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18/05/08(火)00:18:31 SS「相... のスレッド詳細

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18/05/08(火)00:18:31 No.503184426

SS「相互恋関」【R-18】 前回までsu2383259.txtのお話 ただお互いの体を貪り合うような関係になっていたエリカと愛里寿 そのきっかけは、数年前に愛里寿が大洗に入学したときにまでさかのぼる 大洗でみほに対し密かに恋心を抱いていた愛里寿 その愛里寿の前にエリカが現れ、エリカもまたみほが好きだと言う そしてエリカは休暇の間みほのもとに泊まることになり、愛里寿も張り合うようにみほと一緒に暮らすことに。そうして、愛里寿、エリカ、みほの奇妙な三角関係が始まった

1 18/05/08(火)00:19:18 No.503184604

 三人の生活は、表面上は穏やかだった。  だが、愛里寿とエリカは水面下では激しい争いを繰り広げていた。  それはある日のことだった。  その日は、大洗で戦車道の訓練がある日だった。  愛里寿は当然のように参加したのだが、なんとエリカも一緒に参加したいと言ってきたのだ。  みほは、エリカと一緒に訓練できることを喜び、素直に受け入れた。  そうしてエリカを交えての訓練となったのだが、一つ問題が発生した。  模擬戦のチーム分けである。  愛里寿もエリカも、当然みほと同じチームで戦いたいと思っていた。  しかし、二人共優秀な指揮官であるがゆえに、みほと一緒ではパワーバランスが崩れてしまう。  それゆえ、最低でもどちらか一人は相手チームに移らなければならなかった。  そこで、愛里寿とエリカは揉めた。 「今は大洗の一員である私がみほさんと一緒になるべき。エリカさんには対黒森峰を想定した相手役をお願いしたい」

2 18/05/08(火)00:20:20 No.503184865

「あら、私はもう次の世代に隊長を任せる準備をしているから、対黒森峰としては不十分だと思うけど? それよりも、同学年で昔一年は一緒に戦った私がみほと一緒になって、天才と言われるあなたが相手になったほうがバランスは取れると思うのだけれど」 「…………」 「…………」  愛里寿もエリカも、互いに一歩も譲らなかった。 「ま、まあまあ二人共落ち着いて。戦車道に熱を上げる気持ちは分かるけど、楽しく、ね!」  そこにみほが仲裁に入る。みほは二人があくまで戦車道に打ち込んだ結果こうして対立しているものだと思っていた。 「ありがとうみほさん、でもこれは譲れないの」 「そうよみほ。ここははっきりさせないと」  愛里寿とエリカの睨み合いは続く。  周囲が緊迫した空気に包まれ始めた。 「そうだ!」  そんな中、みほが笑顔でパチンと手を合わせた。

3 18/05/08(火)00:20:58 No.503185030

「こうすればいいんだよ! 愛里寿ちゃんとエリカさんが同チームで、私のチームと模擬戦! そうすれば喧嘩は起きないでしょ?」 「そ、それは……」 「う、うんまあそうだけど……」  それはみほと一緒に戦いたいという欲求がある愛里寿とエリカにとっては当然受け入れがたいものであった。  だが、周囲が納得のいったような顔をしているし、何よりここで異を唱えるようなことをすればみほを悲しませることになってしまう。  それだけは避けたい二人であった。  それゆえに、 「……よろしく」 「……ええ、よろしく」  愛里寿とエリカは引きつった笑顔で握手を交わした。  二人共物凄い力で互いの手を握りしめた。  そうして始まった試合は、そんな険悪だった二人の空気に相反し、愛里寿・エリカ組は抜群のチームワークを発揮しみほチームから勝利を収めた。

4 18/05/08(火)00:21:17 No.503185111

 また、こんな日もあった。  愛里寿とエリカとみほは、三人で暮らすようになってから持ち回りで料理当番を担当していた。  ときには一人で。ときには二人で。  そのように順番に回していた。  その日はみほが外出しており、当番は愛里寿とエリカの二人だった。 「愛里寿。今日はあなたは休んでていいわよ? 私がみほに手料理を振る舞うから」 「いや、エリカさんこそ休んでて。私一人で出来る」  愛里寿とエリカは台所を前に向かい合う。  どちらも自分の料理をみほに食べてもらいたいと思っていた。  普段は一人だったりみほと一緒に作ったりするため大丈夫だったが、その日はたまたま愛里寿とエリカが重なったのだ。 「……埒が明かないわ。こうなったら、それぞれ料理を作って、みほにどっちが食べたいか判断してもらいましょう」 「うん。わかった」  エリカの言葉に愛里寿が頷く。  そうして、愛里寿とエリカはそれぞれ料理を作った。

