18/06/19(火)18:49:35 短編集... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1529401775264.jpg 18/06/19(火)18:49:35 No.512879822
短編集「ザ・ファイブ・フォー・シックス・ストーリーズ」より 【ウェア・ザ・ナイフ・ハド・ゴーン】 「いいか、腕を構え、意識を集中し、カラテを込めて振り下ろす。それだけだ」ジュー・ウェア姿の男が語りかける。 同じくジュー・ウェア姿のもう一人の男は言われた通りに腕を構え、集中し、振り下ろす所作をした。 手入れの行き届いたタタミ敷きのドージョー。それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。 四方は壁であり、それぞれにはナギナタ、サスマタ、ソデガラミ、ハンマーの見事な墨絵が描かれていた。 「そう、それでいい。…見てなさい、スゥーッ…ハァーッ……イヨーッ!」ジュー・ウェア姿の男、フジマ・テルヤキはいとも容易くカワラを砕く。 もう一人の男…ぴるすも拳を構え、「スゥーッ…ハァーッ……ケオーッ!」カワラを砕いた。「ヤ…ヤッタ!割れたんですけお!」 「ここまでが基本だ、後は鍛錬次第で2枚でも3枚でも割れるようになる。…おめでとう」 「センセイ、これからもお願いしますなんですけお!」
1 18/06/19(火)18:50:15 No.512879949
―――――――― 厚い雲の向こうから差す弱々しい朝日がフジマを目覚めさせる。「夢…か」 フジマはのそりとベッドから起き上がり、洗面台へとゆき、顔を洗った。 あれは重金属酸性雨降りしきる夜であった。ナイフを握りしめる彼を打ち倒し捕らえた日。 同情めいた感情に動かされ拾い上げたぴるすは今、ドージョーにはいない。 半年ほど前、いつも通り仕事を終えて帰るとドージョーはもぬけの殻となっていた。…あの日取り上げたナイフと共に。 あの夢は啓示だろうか。フジマはソファに座ると、テレビの電源を入れ、手元のIRC端末を眺め始めた。 「―以上、タマ・リバーのラッコのニュースでした」未読メッセージが3件。 「…続きまして、痛ましい事件のニュースです」舞台の予定連絡、昨日の業務報告、そして。 「…刃物による同一の手口からNSCCは一連の事件を同一犯の連続ツジギリ事件として…」 『ぴるす可能性有。マッポが捕まえる前にツジギリ犯を始末してください』こなすべき業務の連絡。
2 18/06/19(火)18:50:47 No.512880078
―――――――― 「ハァーッ…ハァーッ…!」夜も眠らぬネオサイタマといえど、夜の路地裏ともなれば人通りは少ない。 浮浪者やカツアゲマン、ヤクザ、時にはサイバーツジギリに遭遇する危険すらもある場所に寄り付く者はほとんどいない。 「ハァーッ…ハァーッ…」そんな路地裏をたった一人の通行人は呼吸を荒くさせ歩く。キョロキョロと辺りを見渡す。 一人の浮浪者が大型業務用ポリバケツの傍らで眠っているのを見つけ、歩み寄り、懐からナイフを…。 その時!「イヨーッ!」ポリバケツの蓋が吹き飛ぶ!何事か!中から男が飛び出したのだ! 「ケオーッ!?」トビゲリがナイフ男を吹き飛ばす!「ゲホッ…何者…!」「ドーモ、久しぶりだなぴるす君」 「あ…あなたは……。…ドーモ、フジマ=サン」「一体君は何をしているのかね」フジマは鋭い目で睨みつける。 「お…俺は…」「何を、しているのかね」「仕方…仕方無かったんですけお…!」ぴるすは顔を覆い、泣きそうな声で続ける。 「分からない…急に力に目覚めて…ニンジャになって…駄目だと思っても残虐性を抑えられなくて…」 「…でも」
3 18/06/19(火)18:50:53 No.512880093
ナイフの行方ってそういう…
4 18/06/19(火)18:51:21 No.512880187
不意に、声に狂熱が籠もる。 「…でも、俺は気付いたんですけお…!抑えきれないこの欲求は食欲と同じ…!仕方のないことなんですけお!」 ぴるすが顔を上げる。瞳が狂気に光る。口元をメンポが覆う。 「俺は変わったんですけお!俺はニンジャ!ニンジャの俺がモータル共をどう虐げるも自由!」 「…ニンジャ性に落ち果てたか、愚か者が!」「なんとでも言ってくだち!」ぴるすがナイフを構える。 「さあ、センセイ!俺は変わった!あの日と違う!老いぼれは死んで道を空けてくだち!ケオーッ!」 ナイフを構え突進!危うし!フジマはこのまま明日のニュースに出るゴア死体となってしまうのか! だが!「イヨーッ!」フジマの指がナイフを摘まむ!「ケオッ!?」ナイフはフジマの寸前で止まっている! 「ケオォォォーッ!」ぴるすは力を籠める!だが!「軽い!君のカラテは軽い!」1ミリインチたりとも進まぬ! 「君は何も変わっちゃいない!そう簡単に変わるものか!思い上がるなサンシタめが!」「バカな…!まさか…!」フジマはナイフを摘まんだまま手を合わせオジギする。 「ドーモ、カブキニストです」「ド…ドーモ、カブキニスト=サン、ペティナイフです」
