虹裏img歴史資料館

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18/10/13(土)19:11:07  ある... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1539425467727.jpg 18/10/13(土)19:11:07 No.540283079

 ある日、私はテロリストに拐われた。冗談のような話だが、本当のことだ。  朝起きて出勤するその途中、男三人に襲われて、抵抗する間もなく連れ出され、気づいたら手錠で拘束されてどことも分からぬ部屋の中に放り出され、監禁されていたのだ。  すっかり動転していた私がようやく思考力を取り戻し、どうしてこんな事になったのか、と考えたら、答えは一つだった。  束だ。私は篠ノ之束の彼氏であるが故に拐われたのだ。  彼氏彼女として繰り返す日々の中で、すっかり忘れてしまいそうになることだが、彼女は世界一の天才で。  そして、世界のパワーバランスを左右する超兵器「インフィニット・ストラトス」の開発者なのだ。

1 18/10/13(土)19:11:29 No.540283160

 恐らくこのテロリストたちは、私の身柄をその手に握って、彼女に何らかの要求をすることだろう、と私は考えた。  例えば、自分たち用の最新世代で強いISを作って欲しいとか、いっそのこと、自分たちの仲間に加わってほしい、とか。  そう思うと、私は深く落ち込んだ。自分のこの身が、束の足かせに、鎖になってしまっている。  もしこうして拐われる対象が、今まで束が近くに置いていた、ある種束と同じような人間――例えば、織斑千冬などならば。  この程度の相手など、難なく制圧してしまうだろう。束の妹だって、今はISを持っているらしいから同じことだ。  それに比べて、極普通の人間でしか無く、しかも男でISを纏えない私は、どうしようもなく弱い。  彼氏として、あるいは昔からの幼馴染としては、どうにも情けないことだった。

2 18/10/13(土)19:11:46 No.540283229

 そうこう鬱々と考えていると、扉が開いて、銃を持った女性が出てきた。先程私を拐った男たちが周りに控えている事から見て、恐らくテロリストの首魁的なポジションなのだろう。  女尊男卑というのは何も一般社会においてだけ適応される常識ではない、ということだ。  外国人らしい彼女は、しかし流暢な日本語で私にこう要求した。  篠ノ之束に助けを求め、彼らの要求を呑んで欲しいように伝えろ。  一端の男ならば当然、命がかかっていようが断って、大切な彼女のことを明かしはしないだろう。  しかし、私は……やはり怖かった。銃を突きつけられ、強圧的な態度で脅されれば、殺さないで欲しいと懇願し、言われた通りのスピーチを録画されてしまうしかなかった。  情けなさ過ぎて辛かった。束はあんなにも私を愛してくれているのに、私は束に対して何も出来ない。  いや、益になることをするどころか、こうして彼女の害にすらなってしまっている。  恋愛というものが、互いに物質的なものと、それだけでない情と思いを交換する、ある種の経済行為であるならば。  私は彼女に、大損をさせてしまっているに違いない。

3 18/10/13(土)19:12:05 No.540283313

 そんな苦しい私の内心など知らぬテロリストたちが、満足そうに録画を終えて、束に送りつけようともしていた――その時。 「人の彼氏に何しているのかな、君たちは。イケない子だね、実に愚かしいね!」  という大声が聞こえ、ドアが蹴飛ばされて私の眼前で右から左へ吹っ飛び、それに巻き込まれて数人が倒れた。  その声と、ちらりと見えるブーツにはもはや見覚えしかない。束だ。束が助けに来てくれたのだ。  それからは、応戦しようと拳銃を構えた男たちを、掌底で全て壁に叩きつけて気絶させ。  残った女性が展開したISは、瞬く間に分解されて量子へと還った。  女性は、這いつくばって逃げようとしていた所で、束の足で思い切り踏みつけられて、それからピクリとも動かなくなった。

4 18/10/13(土)19:13:32 No.540283621

 全てが終わった部屋の中で、私は束に懺悔した。  君を裏切って、彼らに協力して自分の命を選んでしまったのだ、と。  返答は意外なほどにあっさりしていた。 「うん、そうだね。でも別に気にしてないよ? だってどうせ、こんな凡俗共なんて、束さんには傷一つつけられやしないから」  だからと言って、君を自分から傷つけようとした事実は消えないだろう、という言葉は、彼女の主張に途中でかき消された。 「そして君だって、束さんのような天才じゃないし、精神的超人でもない。ただの凡俗。だから、無駄に抵抗して死ぬより、話してもらわなきゃね」  どうやら、彼女は私が負い目に感じるようなことなど、何も気にしていないようだった。  というより――私が抵抗してくれることなど、端から期待していないのだ。