5 18/05/08(火)00:21:55 No.503185262

 順番に台所を使い、お互いの料理を歓声させた。  そして二人の料理が完成した。  エリカは黒森峰らしいドイツ料理、愛里寿はバランスの整った和食を作った。  量は二人で作ったためかなりの量になったが、どちらかを選んでもらう前提だったために二人共あまり気にしなかった。  あとはみほの帰りを待つだけだった。 「私の料理が勝つに決まってるわ」 「いや、勝つのは私」  ここでも二人とも一歩も譲らなかった。    プルルルルル……。    そこで、エリカの携帯電話が鳴り響いた。  エリカが携帯を取り出すと、液晶画面には「西住みほ」の文字が浮かんでいた。 「ふふん」 「むっ……」

6 18/05/08(火)00:22:28 No.503185387

 勝ち誇ったような笑みを愛里寿に見せるエリカ。  愛里寿は不満げに頬を膨らませた。  エリカはそのまま電話に出る。 「はい、もしもしみほ? どうしたの? ……えっ? ……ああうんわかったわ。愛里寿にもそう伝えておく。……それじゃあね」  エリカは先程までの表情が一変し、暗い面持ちで電話を切った。 「どうしたの? みほさん、なんだって?」  愛里寿が尋ねる。  そしてエリカは言った。 「……みほ。今日は外で友達と夕食食べてくるから、悪いけど二人で食べててだって……」 「えっ……」 「…………」 「…………」  二人は黙って見合った後、視線をテーブルの上に移した。  そこには、みほのためにと作った大量の料理が置かれていた。

7 18/05/08(火)00:22:46 No.503185471

「……食べましょうか」 「……うん」  そうして、エリカと愛里寿は二人で向かい合わせて静かに夕食を取った。      さらにこのような日もあった。  その日は学園艦が港に寄港したため、多くの生徒が陸に降りていた。  愛里寿達もその例外ではなかった。  みほ、愛里寿、エリカ、そしてみほの友人達もまた陸に降りた。  そして一同が向かった先は、その港の近くにある大きな海岸だった。 「海だーっ!」  みほの友人の一人である武部沙織が嬉しそうにはしゃぐ。  それに続いて、他のみほの友人達も水着を着て海へと駆けていく。  その後ろで、愛里寿とエリカはゆっくりと歩いていた。

8 18/05/08(火)00:23:15 No.503185582

 愛里寿は清楚な白の水着、エリカは大胆な黒の水着を着ていた。 「いい海水浴日和ね」 「うん」 「こんな日にみほと一緒に遊べたらそれはもう記憶に残るでしょうね」 「うん」 「……負けないわよ」 「……うん」  そうしてエリカと愛里寿はみほを一緒に遊びに誘おうとしたのだが、 「みほ、一緒に――」 「西住殿! 沖まで泳ぎませんか!」 「うん! いいね!」  まずエリカが失敗し、 「ふぅー、泳いだー」 「みほさ……」 「みほさん。せっかくですからたまには童心に帰って砂遊びでもどうでしょう」

9 18/05/08(火)00:23:30 No.503185652

「あ! いいねそれ!」  次に愛里寿が失敗した。  そうして愛里寿もエリカもうまくタイミングが合わずみほと二人っきりの関係をなかなか作れないでいた。  だが、そこに好奇が訪れた。 「みんな! せっかくだしビーチボールでもして遊ぼう!」  沙織がそんなことを言い出したのである。 「……!」 「……!」  愛里寿もエリカもこれはいいタイミングだと思った。  ビーチボールでみほと一緒になれば、一気に距離を詰められるかもしれない。 「それじゃあくじ引きするねー」  沙織がどこからか容易した割り箸でできたくじを手に握る。  愛里寿とエリカは気合を入れてくじを引いた。  そして、そのくじの結果は、 「……こうなる気はしてた」

