虹裏img歴史資料館

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18/10/27(土)18:41:10  彼女... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1540633270359.jpg 18/10/27(土)18:41:10 No.543363171

 彼女と出会ったのはちょうど三年前の夏、俺が病院で目を覚ました日だ 「君とはずっと前からの知り合いだよ」と彼女は言うが、病院で目覚める以前のことを覚えていない俺にとってはその日が彼女とのファーストコンタクトだった  彼女から教えてもらったところ俺は十五歳の頃交通事故に遭い、目を覚ますまでの二年の間植物状態だったらしい 俺が意識を失っていたその二年間で天才科学者として世にその名を轟かせていた彼女はある日古い知り合いで彼女が密かに思いを寄せていた俺が事故で植物状態になったのを知り急遽俺の入院している病院に駆けつけ治療を施したのだという  俺は科学や医術に詳しい訳ではないが二年間植物状態だった人間の意識をわずか二日で取り戻したというのだから彼女は類い希なる天才なのだろう  そんな天才に好かれるような人柄も才能もないと自分では思うのだが、彼女からすると俺は小学生の頃極度の人見知りだった彼女に唯一話しかけた同級生で、彼女はそれ以降俺のことを好いているらしい もっとも記憶喪失抜きに普段から物覚えが悪い俺がその頃のことを覚えていたかは怪しいところなのだが……

1 18/10/27(土)18:42:29 No.543363439

 「ねぇきょー君、何を書いてるの?」 背中に柔らかい感触を得ると同時に耳元に甘い声が響いた 集中してパソコンに向かいあっていた俺は突然背中に押しつけられた柔らかい感触に驚き思わず素っ頓狂な声をあげる 「な!た、束!い、いきなり抱きついてくる奴があるか!」 そんな俺の主張を無視するかのように彼女──篠ノ之束──は腕を俺の首に回しより強く胸元を押しつけるかのように抱きついてきた 「あっはは!きょー君はいつまで経っても恥ずかしがり屋だね~それでさ、きょー君は何してるの?」 「……俺が束に助けてもらってからのことを振り返ろうと思って文章にしていた」 そのいっそ暴力的にも思える感触に思考能力の大半を奪われそうになりながらも俺は辛うじて平静を装いつつ答えた 「そっか、思えば色々あったもんね!」 そう言って笑う彼女の顔を俺は横目に見た  なぜこんなにも綺麗な彼女が俺なんかに惚れているのだろう 容姿でも能力でも俺に勝る男は沢山いるだろうに 小学生の頃の初恋というものはそこまで固執するような物なのだろうか 当時の記憶がない俺はそれが分からない

2 18/10/27(土)18:43:10 No.543363556

「さ、きょー君そろそろお昼ご飯作ってよ!束さん発明のしすぎでお腹ぺこぺこだよ」 「分かった、パスタでいいか?」 「束さんはきょー君の作るものなら何だっていいよ!」 「……そうか」 少なくとも今分かるのは二十歳になった俺があの日からずっと束の彼氏でいるということだ

3 18/10/27(土)18:44:21 No.543363741

 ──彼女と同棲するようになってから三年、思えば色々なことがあった 病院でのリハビリを終えて退院した俺を待っていたのは孤独だった どうやら俺が眠っている間に両親は死んだらしく、現実味無く俺は自分が知らない親の遺産を相続した 金はあった 住む家もあった だが、記憶も身寄りもない俺は何をすればいいのか分からず呆然としていた そんな俺に手をさしのべてくれたのが束だった 「束さんと一緒に暮らしてくれないかな?」 行く当てもない俺はそんな彼女の言葉に二つ返事で答えた 彼女との暮らしは刺激的で驚きの連続だった 常に同じ場所にいることはなく、常に世界各国を動き回った アメリカ、フランス、ドイツ、ハワイ、オーストリアといった有名な国はもちろん、名も知らぬ中東の紛争地や未開のジャングルといった過酷な土地、色んなところで色んな景色を見た 特殊部隊による襲撃、それからの逃走、逃げる敵の追跡、邪魔者の破壊、色んな状況であり得ない体験をした 凡そ普通に生きていると出来ないような生活を彼女と一緒にしてきた