5 18/10/13(土)19:14:22 No.540283868

「大丈夫、全ては束さんの予測通りに展開したのだから、君は何も失敗していないよ?」  それは正しい予測である。現に私は今、恐怖に耐えきれずに彼女を売ろうとしたのだから。 「さあ、どうかな? 強くて優しい束さんのかっこいい姿を見て惚れ直したでしょ? うんうんそうだよね、ISまで持ってるテロリストなんて、束さんにしか鎮圧出来ないものね! 束さんが彼女でお得だったね!」  だから、そう言って私を縛る手錠を引きちぎり、いつものように手を引いて、るんるん、と帰ろうとする束に、私はこう呟いてしまった。  そうだね。でも、私は自分が嫌いになっちゃったよ。  ……一瞬、手を引く力が止まったような気がした。  が、しかしその次の瞬間には、束は更に強く、私の手を引いて起き上がらせてから、助け出した。

6 18/10/13(土)19:17:29 No.540284636

人の心の動きだって計算できる…できるが 刻まれた心の傷の癒やし方は…

7 18/10/13(土)19:28:56 No.540287542

自作自演じゃなかったのか……

8 18/10/13(土)19:33:51 No.540288723

大丈夫?これ全部仕組まれてない?

9 18/10/13(土)19:34:03 No.540288774

なんだろう真っ当にヒロインしてる気がしてきた

10 18/10/13(土)19:34:34 No.540288909

束さんは強くて賢いけど人間性が育ってないから弱い人間の末路を計算出来ても想像は出来ないんだ

11 18/10/13(土)19:42:34 No.540290952

 ドキュメント名:どこで失敗した?  今日は前々から計画していたあの作戦の実行日である。  作戦、という言葉の何と楽しいことか。大概のことには飽きている私だが、自分で計画して立案する作戦を実行することには何故か飽きが来ない。  しかも今回は、我ながら中々に愉快な、例えるならあの白騎士に作った舞台くらいには愉快なことだから、ウキウキしてたまらなかった。  その内容というのは、つまるところ狂言誘拐である。  まず、亡国機業の名前を借りて、適当なテロリストにISを供与する。  彼らにとっては望外の事態である。  一つは、ISを使えるほどの組織として名が知れている亡国機業の協力者に自らが選ばれたこと、そして実際に自分たちにもISが与えられたこと。  だから浮かれる彼らに、耳打ちしてやるのだ。  世界で最も重要な人物、つまりこの束さんに彼氏が出来ていて、しかもそれは毎日、全くの無警戒で通勤などしているのだ、と。

12 18/10/13(土)19:43:03 No.540291066

 そこまで語れば、彼らは動く。  この束さんの唯一のアキレス腱、と見られるものを切りに。  だが、その時点ですでに、テロリストどもは束さんの監視下に入るのだ。  この束さんが彼を不慮の事故で失わないよう、常に展開している監視網を、彼らは見破れないだろう。  当然だ。それは監視カメラでもドローンでも衛星でも無く、ナノサイズのメカによって行われているのだから。  そしてテロリストどもは、彼に対して脅しを行うだろう。  篠ノ之束が要求を呑むように、助けを求めるようなことを言え、と。  まあ、彼はそれに屈するだろう。銃を突きつけられ、罵声を放たれてそれでも、と躊躇うことが出来るほど、彼は強くないから。  でも、あれでどうしてか中途半端に強がるから、きっといっぱい怖がって、震えてくれているはずだ。

13 18/10/13(土)19:43:19 No.540291119

 そこに、正義のヒーロー束さんが颯爽登場、テロリスト共をはっ倒して薙ぎ払って助けてあげるのだ!  彼はきっと、この束さんがかわいさと共に強さすら備えていることを、知識でなく体験で実感し、改めて私の凄さに気づく。  そして、そんな彼女を持っていることを。最高の天才が自分の目の前にいて、自分の彼女である奇跡的な事実に感謝をして、私に惚れ直してくれるだろう!  ああ、楽しみだ。全ては完璧で、危険なんて何一つない。  唯一、彼らに供与したISは強力なものだが、三次移行にすら到達していないのだから、束さんが相手をするなら赤ん坊にも等しい。  だから、何も問題はなくて、終わった後に、彼の私への愛は更に深まっていて。実験の結果は更に良くなって――  なっている、はずだった。

