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17/11/11(土)00:32:12 No.464834839
ウサギさんチームが謎を解くだけのお話
1 17/11/11(土)00:32:49 No.464834981
「こちら、ウサギ探偵団! ~ハンカチを取り戻せ~ 」
2 17/11/11(土)00:33:07 No.464835064
こちらは、みんなお馴染みウサギさんチーム。 面倒見の良い梓、ボーイッシュなあゆみ、いつも明るいあや、とっても元気な桂利奈、おっとりしている優季、そして物静かで聞き上手な紗希の六人からなるウサギさんチームは、今日もみんな揃って仲良く登校してきました。 おや?校門前で誰かが騒いでいます。どうしたんでしょう? 「ない!ない!!ない!!!うわあああああどこだあああああああ!!!!」 「落ち着いてくださいよー…」 どうやら、遅刻者検査中の風紀委員と生徒の誰かの間で何か事件があったようです。しかも、みんなその生徒に見覚えがありました。いえ、見覚えがある、なんてもんじゃありません。何故ならその生徒は、同じ戦車道を履修している仲間だったからです。 「ねーねー、あれ、冷泉先輩じゃない?」 同じ操縦手で普段から親しくしている桂利奈が真っ先に気付きました。続けてあゆみと梓も 「ホントだ!どうしたんだろう、また遅刻の件で揉めてるとか?」 「それにしては様子が変だよ!それに低血圧の冷泉先輩が朝からあんな大声出すなんて…何かあったのかも!みんな、行ってみよう?」
3 17/11/11(土)00:33:37 No.464835173
真っ先に駆け付けた桂利奈が、いつものように元気よくあいさつします。 「あい!おはよーございます冷泉先輩!そど子先輩!」 「パゾ美です」 「ん?おぉ、阪口さん…それにウサギさんチームのみんなか…おはよう…」 パニックを通り越して逆に落ち着きを取り戻していた麻子ですが、その顔は今にも倒れそうなぐらい真っ青でした。 「うぅ…何故だ…何故ないんだ…。私は確かに昨夜忘れないようにスカートのポケットに入れたはず…。出かける前もこれだけはきちんと確認したのに…なのに何故…。アレがないと私は…私はぁ…」 そんな顔でブツブツと呟くものですから、みんな心配そうに見詰めてしまいます。見かねて、梓が言いました。 「…あの、何があったんですか?私たち、何か力になれませんか?」 リーダーに連られるように、桂利奈、あゆみ、優季、あや、紗希までもが 「あい!お手伝いします!」「とは言っても、大して役に立てないかもしれませんけど…」「何でもしちゃいますよぉ~」「やれるだけのことはやりますから!」「…ん」 と、元気よくお返事しました。
4 17/11/11(土)00:34:04 No.464835281
後輩たちの先輩思いな言葉に、麻子はホッとした表情で 「…すまない、恩に着る…」 と頭を下げました。慌てて、梓とあやが言いました。 「そんな!頭を上げてください!私たち、先輩にはいっつもお世話になってるんですから!」 「そーですよー!日頃の恩返しだと思って、泥船に乗ったつもりでドーンと任せてください!」 あやの言葉に、すかさずあゆみと優季が突っ込みます。 「ちょっとあや!泥船じゃダメじゃん!沈んじゃうよ!」 「ホントばかだなーあやはぁー」
5 17/11/11(土)00:34:26 No.464835383
盛り上がる後輩たちを見ていると、麻子は、さっきまで焦っていたことや落ち込んでいたことが何だか馬鹿らしくなってきました。代わりに湧き上がってきたのは、心からの感謝です。麻子は、もう一度深々と頭を下げて、 「みんな…本当にありがとう。実は、学校に来るまでに落とし物をしたみたいなんだ。今から探しに行くから申し訳ないが手伝ってくれ」 「「「「「はーい!」」」」」 「えぇ!?ちょっと、学校はどうするんですかー?」 「「「「「サボりでーす!!」」」」」 「えぇー…まあいっか…」 こうして、いつもお世話になっている先輩のために、後輩ウサギ達は走り出したのでした。
6 17/11/11(土)00:35:07 No.464835523
「それで、先輩は一体何を落としたんですか?」 道を歩きながら梓が麻子に聞くと、麻子は恥ずかしそうに 「あぁ。その…ハンカチをな、落としたんだ…」 と、答えました。それを聞いて、ウサギさん達は何だかガッカリ。あの麻子があんなにも慌てていたので、てっきりもっと大事な物を落としたのだと思っていたのです。 「えっ?ハンカチ、ですか?」 「ハンカチなら落としても買い替えればいいじゃーん」 「…思い出の、品…?」 「あっ、なるほどー!紗希ちゃんかしこーい!」 「思い出のハンカチって、なんだかロマンチックゥ~」 「そうなんですか?先輩」 みんなが矢継ぎ早に会話を繰り広げるのを聞き、麻子は少し気圧されたように説明しました。
