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17/12/19(火)23:48:09 No.472936553

SS 年度が変わって新入生が入ってきたあたりのあんこうチームのお話を書いたよ

1 17/12/19(火)23:48:25 No.472936628

「やっぱり、インパクトって大切だと思うの。恋愛だって第一印象は大事だし!」 大洗戦車道、二年目の春。 引き続き戦車道隊長として今日もがんばる西住みほは、すっかり戦車道ミーティングルームと化しつつある生徒会室で沙織の言葉に曖昧に微笑んでいた。 「……ですが、あまり奇をてらい過ぎるのもどうかと」 「妙な事をやりすぎて引かれたらどうする」 すかさず華と麻子のツッコミが入ると、自身の言葉に自慢げだった沙織はへにゃりと勢いをなくす。 優花里はまあまあ、とフォローするように思案顔で言った。 「難しいですねえ。新履修生の皆さんに手っ取り早く戦車を好きになってもらうためには……」 やはりここは不肖・私の戦車講座三時間コースで! と続けざまに提案するもすぐに華に首を振られしょぼんと座る。 そんなやりとりに苦笑しながら、みほは改めて今回の議題についてゆっくりと考えを深め始めていた。

2 17/12/19(火)23:48:52 No.472936734

長く熱い夏を経て秋、冬そして春。たくさんの出会いと少しの別れを経て、大洗女子学園は戦車道を続ける道を選んだ。 全国優勝と大学選抜戦を経て廃校の危機は免れたのだが、その過程で育ったのは何も愛校心だけではない。 うさぎさんもあひるさんも、その他戦車に大して興味のなかった他の連中も、 どいつもこいつも強敵との試合の数々を経て、ひとりひとりが気づけば立派な戦車乙女へと成長していたのである。 戦車道継続の意思を全隊員から確認した生徒会は、さっそく次年度新入生に向けて戦車道のPRを実施。 もちろん遅刻免除などの法外な特典は付けられなかったが、それでも全国優勝のネームバリューは決して安くなく多くの新入生が戦車道を履修してくれた。 無論、履修生には経験者もいる。中には黒森峰から進路変更してまで来てくれた人もいる。 しかし未経験者ながら戦車道に興味を持ち、思い切って履修した生徒も多い。

3 17/12/19(火)23:49:20 No.472936843

「……やっぱりさ、みんなに楽しんでほしいよね」 「もちろんです! 戦車の魅力、一人でも多くの人に伝えたいです!」 「砲撃を撃つ気持ちよさ、分かる人が増えてくれたら嬉しいです」 「低血圧改善に効果があることはもっと知られてもいいはずだ」 優花里も、華も、麻子も、思いは一緒だった。 そしてみほもそれは変わらない。沙織の言葉に力強くこくりと頷いた。 「うん、私もそう思う。……私、初めての人も、経験者も、みんなが戦車を好きになれるような戦車道がやりたい!」 「西住殿ぉ……! 素晴らしいお考えですぅ!」 「とはいえ、その道が見つからずに悩んでいるわけだが」 「麻子! そういうこと言わないの!」 盛り上がりかけた気持ちは、アイデア不足という現実に再び萎む。 何をやればいいか、何をすれば、新入生に戦車の良さを伝えられるか。

4 17/12/19(火)23:49:47 No.472936957

いざ考えてみるとその問題は難しく、再び生徒会室を困ったような唸り声が支配した。 「……ねえ、去年はどうだったっけ」 「えーっと、生徒会の皆さんが戦車道履修生に特典を付けて、強引に西住殿を勧誘して…」 「それから……皆さんで戦車を探して、戦車を掃除して、蝶野さんの監督のもとで試合を行ったんですよね」 「その後は聖グロリアーナと試合ですね。……そう! 皆さんが戦車を改造してしまって!」 優花里がどこか興奮したように声を荒げる。 大洗女子初めての対外試合。 いよいよ戦う戦車が見られると喜び勇んで会場へ向かった優花里を出迎えたのは、ピンクのM3に金ぴかの38t。 その他あらゆる迷彩効果を投げ捨てたド派手なペイント戦車の数々だったのである。 戦車は風景に溶け込み、潜んで動くもの。 当たり前の常識を全く鑑みない非常識的な戦車を優花里は「なんだかよくわからないものにされてしまった」と嘆いた。 そして、彼女の隣でその戦車を見ていたみほは同じような事を思いつつ、しかし一方で違う感情も抱いていたのである。