14 18/10/13(土)19:43:43 No.540291220

 でも、彼は、どうしてか彼自身を嫌いになってしまったようだった。  どうして? 私はどこで失敗した? 完璧な作戦の結果が、何故か暗い雰囲気になってしまったのはどうしてだ?  彼の発言やその後の態度からして、彼はどうやら、テロリストの要求に屈したことを気に病んで、落ち込んでいるというのはわかった。  でも、どうしてそうなるのかが分からない。  だって彼は凡人だ。世間一般に居る極当たり前の才能と意思と勇気しか持たない人間だ。  そんなのが、銃を持った人間に脅されれば、屈して当然、折れて当然なのに。そこで抵抗出来る人間はすでに「只者ではない」のだ。  無論、束さんは精神だけでなく肉体だって只者ではないのだから、銃をこめかみにくっつけられた所でどうということはない。  難なく回避できるし、何なら持っている人をバラバラにしたり、話術だけで精神崩壊させることも出来る。  でも、彼は凡人で。だから別に屈したっていいのに

15 18/10/13(土)19:46:01 No.540291825

やっぱり自作自演じゃないですかー!

16 18/10/13(土)19:46:13 No.540291873

若い男女にありがちな失敗ですね(規模は問わないものとする) 好かれたい幸せにしたいと無理をしても大抵は失敗します一歩一歩ゆっくり仲を深めていきましょう

17 18/10/13(土)19:46:14 No.540291884

天災はさぁ……

18 18/10/13(土)19:47:04 No.540292096

 出来ないことが出来なくても、それはごく当然の、当たり前の計算であり、事実なのだから。  何も落ち込まなくていいと、私は思うのだけれども。  でも彼は今も落ち込んでいて、私のお誘いにも応じず一人で寝ている。  ……これは、私のせいなのかな?  ううん、違う。私の計算には狂いはない。ただちょっと、テロリストどもが彼を怖がらせ過ぎただけだ。  だから、彼は必要以上に怖がりすぎて、それがマイナスな気持ちに繋がってしまっているだけなんだ。  とりあえず、テロリストどもの処理方法について、法に任すのでなくこの手で処理してやることにしよう。  それを話して、自分を傷つけた奴らがいかに残酷な最後を迎えたかを知ったら、もしかして、彼の気持ちも浮かんでくるかもしれない。  じゃあ、早速そうしよう。

19 18/10/13(土)19:48:20 No.540292442

私が書くとどうにも束さんが乙女になってしまう 理解不能だったり狂ったりしてる束さんが好きな人はごめんね 楽しかったです

20 18/10/13(土)19:49:15 No.540292673

これ決定的な破局迎えたら……おっかしいねぇとか言いながら折れないんだろうなあ……

21 18/10/13(土)19:53:17 No.540293724

天災さんはさぁ…バッドエンドに向かう人?

22 18/10/13(土)19:54:11 No.540293977

>私が書くとどうにも束さんが乙女になってしまう >理解不能だったり狂ったりしてる束さんが好きな人はごめんね >楽しかったです 私は良いと思う

23 18/10/13(土)19:56:05 No.540294474

こう…料理に独創的なアドリブを加えて台無しにする人みたいな? 一般的な幸せ夫婦の真似が出来ない内から過激な事しちゃダメだよ!

24 18/10/13(土)19:59:19 No.540295263

かわいいなあ(錯乱)

25 18/10/13(土)20:00:56 No.540295672

「」が書く束さんがすごく好きです 助けてほしいのですが

26 18/10/13(土)20:03:48 No.540296339

メインヒロイン出来るじゃないか

27 18/10/13(土)20:09:17 No.540297689

箒にあの姉に恋人…!?ありえん…!と驚愕と疑いと嫌悪の眼差しを向けられるが 次第に義妹に姉を宜しく頼む…と頭を下げられるやつ

28 18/10/13(土)20:09:51 No.540297846

人の心がわからない

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