ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
18/10/13(土)23:19:43 No.540352343
はいふりSS りつ誕
1 18/10/13(土)23:20:18 No.540352512
「ただいまー」 「あ、おかえりかよちゃん。遅かったねえ」 「あはは、ミミちゃんとちょっと話し込んじゃって……ってあれ、万里小路さんもう寝ちゃったの?」 購買に飲み物を買いに行っていた果代子が第二兵員室に戻ると、理都子が楓にシーツを被せていた。 果代子の記憶が確かならば、先ほど部屋を出る前までは三人でのんびりとおしゃべりをしていたはずなのだが。 軽く寝顔を覗いてみても、楓はぐっすりと眠っているようで、果代子が戻ってきたことにもまるで気づかない様子ですやすやと寝息を立てている。 「熟睡してるね~」 「うん、耳掻きしてあげてたらそのまま寝ちゃったみたいでさ」 「耳掻き?」 「そうそう。実は結構得意なんだー」 と言って、理都子はポケットから耳掻きを取り出し、くるくると回して見せる。 「つまり、万里小路さんはりっちゃんの匠の技で昇天してしまったと」 「昇天はしてないよ!?」 理都子の反応にくすくすと笑みを溢しながら、果代子は自分のベッドに腰掛ける。
2 18/10/13(土)23:21:05 No.540352749
「でも、なんで急に耳掻きしてあげるなんてことになったの?」 「それがねぇ、まりこーがなんだか耳がむずむずするって言い出して……かなり気になるみたいだったから、私がやってあげることに」 「なるほど……万里小路さん耳がいいから、そういうのにも敏感なのかな」 「うん、水測員だけに、耳の調子には特に気を使うんだろうねえ」 「そっかぁ」 ちらりと楓の方に目を向けると、相変わらずすやすやと気持ち良さそうな顔で眠りこけている。 「えい」 果代子がその頬をぷにぷにと軽くつついてみたが、柔らかく滑らかな感触が返ってくるばかりで、一向に起きる気配はない。 「起こしちゃダメだよー」 「ごめんごめん、つい。でもこんなにぐっすり寝てるなんて、りっちゃんの耳掻きがよっぽど気持ちよかったのかな?」 「うーん、最初から結構眠そうだったし、どうかなあ」 「ふむふむ、真偽は不明と。なら試すしかありませんなぁ」 「え」 と、キラリと果代子が目を光らせる。
3 18/10/13(土)23:23:08 No.540353347
と、キラリと果代子が目を光らせる。 「りっちゃん、私にも耳掻きして~」 「ええー……」 「おねがいっ」 「まあ、別にいいけど……」 果代子のお願いを断りきれず、理都子は諦めたように耳掻きを構えるのだった。 「はい、じゃあ頭乗せて」 「はーい」 ベッドに腰掛けた理都子の膝に、寝転がった果代子が頭を預ける。 理都子の柔らかな太腿の感触が、肌触りの良いジャージの生地越しに伝わってくる。 なんだかそれだけでも気分よく眠れてしまいそうだった。
4 18/10/13(土)23:23:42 No.540353505
「りっちゃんの膝枕、気持ちいいな~」 「もう、それよりかよちゃん、こっちに耳向けてよ」 「えへへ、ごめんごめん」 理都子に急かされ、果代子はちょうど自分達の対岸にあるベッドの方を向くように、左耳を上に向けた。 「じゃあ、始めるね」 「お願いしまーす」 「まずは軽くマッサージからだね」 「マッサージ?」 「そ。耳にはたくさんツボがあって、疲れを取ったりするのに効くらしいんだ」 「へえ~」 言いつつ、理都子は耳掻きのへらで果代子の耳のくぼみを軽くなぞるように動かした後、様々な箇所を軽く押していく。 「あ、ほんとだぁ……すごく気持ちいい……」 思わず、果代子は感嘆の吐息を漏らす。 へらで軽く、優しく耳を撫でられているだけなのに、じんわりと心地よい感触が前進を包んでいくのを実感する。
5 18/10/13(土)23:24:16 No.540353679
「でしょー。でもこれだけじゃないからね」 ほんのり得意気な言葉と共に、理都子は耳掻きの動きを変える。 今度は先程よりも内側、対輪と耳珠の間で円を描くようにしてくるくると耳掻きを動かしていく。 ただ耳をなぞるだけではなく、小刻みに振動させながら撫で、或いは動きを止めて軽く押す。 緩急をつけたその動きもまた、先ほどとはまた違った心地よさがあった。 「どうかな」 「クセになっちゃいそう……」 「あはは、大袈裟だよかよちゃん」 「ほんとだってば。りっちゃん、どこで修行してきたの?」 「修行なんかしてないよ。ただ、昔おばあちゃんから教えてもらったんだ。おばあちゃん、すごく上手で~」 「なるほど……松永流耳掻き術って訳だね。万里小路さんも勝てないわけだぁ」 「だからそんなんじゃないって~」 「やめて~」 苦笑しながら髪をわしゃわしゃと軽く弄ると、果代子はくすぐったそうに身を捩らせて笑った。
6 18/10/13(土)23:24:45 No.540353802
