18/12/05(水)01:48:00 「私、... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1543942080703.jpg 18/12/05(水)01:48:00 No.552308568
「私、もう駄目かもしんない」 幸太郎に背中を見せたまま、愛はぼそりと、それでいて言い聞かせるようにはっきりと呟く。 「だろうな」 対して、幸太郎もまた短い言葉で無慈悲な現実を突きつける。 かつて見せた頓狂な態度もいつからか鳴りを潜め、今ではプロデューサーとしてではなく、巽幸太郎として愛達に接している。 そんな彼だからこそ、愛は今の顔を見られたくなかった。 アイアンフリルとして、フランシュシュとして、二度もアイドルとして共にあった四肢は、もはや愛の意思に従ってくれない。 その事実が、最期まで気丈に振舞おうという決意に亀裂を入れてるような気がして。それが顔に出ていないか不安で。 今の幸太郎にその顔を見せたら、きっと沈んだ表情になる。最期にそんな顔を見たくなかった。 「……愛」 何かを堪えるようにギュッと唇を結ぶ愛に、わずかな沈黙を破って幸太郎が語りかける。
1 18/12/05(水)01:49:16 No.552308734
「俺のために我慢をするな」 その言葉に愛の肩が少しだけ跳ねた。 「所詮ゾンビィは死んでいる存在だ。だが、そこに命がないわけじゃない。愛。お前のその命はお前自身のために燃やせ。お前の命は俺の物ではない」 昔、偶に聞いた幸太郎の真剣な声に、愛は砂山が押しつぶされるようにその場にぐしゃりと崩れ落ちた。 立っていることも限界だった。平然を装うのも限界だった。それでも先刻まで立ち続け、平然としていたのは幸太郎のためだったし、それを止めたのも確かに幸太郎の言葉だった。 「なん……なの……」 か細く震えるその言葉と共に、愛の中で何かが決壊したように涙が溢れ出てくる。 「違う。違うの。こんな姿をあんたに見せたいわけじゃなかったのにっ!」 哀咽する愛に、幸太郎は靴の音を響かせながらゆっくりと近寄る。 「お前はよぉぉぉう頑張ったわい。ずっと見てきたワシが保証しちゃる」 愛の高さに合わせて片膝をついた幸太郎は、花の髪飾りを付けたその頭を優しく撫でながら、慰めの言葉を投げかける。 「ぅぁああああああっ! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
2 18/12/05(水)01:50:38 No.552308932
愛の為に心を砕く幸太郎に自分の不甲斐なさを感じ、こんなつもりじゃなかったと、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返す。 「ごめんなさい! ごめんなさい!」 「なんじゃーい!! 何度も何度もごめんなさい言いおって。最期の最期までめんどくさいゾンビィじゃのう!!」 その後も謝り続ける愛に業が煮えた幸太郎は、かつてのように声を張り上げる。 「ワシがめずらぁぁぁしく褒めてやったけん、素直に喜ばんかいボケェ!」 懐かしい声。でも、少し違う。その声には少し寂しさを孕んでいるのを愛は感じ取った。 その声に謝罪の言葉を止めて、つい顔を上げて幸太郎の方を見つめてしまう。 最期まで見ないでいるつもりだった彼の顔。サングラスの奥に隠れてどんな表情をしているか分からない。自分ばかり卑怯だと思った。 「お前これ好きやったやろ。これ食って元気ださんかーい!! お前がそんな調子じゃワシまで調子狂うんじゃい!!」
3 18/12/05(水)01:51:11 No.552309011
そんな愛を意に介さず、幸太郎は懐から母乳の出やすくなる千歳飴を取り出した。 それを見た愛は、目に涙を浮かべながらも、つい笑いが込み上げてきた。 「……ふふふ、別に私それ好きってわけじゃないし、それに私、もう手も動かせれないんだけど」 「どっちも分かっとるわい……ようやく元の調子に戻ったようじゃのう」 「あ……」 その言葉に、愛は幸太郎の言葉に乗せられたことを察した。 結局助けられてばかりだ、と愛は思い、それならば最期まで甘えても構わないかとも思った。 だから……。 「ねえ、最期にお願い一つしていい?」
4 18/12/05(水)01:51:36 No.552309072
「なんじゃい」 「それ、あんたの手で食べさせてよ。さっきも言ったけど、もう手も動かせないし」 「……本当にそんなんでええんか」 「いいの。少なくとも私にとっては『そんなん』じゃないから」 「愛……最期に悲しんだ顔を見たくないのは俺も同じだった。だから、それでお前が喜んでくれるなら、俺もお前の最期の願いを叶えてやる」 自分の気持ちに気づかれていたのが気恥ずかしくなり、愛は顔を赤らめながら少しそっぽを向いた。 柔らかい月明かりが館の部屋の一つを照らす。 そこには二つの人影があった。 一人は、ただ床に膝を付き、茫然と一点を見つめる男の影。 そして、もう一人はその男の腕の中で幸せそうな表情で眠る女の影だった。
5 18/12/05(水)01:53:46 No.552309361
愛ちゃんまで死んだ…
6 18/12/05(水)01:55:15 No.552309579
母乳千歳飴で笑っていいのか悪いのか…
7 18/12/05(水)01:58:44 No.552310054
「」はフランシュシュ全員土に還す気なの?
8 18/12/05(水)02:00:58 No.552310356
初怪文書なのでお目汚しにならないかドキドキしながら床に就く
9 18/12/05(水)02:03:17 No.552310694
普通のアイドルは引退したら普通の女の子に戻って ゾンビは土に還るわけだ
10 18/12/05(水)02:07:26 No.552311258
>初怪文書なのでお目汚しにならないかドキドキしながら床に就く よかったい
11 18/12/05(水)02:10:04 No.552311551
>初怪文書なのでお目汚しにならないかドキドキしながら床に就く とてもよかった…
12 18/12/05(水)02:11:26 No.552311690
初なの!?
13 18/12/05(水)02:12:02 No.552311763
初々しいのがいいんじゃーい!
14 18/12/05(水)02:24:03 No.552313019
千歳飴出てきたけど雰囲気良くてよかったい
15 18/12/05(水)02:26:32 No.552313237
>初怪文書なのでお目汚しにならないかドキドキしながら床に就く 100点じゃーい!
16 18/12/05(水)02:52:24 No.552315428
これが初なの!? よかったい
17 18/12/05(水)03:11:11 No.552316871
千歳飴がミーム化してるのはなんなの…
18 18/12/05(水)03:48:02 No.552318922
よかよか…