4 18/10/27(土)18:45:45 No.543363991

俺はそんな日々が好きだ 彼女と一緒に過ごす破天荒な日常を愛おしく思っている 俺はもう、彼女がいない暮らしには耐えれないだろう なら、彼女は? 束はどう思っているのだろう 束は俺が好きだと言う 他人に対して無愛想な束は俺にだけ笑みを向けてくれる 俺は束の彼氏でいる ──本当に? 俺は彼女が好きになった俺を知らない 彼女の笑みは常に同じ顔で、まるでプログラム通りに動くロボットを見ているように感じてしまう 本当に俺は彼女の彼氏でいれてるのか? 自問しながら、俺は手元の一冊のノートを見つめる ボロボロに汚れた古いノート、表紙には下手な文字で「日記」の二文字、その下にはひらがなで自分の名前が書かれている

5 18/10/27(土)18:46:32 No.543364116

束と一緒に暮らすようになる前、自宅を整理して見つけた数あるうちの一冊、ちょうど俺が小学生の頃に書かれた物だ 一番最後のページを開くとそこには日付と供びっしりと一日の記録がされていた。誰と話したか、何を食べたか、どんなことがあったか、その時何を思っていたか 軽くページをめくるとそんな内容の日記が毎日欠かさず書かれていた もし束の言うことが本当なら、この日記のどこかに小学生の俺が彼女と会話をした日の記録があるはずだ もし俺がこの日記を読み切れば、俺がどんな人間だったのか知れるはずだ だというのに俺はまだ日記から過去を知ることを出来ずにいる

6 18/10/27(土)18:48:20 No.543364405

──怖い もし、日記に束との出会いが書かれていなかったら? もし、束の言葉が嘘だったら? ──そんな嘘をつく理由なんてない。そう理屈で思っても常人には理解出来ない彼女の性格を知る俺は自信をもってその疑いを否定できない もし、その嘘に俺が気づいたら? 束は俺をどうするだろうか 用済みだといって俺を捨ててしまうのだろうか そうなったら俺は耐えられない 何もない俺は束に救われた 束が俺に生きる希望を与えてくれた 束と過ごす毎日を愛おしく思っている だから 結局、今日も日記を開くことは出来なかった

7 18/10/27(土)18:50:58 No.543364868

なんか見覚えあると思ったら時間変えて上げ直したいって言ってたやつか

8 18/10/27(土)18:52:15 No.543365099

「なあ、束」 「ん~?なぁにきょー君」 「束は俺のこと好きなのか?」 「愚問だね!もちろん好きに決まってるじゃんか!」 「そっか、なら、それでいいのかもな」 「どうしたのきょー君」 「いや……なんでもない。こんな毎日がいつまで続くといいなと思っただけだ」 「束さんは毎日そう思ってるよ!相思相愛だね!」 そう言い彼女は笑顔で俺に抱きつくのだった

9 18/10/27(土)18:53:15 No.543365289

セックスはしたのか

10 18/10/27(土)18:54:13 No.543365465

>なんか見覚えあると思ったら時間変えて上げ直したいって言ってたやつか そうです 改めて見直すと気に入らない箇所がいくつかあったので一応修正したりしましたがほぼ誤差です 深夜テンションで書き上げた作品だから改めて自分で読見返すとこっぱずかしいです…

11 18/10/27(土)18:55:17 No.543365677

いいってことよ 恥ずかしがって出さないとその内ゴミになってしまうから

12 18/10/27(土)18:58:47 No.543366316

結婚式には妹と親友を呼ばなくっちゃね!

13 18/10/27(土)19:03:48 No.543367290

幸せになる以外の道を封じられるのは幸せだろう 幸せだと言え

14 18/10/27(土)19:19:14 No.543370479

>結婚式には妹と親友を呼ばなくっちゃね! 誰だあの女…親友で幼馴染?まったく見覚えがないけど俺の事を知っているだろうか? 話しかけてみよう

15 18/10/27(土)19:27:04 [s] No.543372084

>>結婚式には妹と親友を呼ばなくっちゃね! >誰だあの女…親友で幼馴染?まったく見覚えがないけど俺の事を知っているだろうか? >話しかけてみよう 披露宴で忘れた過去と向き合う……そういうシチュもあるのか 書いてみたいけどそれを書くと束の言っていることが本当かどうかが確定しちゃうから難しい所だよね…

16 18/10/27(土)19:32:47 No.543373315

妹にのろけまくってウザがられる束さんがみたいなー!

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