虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    18/03/25(日)16:05:28 No.493380515

    「おーい!サンダーボルトー!」 放課後で訓練の無いある日。 廊下を歩いていると我がサンダース大付属の隊長、ケイに呼びとめられる。 「その呼び方あんまり好きじゃあ無いんだけど…」 「えー?いいじゃない。かっこよくて私好きだよサンダーボルト」 「だってアンタがそう呼ぶ時大抵ふざけてる時じゃない」 「それじゃあ昔みたいに試合でもサンダーボルト隊長って呼んでいい?」 「だーめ。普通にライって呼んでよ」 ケイも1年生の時に3ヶ月ほど2軍に居たことがある。 その時は確かにそう呼ぶこともあったっけ…

    1 18/03/25(日)16:06:18 No.493380639

    「昔っからケイは要領良かったよね。掃除させてもバーベキューの準備させてもさ」 「そう?」 「そうだよ。自分も周りも良く動かしてさ。色んな子見てきたけど、他の班までまとめて全体の効率上げようとするやつ初めて見たよ」 「あー最初のバーベキューのこと?でもそれライ怒ったよね」 「班ごとに準備って言ったでしょ」 バーベキューの準備に限らず、雑用の仕切りというのはかなり性格が出る。 誰が仕切った時どうなるかを確認する目安に丁度いいのだ。 …たまにそういうのはダメでも試合で活躍するのも居るのだが。 「まぁアレ見てケイは一軍に早めに上げてもいいだろうと思ったんだけどね」」 1軍は考えて動けるやつをなるべく送るようにしている。次に平均的な能力があって一部技能が特化している者。 2軍は指示が確実にこなせるように、手足としてのベースを鍛える。3軍もあるのだが…それは割愛する。 「あはは…あ、でもさ。私が1年生の時は隊長がバーベキューとかの仕切りしてるの見たこと無いんだよね?どんな感じだったの?」

    2 18/03/25(日)16:06:52 No.493380726

    ケイが1年生の時…あぁ…あの人か。 「メグミちゃんかー…」 「そうそう。去年の隊長はそういう準備ガンガンやる方だったけどさ。メグミの時もライと去年の隊長のコンビで仕切ってたよね?」 「メグミちゃんはねぇ…戦車道が得意な人なのよ」 これだけ言うとケイは何かを察した様な顔をする。 多分当たりだろう。 「…もしかして、さ。料理出来ない人?」 うむ。お察しのとおりである。 「試合は凄かったよ。練習試合で当時の黒森峰相手に引けを取らない戦い方してたし。でもうーん…なんて言ったらいいんだろう…」 「大雑把なとこがあるのね。わかるよ私も自分の事だと結構そうだし」

    3 18/03/25(日)16:07:28 No.493380825

    「いやーアレは生活力に欠けるくらい言ってもいいと思うかな…」 サンダースの寮には冷蔵庫とキッチンがある。 他の隊員の部屋に行くとそこそこ使っている形跡があるのだが… 「キッチンに紙製の何か入ってたであろう容器と缶詰が積み重なってるってのはねぇ…」 「あー多分中華ね…缶詰はスパムかな…」 「野菜もあったよ…ほうれん草」 「力が湧いてきそうね…ん?でも私がメグミの部屋に行った時、そんなに散らかってた事無かった気がしたんだけど」 「そりゃあ片付けてたもの。私が」 隊長の部屋が散らかっている、なんて知られたら士気に影響が出かねない。 そこで仕方なく毎日通っては掃除してあげていた。 ちなみにご飯も時々作っていた。野菜が欠如する生活は身体に悪いよ。うん。

    4 18/03/25(日)16:08:08 No.493380932

    「それは知らなかったわ…でもライってそういうの口頭で注意して大体終わりにしてない?メグミにはそこまでしてたなんて意外ね」 「あんまり他人に介入し過ぎるのは私の筋じゃないもの。あとメグミちゃんは小さい頃から顔知ってるしね」 メグミちゃんは実家の常連さんだ。母親同士も仲が良い。そして一緒に遊ぶことも割とあった。 そして昔からちょっとズボラだった。 だけど…戦車道では鮮やかな戦いを見せてくれて、憧れていた面もあった。 「大体サンダーボルトなんて登録名になったのもメグミちゃんのせいでさー…」 「あのーちょっといいですか?」 私が苦笑していると後ろから声をかけられる。アリサだった。 「どうしたのアリサ?」 「あ、隊長。その…前から気になってた話をされてたようでしたので」 「…サンダーボルト?」

