ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
18/09/11(火)18:28:17 No.532669127
コウはノートを渡すため電話をかけた。「もしもし」すぐに紗綾が出た。 「久し振りですね」「コウー!どこだー!」絶叫で受話器にヒビが入った。 続いてガラスの割れる音がして、電話は一方的にブツリと切れた。 コウはしばらく待って、それからもう一度電話をかけた。 「もしもし」「コウ!随分と見違えたな!」 周りを見回したが誰もいない。コウが困惑していると、紗綾の元気な声が続いた。 「そうだコウ!生、大で三つ!」居酒屋の喧騒が聞こえてくる。コウは紗綾を諦めた。 「もしもし博士!俺コウです!」「やあコウ君。居酒屋の店員とはいい潜伏先ですね」 「ソッドー!兄貴の仇のジガだー!」「コウかー!ビールもう一杯!」 「うおー!」コウは電話機を殴って壊した。全員知らない店員を自分だと思い込んでいる。 やりきれない気持ちのままランダと居酒屋へ飛び込むと、命令者が手を振っていた。 「ジガ!」「俺はこっちだコラ!お前も間違えてんのか!」「何言ってんの。あなたがジガでしょ」 ようやく自分を知ってる人間に会えた。思わず顔が緩んだコウの手に、「これ払っといて」伝票が渡された。 「誰が払うかー!」次巻、命令者の皿洗い編開幕!
1 18/09/11(火)19:07:38 No.532678306
原作読み直したら紗綾さんずっとコウのこと呼び捨てだった
2 18/09/11(火)19:25:58 No.532682626
祖国への償いとして最低賃金で日夜働く命令者。 彼女の楽しみは、勤務先の居酒屋で休憩中に、フロアへ備え付けてある客用の交流ノートを読むことだった。 見ず知らずの人間同士が思い思いに好きな事を書き殴るだけのノートだが、 そこには様々な人生の一面が広がり、あたかもタペストリーのように複雑な模様を描いていた。 行方をくらませた年下の男の帰りを待ち侘びる女性の独白、 息子が反抗期を迎えたことに思い悩む母親。 発明品が全然実用的ではないことに頭を抱える中年男性。 女上司の執拗なパワハラに悩む新入社員らしき男の書き込みもある。 ページを捲るうち、文章の合間に下手くそな怪獣の落書きを見つけて命令者は苦笑した。 私もあの頃は怪獣たちを従える順風満帆な人生を送っていた。それに比べて今はどうだ。 だが人生は決して平坦で楽なものではない。それは悲喜交々が綴られたこのノートが教えてくれた。 店の隅に据え付けられたテレビの中では、巨大なジガ型のロボもといビールサーバーが、 口や鼻から噴出す黄金の噴水で獣騎達を押し流していた。 あんな奴等と戦い続ける人生が本当に幸福なのだろうか。 命令者はノートを閉じると、休憩所を後にした。