5 18/06/19(火)18:51:49 No.512880285
「イヨーッ!」カブキニストのローキック!「ケオーッ!?」ペティナイフの両足破壊! 「イヨーッ!」倒れ込むペティナイフの首元を掴み、倒れ込みながら後ろへ投げ飛ばす! アイキドーの禁じ手として知られるカタパルト・スローだ!「ケオアバーッ!」ビル壁に衝突! 「ケッ…ケオッ…」「それで終わりか」カブキニストが歩み寄る。「ケオッ…」「これこそが真のパワーというものだ」 「ケオアバッ…」「ハイクを詠め」「ケオッ…ニンジャになっても/所詮は自分か…」 カブキニストは腕を構え、意識を集中し、カラテを込め、拳をペティナイフの頭へと振り下ろした。 「イヨーッ!」「サヨナラ!」 ―――――――― あの日、ニンジャとなったぴるす君がドージョーを飛び出したのは万能感に浮かされてか、あるいは。 (私をせめて遠ざけようと?)…今や分かりようの無いことだ。 彼のナイフは何処へ行っただろうか。辺りを少し探しても見つかることはなかった。 誰も近寄らぬこの路地裏のどこか片隅で、省みられることもなく重金属酸性雨に溶けて消えていくのだろう。 ネオサイタマの流した涙が彼の痕跡を洗い流す。それは彼にとって救いであるように思えた。
6 18/06/19(火)18:53:52 No.512880644
ナイフはどこへ行ったのか…ポエット!
7 18/06/19(火)18:55:18 No.512880934
この世界線のは強すぎて毎回手に汗握る
8 18/06/19(火)18:56:17 No.512881121
ナイフの行方の独自解釈再編めいた内容だ…
9 18/06/19(火)18:57:24 No.512881325
カブキニスト時代の話か
10 18/06/19(火)18:57:40 No.512881371
ワザマエ!
11 18/06/19(火)18:58:24 No.512881500
全盛期だから殺したのか
12 18/06/19(火)18:58:51 No.512881578
ぴるすなのに悲哀を感じる…
13 18/06/19(火)18:58:55 No.512881596
ナイフの行方…
14 18/06/19(火)19:01:00 No.512881942
思えばKOUSHIROUもといHAKUOU=サンのナイフの行方での合気道要素拾ったの見たの初めてかもしれない
15 18/06/19(火)19:02:02 No.512882147
>ザ・ファイブ・フォー・シックス・ストーリーズ なそ にん
16 18/06/19(火)19:03:36 No.512882436
>なそ >にん さらに264話増えるぞ
17 18/06/19(火)19:04:41 No.512882628
ニンジャって…痛い…
18 18/06/19(火)19:05:00 No.512882687
>【ウェア・ザ・ナイフ・ハド・ゴーン】 ああなるほど
19 18/06/19(火)19:06:16 No.512882928
なるほどナイフがスイと出た
20 18/06/19(火)19:07:17 No.512883119
彼がかぶきにすとを初めからニンジャと知っていれば… コトダマに包まれてあれ
21 18/06/19(火)19:08:28 No.512883342
ああ、カラテが暴力衝動を抑える精神修養でもあると理解できていれば・・
22 18/06/19(火)19:08:44 No.512883394
冒頭の仲良いぴるすとHAKUOUさんでちょっとわんだ
23 18/06/19(火)19:10:03 No.512883670
シュギ・ジキはたまに必要も無く出てきてニューロンにダメージ与えるよね…
24 18/06/19(火)19:15:15 No.512884790
強くはないけど哀しいぴるすだ…
25 18/06/19(火)19:23:26 No.512886525
やはりニンジャソウルは呪い…岡山で修道会を開かなければ…
26 18/06/19(火)19:25:54 No.512887071
ポエット! 哀しいハイクだ…
27 18/06/19(火)19:39:36 No.512890118
瓦割りできて喜ぶぴるすにはカワイイを感じる