17/12/28(木)23:02:44 2018年... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1514469764788.png 17/12/28(木)23:02:44 No.474811432
2018年が始まって早くも一週間ほど。 年末年始の狂騒は瞬く間に過ぎ去って、街並みは日常を取り戻していく。 「今日の夕飯は何にしようか、マシュ」 カルデア退去後、故郷東京をも3日で去った立香は今、とある北の港町にいた。 正月気分も抜けてないような足取りで、平日の魚市場をぶらりぶらり。 そんな立香の隣、腕を組んで歩く眼鏡の少女はやや不安げな顔を向ける。 マシュの言いたいことは立香には分かる。 3が日の終わりに東京を出てから、何度か言われてきたことだ。 「せっかくご両親と会えたのに、たった3日で…」 立香の帰省にマシュが立ち会ったのは元旦のこと。 遠い外国での職務を成し遂げて恋人を連れ帰った息子を両親は喜んで迎えた。 家族の無事の再会にマシュも暖かいものを感じてやまなかった。 だから立香がまた家を空けると言った時マシュの心情は穏やかじゃなかった。 せっかく戻って来た自分の居場所を、共に居るべき家族の許を離れるべきでは ないと、マシュは立香に告げた。
1 17/12/28(木)23:03:08 No.474811553
立香がまた家を出ると思い立った理由は幾つかある。 例えば元マスターとして、また何らかの騒動に巻き込まれた時、 両親に迷惑をかけたくない…というのはその大きな理由の1つだが、 それ以上に大きな理由を立香は持ってしまっていた。 その理由を両親に話したら、父は大笑いして背中を押してくれた。 『そりゃあ、そうだろうな。お前もいつまでも子供じゃないんだから。 かわいい嫁さんとの水入らずに年寄りは邪魔ってもんだ』と。 つまるところ立香はマシュと二人で暮らしたかったのである。 英雄でもない、魔術師でもない、マスターですらなくなった立香にとって、 今の目標は自分の新しい生活を立てること。 平凡な人間の、愛しい人と静かな営みを築きたい…という平凡な願望。 「これで良かったんだ」 北風に息を白くしながら、立香は優しい瞳をマシュに向けた。 自分の居場所も共に居るべき人もここにいるんだと。 「先輩…」
2 17/12/28(木)23:03:34 No.474811663
マシュは赤くなった顔を俯けた。腕を組む力が僅かに強張った。 なんて可愛くて愛しい。 立香はそのまま抱きしめて口づけの1つでもしたい衝動にかられながらも 公衆の面前であることにかろうじて意識を保ち、再びマシュに問う。 「それで、今日の夕飯は何が食べたい?」「じゃあ…ホッケを」 「好きだねマシュ。カルデアにいた頃はそうでもなかったよね?」 それは当たり前で、マシュのホッケ好きはこの街に来てからだ。 この小さな街に、ふらりと列車から降りた夜、氷点下の空気冷えた身体を 二人くっつけながら入った炉端焼きのお店でホッケを食べてから。 その事を思い出して立香の口元に笑みが浮かぶ。 店主から魚を買い取ると、立香とマシュは自宅のアパートに二人で帰った。 「お魚は私が焼きますから、先輩は休んでいてください」 そう言うとマシュはエプロンを身に着けて台所に立つ。 部屋の暖房を入れつつ、立香はそれに待ったをかけた。 「待ってよマシュ。今日は俺が食事当番のはずだけど…」
3 17/12/28(木)23:03:53 No.474811740
「でも、今朝のゴミ出しは先輩に手伝って貰いましたから。私の当番なのに」 それは確かにと立香は頷くと、やっぱりマシュ一人にやって貰うのは 悪いのでと、夕飯の支度を手伝うことにした。 「そうですか?じゃあお願いしますね、先輩」 メインディッシュはマシュに任せ、ご飯を炊いたり大根をおろしたりする立香。 「ふふ」と、思わず笑みがこぼれる。これじゃあ当番決めた意味無いなと。 マシュもそれには同意しつつも、全然嫌な顔はしなかった。 当番分けしたはずなのに、気付けばご飯の準備も掃除もゴミ出しも二人でしてる。 それが嬉しくて楽しくてたまらないのは立香もマシュも同じだった。 あっという間に楽しい料理の時間が過ぎ去って、ささやかな晩餐が始まる。 ほかほかに焼けたホッケを頬張って、世間話に華を咲かせた。 去年の賑やかな冬とは全然違う、とても静かな新年の始まり。 次にどんな仕事に就くか立香はまだ考えていない。ただ断言できるのは、 彼女と過ごすこと時がある限り、幸せに違いないということだろう。 勿論それはマシュにとっても同じ気持ち。
4 17/12/28(木)23:04:11 No.474811822
「先輩。ご飯食べたら、お風呂に行きませんか」「いいね」 街のはずれには良い温泉がある。 立香もマシュも一度行ってお気に入りになったのだが…。 窓の外を見ると、先ほどまではやんでいた雪がまたぱらぱらと降って来た。 「やっぱりやめる?マシュ」「カルデアの外に比べたらへっちゃらです」 ごもっともです。立香とマシュは食器を片付けると、 コートを着込んで傘を手に再び外へと歩みだした。 二人とも傘を持っているが使われたのは一本だけ。 大きめの男物の黒い傘の下に男女の影が1つになって、 雪化粧の歩道に足跡を刻みながら、彼方へと消えていく。 「先輩」 「マシュ」 もしかすると、次の騒動の始まりはもう近づいてきているのかもしれない。 でもその時が訪れるまでは、若い二人にささやかな休息を。 おしまい。
5 17/12/28(木)23:06:46 No.474812460
マシュの怪文書珍しいな
6 17/12/28(木)23:19:27 No.474816047
年末に優しい気分になれたよ
7 17/12/28(木)23:41:41 No.474822088
いい…
8 17/12/28(木)23:49:31 No.474824379
いつダイス振り出すのかと思ってしまったよ
9 17/12/28(木)23:50:05 No.474824546
色んな人たちその辺に隠れてない?
10 17/12/28(木)23:52:12 No.474825105
そうそうこういうの こういうのでいいんだよ!!!
11 17/12/28(木)23:59:01 No.474826841
まっとうすぎてびっくりした 不穏な要素を疑ってしまう
12 17/12/29(金)00:00:31 No.474827170
ホッケのあたりで不穏を感じたけど素直に終わってよかった