5 17/12/19(火)23:50:06 No.472937027

「あの時の皆さんはひど過ぎました! 生徒会の皆さんまであんなキラキラにして!」 「まあまあ、私たちも芳香剤とかクッションとか置いてましたし…」 「……ごめんゆかりん。今だから言うけど私、あれ見た時Ⅳ号も後で可愛く塗ろーって考えてた」 「武部殿ぉ!?」 ほぼ一年越しの告白をされ衝撃を受ける優花里。 しかしみほは考えをまとめたようにゆっくりと目を開け、優花里にさらなる衝撃を与える一言を放った。

6 17/12/19(火)23:50:33 No.472937135

「……今年もやりませんか?」 「え」 「戦車の飾り付け。今年も、やりましょう」 「西住隊長」の声で言い放つみほに優花里はその真剣さを感じ取り。 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」 驚きと失望と信じられない気持がないまぜになった表情で、学園艦全体に届くような大きな声で叫ぶのだった。

7 17/12/19(火)23:50:57 No.472937243

◆ それから数日。 高く上った太陽の下、大洗女子学園所有の戦車たちはもともと個性的な顔ぶれをさらに個性的にされつつあった。 昨年に引き続き慣れ親しんだ乗員に乗られているもの、 乗員が少し変わり、新しい風を吹き込まれたもの。 前年度の乗組員から離れ、全く新しいチームの戦車として生まれ変わったもの。 立場はいろいろあれど、全ての戦車がそれぞれの乗員の超個人的な趣味によりペインティング、あるいは飾り付けを施されていた。 そして、Ⅳ号も例外ではない。 みほは未だ少し不満げな顔の優花里からペンキを受け取り、車体に大きなボコられグマの絵を描いている。 その向こう側、通信手席周りの装甲に筆を走らせていた沙織が顔を上げる。 少女マンガの背景のような緻密な花の絵を描き込んでいたが、眼鏡を外し一息つくと辺りを見回してにっこりと笑った。

8 17/12/19(火)23:51:16 No.472937332

「やったねみぽりん! みんなすっごい楽しそうだよ!」 「うん! 経験者の人に受け入れてもらえるかなって思ったけど、うまくいったみたい。よかったぁ……」 目元の青タンをぺたぺた塗りながら──みほは美術が壊滅的だが、なぜだかボコられグマだけは上手に書くことが出来た──みほは胸を撫でおろす。 この話を履修生の皆にした時は、多少の困惑の声もあった。 しかしあんこうチームが率先して塗ればそれに昨年度からの履修生が続き、次に戦車道未経験の新入生たちが。 そうこうしているうちに気づけば誰もが楽しげに戦車の飾り付けを始めていた。 「……うぅ。せっかくの美しい迷彩模様がぁ……」 ただ一人、優花里だけは未だにめそめそしている。 しかし泣きながらもⅣ号のシュルツェンに小林源文風のあんこうを描いており、その手の動きは滑らかであった。

9 17/12/19(火)23:51:33 No.472937409

「でも、これで本当に戦車を好きになってもらえるでしょうか?」 「……分からない。だけど」 キューポラの周りに花を添えていた華が少し不安げに声をかける。 みほは少しだけ思案し、それから賑々しい営倉を見渡す。 わいわいと楽しげに飾る後輩、昔を懐かしみながら飾る先輩。 戸惑いながらゆっくりと筆を走らせる後輩に、それを導く先輩。 これだけでみんなに戦車を好きになってもらえるなんて──そんな事は言えない。 だけど、少なくとも、みほは。

10 17/12/19(火)23:51:53 No.472937491

「私……まだいろんな事、やってみたいな。  飾り付けの他にも、戦車でみんなが楽しくなれるような事、探していきたい。  試合のために頑張るだけじゃなくて、もっと……」 どこか遠くを見ながらみほは呟く。 しかしすぐに我に返ると、隊長として相応しくない言葉である事に気づき慌てて手を振って取り消そうとした。 「あ、ごめんなさい。これは私のわがままだよね」 「……いえ、良いのではないでしょうか。みほさんらしくて、とても素敵だと思います」 「戦車道としては邪道かもしれんがな。……だが、もともと王道の戦いを目指しているわけでもあるまい」 「戦車でみんなが楽しくなれる……きっと、それが西住殿の戦車道なんですよ!」 華の言葉に呼応するように、戦車の中に布団を持ち込もうと悪戦苦闘してた麻子がひょっこりと顔を出す。 優花里がはにかんで応えると、みほは照れたように笑った。