    5 18/03/25(日)16:08:54 No.493381056

    私が登録名を口にするとアリサが頷く。 「登録名って好きなのつけるんですよね?その割にはライさんってやけに呼ばれるの嫌がるなと、前から思ってたんですよ」 「あー確かに。それで嫌がる割りに変更するわけでも無いしね。何か理由でもあるのライ?」 「…参ったなぁ…ま、いいかたまにはこんな話しても…」 ケイとアリサに問われて昔話を一つすることにした。サンダース第2軍所属、サンダーボルト隊長の話を。 「中等部から高等部に上がった時のことだったかな…」 私は最初に登録名をサンドラにしようとした。サンダーと何となく口に出した感じが似ていたし無難そうだったから。 しかし名前が別の生徒と被ってしまい、ジャンケンの結果譲ることになったのだ。 つまり選び直しである。 教室で一人唸っているところにやってきたのがメグミちゃんだった。

    6 18/03/25(日)16:09:30 No.493381162

    「そこで相談した時にボールペンで書いてったのがサンダーボルト、よ」 雷ちゃんだからサンダーボルトでいいじゃない。そう軽く書いてくれて、そのまま紙をついでにと職員室まで持ち去られてしまった。 次の日からサンダーボルトになってしまったのだ。 「その時変えたら良かったじゃないですか」 「思いつかなかったから…暫くはこれでいいと思ったのよ」 「後で変えればって思ってズルズルと過ごすうちにそのまま…ってわけね」 「そういうこと」 そうして高等部でもサンダーボルトとして戦車道を始めることになったのだが… 「当時の私は西住流ってことで結構鳴り物入りで入っちゃったのよ」

    7 18/03/25(日)16:10:01 No.493381245

    西住流のネームバリューはやはり大きく、なぜ黒森峰でなくサンダースに?とはよく聞かれたものだった。 普通西住流であればやはり黒森峰…それも血縁ならなおさらなのだが… 「家庭の事情でさーサンダースじゃなきゃダメってなったんだよね。本当は中学から黒森峰に行きたかったんだけどさー」 実家は佐世保なので地元のサンダースに、と言われたのだ。 …他に黒森峰でまほちゃんより目立つことがあると体裁が悪いということもあったのだが…これは黙っておこう。 「まぁ、そんなことは置いておいて、サンダーボルトって名前なんだけど…適当につけたと思ったけど実はそうじゃなかったらしくてさ」 「どういうこと?」 「別の先輩に言われたのよ『メグミは貴女が上がってきたらとっておきの名前をつけるっていつも言ってた』ってさ」 それでどういうわけかとメグミちゃんに問うと、こんな答えが返ってきた。 『雷ちゃんにはね、私の相棒の名前が合うって思ったのよ』

    8 18/03/25(日)16:10:46 No.493381385

    「エイブラムスっているじゃない」 「M1A1ですか?湾岸戦争で活躍した」 「戦車の方じゃ無くて元の人よ。メグミちゃんこの人が好きでさ」 「そういえば、エイブラムスって搭乗した戦車にサンダーボルトって愛称つけてたのよね」 「そうそう。だからメグミちゃんはイージーエイトに乗っててさ、その上でサンダーボルトって名前くれたってわけ」 普段が普段だから適当だと思ったのに…この話をされた時はちょっと感動した。 憧れのメグミちゃんが自分の事をこうも思ってくれていたのかと。 「それからまぁ…そこそこ恥ずかしくないように頑張ってきたけど…うーん、まぁちょっと思うことがあってねー…今は普通にライでいいかなーってさ」 久々に自分の事を話して喉の渇きを覚えたので、私は手に持ったボトルのミネラルウォーターを流し込んだ。

    9 18/03/25(日)16:12:10 No.493381618

    「…と、まぁこんなワケよ」 「うん。ライがどうしてサンダーボルトって名前にしたのかと、それについてどう思ってるのかはわかったけどさ…」 「結局どうしてそう呼ばれるの嫌がるんですか?」 痛いところを聞かれる。 最後まで話さなかった私が悪いのだが…これ言うと心配されたり面倒な内容だろうな… さて、どうしたものかと頭を捻る。 「…ま、別にいいじゃん。それは卒業までの秘密ってことでさ。卒業したらちゃんと聞かせるからそれまで待っててよ」 適当にごまかして今日はここまでにしよう。 タイミングのいいところで追い出しのチャイムが鳴る。 これ幸いにと手を振って、私は逃げるように二人の前から立ち去った。 「あっ!ちょっとライさんってば!…もう、いいところで逃げられた…」