10 18/05/08(火)00:23:48 No.503185720

「……奇遇ね。私もよ」  愛里寿とエリカが、同じチームになった。  みほは沙織と同じチームになった。 「はぁ……もう、こうなったら優勝するわよ」 「了解」  気持ちを入れ替えた二人は本当に強かった。  結果として、他を圧倒してビーチボールでの戦いを全勝で終えたのであった。      このようにして、愛里寿とエリカはお互いに競い合いながらも、なかなかうまくいかない日々を送っていた。  そしてそんな生活が、およそ一ヶ月は続いた頃だった。 「えーと……買うものは買ったかな」 「ええ。それじゃあ帰りましょう」 「分かった」

11 18/05/08(火)00:24:04 No.503185778

 愛里寿とエリカは、二人で夕食の買い出しに出ていた。  なぜ二人なのかと言うと、買い出しのじゃんけんで負けた結果であった。  愛里寿とエリカは、二人っきりで夕方の学園艦の道路を歩く。  道には夏休みであるためか、殆ど生徒はおらず、閑散としていた。 「……それにしても」  しばらく会話なく歩いていた二人だったが、ふとエリカが口を開いた。 「うん?」 「こうしてあなたと一緒に生活するのも、慣れたものになったわね」 「……そうだね」 「なんというか、あなたとみほ、三人での生活がもう当たり前みたいになっている気さえしてきたわ」 「私もそれ、分かる。なんだか、エリカさんとみほさんと一緒にいるのが普通になってる」 「そうね……でも、普通じゃ駄目なのよね」  エリカが立ち止まる。  愛里寿は数歩前に出て、エリカのほうに振り返る。 「私達はみほに気持ちを伝えたいから一緒にいる。でも、この一ヶ月お互い気持ちを伝えられずにここまで来てしまった。……いいのかしらね、これで」

12 18/05/08(火)00:24:31 No.503185884

「…………」 「それに、もうそろそろタイムリミットがやってくる」 「うん……」  タイムリミット。それは夏休みの終わりである。  エリカは自分の学園艦に戻らなければならないし。愛里寿もいつまでもみほの家にはいられない。  一緒に住むという特殊な環境が、なくなってしまう。 「あなたはいいかもしれないけど、私にとってはもう、時間がないのよね……」 「……分かった」  そこで、愛里寿がコクリと頷いた。 「え? 分かったって、何が――」 「私が最初に、みほさんに告白する」 「えっ……ええ!?」  エリカは大きな声を出して驚いた。  思わず手に持った荷物を落としそうになるほどに。 「ちょ、ちょっと待って! どうしてさっきの話の流れからそうなるの!? 普通、私が告白する流れじゃないの!?」

13 18/05/08(火)00:24:49 No.503185984

「時間が迫ってるから仕方なくエリカさんが告白するのはフェアじゃない。同じ条件で、みほさんに気持ちを判断してもらったほうがいい。だから、私が告白する」 「そんな、フェアじゃないって……あなたは、私がいなくなった後も、みほと一緒にいられるでしょうに……それでいいの?」 「フェアにやりたいと言ったのは、エリカさんのほう」 「それはそうだけど……」  エリカは珍しく戸惑ったような表情を見せる。  そのエリカを見て、愛里寿はふふっと笑みを見せた。 「どのみち告白しなきゃならなかった。それが早いか遅いだけ。それに、私の中にも正々堂々とやりたいって気持ちがあるの。それは、この一ヶ月エリカさんと暮らして芽生えた気持ち。エリカさんとの生活、その……悪くなかったから」 「愛里寿……」  愛里寿とエリカは、お互いに見つめ合う。  しかし、すぐさま二人共「くすっ」と笑い合った。 「……ほんと、あなたって変わってるわ。天才ってみんなこうなのかしら?」 「エリカさんだって人のこと言えない。エリカさんだって、結構な変人」

14 18/05/08(火)00:25:05 No.503186052

「違いないわ」 「ふふふっ……」 「くすっ……」  愛里寿とエリカの間に、不思議な空気が流れていた。  それは、僅か一ヶ月ながらも、同じ目標に向かって駆けてきた者同士にしかわからない空気だった。 「それじゃ、せいぜいいいムードを作って告白することね。どうなっても恨みっこなし。もし駄目だったら、精一杯慰めてあげる」 「ありがとう、エリカさん」 「……素直にお礼を言われると、なんだか調子が狂うわね」  そこまで話すと、二人は互いに頷き合い、再び帰路についた。  その背中は、確かな決意が感じられる背中だった。

