17/11/30(木)01:59:46 SS「失... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1511974786860.jpg 17/11/30(木)01:59:46 No.468852553
SS「失われた夕日」
1 17/11/30(木)02:00:06 No.468852591
「うーん……」 アンツィオ高校にあるとある自習室にて、ペパロニは机の上に乗った問題集に向かって、鼻に鉛筆を乗せながら呻いていた。 窓の外は日が落ち始めており、西日が自習室に射し込んでいる。 「ほらーペパロニ、それ解かないと帰れないぞー早くしろ」 うんうんと唸るペパロニにそう言うのはアンチョビだ。 アンチョビはペパロニの向かいに座って、机に肘をついて顔を支えている。 「そんなこと言ったって姐さん! これ難しいっすよ!」 「それをなんとかしたいって言ったのはお前だろー。お前、前回のテストの結果が悪かったからこうして私に助けを求めたんじゃないか」 「それはそうっすけど……」 ペパロニは一度アンチョビのほうを向いた後、再び問題集と向き合う。
2 17/11/30(木)02:00:24 No.468852632
アンチョビの言った通り、ペパロニはアンチョビに勉強を教えて貰っていた。 ペパロニが言うには、以前の小テストの結果が悪く、それを挽回するために勉強を教えてもらいたいと言うことなのだ。 アンチョビはそれを快く引き受けた。 そして今、こうしてアンチョビはペパロニに勉強を教えているのだ。 「さっき教えた通りにやればできるはずだろー。私が教えたことが無駄じゃなかったっていうことを証明してくれー」 「そう言われてもー!」 ペパロニは大きくのけぞる。 その勢いで、ペパロニの鼻から鉛筆が転げ落ちる。 鉛筆は甲高い音を立てながら床に転がっていった。 「あーあー鉛筆落ちたぞーペパロニ」 「分かってますってー」 ペパロニは一度席から立ち上がり鉛筆を拾い上げる。 そして、そのまま鉛筆を手に持ち、席について問題集とノートに向かい合った。 「えっとー……さっきの公式がこうだからー……」
3 17/11/30(木)02:00:59 No.468852701
そうやってペパロニが問題に取り組み始めてから、しばらく時間が経った。 アンチョビは、問題集と奮闘するペパロニをただ見守った。 アンチョビ自身が答えを導いてもよいが、それではペパロニのためにならないと思ったからだ。 ペパロニが自分の力で問題を解くことにこそ意義がある、とアンチョビは思っていた。 だからこそ、アンチョビはただ静かにペパロニの頑張りを見届けた。 しかし、ただ黙ってみているというのもなかなか大変なものである。 時期は夏休みが終わったばかりの二学期の始め。 まだまだ残暑が厳しい季節であり、二人きりとはいえ狭い自習室に篭っていると、どうしても暑さを感じてしまう。 さらに、アンツィオは貧乏な高校であるため冷暖房の設備もない。よって、余計に汗をかくことになるのだ。 「ふぅー、それにしても暑いなー」 アンチョビは手で顔を仰ぎながら言う。
4 17/11/30(木)02:01:22 No.468852755
そして、ゆっくりと立ち上がり窓を開けた。 「うわっ……」 しかし、窓の外から入ってくるのはもわっとした熱気ばかりで、涼しい風は入ってこない。 アンチョビは眉をひそめ、肩からかけていたマントを脱ぎ、椅子にかけた。 「お前よく平気だなー」 「え? ああ私は暑いの結構平気っすからねー」 「そうなのか。……っと」 と、そこでアンチョビは少し体をもじもじさせた。 「んー……突然だがトイレに行きたくなってきたぞ」 「そうなんすか? 我慢はよくないっすよ?」 「そうだよなぁ。じゃあちょっと行ってくる」 そこで、アンチョビはそのまま自習室から出ていきトイレへと向かった。 トイレは自習室から少し距離のある場所にある。 アンチョビは少し駆け足になりながらトイレを目指し、そしてトイレへと入っていった。 「……ふぅ」
