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    18/01/02(火)21:43:55 No.475974596

    ガルパンSS エリカ 天高く輝く星を追い続けていた。 空にある星に追いつくために、私は懸命に手を伸ばし、大地を駆け続けていた。 やがて星は2つになり、1つの星が、近づいてきた。 その星を掴める! そう思い手を伸ばした途端、すり抜けて星は消えていった。 いま、天に輝く星は2つとも遠くに去り、暗闇に私ひとりが取り残された。

    1 18/01/02(火)21:44:17 No.475974712

    マイバッハ製12気筒エンジンの低い唸りの中で、目を覚ます。 夢を見ていた。 いつも見る、夢を今日も見ていた。 夢の残滓は、私の頬を伝う滴となってその名残を留めていた。 「……」 私は黙って頬を拭い、2、3度顔を叩いて心を現実に戻す。 そうだ、ティーガーIの暖気をしていたんだ。 居眠りなんて、らしくない。 もうすぐみんながやってくる。 しっかり、しないと。

    2 18/01/02(火)21:44:39 No.475974826

    西住まほ隊長より黒森峰女学園の機甲科トップの座を譲り受けてからもう二ヶ月が経つ。 この大部隊を率い、来年度優勝旗を黒森峰(ここ)に持ち帰ること。いや、まずは目の前の大会で優勝すること。 それが私に課せられた義務である。 できるか、できないか、ではない。 間違いなく、やりとげる。 それが私に課せられた宿命である。 「Stillgestanden!(気を付け!)」

    3 18/01/02(火)21:44:55 No.475974905

    朝礼。 全隊に号令をかけ、ドイツ式の肘を少し身体から離した気を付けの姿勢で並ばせる。 私の言葉で、100人を越す大部隊が一斉に動く、注目する。 高揚感などというものはもうすでにない。あるのは、使命だけ。 全ては、勝利のために。 日夜、私は暗闇の中で、必死に戦い続けた。 みずからが光り輝く星となるために。 星となるために必要な事すべてを成し遂げるために。

    4 18/01/02(火)21:45:11 No.475974976

    ◇◆◇

    5 18/01/02(火)21:45:27 No.475975051

    コンコン。 「誰?」 隊の練度をより高くするため、更に、訓令戦術を取れる部隊とするため。 私は夜遅くまで練習プランを練り続けていた。 こんな夜更けにドアをノックするのは誰だ。 「赤星です、失礼します」 「帰りなさい。もう門限過ぎてるわよ」 「隊長、いや、『エリカさん』、もう遅いです。帰りましょう」 「私には私の仕事があるの、貴女こそさっさと帰りなさい」 「嫌です」

    6 18/01/02(火)21:45:46 No.475975118

    あけすけな言葉に思わず胸ぐらをつかんだ。 手元にぐいと引き寄せ、私をにらみ付ける小梅をきっとにらみ返す。 「エリカさんの仕事は私の仕事でもあります。副隊長に出来ることは何なりとご命令下さい」 「無いわよ。出来る仕事は全て頼んであるわ」 「本当ですか?」 服を掴む手をゆっくりと離す。そして、山積みになった書類の脇に置いたコーヒーを一気に飲み干す。 「貴女、いえ、貴女たちにお願い出来ることはすべて任せているでしょう。隊長には隊長の仕事があるのよ」 「それがこんな真夜中まで学校に残ってすることなんですか」 「そうよ。作戦の立案、訓練の遂行、戦略の立ち上げ、どれもこれも皆隊長の仕事よ」 「でも、こんな事をしていてはエリカさんが壊れてしまいます」

    7 18/01/02(火)21:46:04 No.475975192

    ふっ、と、鼻で笑うようなため息をついた。 分かっていない。私は西住まほ隊長から全てを引き継いだのだ。 黒森峰機甲科の全てを。 隊長に追いすがるためには、この身、この心、たとえ燃え尽きても構わない。 「私はよだかの星よ。もがいて、足搔いて、必死に天に昇って、自らを燃やして輝く醜い星」 「違います!」 まっすぐな瞳で、小梅が私を見つめた。

    8 18/01/02(火)21:46:19 No.475975262

    「エリカさんは──天に輝く星ではありません」 「ええ。そうよ」 「地上で煌々と輝くともしびです」 「ともしび?」 小梅がカーテンを開ける。 空に、沢山の星と、わずかな学園艦の明かりが瞬いている。 「天の星はどんなに手を伸ばしても、走っても届きません」 「……ええ」 「私たちは、天に輝く星の光を仰ぎ見て、その声を頼りに、いままで必死で練習し、戦ってきました」

    9 18/01/02(火)21:46:37 No.475975330

    夜空に向けて手を伸ばし、星々を見つめていた小梅が、ふいにこちらを向いた。 その瞳は強い光を帯びて、薄暗い隊長室の中で光り輝いていた。 「今は違います。星の光は地上で輝き、私たちはまっすぐ前を向いています」 「前を?」 「今までは、空ばかり見て、前を見ていなかったんです」 ぎらついた瞳から、不意に涙が溢れた。