15 18/05/08(火)00:25:32 No.503186158

  ◇◆◇◆◇     「それで……話って何かな? 愛里寿ちゃん」  翌日の夜、大洗女子学園前。  愛里寿は、みほを呼び出していた。  目的はもちろん、告白。  場所をそこに選んだのは、夜の学校なら今の時期は誰もいないからである。 「…………」  愛里寿は真面目な顔でみほの顔を見る。  手には、みほと繋がったきっかけの一つである、ボコのぬいぐるみが抱かれている。 「愛里寿ちゃん……?」  みほは、愛里寿の様子が普段と違うことを悟ったようだった。  二人の間に、今まで感じたことのないような張り詰めた空気が流れる。 「すぅ……はぁ……」

16 18/05/08(火)00:26:32 No.503186393

 愛里寿は自分を落ち着かせるために深呼吸をする。  そして、意を決し頭をクリアにしようとする。  雑念を排除する。  まるで戦車道をやっているときのように、いや、戦車道をやっているとき以上に心を研ぎ澄まさせる。  そうして、愛里寿の頭には、みほへの思いだけになった。  だがその一瞬前、エリカのことが頭によぎった。  エリカの悪態をつくときの嫌な顔。エリカの呆れた表情。エリカの、笑顔。  どうしてそんなものが浮かぶのか分からなかったが、愛里寿はすぐさま頭を空っぽにし、そして、言った。 「みほさん……私、あなたが好き」 「え? うん、私も好きだよ……?」 「そういう意味の好きじゃない。女性として、同性の垣根を超えて、恋をしているという意味で、好きなの」 「えっ……」  ――言った。ついに言った。  愛里寿はみほの顔を見る。

17 18/05/08(火)00:26:50 No.503186453

 みほの反応を伺う。  彼女がはたして受け入れてくれるのか、そのことを確かめる。  そして、みほの顔色は―― 「……そんな」  ――あからさまな、嫌悪だった。 「……みほさん」 「……ごねんね愛里寿ちゃん。その……私を好いてくれるっていうのは、ありがたいよ? でも、女の子同士でそういうの考えられないって言うか……愛里寿ちゃんを、そういう対象には見れないって言うか……その……ごめんなさい……」  それははっきりとした拒絶だった。  さとい愛里寿は、そのことを、言葉の端々から、そして、愛里寿から一歩身を引くような仕草から、すぐさま理解した。 「……私こそごめんなさい。変なこと言って……」 「……いや、愛里寿ちゃんは別に悪くはないよ」  この期に及んでのみほの優しさが、かえって愛里寿を傷つける。  自分は、大切な人を苦しませている。  そのことが、愛里寿に重くのしかかる。 「……ごめんなさい。本当に……ごめんなさい!」

18 18/05/08(火)00:27:12 No.503186544

 愛里寿はもう耐えられなかった。愛里寿は、逃げるようにその場から駆け出した。 「愛里寿ちゃん!? 愛里寿ちゃん!」  みほの呼びかける声も聞こえない。  愛里寿はとにかく走った。  がむしゃらに、行き先も分からないまま走った。  いつしか学園艦に雨が降り始めた。  愛里寿は、びしょ濡れになりながらもそのまま走った。  そして、ついに体力の限界を迎え、どこともしれない場所で愛里寿は倒れた。 「はぁ……はぁ……」  愛里寿は地面に打ちひしがれながら荒く呼吸をする。  そんな愛里寿を、冷たく激しい雨が打ち付ける。  どれほどそうしていただろうか、愛里寿は未だ立つ気がせず、ずっと地面に突っ伏していた。  ――もう、このまま死んでしまいたい。  愛里寿はそう思った。

19 18/05/08(火)00:27:29 No.503186611

 そのときだった。 「……愛里寿」  愛里寿の名を呼ぶ声がした。愛里寿はそっと上を向く。  そこにいたのは、エリカだった。  愛里寿と同じく、ずぶ濡れになった、エリカだった。 「……探したわよ、馬鹿」 「……どうして……」 「あなたのこと、みほから聞いたのよ。それで、いてもたってもいられなくなって、学園艦中走り回ったの」 「……聞いたなら分かってるでしょ。頬って置いて」 「そうはいかないのよ」  そう言って、エリカは倒れている愛里寿を抱き上げた。 「っ!? ちょ……!」 「私はあなたを慰めるって約束したからね。とりあえずあなたの家に行くわよ」 「……うん」