7 17/11/11(土)00:35:34 No.464835614
「いや、そういうわけじゃないんだが…。実はそのハンカチ、昨日そど子に借りたものなんだ…。それで、今日返すつもりで制服のポケットに入れていたはずなんだが、何故か学校に着いたときにはなくなってたんだ…」 麻子の話によると、昨日うっかり持ち物検査があるということをすっかり忘れて校門前で慌てていた麻子を見かねて、そど子が予備として持ってきたハンカチを貸してくれたらしいのです。 「ハンカチを失くしたとそど子が知ればどれだけお説教されるか…。うぅ、想像もしたくない。頼む、力を貸してくれ…」 というわけで、ウサギさんたちのハンカチ大捜索が始まりました。麻子が歩いてきた道を遡って、地道に一歩一歩探します。あやとあゆみは路地裏のごみ箱を。 「ぅわっ、ばっちーい!」 「あや、我慢して!うーん…中覗き込んでみたけど、なさそう…」 「ハズレかー」 桂利奈と紗希は草むらをかきわけ。 「じぇんじぇん見つかんないよー!」 「…バッタ」 「え!?どこ!?バッタどこ!?」
8 17/11/11(土)00:36:09 No.464835742
そして優季と梓は麻子に聞き込み調査をして、少しでも手がかりを集めようとします。 「どこらへんで落としたとか、心当たりありませんかぁ~?」 「それが、眠くてフラフラだったし、ボーっとしてたしで自分がどのように歩いていたかも曖昧なんだ…。あ、だが…」 「何か思い出しましたか!?」 「今日学校に行く途中で、何かあったな…。その何かは思い出せないんだが、なんだか誰かにお礼を言われた気がする…。「ありがとう」って」 「ありがとう…ですか」 「大した情報じゃなくてすまない…」 「いえ!きっとこの情報が役に立つ時が来ますから!」 「ご協力ぅ、ありがとうございまぁす」 しかし、結局ハンカチは見付からないまま、麻子の家に到着してしまいました。
9 17/11/11(土)00:36:32 No.464835822
「うぅ…家に帰ってきてしまった…。もうだめだぁ…おしまいだぁ…」 と、項垂れ頭を抱える麻子。ウサギさん達も自分達の力不足にガッカリしています。 「ごめんなさい冷泉先輩…私たち何の役にも立てなくて…」 「でももう一回探したら見つかりますよ、きっと!」 「あっ、じゃあ次は私たちだけじゃなくて他のチームの人にも手伝ってもらえばいいんじゃない?」 「あゆみちゃん、冴えてる~」 「もちろん私たちも手伝いますよー!だから元気出してください!」 そうやってみんなで口々に励ましますが、麻子は 「…いや、いい。あとは私だけで探す」 と、断ったのです。
10 17/11/11(土)00:36:56 No.464835894
「えぇー!?何でですかー!?」 「私たち、そんなにダメでしたか…?ご迷惑、でしたか…?」 涙目になるウサギさんたちを見て、麻子が慌てて 「えっ、あぁいやそうじゃなくて…。違うんだ。みんなには本当に感謝してる。だが、これ以上巻き込むわけにはいかないからな。だから一足早く学校に戻ってくれ」 と、言葉は優しく、しかし強い口調でみんなを帰らせようとします。 「そんな!私たちもまだ手伝います!いえ、手伝わせてください!」 「駄目だ。今日も戦車道の練習があるし、それには出ないと西住さん…いや、隊長に心配されてしまう。いい子だから戻っててくれないか?」 梓も引き下がりますが、麻子も譲りません。話がこのまま平行線になるかと思われた、その時でした。 紗希が無言で麻子に近付き、スカートを引っ張り、指差したのです。 「…ん?どうしたんだ丸山さん…?」 「待ってください先輩!紗希が何か言おうとしてます!」
11 17/11/11(土)00:37:15 No.464835952
「…ネコ…」
12 17/11/11(土)00:37:36 No.464836016
「…え?ネコ?」 「紗希、ネコってどういうこと?」 見ると、紗希が指差した箇所には麻子のスカートには猫の毛が着いてました。 「…猫の毛…猫…あっ」 その毛を見ているうちに、麻子の頭に今朝あった光景がはっきりと思い出されました。 真っ黒でしなやかな尻尾。そこに滲む痛々しい赤。そして、なんだか「ありがとう」と言ったように聞こえた「にゃー」という鳴き声…。 「…そうだ思い出した!朝登校してたら尻尾を怪我した猫を見付けたんだ!それで応急処置だけでもしようとポケットから…ハンカチを…」 「えっ、じゃあまさか…」 「ハンカチは…」 「ネコのしっぽってことぉ?」 「「「「「…探せー!!」」」」」
