18/02/21(水)23:48:35 ガルパ... のスレッド詳細
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18/02/21(水)23:48:35 No.486597605
ガルパンSS ・姉の異常な愛情 または如何にして西住まほは戦車道に対して意義を感じる様になったか これまで ss308344.txt ss308345.txt
1 18/02/21(水)23:49:38 No.486597850
最終話【I Found My Way】 -1- 「馬鹿な!」 私は自然と現実を否定する叫び声をあげていた。 Ⅳ号の足回りを考えればあそこはむしろ減速し体勢を立て直すべきだ。 あの操縦技術でⅣ号の履帯を加速させ、車体を傾けるなど自殺行為でしかない! 見ろ!視界から消えようとしてるⅣ号の車体の履帯を! 金属とアスファルトが擦れて、赤い火花を散らし、金属音が悲鳴となって鳴り響いているのが解る。 ……ついには片側の履帯が弾け飛んでしまった。 これで終わりだ……いや、何故減速しない!?何故更に片側の履帯を動かして!?
2 18/02/21(水)23:49:54 No.486597916
……ああ!! 「砲塔回転!急げ!」 気づいた隊長が指示を飛ばす。 私も慌てて車体の安定を取る事を捨てて、全力で履帯を左右それぞれ逆方向に加速させて車体を超信地旋回させる。
3 18/02/21(水)23:50:09 No.486597974
まさか……まさか! あり得ない! 後先を考えず、履帯が切れる事も覚悟の上で、この一回で決着をつけようとするなんて! 何て……何てとんでもない事を考える人なんだ! 勝負の土壇場で行き成りオールインをするなんて! ……数回目、これを繰り返した後に……いや妹様ならば二度目にならばまだ解る。 普通にしていてもジリ貧なのだから一回に賭けようという思考になってもおかしくはない。 だが、何故最初の一回でそれができる!? だって、こっちが同じ事をしてくるとは解らない筈じゃないか! あの状況で捨て身となって履帯を壊してでも一回でけりをつけようとするなんて、最初から此方も同じ技をしてくると解っていなければ……
4 18/02/21(水)23:50:29 No.486598053
……っ!!
5 18/02/21(水)23:50:48 No.486598131
……そうか、解っていたんだ。 私なら……斑鳩拓海なら妹様がいなくなった後もあの置き土産をモノにするだろうと……。
6 18/02/21(水)23:51:07 No.486598184
……解っていてくれていたんだ。
7 18/02/21(水)23:51:24 No.486598251
-2- 戦車下部の車体と上部の砲塔が同方向に回転することによって、主砲が素早く右側へと回り込んだⅣ号を射線に捉えようとする。 私の前方視界には既にⅣ号は存在しない。 砲塔と一緒に回転する席にいる砲手の視界内に存在する事を祈るしかない! ……間に合うか!? 限界まで車体を動かした後、経験と感に基づいて車体を一気に静止させる。 一瞬にも満たない間であったが、なんとなくⅣ号も全く同じタイミングで停止した事が解った。
8 18/02/21(水)23:51:43 No.486598330
「撃て!」 静止から隊長の発射命令。 発射命令から発射。 どれも一泊の間も置く事無く流れるようにほぼ同時に行われた。 この点だけでも私達の錬度とチームワークが卓越している事が解る。 ……だが。 二重に聞こえる轟音。 大きく揺れる車体。 相手の砲弾が命中したのが解った。 どの箇所に? 此方の砲撃はどうなった? ……ティーガーならこの距離でも箇所によっては一撃で走行不能にならない事は十分にありえる。 一方で此方の砲撃は当たれば十分に大破せしめる事が出来る筈だ!
9 18/02/21(水)23:52:00 No.486598403
……祈るような心境だ。 いや、私だけではない。 車内の全てが……いや、恐らくこの会場にいる全員が耳に痛い程の静寂の中で固唾を飲み込んで判定を待っている筈だ。 小窓からは着弾時の煙によって何も見えない。 果たして結果は……!!