20 18/05/08(火)00:27:57 No.503186713

 二人は雨の中、傘もささずに歩き、愛里寿の家へと向かった。  家につくと、二人はゆっくりと服を脱ぎ――愛里寿はエリカに脱がしてもらい――風呂へと入った。  愛里寿とエリカは一緒に浴槽に入った。  エリカが愛里寿を抱きかかえるような形でである。 「……みほ、同性は無理って言ったらしいわね」 「うん……」 「まあ、予測はしていたことよね。ただ、それを言われるとやっぱり辛いわよね」 「うん……」 「あーあ、とういことは、私の恋も告白せずに終わりってことかぁ。……ま、しょうがないわね」  なんとか明るく振る舞おうとするエリカ。  だが、愛里寿は一向にエリカに後ろ頭を見せたまま黙っていた。 「…………」 「…………」  それ以降、二人は言葉を失う。  ただ、温かいお湯にゆっくりと浸かり続けた。

21 18/05/08(火)00:28:13 No.503186765

「……告白するとき」 「ん?」  不意に、愛里寿が口を開いた。  そして、次のようなことを口にし、エリカを驚かせた。 「……あなたが、頭に浮かんだ」 「……えっ?」 「頭をできるだけクリアにしようとしたとき、最後に浮かんだのはエリカさんだった。何故か、あなたのことが頭から離れなかった」 「……うん」  エリカは優しく愛里寿の話を促す。  愛里寿は、静かに口を開く。 「おかしいよね。これから告白しようとしていたときに、恋敵のことが頭に浮かぶだなんて。でも、今こうしてエリカさんにお互い裸で抱きかかえられて、私、今頭の中がエリカさんのことでいっぱいになってる」 「愛里寿……」

22 18/05/08(火)00:30:10 No.503187204

「多分、私は振られてちょっとおかしくなっちゃったんだと思う。自分を必死に慰めようとしているんだと思う。でも……」  そこまで言うと、愛里寿はゆっくりと振り返った。 「あなたと過ごした生活がかけがえのないものだっていうことは、本当」  愛里寿の赤く腫れた目は、まっすぐにエリカの青い瞳を射抜いていた。  その瞳に、エリカは吸い込まれそうになる。 「……私も」  そこで、エリカもまた語りだす。 「私も、あなたが告白するってなったとき、胸の中に湧いたのは、あなたのことだった。もちろんみほへの恋心はちゃんとあったわ。でも、あなたのことが気になるというのも、やっぱり真実で……どうも、二人で一緒にいる時間が長かったみたいね。私達、お互いにもうただの恋敵って感じじゃないみたい」 「それが、慰め合うような、惨めな関係でも?」 「惨めでいいじゃない。お互い、負け犬なんだから、ね」 「……エリカさん」 「……エリカでいいわよ。呼び捨てで」

23 18/05/08(火)00:30:27 No.503187254

「……エリカ。私、寒いよ。ぬくもりが、欲しい」 「……ええ、そうね。私もよ」  そうして二人はそっと顔を近づけ、唇を触れ合わせた。  最初はついばむように、しかしやがてお互いを貪るようになる。  舌と舌を絡め合わせ、浴槽の狭いお湯の中で体を絡め合わせる。 「んっ……ああっ……」 「んはっ……んん……」  愛里寿とエリカはお互いに口を吸い合う。  体は、互いの乳首と乳首を擦り合わせ、性器を押し付けあった。 「エリカぁ……エリカぁ……」 「愛里寿ぅ……」  二人はどんどんと燃え上がり、互いの顔に体に回していた手はそれぞれの性器へと伸びる。  女性同士ゆえ、互いの弱いところを責め合うことができる愛里寿とエリカ。  その指の動きと、舌の動きはどんどんと激しくなっていく。