5 17/11/30(木)02:01:38 No.468852781
そして、ゆっくりとトイレで用を足す。 「……あいつも結構あれで真面目なんだけど、あとは学力さえ追いつけばなー」 そんなことを言いつつもトイレの水を流し、トイレから出てハンカチを口に加えて手を洗うアンチョビ。 しっかりと手を洗うと、そのハンカチで手を拭き、ゆっくりとした足取りで自習室へと戻っていく。 そして自習室の前へと行くと、少しばかり自習室の扉が開いているのが見えた。 「ん? 扉をちゃんと閉め忘れたか。……せっかくだ、一応サボってないかこっそり伺っていみるか。まあペパロニのことだからそんなことないと思うけど」 そう言って、アンチョビは僅かに出来た隙間から部屋の中を伺う。 すると、そこには確かにペパロニの姿があった。 だが、ペパロニは席から立ち上がっており、何かをしていた。 「ん? 何やってるんだあいつ……?」 アンチョビはペパロニが何をしているのかと思い、静かにペパロニの様子を伺う。 すると、アンチョビは驚くべきものを見た。
6 17/11/30(木)02:02:50 No.468852919
「はぁ……はぁ……姐さん……」 なんと、ペパロニはアンチョビの脱いだマントを持って、その臭いを嗅いでいたのだ。 「えっ……? あいつ、何やって……」 アンチョビは言葉を失う。 一方ペパロニは、一心不乱にアンチョビのマントの臭いを嗅いでいた。 「すんっ……すんっ……はぁ……はぁ……姐さん……姐さん……」 顔は紅潮しており、汗も多くかいている。 さきほどまで残暑の暑さの中でも涼しげにしていたはずなのに、今はとても暑そうである。 アンチョビはどうしていいか分からず、その光景を見続けるしかなかった。 しかし、そこでアンチョビはミスをした。 思わず扉に力が入ってしまい、扉の音を立てて開けてしまったのだ。 「っ!?」 ペパロニが扉の方を向く。 アンチョビと、ペパロニの目が合う。
7 17/11/30(木)02:03:13 No.468852965
「ね、姐さん……」 「ペ、ペパロニ……」 お互いに二の句が継げず、気まずい沈黙が流れる。 とりあえずアンチョビは、自習室の中に入り、ペパロニに近づいた。 「えっと……なあ、ペパロニ、さっきのって……」 そう言って、アンチョビは何気なくペパロニに手を伸ばした。 「っ!」 すると、ペパロニは突然その腕を掴み、そのままアンチョビを自習室の机の上に押し倒した。 「なっ!? ペパロニ!?」 「姐さん……!」 ペパロニの顔は迫真の表情だった。 目を見開き、呼吸も荒い。 アンチョビは、今までそんなペパロニを見たことがなかった。 「ど、どうしたんだペパロニ……! なあ、離してくれ……!」
8 17/11/30(木)02:03:34 No.468853004
「……嫌っす」 「……どうしてだ!」 「……だって、下手したら姐さん逃げちゃうじゃないっすか! 私は、そんなの嫌っす!」 ペパロニは声を大にして言う。 そして、ペパロニはそのままの声で告白した。 「私、姐さんが好きっす!」 「……え?」 アンチョビはその言葉の意味が最初理解できなかった。 ――好き? 好きって、ライクとかじゃなく、ラブっていう意味の、そういう? ま、まさか……。 アンチョビは頭の中で必死に否定しようとするが、ペパロニはさらに言う。 「姐さんのことが好きなんっす! 恋人になりたいって、体と体を重ね合わせたいって、そう思っているんす! 初めて会ったその日から、ずっと……!」
9 17/11/30(木)02:03:52 No.468853040
