18/10/14(日)23:31:18 太陽が... のスレッド詳細
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18/10/14(日)23:31:18 [すこし未来のヒロゼロおめでたです。ご笑納ください。] No.540638454
太陽が青空の真上を昇る前、寄宿舎のキッチンに私は立っていた。 オトナがいなくなったこの世界で、私たちは炊事から洗濯、あらゆることを自らで行わなければならない。 最初は皆慣れないことに戸惑いもしたし失敗もしたが、今ではもう慣れたものだ。 私は小刻みに、リズムをとるように包丁を走らせている。リズムに合わせて、トマト、という食べ物が輪切りに なっていく。この動作ももう慣れたものだ。私は次々と作業を進めていく。レタスをちぎり、魚の身を解し、 調味したソースをパンに塗り、それらを乗せもう一枚のパンで挟んでいく。"サンドウィッチ"というらしい。 食事を用意するのに、こんなに手間がかかるなんて最初は思いもしなかったが、不思議と嫌じゃなかった。
1 18/10/14(日)23:31:39 No.540638595
なにかを作ることは別段嫌ではない、むしろ好きな方だ。なにより、自分の大好きな人のために食事を 作るという行為は、なぜか自分の心が満たされていくのを感じる。私の作った食事を、彼が笑顔で食べて、 一言"おいしいよ"と言ってくれるだけで。胸の奥が温かくなるのだ。そして最近ではもう一つ、 私の横から、ぴょこぴょこと頭を覗かせている、小さなお姫様と一緒に、食事の用意をすることも、一つの楽しみだ。 「サクラ、待ちきれない?」 「ううん、ボク、ママがご飯作っているところ見るの好き!」 「そう?」 「うん!ボクもいつかできるようになるかな?」 「もちろん!サクラはボクの娘だからね、きっと手先も器用になるさ、そしたらこんなのすぐに出来るようになる!」 「そっかぁ…ボクたのしみだなぁ!」 「それじゃあ、そのうちサクラにも手伝ってもらおうかな♪」 「ほんと!?やるやるー!」
2 18/10/14(日)23:31:54 No.540638680
合間に、他愛もない言葉を娘と交わす。それが、こんなにも調理という作業を楽しくさせるとは思いもしなかった。 宝石のように目を輝かせる娘の反応が、なんだか自分が褒められているようで、こそばゆかった。 自分の経験をこれから教えてあげられることがなにより嬉しいし、拙いながらも、自分の経験を 彼女に教えてあげられることを想像するのが、私にとっては何よりの楽しみなのだ。 「サクラ、はい、あーん」 「いいの!?あーーーん!」 私は先ほど作ったサンドウィッチ、の具材として使った、解した魚の身にソースを絡めたものをサクラに 味見してもらうことにした。眺めるだけでも満足そうに言いはしたが、御飯時に見ていては自然とお腹が空くものだ、 サクラは口を大きく開けてこちらに顔を向けた、私はその愛らしい口の中に魚の身を一つまみ入れてあげる。 もぐもぐ、とお行儀よく片手を口に添えて丹念に咀嚼するサクラは、顔を七色に変えて"食べる"という行為を、 精一杯楽しんでいる。その姿がなんとも愛らしくて、なんでもあげてしまいそうになる。
3 18/10/14(日)23:32:14 No.540638783
「お味の方はいかがかな?」 「うん!おいしい!」 どうやら巨匠のお墨付きをもらった様だ。 「もうすぐできるからね?そしたら、ダーリンのところに行って三人でお昼ご飯だ♪」 「うん!うん!」 サクラはぴょんぴょんと飛び跳ねて元気よく返事を返した。今日はダーリンは外で水質調査をしている。 VIRMとの戦いの爪痕、そして人類が犯してきた罪は深く、依然として現状は回復しているとは言えず、 私たちを含めた各部隊のコドモたちは、まだまだこの地球をもとに戻すことに、全身全霊でむきあっている。
4 18/10/14(日)23:32:36 No.540638907
しかし、時には休憩も必要だ。体を酷使するだけでは、いつかきっとボロボロになってしまう。 だから彼には、食事のひと時くらい、ゆっくり気を休めて欲しい。 「よし、出来た!」 三人分の調理が終わったら、丁寧にバスケットに飲み物を注いだ水筒と一緒に詰めていく。 玄関のドアを開けると、すでに太陽はどこまでも青く澄んだ天蓋の真上に君臨し、温かな日差しを差し込んでいた。 「それじゃサクラ、ダーリンのところへ行こうか!」 「しゅっぱーつ!」 ――バスケットを片手に、私はサクラと手を繋いで寄宿舎を後にする、きっとお腹を空かせているであろう、 ――大好きなあの人のもとへ、二人して軽やかに足を弾ませた…。
5 18/10/14(日)23:35:47 No.540639867
サボテンダー
6 18/10/14(日)23:40:45 No.540641512
幸せそうでよし!
7 18/10/14(日)23:41:53 No.540641867
これはベストファミリー
8 18/10/14(日)23:57:47 No.540646828
396ちゃん…
9 18/10/15(月)00:03:17 No.540648457
どうして俺はこういうもの読んで不幸を願うようなクソになってしまったんだろう