18/12/05(水)02:49:57 「ねえ... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
18/12/05(水)02:49:57 No.552315238
「ねえねえ愛ちゅわぁ~ん?」 「あ゙?なによ」 ───PCを使うのも程々にしとけよ それは偶然であった。 何時ものように幸太郎が入浴してるのを見計らって愛はネットを漁っていた。 屋敷は深夜に掛かり皆既にもう寝静まっている頃であり 静寂が支配する薄暗な部屋でPCの光が煌々と愛を照らしていた。 持ち主から承諾を得られたとはいえ日中はレッスンがあり こんな時間でもなければあのフザケた男がPCがあるこの部屋から居なくならないのだ。 マウスを駆使し趣味である他のアイドルの情報を漠然と流し見していた。 閉じては開きを繰り返す最中、ある一件のブログを発見した。 「……!」 それはかつて自分が所属していたグループ『アイアンフリル』 そのグループメンバーの1人であった『薫』のブログであった。 「薫…」
1 18/12/05(水)02:51:59 No.552315398
愛は我知らず彼女の名前を呟いていた。 メンバーの入れ替わりが激しいグループではあったが 薫は自分と同じ志を持つ同士であった。 オーディションで最初に声を掛けて来たのは薫だった。 レッスン帰りに一緒にお茶して互いの振り付けの改善点を話したり 初ライブに向けて夜が明けるまで共にダンスのレッスンを行ったりもした。 意見の食い違いで衝突した事だって何度もあった。 それでもアイアンフリルとして活動していく内に互いを認め 共にライブの成功の喜びを分かち合ったりもしたのだ。 佐賀の野外ライブで落雷事故によって命を落とすまで 彼女は自分と共に高みを目指していたというのに…。 その彼女は今、写真の中で幸せそうに家族と共にこちらに笑顔を向けている…。
2 18/12/05(水)02:53:10 No.552315488
「結婚したんだね…」 アイコンが画像をクリックする。 「旦那、優しそうじゃない…」 更に他の画像も開いていく。 「子供もいるのね……薫に、似て、る…っ」 画面の中の彼女からはあの輝いた日々を遠く置き去りにしてしまったように感じた。 ───分かっていたつもりだった。 10年前に亡くなった自分と生きている彼女達とでは 決して埋めようのない隔たりが… 残酷とも言える時の流れやそれまでの軌跡があるという事を… 今まで考えまいと思っていた事をかつての仲間の写真を前に 愛は押し寄せる深い悲しみに呑み込まれていた…。
3 18/12/05(水)02:54:56 No.552315628
「…っ…ひぐっ…ふっ…ぅぁぁ…っ…ぅぁあぁぁあぁァぁ…!」 どうして…どうして自分なの…どうしてあの時だったの…! なんで…っ!なんでなのよ…っ!なんで…これからだっていうのに…ッ! ドウシテ ワタシヲトメナカッタノ ドウシテ ワタシガシンデ カオルガイキテイルノ 「…!?」 自分は今、何を考えた…? あの場で亡くなる事を予期出来た者なんて誰も居ないというのに…。 ましてや間違ってもかつての仲間の死を望むだなんて…! そこまで思い至ってしまって益々自己嫌悪に陥ってしまう。 鬱々とした気持ちを抱えながらクリックする手は止まらず そこである記事を目にしてしまう。 『天へ駆け昇った水野愛へ』 「!!」 震える手でクリックする。
4 18/12/05(水)02:56:08 No.552315724
愛 あれからもう10年だよ。 あっという間でもあり気の遠くなる時間にも感じたよ。 愛の事を忘れた事なんて1度だって無かった…本当に。 あの日ステージに上がる前に愛が言った言葉、今でも覚えてる。 『生憎こんな雨だけど会場に来てくれたファンの為にも 私達の精一杯のエールを送りましょ!』 『雷雨なんかに負けない…だってそれが私達アイアンフリルだから!』 あの時の真っ直ぐな愛の瞳はどこまでも輝いていました。 ああ…私はこんなに素敵な子と同じステージに立つんだ…。 この子と同じステージに立てるだなんて一生の宝物になる…。 心からそう思いました。 そんな素敵な子と並び立つ自分が誇らしくもありました。 1曲目が無事終わり2曲目のサビを終えて愛が雨の中に駆け抜けて行った後ろ姿…。 今思えば無理にでも引き止めるべきでした…。 愛が決めポーズとして右手で作ったピストルを天高く掲げる瞬間
5 18/12/05(水)02:57:04 No.552315807