13 17/11/11(土)00:38:00 No.464836105
やっと見つけた手掛かりに、わっと盛り上がるウサギさんチーム。 「でもネコなんてどうやって探せばいいのよー!」 「ネコジャラシでおびき寄せるとかぁ~?」 「カツオブシの方がいいんじゃない?」 「ネットで聞いてみよっか!」 「それより走り回って探した方が速いよー!」 ワイワイと騒ぐウサギさん達を後目に、麻子は少し考えこんだ後、 「…あの猫はうちの近くで何度か見たことある猫だった…ということは、ここ周辺に縄張りがある可能性が高い…それなら…よし!みんな着いてきてくれ!」 そう言うと、真っ先に走り出しました。 「えぇ!?どこ行くんですか先輩!!」 「この近くに、ここら辺のネコが集まる集会所があるんだ!そこならもしかしたら…!」
14 17/11/11(土)00:38:28 No.464836218
息せき切って走り、ようやく目的地についたみんな。確かにそこには、沢山の猫が集まってました。 「うわーすごーい!ネコがこんなにいっぱい…!」 「ちょっと桂利奈、驚いてないで早くネコ探して!尻尾にハンカチがついてる子だからね!」 人に慣れているのか逃げようとしない猫の群れの中から、目を皿にしてターゲットを探します。あの子でもない、この子でもない、そして遂に…! 「あー!冷泉先輩、あれ!あの黒い子!尻尾にハンカチつけてます!」 あゆみが指差したその先に、確かにその猫はいました! 「…間違いない!私が朝会った猫だ!よし、それじゃみんな静かに…」 「「「「「捕まえろー!!」」」」」 遂に見付けたターゲットを前に、ウサギさん達が飛び掛かりました。 「あ、駄目だそんなことしたら…」 「フシャー!!」 「あー!逃げちゃったー!」 「追いかけろー!」
15 17/11/11(土)00:39:09 No.464836377
そして、猫とみんなの追いかけっこが始まりました。曲がり角を右に曲がり、左に曲がり、更に右に曲がったところで…。 「フニャッ!?」 「キャー!?ちょっともう、何なのよー!!前方見ずに走るなんて校則違反よー!!」 そこで猫は通りがかった人にぶつかって伸びてしまいました。さて、そのぶつかられた人というのが…。 「この声…まさか…」 「そど子先輩!!こんなところで何してるんですか!?」 そう、麻子の探していたハンカチの元の持ち主ことそど子でした。 「え?私はもう学校に行く必要ないからこうやってサボってる生徒がいないか見回りを…ていうか貴女達こそ何してるのよ!今は授業時間のハズよ!まさかサボってたんじゃないでしょうね!」 「あ、いやその…私たちは、そこの猫をだな…」 「猫?って、ちょっとこの猫ケガしてるじゃない!今すぐ病院に行くわよ!」
16 17/11/11(土)00:39:37 No.464836503
…こうして、猫を診てもらうために向かった動物病院にて、麻子とウサギさんたちは今日のことをすっかり説明させられたのでした。 「…ふーん、私のハンカチを、猫の応急処置に、ねぇ…」 「す、すまない…貸してもらったハンカチに猫の血がついてしまった…洗って返す…」 「いーわよ、別に。気にしてないわ。それより授業も受けずにこうやって猫を探し回ってた方が私にとっては問題なんだけど?」 と、麻子をギロリと睨むそど子。麻子は蛇に睨まれた蛙のように小さくなってしまいました。 「待ってくださいそど子先輩!冷泉先輩はどうしてもそど子先輩のハンカチを見付けたくて…」 「そこのサボり6名は黙ってなさい!…まあでも、気持ちはありがたく受け取っておくわ…。見付けてくれてありがとう」 「わーツンデレだー!」 「リアルツンデレだー!!」 「初めて見たぁ~」 「何よそれ!!全然違うわよ!!」 「そど子…何事も素直が一番だぞ…」 「アンタには言われたくないわよ!!」
17 17/11/11(土)00:40:05 No.464836616
と、ここで麻子はウサギさんチームの方に向き直りました。 「そうだ、ウサギさんチームのみんなにもお礼を言わないとな…。今日は本当にありがとう」 「そんな!私たち結局何もできてませんし…」 「いや、そんなことない。みんなのおかげでこのハンカチが見つかったんだ…。まるで探偵みたいで頼もしかった」 憧れの先輩にそんなことを言われて、ウサギさん達は沸き上がりました。 「た、探偵!?私たちがですか!?」「それって…いいかもぉ~」「ってことは私たち、ウサギ探偵団?」「いいじゃんウサギ探偵団!かっこいい!」「…いい…」「あいー!」 こうして、ウサギさんチーム改めウサギ探偵団は見事に事件を解決に導いたのでした。やったね!