「ほら、続きやるよ」 「は~い」 「次は耳掃除だけど……かよちゃんの耳はあんまり溜まってないから軽く済ませちゃうね」 「お願~い」 ゆっくり、ゆっくりと理都子は果代子の耳の穴へと耳掻きを入れた。 力は入れず、耳介のマッサージと同様にへらの部分で軽く外耳道の中を滑らせ、僅かにある汚れを少しずつ取り除いていく。 「んん~……」 かりかりと優しく耳の内側を刺激されるのが心地好いのか、果代子が小さく息を洩らした。 「……」 「……」 それからしばらく、無言で耳掻きをして。 「あ、そうだ。昨日はありがとね」 ふと、思い出したように理都子が口を開く。 「ん~?」 「私の誕生日。かよちゃんが前から企画してくれたんでしょ? さっきまりこーから聞いたよ」
7 18/10/13(土)23:25:43 No.540354069
昨晩、理都子の誕生日祝いとして砲雷科メンバーによるささやかなボウリング大会が晴風の中で開かれた。 とはいえ、狭い船の中で本格的なボウリングなど出来るわけもない。 そのため、副長室にあるテレビを借り、航海の前に持ち込んでおくように頼んでおいたあかねの古いテレビゲームを使って行われたそれは、ゲームということもあって理都子と果代子以外の砲雷科メンバーもかなり善戦し、白熱したものとなった。 「えへへ、どうしたしまして。楽しかった?」 「もちろん。すごく楽しかったよ」 「よかったぁ」 「水雷長が意外と強かったね」 「『体力関係ないゲームでなら勝てる!』ってすごく張り切ってたからねぇ」 「でも張り切りすぎて副長に怒られてたけどね」 「あはは、そうだったね。そう言えば、副長もかなり頑張ってたねえ」 「最初の方はガーターばっかりで落ち込んでたけど、最後の方は調子出てたもんね」 話をしながら、理都子は耳掻きを手の中で回転させ、反対側についた梵天をくるくると回しながら耳に入れていく。
8 18/10/13(土)23:26:43 No.540354348
「来年はちゃんとボウリング場で遊べるといいね」 「うん。でも、昨日みたいな感じで遊ぶのもいいかも」 「そう?」 「そう」 「そっかぁ」 「ボウリング場だと私達が勝っちゃうからね」 「ふふ、そうだねぇ」 「あ、こっちはもう綺麗になったから、次は反対向いて」 「りょうか~い」 理都子の膝の上でごろりと反転して、果代子は右耳を上に向ける。 先ほどと同様に、へらで耳介のマッサージから始めた。
9 18/10/13(土)23:27:46 No.540354659
「ふぁああ……」 その最中、果代子が小さく欠伸をする。 「あれ、眠くなっちゃった?」 「うん、ちょっと……」 ぽやぽやとした頼りない声で返す果代子は、本当に今にも寝てしまいそうだった。 「寝てもいいよー」 「いや、まだ寝るには早いし……」 「じゃあもうちょっと話そっか」 「んー……」 次は何を話そうか。 話題を考えながら、理都子は耳掻きを走らせる手を止めない。 その心地好い感覚が睡魔を後押しして、視界がゆっくりと狭くなっていくのを果代子は感じていた。 「……りっちゃん」 「んー?」
10 18/10/13(土)23:28:15 No.540354794
「来年もちゃんと、お祝いするからね」 「あはは、楽しみにしてるね」 「うん……」 へらで耳介をなぞる。梵天を擽るように回す。 時には、軽く押すようにして刺激する。 空いた方の手で、時折髪を撫でたりもして。 静かな部屋の中で、理都子が耳掻きを走らせるごく小さな音と、二人の声だけが響く。 「私も頑張って、かよちゃんの誕生日をお祝いするからね。来年も再来年も──」 「……」 「あれ、寝ちゃった?」 いつの間にか、果代子はすやすやと小さな寝息を立てていた。 「かよちゃーん……完全に寝てちゃってるねぇ」
11 18/10/13(土)23:29:20 No.540355154
小さく身体を揺すってみても、果代子が目を覚ます様子はない。 くすりと笑って、理都子はそっと果代子の頭を持ち上げ、枕の上に置く。 膝枕で本格的に寝るのは流石に頭が痛くなる。そう前に芽依から聞いたからだ。 「ふわぁ~」 耳掻き道具を片付けて、欠伸をひとつ。 それから理都子も自分のベッドへと上がって。 「おやすみ、かよちゃん」 終わり テキスト版 su2655391.txt
12 18/10/13(土)23:31:46 No.540355955
いい…
13 18/10/13(土)23:33:14 No.540356418
耳掻きいいよね
14 18/10/13(土)23:34:07 No.540356706
来たのか!
15 18/10/13(土)23:34:47 No.540356926
いいね…
16 18/10/13(土)23:34:55 No.540356976
死に絶えていなかったのか「」長…
17 18/10/13(土)23:38:49 No.540358225
にゃあ…
18 18/10/13(土)23:42:48 No.540359451
ひさびさに読んだ気がする
19 18/10/13(土)23:57:11 No.540364004
またいちゃついてる…いいよね…
20 18/10/14(日)00:11:56 No.540368466
膝枕について詳しく知っている芽依ちゃんにブルマーから事情聴取が