ペパロニのアンチョビの腕を掴む手に力が入る。 アンチョビを絶対に逃さないという意思が感じられた。 「っつ……!」 「私はずっと我慢してきました! 姐さんの隣にいられればいい、それだけでいいって! でも! 姐さんと一緒に戦う時間はどんどんと減っていって、この前の大会も終わって! それで私、日に日に不安になっていって! もうどうしていいか分かんなくて! それで、少しでも一緒にいようと思ってこんな勉強教えてもらいたいなんてまで言って! 姐さん優しいから付き合ってくれて! それで! それで!」 ペパロニの感情が次々と爆発していった。 アンチョビは、とりあえずペパロニを落ち着かせようとする。 「なあ、ペパロニ落ち着け……冷静になろう、な?」 「……あんなとこ見られて、冷静でいろっていうのが無理な話っす」 「まあ、それはそうだろうが……」
10 17/11/30(木)02:04:20 No.468853095
アンチョビはどうすればいいか分からず困惑する。 すると、ペパロニが言った。 「ねえ、姐さん。姐さんはどう思ってるんすか?」 「え?」 「私は言いました。姐さんが好きって。姐さんと一緒になりたいって。それで、その私の気持ちを聞いて、姐さんはどう思ったんすか?」 「私は……」 アンチョビはしばらく言いよどむ。 しばらくペパロニから目をそむける。 しかし、やがてペパロニの目をしっかりと見据えて、言った。 「……私は、ペパロニのことそういう風には、見れない」 「……っ!」 「私はチームメイトとしての、後輩としてのお前は好きだ。それは間違いない。でもその、恋愛対象としては見れないっていうか、女同士でそういうの、否定するわけじゃないけど、自分に置き換えて考えるのは難しいって言うか……その、すまん」
11 17/11/30(木)02:04:40 No.468853146
「…………」 アンチョビの言葉に、ペパロニは黙る。 気まずい沈黙が流れる。 すると、やがてペパロニから一つの雫がアンチョビに向かってこぼれ落ちた。 それは、ペパロニの涙だった。 「……そうっすか。私の気持ちは、姐さんには届かないんすね……」 ペパロニはしとりしとりと涙をこぼし続ける。 アンチョビは依然押さえつけられたまま、どうすればいいか分からず視線を泳がせる。 すると、急にペパロニのアンチョビを掴む力が強くなった。 「痛っ……!」 アンチョビは思わず声を上げる。 ペパロニはアンチョビを見る。その目は、とても暗く、ペパロニとは思えないような視線であった。 「姐さんが私のものにならないって言うのなら……」 そう言うと、ペパロニは急にアンチョビの唇に自分の唇を重ねた。 「っー!?」
12 17/11/30(木)02:05:05 No.468853196
「ん……」 ペパロニはアンチョビの口の中に自身の舌を入れる。 アンチョビは混乱し、必死で体を動かす。 ペパロニは、そんなアンチョビを押さえつけつつも、片手でアンチョビの両腕をまとめてつかみ、空いたもう片方の手を、アンチョビの股の間へと向かわせた。 ――まずいまずいそれだけはまずい! アンチョビはパニックになりかける。 そして、咄嗟にアンチョビは口の中に入ってきたペパロニの舌を噛んだ。 「っ!?」 ペパロニは思わず飛び退く。 その隙をついて、アンチョビは起き上がりペパロニを自習室の本棚のある壁へと両手で押し飛ばした。 「痛っ……!」 そして、その隙をついてアンチョビは自習室から逃げ出した。 自習室には、壁から落ちてきた本を頭から被ったペパロニが、ただ黙って床に座っていた……。
13 17/11/30(木)02:05:30 No.468853239