24 18/05/08(火)00:30:45 No.503187315

「んっ……んんっ……!」 「んはっ……はぁっ……!」  ついに二人に限界が訪れる。  愛里寿とエリカは、一瞬の瞳の中の閃光と共に、絶頂に達した。 「はぁ……」 「ふぅ……」  頭を離す愛里寿とエリカ。その口元には、よだれの橋がかかっていた。

25 18/05/08(火)00:31:14 No.503187420

  ◇◆◇◆◇     「んっ……あっ……あっ……!」 「はぁ……はぁ……はぁ……!」  暗い部屋の中で嬌声が響く。  場所は黒森峰学園艦、エリカの部屋。  その部屋の隅にあるベッドの上で、愛里寿とエリカ、二つの裸体が絡み合っていた。  両者の股からは、いわゆる双頭ディルドーが伸びている。 「はぁ……はぁ……エリカっ……!」 「くっ……いいわよ愛里寿……もっと……!」  愛里寿が上になり、下になっているエリカに対し必死に腰を振っている。  そのたびにびちゃびちゃと水音がする。  愛里寿とエリカ、それぞれのヴァギナからはどろどろと愛液が垂れていた。

26 18/05/08(火)00:31:31 No.503187475

 パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!   「あっ……! んんんっ……!」 「んはっ……! も、もっとぉ……!」  激しく腰を打ち付ける愛里寿。  そのたびに体を震わせるエリカ。  二人はどろどろに溶け合うように体から汗を流す。 「あっ……! ああっ……!」 「んひっ……! んっ……!」  その姿はもはや獣のようであった。  性という獣欲を丸出しにしてお互いを貪り合う二匹の獣がそこにいた。 「あっ……! あっ……! あっ……!」 「んっ……! んっ……! んっ……!」

27 18/05/08(火)00:31:46 No.503187546

 パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!    勢いは衰えることなく、むしろ激しさを増していく。  びちゃびちゃと流れ出る汗と愛液が混ざった水滴が、ベッドの上に大きな染みを作る。  二人の絡み合いはいつまでも続くように思えた。  だが、どんなに激しい絡み合いでもいつかは終わりを迎えるときが来る。 「はぁ……はぁ……愛里寿、私、もうそろそろ……!」 「うんっ……! 私も……イくよ……エリカっ……!」  二人が声を合わせる。  それは、二人が達するときの決め事のようなものだった。 「あっ……ああああああああああああああああ!」 「んあああああああああああああああああっ!」  そして、愛里寿とエリカは僅かな差をつけながらも、ほぼ同時に絶頂に達した。

28 18/05/08(火)00:32:08 No.503187626

 初めて愛里寿がエリカと体を触れ合わせてからと言うもの、二人は毎日のようにお互いの体を求めた。  始めは軽く口付けをし合う程度だった。  だが、情事はどんどんとエスカレートしていき、性行為に至るまで殆ど時間はかからなかった。  愛里寿とエリカはみほに告白を断られた翌日にみほの家から出ていき、最初は愛里寿の家で延々をセックスし続けた。  そして夏休みが終わると、今度は愛里寿が大洗から黒森峰に、誰にも告げずに移り、エリカの部屋に住み込むようになった。  エリカも学校へは殆ど行かなくなった。  わざわざ学校を捨てた愛里寿のために、一日中家にいるようになったのだ。  そうして、愛里寿とエリカは延々とお互いを求め合う日々を送るようになった。  そうした生活が、もはや一ヶ月以上続いていた。  もはや愛里寿もエリカも、互いがいなければ駄目になっていた。 「それじゃ、買い出し行ってくるから」 「ええ、いってらっしゃい」

29 18/05/08(火)00:32:46 No.503187778

 愛里寿は家の食べ物が殆どなくなってしまったため、買い出しに外に出た。  買い出しは持ち回りでやっていて、その日は愛里寿の当番だった。 「うっ……!」  愛里寿は外に出ると強い日差しにくらつきそうになる。  何日も部屋に篭ってエリカとセックスし続けていたのだ。それも当然だった。 「さっさと済ませよう……」  愛里寿はよれよれの足取りで、近所のスーパーに向かった。  スーパーで主にインスタント食品を中心にカゴに入れていく。  もう料理は殆どしなくなっていた。  料理をする時間があるなら、愛里寿とエリカは体を重ね合わせていることが多いからだ。  そしてスーパーを出る愛里寿。後は帰るだけだと、重い足を進めようとしたときだった。 「愛里寿!」 「え?」  愛里寿の名を呼ぶ声がした。  とても懐かしい声だった。

