りを見回してみた。家族や親戚はもちろん、元クラスメイトにも泣いている子が何人もいた。長いこと心を閉ざされ、交流がなかったにも関わらず。 源はいいやつだった。失敗続きでネガティブ思考が染みついてはいたが、人のよさは隠せなかった。多才ながらも、それに胡坐をかかずに努力をしていた。生来の運の悪ささえなければ、すぐにでも幸せになれたはずだ。 坊主の読経を聞きながら、生まれ変われば源の星の巡りもよくなるだろうかと考えた。普段は転生なんて信じていないが、これで源のすべてが終わりだなんて思いたくなかった。 きっと次の機会があれば、源は幸せになれるはずだ。ツキが味方をしてくれれば幸福を阻むものは何もない。 けれども、もしかしたら。あいつ、生まれ変わるのにも失敗したりしないだろうな。
3 18/12/14(金)19:25:15 No.554441381
よか…
4 18/12/14(金)19:31:18 No.554442673
よかったい…
5 18/12/14(金)19:34:10 No.554443360
生まれ変わるの失敗してる…
6 18/12/14(金)19:49:28 No.554447130
悲しい…
7 18/12/14(金)19:55:42 No.554448688
>生まれ変わるの失敗してる… それも巽幸太郎って奴の仕業なんだ