◇◆◇◆◇ 翌日から、ペパロニは学校に来なくなった。 アンチョビは休むかどうか悩みつつも学校に来て聞いてみると、ペパロニは学校を休んだと聞いた。 その日からずっと、ペパロニは学校を休み続けた。 ペパロニの急な不登校にカルパッチョを始め誰もが動揺し、様々な憶測をした。 アンチョビは本当にあったことなど言えるはずもなく、ただその流れに関し勝手な憶測はやめろとしか言うことしかできなかった。 それから何ヶ月も経った。 いい加減学校もしびれを切らしているのではと思ったアンチョビは、勇気を出して学校にペパロニのことを聞いてみた。 すると、学校側からの返答はこうだった。 ペパロニは転校した、と。その転校先までは教えてもらえなかった。
14 17/11/30(木)02:05:57 No.468853301
アンチョビは驚いた。 そして、自分の拒絶がそこまでペパロニを追い詰めてしまっていたのかということにも気づき、その報告を受けた翌日、アンチョビは学校を休んだ。 アンチョビはその後も必死にアンツィオのドゥーチェとしての務めを果たすために努力したが、どうしても以前のような元気さはそこになかった。 誰もがペパロニがいなくなったことがショックなのだと思った。 しかし違う。 アンチョビは、自らの行いによって一人の少女を大きく傷つけたことを後悔しているのだ。 アンチョビは泣いた。夜一人になるたびに泣き、ペパロニに謝罪の言葉を言い続けた。 しかし、それは自分を慰めるだけの無駄な行為だと、自分でもアンチョビは分かっていた。 アンチョビは、眩い夕日を見るたび思い出す。 あの太陽のような笑顔を永遠に失ってしまった、夕日の日のことを。 おわり
15 17/11/30(木)02:08:25 No.468853579
読んでいただきありがとうございました su2126700.txt 過去作もよかったら ・シリーズもの su2126701.txt ・短篇集 su2126702.txt
16 17/11/30(木)02:09:31 No.468853709
もう書き上げたの!?
17 17/11/30(木)02:10:45 No.468853850
き、きっとパッチョが助けてくれるなずなんだ…
18 17/11/30(木)02:11:11 No.468853904
バッドエンドじゃねーか・・・
19 17/11/30(木)02:11:18 [す] No.468853915
というわけでスレで貰ったお題「自習室、先輩後輩」で書いてみました >もう書き上げたの!? 一時間で書くって言ったからね! 約束は守るよ!
20 17/11/30(木)02:12:18 No.468854039
太陽が沈んじまった 夜が来た真っ暗な夜
21 17/11/30(木)02:14:17 No.468854260
寝ろよぉ…健康削ってまでアンタは!
22 17/11/30(木)02:17:11 No.468854560
その頃カレースナック・ゴンに新しいバイトが入っているんだ
23 17/11/30(木)02:20:25 No.468854880
救いが全然ねぇ…
24 17/11/30(木)02:21:33 No.468854983
ダーク「」明日は仕事だよね・・・? 大丈夫なのかい
25 17/11/30(木)02:26:01 [す] No.468855389
>ダーク「」明日は仕事だよね・・・? >大丈夫なのかい 明日は休みだから平気だよ! あと最近生活リズムグズグズなのでここらで一回夜まで起きて夜ぐっすり寝ようと思ってるから……
26 17/11/30(木)02:26:56 No.468855472
黒の祭祀書の厚みが増えてるじゃんか
27 17/11/30(木)02:30:45 No.468855831
>明日は休みだから平気だよ! それならいいけど心配よ…今俺も寝たくても寝れない体調だからわかる てかスレ落ちまでいるのか?