    10 18/03/25(日)16:14:13 No.493381965

    「はぁ…逃げられちゃいましたね…」 「…ねぇ、アリサ。これの意味わかる?」 雷が去った後、ケイはメモ帳にある単語を書いてアリサに見せる 「…【 lie 】…嘘、ですよね」 「そう。で、それもライって言うの」 アリサは黙ってケイの顔を見る。 「ライはサンダーボルトって名前が本当は大好きなの。でも今の自分には相応しく無いと思ってる」 「みたいですね…でも思うことって何があったんでしょう?」 「それはわからないわよ。けどさ…」 ケイは去り際に見せた雷の、少し寂しそうで自嘲したような笑顔を思い出す。

    11 18/03/25(日)16:15:24 No.493382185

    「もしかしてだけど…今のライって呼ばせるのはこっちの方に引っかけてるんじゃないかなーってさ…」 「…ライさんなら確かにそういう回りくどいコトしそうですね…」 でも何かあるなら相談してくれればいいのに。とアリサが口にすると 「うーん…あの子はね、他人の心配ばかりするくせに自分のことは抱え込んじゃうから」 「本当はもっと誰かに話を聞いて欲しい…?」 「でも言えない。何かの事情があるのかもしれないけど…そこまで私達にも話す気は無いみたいね」 ある時は一番頼りになるくせに、ある時は一番心配掛けるのよね。と苦笑するケイにアリサが表情を曇らせる。 「…どうしたら、話してくれるんでしょうね」 「……ま、今言えるのは今は時期じゃないってことくらいかな」 ケイには一つ思い当たることがあった。

    12 18/03/25(日)16:16:53 No.493382443

    それは雷の進路のことだった。 彼女は日頃から実家の肉屋を継ぐと公言しているが、内心は他の進路を望んでいるのかもしれない。と。 あれだけ戦車道に執着している雷が、エスカレーターで進学できるサンダースに居ながら戦車道を辞めて実家を継ぐという。 それがケイには不自然に思えたのだ。 「…言ってくれたら…どうにかしてはあげたいんだけどね」

    13 18/03/25(日)16:17:34 No.493382580

    「…今は、嘘ばっかだからこれでいいのよ」 本当は戦車道だって続けたい。大学だって行きたい。本気で戦いたい。 まほちゃん相手だって本気でやった時に限って言えば成績はギリギリ勝ち越しだ。今でも勝ち負けくらいにはなるだろう。 いや、負けたっていい。誰かに私の実力を認めて欲しい。だけど… 「…自分に嘘ばっかついて…真面目にやってきた子相手にやれば勝負できるって…ホント失礼な言い草よねー…こんなヤツは肉屋で燻るのがお似合いよ…」 だからサンダーボルトと呼ばれるのは嫌いだ。 あれは偉大な戦車指揮官と戦った、偉大な相棒の名称だ。 …今の私が名乗るなんておこがましい話だ。

    14 18/03/25(日)16:17:56 No.493382636

    「…はぁー…だっさいわねー本当に…」 憧れた人から貰った名前に、現在進行形で泥を塗りたくる自分に腹が立つ。 まるで雷が落ちる前の曇り空のような心持ちで私は部屋へと足を向けた。 おしまい

    15 18/03/25(日)16:23:22 [す] No.493383606

    ドラマCD聞いたら雷ちゃんで何かやりたくなった 先輩の世話する後輩とか結構好き su2311413.txt su2311416.jpg

    16 18/03/25(日)16:26:08 No.493384105

    雷姉は自分のことだとちょっと曇りがちだな…

    17 18/03/25(日)16:30:13 No.493384849

    A10由来かと思った

    18 18/03/25(日)16:44:54 No.493387671

    背中押すの得意だけど背中預けるの苦手な雷住殿…

    19 18/03/25(日)16:53:22 No.493389462

    燻りがどっかで火がついて燃え盛るとかありそう

    20 18/03/25(日)16:59:19 No.493390829

    そうやって甘やかすからメグミさんが