18 17/11/11(土)00:40:32 No.464836743
…ところで。 ウサギさんチームが学校に向かった後、そど子が返してもらったハンカチを開くと、そこにはなんとハンカチいっぱいにでかでかと「園みどり子」という名前が書かれていました。それを見た瞬間麻子の態度が一変。 「そうだそど子!私は文句を言うためにわざわざこのハンカチを探してたんだ!なんでこんなにでっかく名前を書くんだ!おかげで持ち物検査のとき恥をかいたじゃないか!」 「な、なによ!そもそも持ってきてないあなたが悪いんじゃない!」 やれやれ、ですね。
19 17/11/11(土)00:40:55 No.464836838
以上になります ありがとうございました
20 17/11/11(土)00:46:36 No.464838516
ちまちま書いていたのをまとめてみました ・今回のお話と別のところで書いた第一話のまとめ su2099612.txt ・シリーズ物まとめ su2099616.txt ・短編まとめ su2099619.txt
21 17/11/11(土)01:04:29 No.464842724
…これハンカチ探してる段階では見つからなくてもお説教だし見つけてもサボりで説教だしで 麻子詰んでたんでは…?
22 17/11/11(土)01:05:03 No.464842869
>総受け住殿普及委員会 アンタかよ!
23 17/11/11(土)01:05:06 No.464842878
ウサギさんチームのほのぼのに見せ掛けた巧妙なそどまこ!
24 17/11/11(土)01:05:45 No.464843031
そうか…戦車道で単位が二倍出ればサボる余裕もあるんだな…
25 17/11/11(土)01:05:54 No.464843082
本編やら何やら見て思うことがある ウサギさんって精神年齢大分低めに設定してある気がする
26 17/11/11(土)01:06:22 No.464843210
一気にレスついたな
27 17/11/11(土)01:06:34 No.464843255
>アンタかよ! はい私です… そういえば書いてたのが結構たまったのでまとめてみようかなぁと思いまして…
28 17/11/11(土)01:07:35 No.464843484
向こうで誘導してくれたから一斉に来たんだね…
29 17/11/11(土)01:09:34 No.464844021
>ウサギさんって精神年齢大分低めに設定してある気がする 比較的しっかりしてる澤さんもなんか可愛い絵描くしな
30 17/11/11(土)01:11:33 No.464844516
かりなちゃんに至っては小学生だしな
31 17/11/11(土)01:11:46 No.464844580
この探偵団はケイダジ探偵組と比べてまあ可愛らしいけど頼りない感じがとてもして いいと思います
32 17/11/11(土)01:12:13 No.464844694
そどれまだ…これ
33 17/11/11(土)01:12:50 No.464844846
割りと濃厚なそどまこな気がする
34 17/11/11(土)01:15:01 No.464845442
第一話の誰もダイイングメッセージに突っ込まないのがまさにウサギさん
35 17/11/11(土)01:17:00 No.464845942
2年以上はしっかりしてるけど、隊長がボコキチだしなぁ
36 17/11/11(土)01:19:08 No.464846464
>「あい!おはよーございます冷泉先輩!そど子先輩!」 >「パゾ美です」 こういうお約束な小ネタ好きよ
37 17/11/11(土)01:21:11 No.464846979
>こういうお約束な小ネタ好きよ 私も大好きです お約束ネタは余裕があればドンドン入れたくなるのが私です
38 17/11/11(土)01:23:53 No.464847671
ポプラ社っぽくていい…