28 17/11/30(木)02:31:55 [す] No.468855921
>てかスレ落ちまでいるのか? 一度立てたスレは責任もってクンリしないといけないからね
29 17/11/30(木)02:32:46 No.468855991
即興でなんかやってよ「」
30 17/11/30(木)02:33:23 No.468856036
たまたま見かけてシリーズものってやつ途中まで読んでるけど面白いね 寝落ちしちゃうかもしれないから先に書いとく
31 17/11/30(木)02:35:23 [す] No.468856218
>即興でなんかやってよ「」 じゃあなんかお題頂戴
32 17/11/30(木)02:37:40 No.468856405
そか…じゃあ落ちるまで俺も過去作読みながら付き合うよ さっきまで合同の「失血のアムネシア」読んでたし
33 17/11/30(木)02:50:04 No.468857452
図書室 エリカ
34 17/11/30(木)02:50:23 No.468857480
美帆りんシリーズを本にまとめると聞いたけど短編集も機会あったらまとめて欲しいね
35 17/11/30(木)02:51:36 No.468857588
カレー、ハンバーグ
36 17/11/30(木)02:52:04 No.468857638
>そか…じゃあ落ちるまで俺も過去作読みながら付き合うよ >さっきまで合同の「失血のアムネシア」読んでたし ありがたい……すまないね >図書室 エリカ 了解しもうした >美帆りんシリーズを本にまとめると聞いたけど短編集も機会あったらまとめて欲しいね そそられるけど短篇集だけで790KB(これ含めると800KB)あるからとんでもない厚さになりそうで……
37 17/11/30(木)02:52:24 [す] No.468857656
>カレー、ハンバーグ 了解しもうした
38 17/11/30(木)02:57:11 No.468858038
お題「図書室、エリカ」「カレー、ハンバーグ」 逸見エリカは学園艦にある図書館で調べ物をしていた。 場所は、料理の本がある場所。 そこでエリカは、何冊かの本を手に取った。それは、どれもカレーライスにまつわる本だった。 「さて……」 エリカはそれを開くと、ノートに細かく書き写す。彼女は今、図書館にカレーのことについて勉強しにやってきていたのだ。
39 17/11/30(木)02:58:31 No.468858134
この前のノンカチュから読み返してたら早速泣けてきた まだ癒えてなかったよ…
40 17/11/30(木)03:01:38 No.468858393
「案外、カレーって奥が深いのね……」 エリカは本と向き合いながら言う。 彼女がこうしてカレーのことについて勉強しているのにはわけがあった。 それは、彼女がとある人物にハンバーグカレーを振る舞いたいと思っていたからだ。 その人物とは―― 「さあ、まってないさい。みほ、隊長。とびっきりのハンバーグカレーを食べさせてあげるんだから」 そう、西住まほと西住みほ、西住姉妹である。 エリカは西住姉妹とずっと前からとある約束をしていた。 それは、大会が終わったら三人で一緒にご飯を食べようという約束だ。 大会は残念ながら準優勝に終わってしまった。しかし、それはそれとして、エリカはみほを励ましたいと、まほを支えたいと思って、自分が料理を用意すると言ったのだ。
41 17/11/30(木)03:07:49 No.468858830
「カレーは慣れてないから、ちゃんとしたものを作らないと……隊長はカレー大好きだから、下手なもの出せないわ」 エリカは自分の好きなものとまほの好きなものを合わせたはンバーグカレーをだそうと思っていた。 そして、ハンバーグは作り慣れているが、カレーは美味しいものを作れる自信――カレー好きのまほをうならせるようなレベルのもの――がなかったため、こうしてわざわざ図書館に来てカレーのことを調べに来たのだ。 「なるほど、香辛料にここまでの種類が……でも、これを学園艦で今から揃えるのは大変そうねぇ……」 エリカは色々と思い悩みながらも、ノートにメモを取っていく。 その顔は、とても楽しそうであった。 そしてあっという間に時間は流れ、約束の日となる。 エリカは自室でまほとみほを迎え入れるための準備をしていた。 「ふんふーん」 エリカは鼻歌を歌いながらカレーを混ぜる。 ――ああ隊長とみほ、早くコないかしら。