30 18/05/08(火)00:33:41 No.503188009

 その声のほうを向くと、そこにいたのは、意外な人物だった。 「お母様!?」 「ああ愛里寿! ああ! こんなにやつれて!」  そこにいたのは、愛里寿の母親、島田千代だった。  千代は愛里寿を見ると、泣きそうな顔で愛里寿に抱きついた。 「こんな栄養のないものばかり食べて……! さ、私と一緒に帰りましょう」 「ちょ、ちょっと待って!」  愛里寿は愛里寿を連れて行こうとする千代の手を振り払った。  千代は驚いた表情を見せる。 「愛里寿!?」 「いきなり帰れだなんて……どうしたの!?」 「どうしたはこっちです! 突然大洗からいなくなったと思えば、黒森峰にいたという話を聞いてやって来たんです! 一体、何があったと言うのですか!?」 「それは……」  愛里寿は答えに詰まった。  同性に振られて、その慰め合いで付き合い始めた女性と今でも関係を続けているとは、とても言えなかった。

31 18/05/08(火)00:34:25 No.503188163

「……何か事情があるようだけど、こんなあなたの姿を見たらとても放ってはおけません。島田の家に戻ってきなさい、愛里寿」 「……嫌」 「どうしてですか!? 体も服もそんなにボロボロで……酷い生活を送っているのはすぐに分かります! なのに、どうして……」 「……とにかく、嫌なの!」  愛里寿は手に持った買い物袋を千代に投げつけ、その場から逃げ出した。 「あっ、待ちなさい! 愛里寿! 愛里寿!」  千代がすぐに追いかけてくるが、信号に阻んだおかげですぐに振り切ることができた。  一心不乱に走る愛里寿は、エリカの部屋に転がり込む。 「愛里寿!? どうしたの!?」 「エリカ! 逃げよう!」  エリカは何が何だか分からなかった。  だが、何か緊急事態が起きたのは分かった。 「愛里寿、とにかく落ち着いて。何があったの」 「お母様が……お母様が私を連れ戻しに来たの!」

32 18/05/08(火)00:34:44 No.503188260

「愛里寿の、お母様が……?」 「うん。でも、私は嫌。エリカと離れ離れになるなんて、嫌!」  愛里寿はそう言ってエリカに抱きついた。 「愛里寿……」 「私、もうエリカなしでは生きられないの! エリカと、ずっと一緒にいたい! ずっと、エリカと求め合っていたい……!」  それは愛里寿の心からの叫びだった。  その叫びに応えるように、エリカも愛里寿の体を抱きしめる。 「ええ……愛里寿、私もよ。私も、あなたがいないともう駄目なの。あなたと体を触れ合わせていないと、不安で不安で仕方がないの。そのあなたが逃げようと言うのなら、私は一緒に逃げましょう。あなたが望むのなら……いえ、これは私の望みでもあるわね。一緒に、誰にも見つからないところに行きましょう」 「エリカ……!」  そこで、愛里寿とエリカは口づけを交わした。  もう二人は駄目になっていた。

33 18/05/08(火)00:35:03 No.503188335

 愛里寿はエリカが、エリカは愛里寿がいなければ自分を保てなくなっていたのだ。  初めは慰め合いだった関係は、今ではお互いに強く依存し合った関係へと変貌してしまっていた。 「んっ……んはっ……」 「はむっ……はぁっ……」  舌を絡み合わせた濃厚なキス。  そのキスを数十秒ほど交わすと、顔を離し、互いに見つめ合いった。 「さあ……行こう、エリカ」 「ええ……愛里寿」  そして二人は、着の身着のまま、財布と通帳だけを持って部屋から飛び出した。

34 18/05/08(火)00:35:18 No.503188397

  ◇◆◇◆◇      これが、二人が堕落した経緯である。  そして、その顛末が、お互いに求め合うことしかできなくなった二匹の獣であった。 「んーそれじゃあ買い出し行ってくるわね」 「うん、行ってらっしゃい」  買い出しには結局エリカが行くことになった。  エリカは服――ロクに洗濯をしていないためかなり汚い服――を着て、外に出る準備をする。 「……ねぇエリカ」 「ん? 何?」  服を着ているエリカに、愛里寿が突然尋ねる。 「今、幸せ?」 「何よ、急に」 「いや、私は今の生活、結構気に入ってるんだけど、エリカはどうなのかなって、ふと思ってさ」