    10 18/01/02(火)21:47:00 No.475975464

    「今は……違うんです。一緒に前を向いて戦えます」 「前?」 「エリカさんが地上で輝くからこそ、私たちは空ではなく前を向ける。そしてともに歩むことができる、違いますか?」 「そう、かもしれないわ」 小梅が手を差し伸べる。私も、その手をしっかりと握りしめる。 なぜだか分からないけれど、自然と、手が伸びた。 「私たちは天に輝く星にはなれません。でも、天高く輝くことだけが西住流の、黒森峰の戦車道じゃないはずです。 どうか、私にも──ご命令下さい。一緒に、地上で輝くために」

    11 18/01/02(火)21:47:15 No.475975570

    小梅が左手で手の甲をそっと包んだ。暖かさがじんわりと伝わってくる。 「ふん。忙しくなるわよ。あんたも一緒に燃え尽きたいっていうなら燃やしてやるわ」 「喜んで!!」 「じゃぁ命令するわ、この前の練習試合、相手を30分以内にに殲滅するためには何をするべきだった? 答えなさい!」 「あ、そういうことはみんなで考えましょうよ」 「はぁ?」

    12 18/01/02(火)21:47:42 No.475975709

    ぺろりと舌を出した小梅の頬をぐいぐいと引っ張ってみる。 「いはい! ほういふほほはみんあへはんはえはほうはいひえふっへ!」 「隊長と副隊長が答えを示せなくてどうするのよ! さぁ、言ってみなさい!」 「うぐっ……エリカさんが挑発に乗らずに5対2の数的優位で取り囲んでおけば良かったんじゃないですか?」 「西住流に逃げるなんて許されてないのよっ!」 小梅の柔らかいほっぺたをふにふにとしながら、私はさっきの言葉を心の中でひとりごちていた。 地上のともしび、地上のともしび。 山かげに隠れることはあっても、信じて前を進めば、また地平線の上で輝くともしび。 星になれないのなら……私は地上で輝く。 それも悪くないわね、と。 小梅の頬を思い切り引っ張りつつ、そんな事を考えてみた。

    13 18/01/02(火)21:47:59 No.475975803

    おしまい

    14 18/01/02(火)21:51:09 No.475976764

    いいお話でした「」

    15 18/01/02(火)21:53:33 No.475977493

    そうそう西住流に逃げるという道はないんだよなぁ

    16 18/01/02(火)21:53:52 No.475977598

    凡人同士だからこそお互いに支え合えるエリ梅いい……

    17 18/01/02(火)21:57:10 No.475978517

    そういえばエリカも二年生で隊長じゃん! まほみほに並んだよ!そこだけは

    18 18/01/02(火)22:02:41 No.475980470

    その灯火には常に燃料を補給しないとすぐ燃え尽きちゃうんですけどね 周りが放っておけないやつだから燃料は周りがドカドカ投げ込んでいくんでしょうね… むしろその燃料を燃やしきれずに埋まって燻る方を警戒しないといかんのかもしれん…

    19 18/01/02(火)22:07:13 No.475981958

    しほ自らエリカの鍛練してるし周りはエリカを支えようとしてるしきっと大丈夫…なはず

    20 18/01/02(火)22:07:27 No.475982034

    あいつ

    21 18/01/02(火)22:08:26 No.475982368

    たまにニシズミウムを直接投入する人がいるので 爆発しないよう赤星達には頑張ってもらいたい

    22 18/01/02(火)22:10:11 No.475982990

    >たまにニシズミウムを直接投入する人がいるので しぽりんはさぁ…

    23 18/01/02(火)22:10:43 No.475983148

    戦いなさい逸見さん…みほを倒すのです…

    24 18/01/02(火)22:12:47 No.475983891

    >戦いなさい逸見さん…みほを倒すのです… 頑張れエリカ…お前なら出来る…

    25 18/01/02(火)22:13:29 No.475984226

    >そういえばエリカも二年生で隊長じゃん! >まほみほに並んだよ!そこだけは 既にあの風と肩を並べてるやつ

    26 18/01/02(火)22:13:39 No.475984344

    うおおおエリカは人間火力発電所だ どんどん燃料をくれえええ

    27 18/01/02(火)22:18:05 No.475985906

    >>戦いなさい逸見さん…みほを倒すのです… >頑張れエリカ…お前なら出来る… エリカさん…「次」はもうすぐだよ…

    28 18/01/02(火)22:19:04 No.475986165

    西住家はエリカをどうしたいの…

    29 18/01/02(火)22:20:15 No.475986525

    >西住家はエリカをどうしたいの… そりゃ優勝させたいのさ

    30 18/01/02(火)22:35:14 No.475990780

    でも西住姉妹じゃなくてエリカだからこそ出来る戦い方ってきっとあるよね

    31 18/01/02(火)22:36:15 No.475991155

    怒りのパワー的なのはエリカのが強そう

    32 18/01/02(火)22:37:27 No.475991518

    >西住家はエリカをどうしたいの… 身体と人生を弄んで捨てたようなもんだよね…

    33 18/01/02(火)22:38:31 No.475991822

    捨ててない捨ててない

    34 18/01/02(火)22:39:31 No.475992186

    西住流がただのお家芸ではなく一流であることを証明する為にも西住ではない者が西住流で勝つことが大切なのだ 先人達はそれを成してきた

    35 18/01/02(火)22:41:25 No.475993003

    しぽりんからお姉ちゃんの間は非西住家の隊長のはずだからね