42 17/11/30(木)03:13:07 No.468859178
そんなことを思いながらエリカは手を動かす。 準備は万端だった。 ハンバーグはすでに作っているし、カレーもすっかり出来上がっている。 あとはやって来たまほとみほにハンバーグカレーをお出しするだけだ。 ――みほは傷ついているだろうし、隊長も心労が重なっているに違いない。こういうときにこそ、私が二人を支えないと。 エリカはそんなことを思いながら、カレーを掬い白米とハンバーグが盛られた皿にかけていく。 そうして、エリカのハンバーグカレーが完成した。 「よしっ、出来た!」 エリカは笑みを浮かべながら三つの皿を見る。 そこには均等に盛り付けられたハンバーグカレーがあった。 そして、更にエリカはそれをテーブルに運ぶ。そのとき、とあるものをテーブルに持ってきた。 それは、マカロンの入った袋だった。 マカロンはみほの好物だ。エリカは、ちゃんとみほの好物も用意していた。
43 17/11/30(木)03:16:03 No.468859358
「あとは二人が来るのを待つだけ……」 と、そのときだった。 ピンポーンと、インターホンがエリカの部屋に鳴り響いた。 「はーい!」 エリカは笑顔で玄関に向かう。 ――きっと二人だ! そう考えると、エリカははやく会いたくなって急いだ。 扉をエリカは開ける。 「やあ、エリカ」 すると、そこには予想通り、まほがいた。しかし、まほだけだった。みほはいなかった。 ――別々に来るのかしら? エリカはそんなことを思いながらも、まほを家に上げる。 「いらっしゃいませ、隊長!」 そして、まほを一足早く食事の置かれたテーブルに案内した。
44 17/11/30(木)03:19:01 No.468859542
「ん……?」 そこでまほが、不思議そうな目でテーブルの上を見た。そして、言った。 「なあ、エリカ。どうして料理が三人分用意されているんだ?」 まほがとても不思議そうな顔で聞くので、エリカは笑いながら答えた。 「やだなあ隊長、これはみほの分にきまっているじゃないですか」 その返答を聞いた瞬間、まほは急に青ざめた。 「エリカ……」 「それにしてもみほ、どうしたんですか? 別々で来るだなんて珍しいですね。何か用事でも?」 「……分からないのか? エリカ?」 「え? なんのことです?」 まほが信じられないものを見るような目でエリカを見る。 「いいかエリカ、みほは……みほは……」 そして、言った。 「みほは、転校したじゃないか……!」
45 17/11/30(木)03:24:27 No.468859870
「……は?」 エリカはまほが何を言っているか分からなかった。 しかし、まほは続ける。 「いいかエリカ、みほは決勝戦の責任を取って転校した。それをお前はあんなに泣きながら引き止めたじゃないか! それなのに、エリカ、お前……」 「そ、そんな……みほが転校……? そんなバカな……」 エリカは引きつった笑みでまほを見る。 ――ありえない。そんなはずはない。 必死に否定しようとする。だが、エリカの脳内でそのとき、ザザッとノイズが走った。 「うっ……!」 痛みを感じ、エリカは頭を抑える。そして、エリカは思い出した。
46 17/11/30(木)03:25:00 No.468859905
『エリカさん……私、もうこの学校にはいられない』 『そんな……どうして……!? 決勝のことなら後から見返せばいいのよ! あなたが出ていく必要なんて……!』 『ううん、エリカさんが許してくれても他のみんなが……お母さんが、許してくれない。後援会の人が許してくれない。誰かが責任を取らないと駄目なんだ……』 『そんな……嫌……いかないで……みほ……』 『だから……さようなら、エリカさん』 『嫌っ! みほ! いかないで! いかないでえええええええええ!』
47 17/11/30(木)03:28:39 No.468860105
