虹裏img歴史資料館

1 18/12/01(土)22:29:53 No.551551132

競技参加者へのインタビューやキャラ気球の紹介などなど…楽しみつつも順調にこなしていく二人だったが―― 「1号さん4号さん、次気球体験ですのでよろしくお願いしまーす」 「あ、はーいっ」 「は、はい…」 小休止を取っていた二人に番組スタッフが予定を伝えてきた。 気球体験。その単語を聞いて純子の表情が僅かに曇る。 「純子ちゃん…やっぱり無理せんと下で待っとった方が…」 「だ、大丈夫です大丈夫…ロープをつないでたった2、30m上がるだけじゃないですか。取り乱したりなんてしませんよ」 そういって笑う純子だったが、 「う、うぅーん…」 目は泳いでいるわ膝は笑っているわでどう見ても大丈夫ではなかった。

2 18/12/01(土)22:30:29 No.551551307

「さ、そろそろ行きましょう源さん。スタッフの方を待たせてはいけません」 「そ、そやね…」 （うー、どう見てん平気じゃなかと…ばってんあんまりしつこくしてんようなかよね…？） やはり止めるべきではないか、一瞬そう考えたが現場に行く前に巽に相談した時のことを思い出す。 『ふぅ～ん純子が気球に乗ったら怖がるんじゃないかって心配なのぉ～？さくらは仲間思いで偉いでちゅねぇ～なんて言うと思ったかこのお節介ゾン――』 違うこっちじゃない。 『――さくら、お前は何だ。純子の母親か？違うだろう、お前たちは仲間だ』 『困難に向かい努力する姿を無下にするのと傍にいて支えてやるの…お前の思う『仲間』はどっちだ？』 「……よしっ」 純子はやれると言っている。なら自分はそれを信じ、もしもの時はフォローすればいい。自分たちは仲間なのだから。 「純子ちゃん、頑張ろうねっ」 「…はいっ」

3 18/12/01(土)22:30:57 No.551551443

熱せられた空気を孕んで気球が浮かび上がる。 徐々に地上が遠くなっていき、人が豆粒のように小さくなった。 「うはぁー…いい眺めったいね」 「そ、そうですね…」 さくらの言葉に返す純子は、びくびくと震えていて、やはり高所が怖いようではあったがさくらが当初想像していたよりはずっと落ち着いて見える。 純子の死因を考えれば軽度の高所恐怖症ですんでいるのは幸いだった。この程度であれば愛嬌で済むしNGになって純子の勇気が無駄になることは無いだろう。 ゴンドラからチラチラと外を見ようとしてはすぐに頭を引っ込める純子を見ているとまるで小動物のようで、さくらは和んだ。 「…4号ちゃん、私と手ばつないどる？」 いけないいけない、放っておいてもかわいそうだ。さくらは気休めにでもなれば、と純子に手を差し出す。 「…うぅ……お願いします…」 純子が手をおずおずと握り返そうとしたその時―― ゴゥ、と一際強い風が吹いた。

4 18/12/01(土)22:31:34 No.551551622

風に煽られ気球はぐらぐらと揺さぶられた。 「はわわわわ！？」 「――っ――――っ！？」 慌てるさくらと声にならない悲鳴をあげる純子。 「はぁー…びっくりしたぁ…あっ！純子ちゃん！大丈夫！？」 さくらの方はすぐに落ち着きを取り戻せたが純子の方はたまったものではないだろう。彼女の方を見やると―― 「み、みにゃもとさぁん…」 涙目でうずくまり縋るようにさくらを上目遣いで見つめる純子の姿。 控えめに言ってkawaiiの暴力であった。 「…………はっ！？」 さくらは一瞬飛びかけていた意識をなんとか回復させる。 きゅんきゅんしてる場合ではない、今こそ純子の支えになる時だ。

5 18/12/01(土)22:32:23 No.551551861

「よしよし、えすかったね…！もう大丈夫ばい…」 「うぅぅ…」 純子に寄り添い、抱きしめて頭を撫で続ける。 さくらの死人とは思えぬ優しく甘い匂いと柔らかな感触に、純子の恐怖はすぐに蕩かされていった。 しばらく抱きしめ続けていると、純子もだいぶ落ち着きを取り戻したようだ。 「あ、あの…すみません1号さん、ありがとうございます…」 「んーん、ええよ！もう大丈夫？」 「……その、もう少し…」 「うん、よかよ」 その後も結局降りられるまで純子を抱っこし続けたままだったが、それは揺れるまでに必要な画は撮れていたはずだからである。 決してこのやーらしか年上のアイドルを抱きしめ続けていたかったわけではない。ないのだ。