11 17/12/19(火)23:52:18 No.472937583

進み始めたこの道が正解かなんて分からない。 むしろ、そもそもの試合に勝つという点からどんどん逸れていってしまうような不安もないではない。 それでも、試してみたかったのだ。 去年の今に大洗のみんなが見せてくれたような、常識外れの、しかし決して嫌な気持ちにはならない衝撃。 戦車に興味のある人もない人も、笑顔になれるような戦車道。 手探りでも、みほはその道を探してみたかった。 「じゃあさ! 戦車使ってダンス踊ったりするのどうかな! ネットで全国の人から見てもらって、そして男子からファンレターもらうの!」 「それは武部流モテ道でやってくれ」 こういう時に強い沙織が新たな案を出すも、麻子にばっさりと切り捨てられる。 その様子に思わず笑みをこぼしながらみほは天蓋から差し込む白昼の光に目を細める。 大洗女子学園、二年目の戦車道。新しい夏が今年も始まろうとしていた。

12 17/12/19(火)23:52:45 No.472937712

いい…

13 17/12/19(火)23:55:56 No.472938493

おわり!最終章は三年生の卒業にどんな形で決着つけるのかが楽しみ! てきすと! su2154579.txt

14 17/12/20(水)00:12:59 No.472942138

大洗女子戦車道チームの新たなる船出 隊長:西住みほ! 副隊長:澤梓! 隊長補佐:河嶋桃! さあ新年度のスタートです

15 17/12/20(水)00:14:29 No.472942412

>戦車使ってダンス踊ったりするのどうかな! ネットで全国の人から見てもらって、そして男子からファンレターもらうの (用意されたモップやブラシ)

16 17/12/20(水)00:17:11 No.472942992

>しかし泣きながらもⅣ号のシュルツェンに小林源文風のあんこうを描いており、その手の動きは滑らかであった そういや今日のエンドカードはゲンブンじゃなかった?

17 17/12/20(水)00:18:12 No.472943204

>さあ新年度のスタートです ちょっと待て!

18 17/12/20(水)00:22:56 No.472944118

P虎の飾り付けをするツチヤと謎の覆面新入生レオポン1号・2号・V3

19 17/12/20(水)00:24:49 No.472944467

>P虎の飾り付けをするツチヤと謎の覆面新入生レオポン1号・2号・V3 本当かー?本当に新入生かー?

20 17/12/20(水)00:25:23 No.472944573

澤ちゃん相手に早口でまくし立てる銀髪の新入生が…

21 17/12/20(水)00:28:12 No.472945117

>>P虎の飾り付けをするツチヤと謎の覆面新入生レオポン1号・2号・V3 >本当かー?本当に新入生かー? やだなー一向に新入生ですよー おーいツチヤぁレンチ取ってー

22 17/12/20(水)00:33:12 No.472945969

>戦車使ってダンス踊ったりするのどうかな! これロシアがマジでやってるんだよな…

23 17/12/20(水)00:34:24 No.472946184

なるほど そしてこの光景はPS4で再現される…ということだね

24 17/12/20(水)00:42:39 No.472947593

>中には黒森峰から進路変更してまで来てくれた人もいる 副隊長の世話はまかせて下さい聞いているんですか澤さん澤先輩澤副隊長そりゃあ確かにあの観覧車には驚きましたけどまだまだ初心者なんですからねやっぱりある程度の経験値をつんでいただかないといけないんですよ早速今までの全試合の戦譜を纏めた資料を作ってありますからこれを見て少しは復習してくださいちょっと聞いているんですか澤先輩澤さんしゃわわわわ

25 17/12/20(水)00:43:55 No.472947808

ロール元の国を考えるとサンダースも砲塔とかに顔描いてそうな気がする

26 17/12/20(水)00:47:44 No.472948490

こころちゃん ステイ