35 18/05/08(火)00:35:46 No.503188500

「……そんなの、決まってるじゃない」  そうしてエリカは、笑顔で愛里寿に答えた。 「幸せよ。今までの人生で一番、ね」 「……そう。よかった」  二人は互いに微笑み合う。  もはや、愛里寿とエリカは、互いにかけがえのない存在となっていた。  そのかけがえのない人と一緒にいられるとうこと、それ以上の幸せは、二人にはなかった。  これからも二人はこの頽廃した、しかし幸福な生活を送るだろう。  命潰える、そのときまで。   おわり

36 18/05/08(火)00:38:12 No.503189089

来た…のか! キテル

37 18/05/08(火)00:40:16 No.503189620

これまた濃いのが来たな…

38 18/05/08(火)00:41:31 No.503189936

幸せって言ってるからハッピーエンド!

39 18/05/08(火)00:41:32 No.503189938

読んでいただきありがとうございました su2383328.txt 過去作もよかったら ・シリーズもの su2383333.txt ・短編集 su2383344.txt

40 18/05/08(火)00:44:53 No.503190654

反抗期ですわっ!聞いてまして!?西住流家元さん!聞いてまして!?!!11

41 18/05/08(火)00:46:44 No.503191019

傷の嘗め合いいいよね…

42 18/05/08(火)00:52:08 No.503192113

いい…

43 18/05/08(火)00:52:30 No.503192203

そういう訳だからこれからもよろしくなハンバーグ

44 18/05/08(火)00:53:29 No.503192397

このSSの続きがエリアリスレのいつものやり取りである

45 18/05/08(火)00:55:40 No.503192840

>このSSの続きがエリアリスレのいつものやり取りである あいつらそこまでズブズブだったのか

46 18/05/08(火)00:55:55 No.503192898

勝利者は誰もいないという闇

47 18/05/08(火)00:57:57 No.503193265

同じ島田の血を持つ者がお互いを激しく求め合うのはもはや運命と言うべきか

48 18/05/08(火)00:59:46 No.503193621

ああ、近親なんだ…

49 18/05/08(火)01:01:04 No.503193861

身を喰らい合う蛇みたいなやつ

50 18/05/08(火)01:05:49 No.503194714

ところでダーク「」リちゃん もしもエリカが諦めずに告白していたらどんな結末が待っていたのでしょう…その可能性を考えるとひょっとするとこの話はみぽりんも敗北者となって闇を抱えてしまった…という解釈もあるのかしらね? いずれにしても危ういバランスで保たれていた三角関係がふいに崩れ去ってしまうの怖いよね

51 18/05/08(火)01:07:14 No.503195014

やめやめやめろって!

52 18/05/08(火)01:07:41 No.503195084

愛里寿が告白したことによって同性愛について考える内にいつしかエリカへの恋心を自覚してしまう西住殿ですって?

53 18/05/08(火)01:13:51 No.503196100

>愛里寿が告白したことによって同性愛について考える内にいつしかエリカへの恋心を自覚してしまう西住殿ですって? 何それチョー面白そう

54 18/05/08(火)01:13:54 [す] No.503196108

>ところでダーク「」リちゃん >もしもエリカが諦めずに告白していたらどんな結末が待っていたのでしょう…その可能性を考えるとひょっとするとこの話はみぽりんも敗北者となって闇を抱えてしまった…という解釈もあるのかしらね? そこら辺に関してはあえてぼかさせてもらうけどそれはそれとして勝者などいない世界であることは間違いないね >いずれにしても危ういバランスで保たれていた三角関係がふいに崩れ去ってしまうの怖いよね そうだね……でもそれがいい……崩壊した先により深い奈落が待ってるのいい……

55 18/05/08(火)01:14:00 No.503196118

元々みぽりんはエリカが好きでその為に愛里寿からの告白を断ったとしたら 更に受け身のみぽりんはエリカからの告白を待っていたとしたら

56 18/05/08(火)01:14:59 No.503196267

爛れてるエリカを奪いに行くみぽりん

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