「あ……ああ……」 すべてを思い出したエリカは、その場に蒼白として立ち尽くしていた。 そして、力が抜けたかのようにゆっくりと膝から崩れ落ちる。 「エリカっ!」 それをまほが支える。 エリカはまほを見る。その瞳からは、涙が流れていた。 「……隊長……私、みほのことが好きだったんです」 「……そうか」 「それで、みほとずっと一緒にいようと思ってた。彼女の力になろうと思ってた。なのに、みほはいなくなってしまった。そのことが私、信じられなくて……信じたくなくて……それで……」 「もういい、もういいんだエリカ……!」 まほはエリカをぎゅっと抱きしめる。 まほの体温は、エリカにとってとても暖かかった。 「隊長……」 「いいかエリカ、もうみほのことは忘れるんだ。覚えているだけ、辛いだけだ……」
48 17/11/30(木)03:32:55 No.468860351
「そんな……」 「私も辛い。でも、私は黒森峰の隊長だ。逃げずに戦っていかなければならない。だから私は、みほのことを考えないようにした。私一人で、戦っていくことにした。それが、西住流たる私にできることだからだ」 「隊長……隊長も、苦しんでいたんですね……」 エリカはまほを抱き返す。まほの背中は、わずかに震えていた。そこに、まほの苦しみがあるように、エリカは思えた。 「分かりました隊長……私も、みほとは決別します。みほなんて、嫌いだと思い込むことにします。そうしないと、私、辛くてどうにかなってしまいそうだから……」 「ああ……私も、一緒に頑張るよ、エリカ」 「隊長……私達、ずっと一緒ですよね? 隊長はいなくなったりしませんよね?」 エリカの問いかけに、まほはエリカの顔を見て、笑顔で答えた。 「ああ、当然だ。私達は、ずっと一緒だ」 「……隊長!」 エリカは再びまほを抱きしめた。まほもエリカを抱き返した。 二人は、ハンバーグカレーが冷めるまでずっとお互い抱きしめあっていた……。
49 17/11/30(木)03:36:28 No.468860531
それから数日後。 エリカは再び図書館に来ていた。 今回の調べ物は、どれも戦車道についての調べ物だ。 エリカはまほから、みほの後任の副隊長に任命された。 そして、その役目を果たすための勉強として、今こうして図書館で資料を探しに来たのだ。 「さて、いい資料があればいいんだけど……」 エリカは冷静な口調で本を開く。 そして、本を見ながら言った。 「私は黒森峰の副隊長……無様にも黒森峰に敗北を導いた前の副隊長とは違う……私が、隊長を勝利に導くのよ……」 その目はとても鋭く、冷たかった。 エリカは心を殺した。 そして、かつての恋心を完全に捨て去った。 新たに自分を認めてくれた人に、すべてを捧げるために。 おわり
50 17/11/30(木)03:37:28 [す] No.468860591
とりあえず即興でこんなの書いてみた あと図書室じゃなくて図書館にしちゃったけど許してくれるかな許してくれるねありがとうグッドトリップ
51 17/11/30(木)03:38:35 No.468860647
うわわわわわ! 赤星何とかしてくれ!
52 17/11/30(木)03:52:23 No.468861256
鼻水出た… マカロンとか明るい鼻歌とか明るい舞台設定がつらすぎる そしていつもの事ながら崩壊した後の血を吐くような台詞でトドメさされる
53 17/11/30(木)03:54:44 No.468861344
これで抽選会でみぽりん見たら今度こそ完全に壊れるんじゃないすかね?
54 17/11/30(木)03:59:13 No.468861549
とりあえずtxtにまとめたのでよかったらどうぞ su2126749.txt 即興はいつもそうなんだけどタイトル考えるのが一番苦労するね!
55 17/11/30(木)04:03:35 No.468861712
>su2126749.txt ありがたい
56 17/11/30(木)04:10:51 No.468861985
ねえダーク「」、この話何がツライってエリカがカレーを調べてる時からお姉ちゃんがやって来た当日までの間、やつはもういないはずのみぽりんを"いるはず"だと思い込み続けているとこだよね
57 17/11/30(木)04:12:36 [す] No.468862029
>ねえダーク「」、この話何がツライってエリカがカレーを調べてる時からお姉ちゃんがやって来た当日までの間、やつはもういないはずのみぽりんを"いるはず"だと思い込み続けているとこだよね 左様 エリカには周囲にはいくらおかしく見えても仮初の幸せな日々を送ってもらう!