10 18/02/21(水)23:52:23 No.486598479
『……黒森峰フラッグ車、走行不能! よって……大洗女子学園の勝利!』
11 18/02/21(水)23:52:40 No.486598561
……嗚呼
12 18/02/21(水)23:52:58 No.486598621
-3- 「終わった……か」 終わった。 終わってしまった。 ずるりと背もたれに体重をかけて体を弛緩させる。 現実感がなくどこかふわふわと心が浮いていたが、口にすると途端に強く認識できてしまう。
13 18/02/21(水)23:53:16 No.486598703
終わった……。 ……終わった?何がだろう? 試合が? いや……そうではない。 何となくだが……私はもっと長いスパンでの何かが終わったように感じていた。 目を瞑れば瞼の裏に色々な事を思い出していく。 最初に妹様を見た時は……あのおろおろとまるで小動物の様に身を縮こまらせる様子に大丈夫か?と心配したものだ。 その後に逸見に声をかけられて……思えばアレが最初に見た妹様の笑顔だったか。 月並みな表現だがまるで花が咲いたかの様な可愛らしい笑顔だったな……。 その後の練習試合は……度肝を抜かれたものだ。 あの可愛らしいだけのお姫様を何とか支えようと意気込んでいたのも今考えると赤面ものだが。 兎も角もあの時から私の戦車道は変わった。 最初に戦車に乗った時は楽しかった筈なのに、何時しか何の為に歩んでいるのか解らなくなった戦車道が。
14 18/02/21(水)23:53:33 No.486598777
……いや、変わったと言うよりは戻った……と言うべきなのかもしれない。 幼い頃に始めて戦車に乗って興奮と楽しさを感じていた頃に……。 そして……あの練習試合で強烈に刻み込まれた白金の光景。 それを思い出しながら私は右胸ポケットに手をやった。 あの時が最も楽しかった……いや、そうでもないか。 その後の時間も同じくらい楽しかった。 妹様と一緒に……逸見や赤星と浅見と戦車に乗っていた時も楽しかった……。
15 18/02/21(水)23:53:53 No.486598846
そして決勝戦。 妹様が荒れ狂う川の中に飛び込み、意識不明の重体となったと聞いて私は血の気が引き、足元が覚束無くなり、上手く呼吸ができないような状態になった。 命の心配はなくなったが、障害が残るかもしれないと聞いて後悔と妹様を守れなかった自分の情けなさに吐いたりもした。 あの日から何処か螺子が狂っていったのだろう。 ……いや、私が気づかなかっただけでもっと前から歪みは起きていたのだろう。 妹様が転校し、戦車道をやめると聞いて……私は何処かほっとした。 多分、それがあの人にとって一番幸せなのだろうと思ったからだ。 戦車道に関わらずに普通の女の子として暮らす方が幸せなのだろうと。 だから、大洗で戦車道を再開したと聞いた時……私は嬉しいという気持ちを自覚しながらも不安に思った。 あれだけ戦車道を忌諱していたのに何故再開したのか? 無理やりさせられているのではないか? そうでなくとも、妹様は戦車道を歩んでいて幸せなのだろうか? ……その疑問に対する答えはいまだに出ていない。 出ていないが、これで終わりなのだ。
16 18/02/21(水)23:54:58 No.486599107
「……すまないな、斑鳩。 負けてしまった」 そう思念していると車長席から隊長が私に謝罪してきた。 「……っ、隊長が謝る事はありませんよ!」 「だが、お前は冷泉麻子に負けてしまった。 私の所為でな」 「そんな……隊長の所為だなんて…… 私がもっと上手くできていれば…」 それに対して隊長はふっと笑った。
17 18/02/21(水)23:55:30 No.486599228
「自分で欠片も思っていない事を言うのは止めろ。 少なくとも、この試合中に限って……いや、最後のあの瞬間までで言えばお前は間違いなく冷泉麻子より一枚上手の操縦手だった。 負けたのは車長の差だ。 それも技量だとかそういう話ではなく、もっと根幹の部分のだ」 「……」 実を言えばそれは解っていた。 いや、それが解らない様な節穴の目の持ち主はこの場にいる訳がなかった。 この勝負の差を分けたのはたった一つの要因。 隊長はその後の事も考えていた。 妹様は後先を考えなかった。 それだけの差だった。
18 18/02/21(水)23:55:46 No.486599301
それは言ってみれば西住と縁がある古流剣術である示現流の『一の太刀を疑わず』の様なものかもしれない。 妹様は全てを初太刀に賭け、振り下ろした。 隊長は逃げ足を残していた。 ……しかし、妹様がそれができたのも、隊長がそれを出来なかったのも全ては妹様の入念な下準備の末だったのだろう。 この大会が始まった時から全ての策略はこの一瞬の接合の為にあったのだ。
19 18/02/21(水)23:56:02 No.486599357
「……そうだとしても、やっぱり隊長は謝らなくていいですよ」 「……ほう?」 「何故なら私はこの結果に満足しているんです。 何て言えばいいか解りませんけど……全力で挑んで妹様の足である冷泉麻子に負けたと言うのは結構スッキリしているんです」 「……その割には色々考えているような様子だったが?」 「……試合の結果に関して不満が無いと言うのは嘘じゃないですよ。 そういう隊長だって……負けたって言うのに嬉しそうじゃないですか」 「解るか?」 「それだけ嬉しそうにしていれば」