6 18/12/01(土)22:34:02 No.551552371

「……まったくこのボケゾンビィどもが！慌てたとは言え本名で呼び合うとは何事じゃい！」 「「す、すみません…」」 拠点の洋館に帰る道すがら、二人はうっかり気球に取り付けたカメラの前で本名を出してしまったことを叱られた。 名前から自分たちの素性がバレでもしたら一大事なのだ。もっと気をつけるべきだった。 「まぁええわい、問題の箇所だけちょこ～っと編集でカットしてもらったけんのう！」 「あ、ありがとうございます…本当にすみません…」 「お前たちの尻拭いに奔走するワシをもっと讃えんか―い！」 「あ、あはは…」 「……『問題の箇所だけ』…？巽さん、それってそこから後を全部、って事…ですよね…？」 「…………」 何かを気づいたような純子の声に、しかし巽は押し黙った。

7 18/12/01(土)22:35:17 No.551552768

「…こ、幸太郎さん…あそこほぼ放送事故みたいなもんやもんね？後半全カットじゃろ？」 「………………」 そろそろ二人にも事実が飲み込めてきた。巽がカットした、というのは本当に本名が出てしまった部分だけであって―― 「……じゃい」 「…え？」 巽がポツリと呟いた。 「百合営業じゃーいっ！！」 「えぇっ…！？」 「ど、どやんす！？どやんすーっ！？」 ――その後番組は無事放送され、お茶の間には微笑ましいユウジョウの一部始終も公開されたのだった。

8 18/12/01(土)22:38:00 No.551553641

よかったいよかったい

9 18/12/01(土)22:41:25 [sage] No.551554604

自分で怪文書書いたの初めてなのでいろいろ粗は見逃しておくんなまし… キャラ絞ってもこんなに難しいの…ってなった 即興で書く人とか何者なの…

10 18/12/01(土)22:43:19 No.551555165

1×4尊い…ってなるTVの前のフランシュシュファン

11 18/12/01(土)22:43:45 No.551555275

よかよね…

12 18/12/01(土)22:44:22 No.551555445

よか…

13 18/12/01(土)22:47:33 No.551556364

初めてなの？ お上手なんで次も頑張ってほしい

14 18/12/01(土)22:52:54 No.551558014

この一枚絵からそこまで発想が生まれるのが凄いよ

15 18/12/01(土)22:54:27 No.551558487

純子ちゃんkawaiiったい！！！！１１１

16 18/12/01(土)22:54:52 No.551558626

えすかという方言が出てくるあたり只者ではないな…

17 18/12/01(土)22:56:45 No.551559222

流石だ…

18 18/12/01(土)22:57:09 No.551559361

まさかこれは…書き下ろし追加ストーリー！

19 18/12/01(土)22:58:03 No.551559606

たまに方言エミュ凄い人いるけど何者なの

20 18/12/01(土)23:02:10 [sage] No.551560895

>えすかという方言が出てくるあたり只者ではないな… サンキュー自動変換サイト！

21 18/12/01(土)23:09:27 No.551563202

映像が見えるいい文章たい…

22 18/12/01(土)23:09:53 No.551563335

>「み、みにゃもとさぁん…」 これがカットされたのがしょうがないとはいえ勿体なさすぎる…

23 18/12/01(土)23:10:33 No.551563517

あっ100点です

24 18/12/01(土)23:12:08 No.551563983

良いものを見せていただきんした これからも頑張ってくんなまし

25 18/12/01(土)23:14:03 No.551564638

よか…

26 18/12/01(土)23:19:25 No.551566427

がばいよか…

27 18/12/01(土)23:19:33 No.551566461

4号ちゃんがチェキ撮れない理由がいい意味で誤解されそうでよかね…

28 18/12/01(土)23:22:45 [sage] No.551567379

思ったより好評でがば嬉しか… あとリアルのバルーンフェスの体験飛行は今はもうやってないそうですがシチュ優先で現存する設定とさせていただきました

29 18/12/01(土)23:27:26 No.551568756

よか…

30 18/12/01(土)23:28:09 No.551569017

よかね…