一瞬の閃光と轟く轟音。 状況を把握した頃にはあなたはもう…。 誰もが理解出来ませんでした。 頭が真っ白になっていました。 後になって分かった事ですが私は白目で吐瀉物を吐いていたそうです。 私はその時意識が無かった為そうスタッフから聞きました。 他のメンバーも同じような状態でした。 ノノも仁奈もみゆもあのステージでの事が今でも忘れられないそうです。 …でもそれは当然だよね。 私達の誰もがあの場所に心を置いてきてしまったのだから…。
6 18/12/05(水)02:57:49 No.552315875
忘れられるわけがないんです。 忘れていいわけがないんです。 あなたはアイアンフリル不動のセンター 水野愛なのだから。
7 18/12/05(水)02:58:32 No.552315936
こうやって書き綴っているとあの頃を思い出すよ。 愛が曲の振り付けに納得するまで付き合ったこと。 歌のテンポを上手く掴めず声が枯れ欠けるまで練習したこと。 メンバー全員で焼肉屋にも行ったね。 『とにかく肉肉!』とひたすらお肉焼いてたね。 カラオケにも行ったよね。 愛の◯◯…また聴きたいな。 合宿でお互いに夢を語ったりもしたよね。 絶対に日本一になろうねと固く誓い合ったよね…。 愛とのこと昨日のように思い出せるよ…。
8 18/12/05(水)02:59:32 No.552316016
あなたはもうどこにもいません。 泣いても悔やんでもあなたはもう帰ってきません…。 私が身代わりになれる訳でもありません…。 でもこれだけは言わせてください。 水野愛さん あなたは私にとってこれから先もずっと永遠のセンターです。
9 18/12/05(水)03:00:33 No.552316089
「…めんね」 「ごめんね、薫…ごめっ…んなざい゙…ごめ゙ん゙…な゙ざい゙ぃ゙っ…!」 滂沱の涙を流しながら画面に向かって謝る愛。 抗いようが無い負の感情や後悔の念を胸に 愛は膝を抱え顔を伏して肩を震わせて静かに泣いた…。 画面の中のかつての仲間を映したまま…。 「だからPCを使うのは程々にと言ったんじゃ…」
10 18/12/05(水)03:01:38 No.552316178
とっくに風呂から上がっていた幸太郎はその様子を部屋の外から伺っていた。 当たり前の話だ。 アイドルの事を調べていれば嫌でも目につく。 ならば自分が許可しなければ水野愛は知らずに済んだのか…? 「だがいずれは分かる事か…」 ふぅ…と息を吐くと体をぶるりと震わせる幸太郎。 体がすっかり冷えてしまった。
11 18/12/05(水)03:02:21 No.552316222
風呂から上がってだいぶ経つので寒くなるのも無理はない。 まずは体を温めなければ…。 そういえば副島園『玉翠』があった筈だ…ちょうどいいあれを飲もう。 思い立つと踵を返しキッチンに向かう。 暫く経つとマグカップ2つを手にし部屋へと戻ってくる幸太郎。 1つは幸太郎が愛用しているマグカップ。 もう1つは…デスクを占拠している泣き虫ゾンビィに渡す為に。
12 18/12/05(水)03:06:18 No.552316490
こういうありそうな補間すき!
13 18/12/05(水)03:10:15 No.552316793
よか…
14 18/12/05(水)03:13:45 [スレ「」] No.552317018
もっと長くしようかと書いてはみたものの 収拾が付かなくなり止めました 他の皆凄いね…とても真似できん
15 18/12/05(水)03:18:16 No.552317322
よか…
16 18/12/05(水)03:20:18 No.552317443
よかったい よかったい
17 18/12/05(水)03:26:13 No.552317800
よかったい…
18 18/12/05(水)03:36:54 No.552318361
ありそうすぎてお辛ぁい… 16歳で死んだならそろそろそんな歳か
19 18/12/05(水)03:37:41 No.552318402
よかったい…
20 18/12/05(水)03:39:10 No.552318483
よか…
21 18/12/05(水)04:29:49 No.552320532
泣いて泣いて ひとり泣いて 泣いて泣きつかれて 眠るまで泣いて やがて女は 静かに眠るのでしょう
22 18/12/05(水)04:36:17 No.552320743
リリィとか死者が生者を送り出したように生者から死者へのメッセージもあるよなあ
23 18/12/05(水)05:17:59 No.552322040
こんな時間に力作作んなや!
24 18/12/05(水)06:05:55 No.552323248
チッ…泣かせるじゃない…
25 18/12/05(水)07:06:19 No.552325554
あっ100点です
26 18/12/05(水)07:15:08 No.552326002
よか……長くなってもよかよ