20 18/02/21(水)23:56:17 No.486599413
普段から仏頂面とも言える様な表情しか浮かべない癖に、にっこりと何とまぁ嬉しそうな事だ。 ……だが、それも無理もない。 隊長のずっと夢だった妹様との試合だ。 それも西住流の枠に収められた妹様ではなく、枠などと言う枷を取り外した本来の妹様との。 ……でも、良かった。 途中までは折角の機会なのに惨めな結果になるかもしれないと恐れていたのだが、最後の最後で全力をぶつけ合う事ができた。 ……本当に逸見はこの姉妹の良い縁の下の力持ちだよ。 「さぁ、大会も終わりだ。 撤収の準備を急がなければ優勝旗の授与が始まってしまう。 見に行くんだろ?」 「……そうですね」 そうだ、妹様の晴れ姿を見に行かなくては。
21 18/02/21(水)23:56:35 No.486599476
-4- 『優勝!大洗女子学園!』 夕焼けによって橙色に染められた空の下で大洗の優勝が称えられた。 大洗の戦車道の隊員達の中央で優勝旗が大洗の代表……妹様に手渡される。 その優勝旗の重みにあわや体制を崩しかけるが横にいた子がそっと手を添えて支えた。 ……あれは、確かサンダース戦の時に冷泉麻子と一緒にヘリに乗った武部沙織といったか。 支えられた妹様が笑顔を浮かべる。 困ったような笑顔でもなく、切なそうな笑顔でもなく、自嘲を含んだ笑顔でもなく、 心の底から嬉しそうな、感謝を含んだような……幸せそうな笑顔を。 それを周囲の大洗生徒達も同じ様に笑顔を浮かべる。 その笑顔のまま、妹様は誇る様に優勝旗を掲げた。
22 18/02/21(水)23:56:52 No.486599529
「……あっ」
23 18/02/21(水)23:57:08 No.486599577
私はそれを見て思わず声を漏らした。 何かがストンと心から落ちた。 まるで今まで抱えていた重みが無くなる様に、霧がかった物が晴れる様に。 私は理解した。 してしまった。 妹様は今、幸せなのだ。 大洗で戦車道をしているのが幸せなのだ。 戦車道をしているからこそ幸せなのだ。 心から信用できて、信頼できて、大好きな友人達と戦車道をしているのが幸せなのだ。
24 18/02/21(水)23:57:25 No.486599648
……そうかぁ、幸せなんだ。 「……良かった」 私は一筋の涙を流していた。 それが嬉しいからなのか、安心したからなのか、それとも寂しいからなのか。 解らないがこれだけは言える。
25 18/02/21(水)23:57:47 No.486599737
妹様が幸せで、私も幸せだ。
26 18/02/21(水)23:59:44 No.486600154
残りはテキスト ss308348.txt
27 18/02/22(木)00:06:31 No.486601764
来たのか!
28 18/02/22(木)00:07:45 No.486602072
都合の良い女過ぎるやつ
29 18/02/22(木)00:16:06 No.486604030
>右胸ポケットに手をやった やっぱりずっと持っているつもりなんだね…
30 18/02/22(木)00:16:53 No.486604225
これにはババアもニッコリ
31 18/02/22(木)00:22:05 No.486605599
解ったんですね妹様…自分で決めて動き出すことの大切さを 見つけたんですね、妹様の選びたい道を
32 18/02/22(木)00:23:12 No.486605920
そうしてこの後斑鳩は月刊戦車道の記者になって秋山と出会って……
33 18/02/22(木)00:24:17 No.486606233
最後の最後でタイトルネタがガルパンの歌なのいいよね…
34 18/02/22(木)00:39:33 No.486609267
>そうしてこの後斑鳩は月刊戦車道の記者になって秋山と出会って…… そういう世界線もあるだろうね
35 18/02/22(木)00:40:44 No.486609443
>そういう世界線もあるだろうね 美帆りんの世界線がそんな感じだな
36 18/02/22(木)00:41:20 No.486609569
今回のみほのキャラソンはみほの複雑な気持ちとこれまでの友人関係がすべて含まれている歌詞だと感じましたね 勿論あんこうチームのみんな、大洗のみんなの事を前提にした曲だとは思うんですがそれだけではないと…みほが自分の道を見つけて前進していくという事がテーマではあるんですがそれに気付く為にはこれまでの思い出…例えばエリカとの関係を回想した上で達した決意だと思うんです みほの道はこれからも続く訳ですから更に次の道に進む為には今度はみほが良きライバルであるエリカの手を握ることもあるんじゃないかと思います、みほとエリカとの関係もこの曲には折り込まれているのではないかな…と、みほの未来への思いも感じながら聴いて頂きたいですね
37 18/02/22(木)00:42:14 No.486609722
あいつ
38 18/02/22(木)00:42:35 No.486609790
渕神様 ステイ
39 18/02/22(木)00:43:00 No.486609867
>>そうしてこの後斑鳩は月刊戦車道の記者になって秋山と出会って…… やつが死ぬじゃん!
40 18/02/22(木)00:43:47 No.486610015
荒らぶっておられる